もしも楽と双子の兄がニセコイ生活を始めたら。 作:孤独なバカ
「だからぁ、ずっと付いて来なくでいいってばぁ」
と桐崎がつぐみに言う。
「そういう訳には参りません。いつ何時でもお嬢達の側にいてお守りするのが私の務め。」
「と言って本当は久しぶりにあった桐崎に甘えたいだけだろ。」
「ち、違う。」
と慌てているつぐみ。こいつはなぜかヒットマンなのに考えが表情に出てしまう。致命的なんだけどなぁ。
「表情に何でわかったって出てるぞ。もう少しポーカーフェイスって言うのを覚えろよ」
「うっ」
「まぁ久しぶりなのは分かるけどその調子だったら3年間持たないぞ。」
「でも私はクロード様からの命令が」
と少し揉めていると前から楽が歩いてきた。
「おい兄貴に」
ガンッ!!
とつぐみが壁に顔をぶつける。
「どうしたのつぐみ」
「いやなんでも?」
つぐみ楽を見た瞬間つぐみの顔が真っ赤になる。まさか、つぐみも楽に惚れたのか。しかも楽も桐崎も気づいてなさそうだ。
「私に寄るな触るな話しかけるな!!」
「……俺なんかしたか?」
「さあ?」
「夕貴、何にやけてるの?」
やば、俺も顔に出てたか。
「行きましょうかお嬢、一条夕貴。教科書お持ちします。」
「俺はいい。」
とつぐみに断ると
「あ、肩にほこりが」
と楽がつぐみの肩に触ったら桐崎の教科書を持ったまま放り投げた。
「ちょっ…!!?どうしたのつぐみ…!!?」
「ええー!?そんなに触ったらまずかったのか…!!?」
誰も気づいてないのか?こんなにわかりやすいのに。
「突っ込み不在って辛いな。」
と小さな声で呟いた。
放課後俺と桐崎は中庭に呼ばれた。
「どうしたの相談って」
「いえ…大した事ではないのですが…」
と俺はこんな茶番につきあわないといけないのかな?
と真剣なようすでつぐみは話し始める。
「実は最近体の調子がおかしいのです。ある条件下でのみ体に変調が現れるという今までに経験のないもので。」
「ふーんどんなのなの?」
「それが特定な人物の前でのみ動作が激しくなって…胸も苦しくなって顔も熱くなりその人物の前では会話もまともに出来ない有り様でして…」
「えっ……あんたそれって」
と桐崎は気づいたかな。
「何か大きな病気とかじゃないでしょうね」
と思いきりこけてしまう。
「何やってるのよ。」
「……桐崎お前鈍感なのか?」
「ちょっじゃあんたはわかってるの?」
「あぁ、俺には分かるけど教えないぞ。」
「な、なんでですか?」
「…つぐみのためにならないしこれに関しては俺にも責任がとれないんだよ。自分が自覚しないと意味ないからな。」
「……」
「でも多分それはいいことだからな。医者に行かなくてもいいぞ。俺だってなったことがあるし今でもなっているからな。」
「そうなんですか?」
とつぐみが俺を見る。
「多分な。まぁ女子なら小野寺あたりに相談するのがいいかな。あいつも同じやつ持ってるから。」
「はい、わかりました。ありがとうございます。」
とつぐみが立ち上がり
「でももう少し誰かに当たってみます。」
「あぁ、まぁかんばってこい」
と俺は手を振る。するとつぐみは首をかしげながら歩いていった。
「……はぁ、なんでこんな鈍感ばっかりなんだ。」
ため息をつく。
「あの子もいなくなったからいいでしょう。結局なんなのよ。」
「好きな人ができたんだろ。」
「って恋してるってこと?」
「それ以外には思い浮かばないけど、俺がどうこう言える訳ねぇだろ。」
と俺は桐崎の座っているベンチに座り込む。
「それなら全部納得いくだろ。」
「まぁいくけど、あんた好きな人っていたの?」
「まぁ最近できたって言えばいいかな。」
と苦笑する。
「そ、そうなんだ。」
