もしも楽と双子の兄がニセコイ生活を始めたら。 作:孤独なバカ
デートから2日後の月曜日いつも通り楽に起こされてから学校に行く途中の道。
「ちょっと夕貴。」
と通学路に桐崎がいてとてもやつれていた。
「……おはよう桐崎。お前も質問攻めにあったのか?」
「ってことはあんたも?」
「俺もだよ。うざかったからそのまま寝ようって思ったんだけど、無理だった。」
とあくびをしてしまう。そういえば
「乗ってくか?後ろ。まだ時間あるから歩いてもいいけど。」
「うーん、じゃあ歩いていきましょ。」
と俺は自転車から降りると隣を歩く。
「でもあんたが相手でよかったわ、あのもやしとやったらかなりきつかったと思うわ。」
「最初の一言が暴力女だもんな。あいつ空気読めないから大変なんだぜ。」
「そんな気がするわ」
と笑っている桐崎。でも電話でも楽のことをもやしって言っているから慣れてきた。
「そういえばあのクロードは?いつもお前にべったりくっついている。」
「さぁ今日は見てないけど?」
「ってことは見張ってるのか。俺らにプライバシーと自由な時間がほとんどないな。」
「……ってことは付き合ってるってことを否定は」
「不可能だな。……今日一日寝てよう。」
「だから助けてよ!!」
「ついでにダーリンだけは禁止。まぁフォローはするし、友達作るの手伝えることなら手伝うから普通に起こしてくれ。」
「私は子どもみたいに扱ってない?」
「気のせいだろ。」
……はいそのとおりです。
あんな演技でごまかせる人は少ないだろうし忠告しておかないと危ないからな。
「んじゃ自転車置いてくるから、先行っといて。」
「はーい」
と俺は自転車を置いてから教室に行く。すると教室に向けて大きな歓声が教室から聞こえてくる。
……あっこればれてるな。
凄く教室に入りたくなくなった。桐崎は質問攻めにあってるけどさっきフォローするって言ったしな。と嫌々俺は教室に入ると集が飛びついて
「ゆうーオレは悔しいぞ!!まさかお前が先に彼女が出来るなんて」
あっこいつ気づいて言ってるな。
「……何のことだよ。集」
「とぼけんなってゆう、もーネタはあがってるんだ!」
もしかして小野寺が話したのか?
「一昨日の土曜日…!!街で二人がデートしているのを板野と城ヶ崎が目撃してしまったのだよ。」
「……はぁそうだよ。」
と外にクロードがいるので肯定するしかない。
「嘘でしょう!!一条君付き合い始めたの?」
「戻ってきてよ!」
「……え?」
女子から悲鳴声が聞こえる。ってか泣いている人までいる。
「……集どういう訳?」
「お前って寝てばっかりだけど、けっこう人気高かったんだぜ。運動できるし」
「でも部活も何もしてないからな。意外だったわ。」
「鈍感って言うより寝すぎだったってことだろ。」
と楽が言う。でも
「もしかして俺って鈍感なのか?」
「多分そうじゃね。」
それはきついな。けっこうくるもんがある。
その後質問攻めされてマジで疲れた。
「……疲れた!!」
「あんた授業中ほとんど寝てたじゃない。」
と桐崎が呆れたようにしている。
「んでどうする?今日は学校案内しようか?」
「ううん。今日は用事あるから。」
「了解、じゃあな。桐崎」
「うんじゃあね。」
と俺はずっと気になっていた。こいつ女子と楽しそうに話しているけど、ずっと仲良くしているとこをまだ見ていないのだ。
「……ちょっとふらふらしてみようか。」
と俺はそういえば楽が飼育委員だったので少し手伝いにいくか、ついでに情報収集してみようか。そして飼育小屋の方にいくと楽と小野寺が一緒に飼育委員の仕事をしていた。
……邪魔したら駄目か。
と俺は帰ろうとすると
