もしも楽と双子の兄がニセコイ生活を始めたら。   作:孤独なバカ

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ホウモン

「おっはよー桐崎さん!」

ときょとんとしている桐崎に小声で

「ほら、行ってこい。」

と言ってやる。

「お…お…おはよー」

「ねーねー昨日のサッカー見た~?」

桐崎はあの黒ケーキ以来無事にクラスに馴染んでいった。元々友達に困るような人じゃないしきっかけがあればこれが自然なんだろう。

「ってことでめでたしめでたしっていけばいいんだけど。」

「何か言った?」

「別に」

その日の放課後、桐崎を家に送る途中でため息をつく。結局帰りと行きは俺が桐崎を送っている。雨の日は仕方ないけど楽だからいいらしい。すると携帯電話から好きな音楽が流れる。

「桐崎悪い少し止まる。」

「分かった。」

とメールを見ると楽からで勉強会の案内だった。

「そういや今日楽と集と宮本と小野寺から勉強会誘われてるんだけどお前も行くか?」

「えっ?」

と言うことで

「おかえりなさい坊っちゃん!!おやお嬢ちゃんもご一緒で」

「あぁ桐崎の分のお茶も頼む。桐崎汚いところだけど上がってくれ。」

「あぁうん」

と明らかに桐崎は落ち着いてなかった。

「……どうした?緊張しているのか?」

「な!!してないわよわくわくなんて。」

「わくわくしてたんだな。」

と普通に本心を言ってくれたな。

「仕方ないでしょ。私…勉強会なんて始めてだし…悪い…!?わくわくしてちゃ…!」

「別に、ってここだ。おーい楽入るぞ。」

「了解」

と開くともう全員揃っていた。

「悪い。桐崎送っていく途中だったから少し遅れた。ついでに連れてきたけどいいか。」

「えぇいいわよ。」

「桐崎、とりあえずメガネをかけた女が宮本るり、水泳部のエースだ。」

「ちょっとその紹介やめなさい。よろしく桐崎さん。」

「よっよろしく。」

「んでそこに座ってるどこからどう見てもエロいメガネをかけた男が舞子集だ。俺と楽の幼馴染みでもある。」

「ちょっと俺の紹介ひどくない。」

「ついでに兄貴が言ってることは全部本当だから」

「楽も俺の扱いひどい」

すると桐崎が笑う。

「ついでにこの四人は本当の俺らの関係を知ってる四人だからな。」

「えっそうなの?」

「うん知ってるよ」

と結局こいつらには楽から全部送ってもらった。

「ってことだ。」 

と紹介したので参考書を開く。

「あれ兄貴宿題は?」

「もう終わってある。学校で終わらせてあるからな。」

「あら、夕貴君って勉強できたんだ?」

「失礼だな、一応学年トップだぞ俺。」

「「「えっ?」」」

と女子が驚く。

「あー兄貴って基本オール百点なんだよ。だから寝てても怒られないだろ。」

「高三までなら解けるぞ。そのために中学の時楽と一緒に猛勉強したからな。」

「俺は受験勉強だけどな。」

楽が受験勉強している時に高校のテキストはほぼ終わらせてある。

「とりあえず小野寺と楽以外は教えるから頑張れ。」

「ちょっとなんで。」

「おい兄貴なんでだよ。」

「自分で考えろ。」

そうしないと進展しないだろ。おまえら

「ってか桐崎は勉強できるのか?」

「あっち側だったらだいたいAだよ。」

「ってわりにスペルミスしているけどな。ここ」

「あっ本当だ」

とさすがアメリカに住んでいただけあって英語はそれ以外はケアレスミスもなかった。数学も英語も本当にケアレスミスも何もなく。本当に勉強はできるみたいだった。

「ゆう坊っちゃん、桐崎のお嬢ちゃんちょっといいですか?」

と竜が俺達を呼ぶ。

「なんだ?」

「裏の蔵にお高いお茶があるらしくて取りに来てほしいんです。」

「てめぇがいけばいいだろ。」

「あっし達はちょっと組長から頼まれ事がありまして。入ればすぐにわかりますので」

「はぁしゃあねぇ。桐崎すまんがついて来てくれねーか。」

「まったくしょうがないわね。」

「ゴメンなこいつらが使えなくて。」

と俺は苦笑する。

「ひどいですぜゆう坊っちゃん。」

「はいはい、んじゃさっさといこうぜ」

と俺はすぐに部屋を出る。

さっさと俺は片付けてしまいたかった。

庭に出て俺は歩き始める。

「あ~あまったく楽しんでいたのに。」

「本当にごめん。今度ラーメン奢ってやるから。」

「大盛りでもいい?」

「トッピング全盛りもいいぞ。でも替え玉は一回までな。」

「えー」

と俺はほっとする。正直竜達と話していると気分が悪くなる。あまりださないようにしているけど俺はヤクザってやつが嫌いだ。

「あ蔵ってこれのこと?」

「おうそうだ入ればすぐ分かるっていってたけど」

と桐崎が蔵の方を見ている。

「どうした?」

「……あんたさっさと取ってきなさいよ。」

「……まぁいいけど。」

まぁ蔵の中はほとんど真っ黒だし女子には危険か。

「んじゃ待って」

と言うところで背中を誰かに押された。

やばいもしかしてと思った時には遅かった。

バタンと扉が閉まる音がして閉じ込められる。

扉を叩くと鍵がかかってそうだし。完全に引っ掛かった。

「……やられた。あのクソ野郎何考えていやがる。」

