ガンダムビルドファイターズ ザ☆チェイサー   作:大井忠道

3 / 8
なんやかんや色々ありまして、前回の投稿から半年も経ってしまいました。申し訳ございません。
さて、異世界に飛ばされたチェイスはこれからどうするのか。第2話、始まります。


第2話 さまよう魔進

少年が誰かに電話をかけている。

その様子を見ていたチェイスはすることもなく、ただベッドに腰かけていた。

 

「俺の知り合いの人に電話して、送っていただくよう頼みました。ちょっと待っててくださいね。」

 

「そうか。分かった。」

 

そこで、はたとチェイスは気付く。

 

「そういえば、名前を聞いていなかったな。何というのだ。」

 

「俺はカミキ・セカイって言います!」

 

「ならば、セカイ。世話になった。またどこかで会おう。」

 

「はい!また会えるのを楽しみにしてます!チェイスさん!」

 

そこから数分後、車の音が聞こえてきた。恐らくセカイの「知り合い」のものだろう。

 

「もう着いたようですね。」

 

「邪魔をした。失礼する。」

 

「はい!また良ければ、この町へ来てください!その時にはガンプラバトルを教えますよ!」

 

「分かった。その時は頼むぞ。」

 

はい!と元気な返事を受けつつチェイスは部屋から出る。続いてセカイが玄関へと彼を先導した。

玄関から出ると、ジープが目に入る。運転席から降りたのか、運転手の姿もあった。

 

「おお、セカイくん。この青年かね。」

 

「そうです、ラルさん。すいません、こんな時間に…。」

 

「何、構わんよ。今日はバーも休みで暇をもて余していたからね。」

 

ラルさんと呼ばれるこの男性が、セカイの知り合いのようだ。

これから少しの間お世話になるであろう男性にチェイスがあいさつをする。

 

「ラル…さん。」

 

「チェイス君、だったかな、どうしたのかね?」

 

「よろしく頼む。」

 

ああ、と返事したラルさんであったが、チェイスの目を見てあることを思っていた。

 

(この青年…同年代から感じるそれとは違うオーラを感じる…。いくつもの修羅場を潜り抜けてきたような…)

 

「ラルさん?」

 

じっとチェイスを見るのを奇異に感じたセカイが声をかける。

 

「おっ、すまない。いや、いい目をしているな、と思ってな。さ、チェイス君、車に乗りたまえ。」

 

そう促され、チェイスは助手席へ乗り込む。

 

「では、また会おう。セカイくん。」

 

「はい!チェイスさんも気をつけてくださいね!」

 

「ああ。それと…ありがとう。」

 

「いいですよ!ではまた!」

 

その様子を見たラルさんは車を闇夜の街へと走らせていった。

 

 

 

 

「それで、キミはなぜ公園にいたんだね?」

 

道中、話しかけてきたのはラルさんであった。セカイからことの成り行きは聞いていたが、気になるのはやはりチェイスが公園にいた理由である。

 

しかし、この質問にはチェイスも

「分からない。」

と答えるしかなかった。むしろなぜここにいるのか知りたいのはチェイス自身であろう。

 

「だが、公園にいた前の記憶はあるだろう?」

 

ラルさんのその問いかけにもチェイスは少し考える。

セカイが仮面ライダーや重加速等を知らないとなると、ラルさんも知らない可能性がある。

とりあえず意を決し、再び自らの境遇を語った。

 

「…。」

 

ラルさんの顔が固まった。

 

「運転中に余所見をするのは危険だ。」

 

チェイスが足を伸ばし、ブレーキを踏む。いつの間にか赤信号の灯る交差点に差し掛かっていた。

 

「す、すまない。」

 

「やはり無かったようだな、仮面ライダーも。重加速も。」

 

「ああ。そして、君はその前線で戦い、散ったと。」

 

「そうだ。」

 

「・・・逆にガンプラバトルなるものは無かったと。」

 

「そうだ。」

 

「ふーむ…。」

 

ラルさんはそう唸って考え込み、

 