「ついでにお前の好きな人も分かるけどな。」
「……」
と顔を真っ赤にする桐崎。熱の日あの夢を見て決めたんだ。もう鈍感なふりをするのはやめだ。多分俺が冗談が嫌いなのは知ってるのだろう。
「いつから気がついてたの。」
「うーん、倉に閉じこめられて、クロードに救出された時かな。」
「……そうなんだ。」
と否定もしなかった。多分あってるのだろう。
「であんたの好きな人は誰なのよ。」
「……俺を変えてくれた人だよ。んで鈍感で俺の気持ちにまったく気づかないで振り回されるけど、優しくてずっと俺の隣にいる。ずっと同じ嘘をつき続けている最近転校してきたギャングの娘って言えばいいかな?」
「っ!!」
とさすがに気づいたようだ。顔がゆでダコのように真っ赤になる。
「多分一目惚れだったんだと思う。気づいたのはつい最近だったけどな。んで本当はもう少し後から告白しようと思っていたけど、多分このままじゃあなんも変わらないからな。」
と桐崎の方を向く。桐崎は何を言われるのかわかってるだろう。
「桐崎のことが好きだ。俺と付き合ってくれ。」
とあの時言えなかった一言。
そしてずっと待たせていた。正直、クラスの女子から人気があったのも全部知っていた。でも桐崎以上に俺のことを心配してくれたり、家まできて夜遅くまで看病してくれるやつなんて誰もいない。
そして少し時間がたった。
「……偽物じゃダメなの。今の関係なら後悔しなくていいんだよ。」
「偽物じゃダメじゃないけど嫌なんだ。どうせ3年間でこの関係は終わる。それなら全部最初からやり直したい。」
「……うん。ならよろしく。」
と桐崎は顔を背けて照れながら言う。
「あぁよろしく。千棘」
「なんでいまさら下の名前で呼ぶのよ。」
「偽物から本物に変わったからかな。嫌だったか。」
「ううん、嬉しい。」
と桐崎が照れながらも笑顔を見せる。やっぱりかわいすぎだろ。でもひとつだけ確認したいことがある。
「桐崎は俺で大丈夫か?俺じゃもったいないくらいだけど。」
「ううん、私はあんたのことが好き。大好き。だからずっと私を守ってね。プールでつぐみに言ってたみたいに」
とりあえず誰に聞いたのかは後から聞くとして
「あぁ」
と頷いた。
「まったくつぐみが話していたとはな。」
と俺は桐崎を送ってから呟く。結局あの後つぐみに軽く説教してきたんだけど正直どうでもよかった。
でも千棘と付き合うようになったんだよな。
まさか普通に恋人ができるとは思っていなかった。偽の恋人をやるって聞いた時から諦めたのにまさかその人と付き合うことになるとはな。
そして浮かれながら家に入る。
「おう、夕貴帰ったか。ちょっと話がある。」
「……はぁ?」
と俺は父さんに呼ばれる。多分このいい口は大事な話だろう。そして父さんの部屋には今度は楽もいない。
「なんだよ父さん。大事な話って」
「いやーオレもずっと忘れてたんだが、お前に許嫁がいるんだが。」
……
「ちょっと待って、許嫁?なんでそんな大事なこと忘れるんだよ。俺彼女いるんだぞ。」
「偽物のだろ。」
「あっゴメン、本当に付き合うことになったから」
「……それ本当か?」
「あぁ今日告白してきた。」
「……すまんがその許嫁もなんとかしてくれないか?正直ギャングより面倒な相手なんだ」
……あれより厄介って
「まぁ、なんとかやってみるけど知らねーぞ。どうせくることにかわりがないだろうし。」
「さすがお前は話が早い。明日から林間学校だろ。それが終わったら転校してくるらしいからよろしくたのむわ」
「はいはい。」
と俺はため息をつく。明日どう桐崎に話すか考える必要があるな。
やりたいことがあったので早めにくっつけました。そしてサブヒロインが林間学校に出てきます。