と舌打ちする。ポケットの中から携帯電話を取りだし明かりかわりにする。

「桐崎大丈夫か?悪いなあのクソ野郎のせいでこんな…」

と俺は真っ正面から抱きつけられた。

「……はっ?桐崎、ちょっちょっどうした?」

「う、うっさいちょっと黙っててよ!こっち見たらぶん殴るわよ。」

「桐崎じゃ一回離してくれ。俺後ろ向くから。」

と俺はこの時気づいた。桐崎は暗いのが怖かったんだと。

「ほら、5秒だけ離して、。んじゃねぇと後ろ向けないから。」

「う、分かった。」

と少し手が離れるうちに背中を向ける。

「もういいぞ」

「……ありがと。」

と涙目で言う。ちょっとドキッとしてしまうけどさすがに失礼だろ。

「お前携帯電話のライト使うか?」

「うん借りる。でも電話したら」

「ここ電話もメールも繋がらないんだよ。圏外になってるだろ。」

とここは監禁部屋にも使われるらしく、通信機能が全く使えなくなっているのだ。

「……ゴメンな本当に。」

「……あんたっていつもやさしいよね。」

「それ照れるからあまり言わないでくれないかな。けっこう色々と限界なんだよ。」

こんなにかわいい子と暗いところで密室ってけっこうきついんだよ。

「…あ、ねぇあれ見て!」

と俺はその方向を見るとはしごがあるけど

「駄目だ。俺は出られるけど桐崎は絶対登れないだろ」

「う、…私はちょっと…無理かもだけど…」

「ゴメンだけどそんな奴、俺は置いていけないんだよ。一応偽のだけど俺はお前の彼氏だ。泣きそうなお前を置いていけるはずがねぇだろ。」

「……カッコつけちゃって…」

とでも後ろがくっつけてくる。

「そういえばお前あいつらと仲良くなれそうか?」

「何よいきなり」

「いや話している方が怖くないだろ。だから話して誤魔化そうぜ。それにそっちの方が楽しいしな」

と適当に言っているけど色々俺の方が限界が近い。呼吸の音やシャンプーのにおいなどけっこう普通にかわいいのだ。

「そうね。小野寺さんはとてもいい人だと思うわよ。かわいいし優しいしさ……私あの人なら良い友達になれる気がするのよね!」

「確かに小野寺は誰にも優しいし、かわいいけど、宮本もいい奴だぞ。親友の恋愛を応援したり、正直あまり目立たないけど、本当はかなり頼りになる奴なんだよ。」

「舞子君は?」

「あいつはあぁ見えても一番大人だな。女の子にちょっかいかけてばっかだけど、誰よりも友達思いのいい奴だよ。」

あの性格じゃなければ普通にモテると思うんだけどな。

「じゃあ、あんたの弟は?」

「……ただのバカだよ。いい意味で。自分のことを考えず他人がよければそのことをその人と同じだけ喜ぶ、まぁかなりのお人好しだよ。」

まぁオレもかなりのお人好しってよく言われるけど、多分楽よりはましだと思ってる。

「皆のことよく見てるわね。」

「俺の唯一の友達だからな。もちろんお前もあるけど、聞くか?」

「ううんいいや。」

「ならいいや。」

と時間を見るともう15分たっていた。

「……多分もうそろそろ楽が来てくれると思うんだけど。」

「あれ?でも何かいつの間にか平気になってる。」

「あー目が慣れてきたのか、でも立つなよ。腰抜かしてたから急に立つと危ないぞ。」

と俺は立ち上がり手を桐崎の方に出す。

「ほら、掴まれ。」

「うん。」

と手を掴まれると思いっきり引き上げる。

「おーい兄貴どこだ!」

と外から楽の声がする。

「楽ここだ。」

と壁を叩く。すると

ばたーんと思いっきり扉があく。

「お嬢ーー!!!」

と金髪メガネが入ってくる。助かった。

「すみません。うちのクソ野郎どもがあなた方のお嬢さんを閉じ込めてしまい。」

「……いやそれはお前は関係ないのでいい。ところでなんでお前ごときがお嬢の手を握っているのだ。」

「……えっ。」

と見るともう明るくなっているのに手を握ったままの桐崎がいた。

「……桐崎、とりあえず手を」

「もう少しくらいいいでしょ。お礼よお礼。それとも嫌なの?」

「別に嫌じゃあねぇけど」

「ならもう少しだけこのままでいて。」

「……分かったよ。」

とよく見ると少し涙が浮かんでいる。相当怖かったのだろう。

「クロードさんこいつは責任かけて家まで送り届けるので安心してください。」

「いやそれは私が」

「あっラーメン奢ってくれるんだよね!」

「あぁ、今日は悪かったから思う存分食べてくれ。」

「ってことでパパに晩飯いらないってクロード言っといて。」

「ちょっとお嬢?」

「楽あいつらは?」

「あっ夕貴君こんなところにいたんだ。よかった。心配したんだよ。」

と小野寺がやってくる。

「悪い、ちょっと色々あって、とりあえず楽あのクズどもを監禁部屋に三日閉じ込めといてって言っておいてくれないか?」

「……分かったよ。」

と楽は意外に簡単に折れた。

「そういえば、勉強会はどうした?」

「まだやってるよ」

「んじゃ続きしますか。桐崎行くぞ。」

「はーい」

といつの間にか手も離していていつもの桐崎に戻っていた。でもなんだか距離がちょっと近づいたような気がしたそんな勉強会だった。


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