「って訳で偽の恋人を演じることになったんだよ。」
「へぇそうなんだ。」
と楽と小野寺は俺と桐崎の話をしているとこだった。
「一昨日一条君に聞けって言ってた理由って」
「見張られているらしいぞ。兄貴と桐崎。でもよくできるよな恋人のふりなんて」
と陰に隠れて盗み聞きしてしまう。
「でも、偽の恋人だけど仲が悪いってことではないんでしょ。」
「あぁ、はたから見るとちゃんと恋人に見えるらしいぞ。初日に色々あって仲が元からよさそうだし。」
「でも皆、桐崎さんと距離があるって思っているんだって。」
と小野寺が気になる発言をしている。
「……小野寺どういうことだ?」
「って兄貴聞いてたのかよ」
「夕貴君、これは」
「いいから、小野寺教えてくれ。」
「……私も聞いただけなんだけど、桐崎さんって金髪美人の帰国子女でしょ。だから話しかけづらいんだって。でも桐崎さんって夕貴君と楽しそうに話しているのを見て私達のこと見下しているのかなって。」
……あいつ
「ゴメン、小野寺サンキュー、後このことは誰にも言うなよ。偽の恋人のこともな、楽も。ちょっと行ってくる」
「あぁ、でもどこに行くんだ?」
んなもん決まってるだろ
「彼女のところだよ。」
と教室に入ると一人だけ座っていた。
「がんか?いわ…岩下もー音読み訓読みって本当になぞだわ、岩下さんはポニテの子、テニス部で活発で明るくてよく話しかけてきてくれる。」
「桐崎」
と俺は話しかける。こいつ
「なっ、なななななんであんたがここに」
「お前の評判を聞いたんだよ。んでちょっと俺は甘く考えてしまったんだと思ってな。んでさっき来たんだけど」
と俺は桐崎に近づく。そこにはこのクラスの女子の特徴、好みなどが詳しく書いてあった。
「ちょっと何見てるのよ。」
「……俺とは大違いだよ。」
「…はっ?」
「桐崎は凄いな。友達作るために人のいいところも全部調べていたのか。まったく俺の知ってる人とそっくりだよ。」
「……笑いなさいよ」
「笑うかよ。むしろ凄いと思う。俺は家がヤクザってだけで友達を作らなかったからな。」
と桐崎は驚いていた。
「俺ってヤクザの長男ってことで昔けんかしたんだけど、あの竜が学校に乗り込んできてな。その子を病院送りにしたんだよ。それ以来俺は友達をほとんど作らなかったんだよ。楽はそれなりに努力しているけど、俺はまったく作ろうと努力もしてこなかったんだ。」
俺は笑う。でもとても乾いていた。
「普通に友達と遊んだり、普通に恋愛とかしてみたかったんだ。でも家がヤクザってだけで友達に迷惑かけるわけにはいかないし、それより楽に迷惑かけたら駄目だろ。あいつは普通の高校生って感じで学校に行ってるからな。」
「…もしかして私に関わるなって言ったのは?」
「迷惑かけるわけにはいかないからだよ。」
もしも前みたいに病院送りになるかもしれないって思っただけで嫌だからな。
「結局関わっちゃったけどな。一昨日だって俺がいきたいところばっかり回ってるし」
といらないことを話したな。楽にも話したことないのにな。
「だから手伝うよ。俺だってお前の気持ちは痛いほど分かるからな。」
「うん、じゃあお願いしてもいいかな?」
「もちろん、岩下はお前とスポーツの話をしたかったはずだ。鈴木は勉強ができるから聞けばいいし、森谷はお前と相性はいいと思う。話したがっていたぞ。」
とメモを取っていく桐崎。とりあえず一通り教える。
「んじゃ送る。帰ろうぜ桐崎。今度他のクラスの女子のことはもっと詳しいやつのノート見せてやるから。」
「うん、じゃあ頑張ってみるね。ありがとう夕貴」
桐崎が笑う。その笑顔は本当に普通の女子高校生だった。