もしも楽と双子の兄がニセコイ生活を始めたら。   作:孤独なバカ

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スイエイ

あの勉強会の翌日

「あのバカが」

と俺はかなりイラついていた。

あの後お詫びに桐崎をラーメン屋に連れていった後、とりあえず竜達を謹慎処分を言い渡しその後に桐崎とビーハイブに謝罪文を書かせたり、後の処分に追われたからだ。

「おーい夕貴」

とクラスメイトの男子の声をかけられる。

「なんだ?」

「明後日の他校との水泳部と練習試合があるんだけど、一人が怪我して人数足りないんだよ。かわりに出てくれない?」

確か明後日は

「すまん、明後日は桐崎とデートの約束してるんだけど。」

と桐崎とはバレないように定期的にデートに行くことになっていた。

「あぁそれなんだけど女子の水泳部も人数が足りないから桐崎に助っ人頼むらしいぞ。」

「まぁ適任だな。あいつ運動神経はかなりいいからな。あいつがいいんだったらいいぞ。俺も体動かすの好きだし。」

「本当か、サンキュー夕貴。」

「んじゃ明日練習混ざるから。さすがに少し体動かさないと辛いし」

「あっ、俺達女子が練習するから練習休みなんだよ。」

「ちょっさすがに急に試合って辛いんだけど。」

と帰宅部の俺にとったら水泳部には相手にならないだろう。

「あっ。それなら、」

とクラスメイトはとんでもないことを言い始めた。

 