「信号が青だ。」

 

またもやチェイスから注意されたのだった。

 

 

 

 

「信じられないとは思うが、恐らく君は異次元世界から来たのだろう。」

 

深夜のコンビニのイートインコーナーでラルさんがそう告げる。

じっくりと話をしてみたいと考えた彼がコンビニに寄ったのだ。

 

「異世界・・・。」

 

チェイスにとって異世界とは、本で学んだ知識でしかなかった。

現在生きているこの世界とはまた違う別の世界。

そこでは、科学がさらに発達していたり、さらには魔法と呼ばれる超現象があるというのは

知っている。

 

また、チェイスは異世界の存在を完全に否定しているわけではない。

魔進チェイサー・仮面ライダーチェイサーとして戦った年の前年に、

沢芽と呼ばれる街で異世界から植物が侵攻した事件を知っているからだ。

 

「君の世界では、そのような事件があったが、我々は知らない。

 反対に君はこの世界ではメジャーなガンプラバトルを知らない。

 これは、君が次元を超えたことしか説明がつかないのだよ。」

 

一方のチェイスはというと、いつもどおりのポーカーフェイスであった。

ラルさんに買ってもらったミネラルウォーターを飲んでいる。

だがその目は遠くを見ているようであった。動揺しているというよりは、

頭が混乱しているといった感じであろう。

 

「まあ、チェイス君も混乱しているだろうが・・・。」

 

「ラル・・・さん。」

 

「どうしたね?」

 

「なぜ異世界から来たという仮説を立てられる?」

 

チェイスの質問はもっともであろう。普通の人であればチェイスの話すことは

なかなか信じてもらえない。

対してラルさんは「異世界」という仮説を立て、チェイスの話すことを信じている。

 

「私にも異世界から来たらしい知り合いの少年がいてな・・・。」

 

「何・・・?」

 

「その知り合いが言うには、海を体験したことがないらしい。

 また、前に話した時も街が丸いという話を聞いた。それに、自分は王子だと。

 海を体験したことがないことや王子であることは『そういう国』だと判断すればいいが、

 『街が丸い』というのは地球上にはない。」

 

「街が丸いというのは、それは普通ではないのか?」

 

「君が思っている『丸い』というのは、二次元的に丸いという意味なのだろう?」

 

ラルさんが軽食として買ったせんべいを見せる。

 

「しかし、話を詳しく聞くと、君が持っているペットボトルのように

 筒状になったというのだ。こんな街はこの地球上にはない。」

 

筒の街というと、チェイスは一つのことを思い出した。

宇宙についての本を読んでいた際、計画されていたという「スペースコロニー」だ。

宇宙に浮かぶ円筒形の街であるが、もしやその知り合いもコロニーのある世界から

来たというのか。

 

「結局彼はこの世界を去ってしまったが、私はあの少年の言動からして、平行世界から来たのだろうと考えている。君もおおよそ違う世界から来たのだろう。君の知るものはここにはなく、君はこの世界の文化を知らない。それが、君が平行世界から来た証だ。」

 

にわかには信じられないが、こうも言われれば信じるしかない。チェイスはそう感じた。

 

ならば、今のチェイスは気になることはただ1つ。

 

「俺は、どうすればいい。」

 

「ううむ、そうだな。とりあえず今は私の家に来るかね?」

 

「いいのか?」

 

「何、構わんよ。少し部屋は狭いがね。」

 

「…ならば、そうさせて…。」

 

「どうしたね?」

 

「ありがとう。こういうときはこういうのがルールだからな。」

 

「ハッハッハ、堅いな。楽にしてくれたまえ。とりあえずまずは私の家に行くぞ。」

 

再び車へ戻る二人。その頃チェイスはこれからどうするべきか、頭の中で色々考える。

 

夜はまだ、長い。




恐らくビルドファイターズ系の小説でオッサンと青年の二人暮らしを書いてるのは珍しいと思いますが、展開的にはこれがいいと信じて突き進んでおります。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。