翌日

「なんでこんなことになったんだろう。」

と俺は今女子水泳部の練習に混ざっていた。

「仕方がないじゃない、今日は私達が練習する番だから。」

「でも俺だけ男子は辛くない?」

「いや、もうそろそろ」

「…宮本ここ女子水泳部だろ……?な…なんでオレまで…」

と楽が水着を着てきた。

「ってなんで兄貴までいるんだよ!」

「俺は明日の男子の水泳部の助っ人」

とすると楽は納得したらしい。中学生の時から俺は助っ人として色々の部で活躍していた。だから今回は水泳部になっただけの話だ。

「あれっ夕貴何でいるの?」

と桐崎がくる。

「だから俺は男子水泳部の助っ人頼まれているんだよ!お前昨日もいっただろ!しかも何でお前競技用の水着じゃないんだよ!」

と桐崎はビキニを来ていた。遊びにきたのかよ。

「仕方がないじゃない!まだ学校用の水着買ってないんだから!」

「あーそれならしょうがないな。桐崎すまん。」

「えっ、わ分かったんならいいけど」

「あんた達いちゃつくのはやめてくれる。」

「「いちゃついてねぇよ(ないわよ)」」

と俺と桐崎は同時に言う。

「うじゃ、適当に泳がせて貰うぞ。さすがにやるからには勝ちたいしな」

と俺は気合いが入る。俺は自分でも負けず嫌いって感覚がある。俺が出るのは2種目だが最低でも3位以内には入りたい。と俺は泳ぎ始める。最初は軽めに泳いでいた。

「ちょっと夕貴遅くない?」

としばらく泳ぐと 桐崎が話かけてくる。

「うーん、ちょっと泳ぐの久しぶりだしな。まぁ少し手を抜いてるからな。」

「なら少し勝負しない?負けたらジュース1本奢りってことで。」

……まぁ少しくらい本気だしても大丈夫か。

「別にいいけど後悔するなよ。」

「フフン。するわけないでしょ。」

と言ってから5分後

「もう一回だけ、もう一回」

「……さすがに諦めろよ桐崎」

と本気だした結果、平泳ぎ、クロール、バタフライ全てにおいて桐崎に勝った。

「うぅ、勝てると思っていたのに!」

「一応俺小学生の時水泳の県代表だぞ。さすがに敗けるわけにはいかねーよ。」

と俺はプールからあがる。さすがにずっと泳ぎぱなしだったから疲れた。

「桐崎ジュースいるか?」

「えっいいよ。私が負けたんだし。」

「俺はもうあがるから、ついでに買ってくる。」

「じゃあ私もあがるよ。」

「遠慮しなくていいって。どうせ送っていかないといけないんだし。それまで待ってるから」

と俺は自動販売機に向かう。こいつの好みは定期デートで分かっているし、多分大丈夫だろう。

そしてジュースを2本買うと

「おいゆうお前もジュース買いにきたのか」

と集がくる。

「お前も来てたのかよ。」

「そりゃもちろん。桐崎さんと小野寺の水着姿がみられるんだぜ。」

「気持ちは分かるけどな……」

と苦笑する。桐崎も小野寺もクラスで一位二位を争うくらいの美少女だ。それが見られるくらいなら確かに見にいくよな。

「でもゆうはいいよな。桐崎さんと付き合ってるし。」

「まぁ偽物だけどな。ほら」

とお茶を集に投げる。

「あいつは俺には勿体無いよ。どう考えてもな。かわいいし優しいし、気づかいができるけどな。」

「でもゆうは桐崎のこと、どう思っているんだよ。」

「……いい奴。本当に彼女だったらいいよなって思う。」

「それって好きなのか?」

……それは

「……わからないな。好きなのかどうかは。」

「…お前まだ10年前のこと引きずっているのか。」

と集に痛いところをつかれる。集には一度俺の過去について話したからな。

「あぁ、今でも夢に出るくらいな。」

「お前それじゃあ彼女永遠にできないぜ」

「それはさすがに嫌だな。お前は好きな人いるのか。」

「あぁいるさ。」

と集は頷く。しかしちょっと落ち込んでいる気がした。

「そうか…ゴメンな。」

「何でゆうが謝るんだよ。」

と集が笑う。つられて俺も笑ってしまう。

「でもゆう、お前今桐崎さんといる時が一番楽しそうだぞ。」

「……えっ?」

「じゃあなゆう、先行ってるぞ」

と集が走っていく。

そのこと自体は自分でも気づいていた。桐崎といると楽しい。あのケーキの時もそして閉じ込められた時も

「行くか」

と考えても仕方がないのでジュースを2本持ちプールに向かう。そのことは後からゆっくり考えよう。どうせ桐崎とは3年間ニセコイ関係を続けていかないといけないんだし。でもなるべく早めに答えをだそう。次は絶対に後悔しないように。

「ほら桐崎買ってきたって何してるの?」

とプールに戻ってくると紐にぐるぐる巻きにされた弟が宮本と桐崎にぼこぼこにしていたところだった。

 

「あんたの弟って本当に最低ね!」

と翌日、昨日から何回も同じことをくりかえし言う桐崎に苦笑してしまう。どうやら昨日、女子更衣室の鍵と小野寺の首からかけている鍵が楽の首にかけてあるペンダントの錠だと思い込んで確かめてみようと思ったらしい。

「そんな悪いこと言うなよ。あいつにとってあのペンダントは大切なものだから。」

「そういやあれはなんなのよ!」

「10年前に旅行先で女の子に会ったんだよ。その時再会を願って女の子は鍵、楽は錠を交換したらしい。そうしたらその女の子と再会できるって楽は思っているらしいぞ。だから再会を祈ってってことだな。」

「……なんかロマンチックね。あいつらしくないっていうか。」

「そうだな。」

と俺は下を向く。その時に俺は大失恋をしていたのでちょっと楽が羨ましかった。

「って次はお前泳ぐ番じゃあないのか?」

「あっそうだった。じゃあ行ってくる。」

「おう、頑張ってこい」

と俺は桐崎を送りだす。

あの時、俺はただずっと見ていた。楽のことが好きな女の子、しかしその女の子は楽から振られ、ずっと俺の隣で泣いていた。もし、俺がその女の子に再会できたのならば、好きって一言を伝えたかった。

「……もう会えないと思うけどな」

と俺は下を向く。

「ねぇあれ見て。もしかしてあの子溺れてない?」

と俺はその声を聞いて前を向く。すると

「…!!」

と桐崎が沈んでいた。両足が全く動いていない。よく考えてたらあいつ俺の隣にずっといたけど、一回も準備体操をしていなかった。

「桐崎」

と俺はプールの中に飛び込む。そしてなるべくはやく泳いで桐崎のもとへ急ぐ。そして桐崎の手を掴み引く。

そして背中に担いですぐにプールサイドに向かう。

「楽、保健室の先生呼んでこい。急いで!!」

「えっあぁ」

「集あげるの手伝ってくれ。」

「お、おぉ」

と名前が分かる奴を呼んで引き上げる

そして息をしているか確認すると

「スースー」

と息をしていたのでひと安心する。

「ゆう桐崎さんは?」

「息しているから多分大丈夫。でも桐崎を保健室に連れていった方がいいのか?救急車呼んだ方がいい?」

「ちょっと落ち着いて、夕貴君」

とわけがわからなくなってくる。すると

「あれっ私」

「桐崎さん!!」

と小野寺が叫ぶ。

「あれ小野寺さん私」

と桐崎が起きあがると俺の方を見てくる。

「何泣いてるのよ。あんた。」

「……えっ?」

と俺は自分の顔を触ると目から水滴が出てきた。

「……」

と俺は体から力が抜ける。そして座りこんでしまった。

「……ちょっと夕貴」

「あぁ大丈夫。」

と涙をぬぐう。でも何で泣いたんだ。立とうとするが全く力が入らない。てか動けない。

「……ゆうつかまれ。」

と集が手を差し出してくる。

「すまん、何か力が抜けた。」

「ちょっと何があったのよ。」

と不思議そうにしてる桐崎が保健室に運ばれるまで俺は集の支えなしではいられなかった。


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