ガンダムビルドファイターズ ザ☆チェイサー   作:大井忠道

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時系列はアイランドウォーズ終了後の秋です。


第1話 目覚めた魔進

再び目が覚めた。

 

今度は雨も降っておらず、光も差し込んでいる。体も暖かく、実に快適だ。

まぶたをしっかり開くと、白い空と楕円の太陽が飛び込んでくる。

 

否、それはよく見れば天井と電灯であった。天井と電灯がある、ということはここはどこかの部屋だということになる。

 

勢いよく上半身を起こすと、やはりそれはどこかの部屋の中であった。また、自分はベッドに寝かせられていたということも分かる。

 

先ほどまでは雨の降りしきる公園にいた。ベンチに座り、そのまま寝込んでしまったため、もしかしたら誰かが自分を室内へと運んだということになる。

 

自分は痛みに苦しんでいた。それならば、運ばれたとなると病院だろうか。しかし、それには無駄なものが多すぎると考えていた。

 

木でできていると思われる机に、スポーツ選手のポスター。大きな窓と、横には様々なものが入っている棚がある。

 

そもそも自分が寝ていたベッドも木製で、布団も病院にあるようなカッチリとしたものではない。

 

目線を移すと、横の壁に自紫に染め上げられた上着がかけられている。代わりに自分が着ていたのは、まっさらなTシャツであった。

 

着替えまでさせてくれたのか、と関心したところであることに気が付く。公園にいるときに感じていた、鋭い痛みが消えていた。

 

体のあらゆるところを触るが、それでも痛みはやってこない。おおかた引いたのだろう。

再び思考を今いる場所の詮索に巡らせる。

 

部屋の状況から、病院ではないことは確かだ。どうやら個人の家の部屋、それも子供の部屋だろう。

彼自身、誰かの子供部屋に行ったことは無かったが図書館で吸収した知識を引っ張り出してそう結論付けた。

 

ベッドから下り、室内を散策する。勉強机にはたくさんの教科書やノートが並んでいた。それらに書かれている文字から、どうやらこの部屋の主は高校生のようだ。

 

次は棚を見てみる。何やらロボットのフィギュアもあるが、それよりも目を引くのはトロフィーだ。台座には英語で何か書いてある。

 

「優勝・・・ガンプラバトル・・・。チームトライファイターズ・・・。」

 

目につく文字をそう読む。下には三人の名前が彫ってあった。

 

「カミキ・セカイ。コウサカ・ユウマ。ホシノ・フミナ。」

 

このトロフィーがここにあるということは、この中の誰かの部屋だということになる。また、ガンプラバトルというのも興味を誘った。

 

「ガンプラ」というものは、うっすらとしか記憶が無い。確か、アニメのロボットの模型だったか、と記憶を引っ張り出す。

 

模型のバトル、とはどういうことだ?と疑問が膨らんできたところでドアが開き、声がした。

 

「あっ!」

 

どうやら部屋の主が帰ってきてしまったらしい。彼はトロフィーを元の場所に戻し、ベッドへと戻る。寝るのではなく、そのまま座った。

 

「目が覚めたんですか!大丈夫ですか?」

 

しかし部屋の主、赤い髪の少年は怒ることもなくそのまま彼を心配する。

 

「俺は大丈夫だ。それよりも・・・。」

 

ちらっとトロフィーを見た。

 

「俺の今いる状況確認とはいえ、勝手に私物を触ってしまった。これは人間のルールに反する。申し訳ない。」

 

「ああ、そんなの全然いいですよ!それよりも、良かったです!目が覚めて!」

 

少年曰く、やはり公園で自分は倒れ、そこからわざわざ自分の家まで送り届けてくれたという。

 

「病院には送り届けなかったのか?」

 

「病院は少し遠くて。近くの医院も今日の午後は休診でしたので、連れ帰りました。なによりも体の冷えが酷かったので、今暖房をつけてるんです!」

 

見るとなるほど、暖房が唸りをあげて働いている。

 

「すまないな。手間暇を取らせてしまった。」

 

「困った人がいれば助けるのは当然ですよ!」

 

屈託のない笑顔で答える少年。ギアの入った時のあの刑事を思い起こさせた。

刑事。

ハッと彼はある重要なことを思い出し、少年を見る。普通に動けているのを見る限り、重加速は今は起きていない。悪しき野望は打ち砕かれたとみていいだろう。

 

「大丈夫だったのか?」

 

「ん?何のことですか?」

 

「世界規模で起きた重加速だ。お前の生活にも影響を及ぼしたのだろう。だがもうその脅威は去ったようだな。」

 

少年はキョトンとした顔でこちらを見ている。そして、その口から開かれたものは意外なものだった。

 

「ジュウカソクって何すか?」

 

重加速を知らないのだ。ならば今度は一般での通称「どんより」を用いて同じ質問をしてみるも。

 

「どんより?ん~、知らないですねぇ。」

 

「どんより」も知らないとは不思議である。「重加速」は確かに警察全体や特状課で主に使われていたために一般人が知らなくても無理はない。

 

だが目の前の少年は一般社会で通じていた「どんより」すらも知らないという。何か変だ。

 

「どんよりは、いきなり自分の動きが非常に重くなる現象だ。それはロイ・・・怪物が起こすのだが・・・。知らないのか?」

 

「怪物が起こす現象、ですか?そんなのは聞いたことがないですね・・・。」

 

その後、仮面の戦士や怪物についても聞くもこちらもやはりダメであった。特に仮面の戦士については、過去の目撃例やニュースになったことなど具体的例を出したがなんと聞いたことすらないという。

 

「五年前は何があったか分かるか・・・?」

 

これならば誰でも答えられるはずだ。何せ、世界規模の重加速が起こり、大惨事になったのだから。

 

「五年前・・・。俺は師匠と一緒に修行してましたが。」

 

「世界規模でだ。」

 

「世界規模ですか?特に何かあった感じは・・・。」

 

う~ん、と考え込む少年を見て彼もまた考え込む。この様子だと「ない」という返事が返って来るのは明白だ。

ならば、と今度は彼が気になっていることを尋ねてみる。

 

「そういえば気になったのだが・・・。」

 

すっと指を差す。その先には先ほど無断で見てしまったトロフィーがあった。

 

「あのトロフィーに書かれてあるものは何だ?」

 

「トロフィーですか?」

 

少年の顔が明るくなる。ウキウキした様子でトロフィーを取り出した。

 

「へへ、これは俺、いや、俺達が去年のガンプラバトルで優勝した時のものなんですよ!」

 

「ガンプラバトル?」

 

やはり聞きなれない単語だ。トロフィーにも書いてあったが、何なのか。

 

「ええ。知らないですか?ガンプラバトル。」

 

「知らない。」

 

「まあ、俺もやるまでは知らなかったんで人のこと言えないんですが・・・。ガンプラっていうプラモデルを専用の機械にかけるとバトルが楽しめるんです!」

 

「ガンプラ・・・?」

 

「もしかしてガンプラ、見たことがないんですか?」

 

話には聞いたことはあるが実物は見たことが無い。

 

「アニメの『ガンダム」っていうのがあってそこに出てくるモビルスーツっていうロボットのプラモデルなんですよ。」

 

ガンダム。聞いたことはあり、また少しだけではあるが情報も得た。だが具体的なものは吸収していなかったのである。

分かったのは「ガンプラ」が「ガンダムのプラモデル」の略だということだけだ。

 

「すまない。何も分からない。」

 

「いや!いいんですよ!俺も始めるまではガンダムのガの字すら知りませんでしたし!それに・・・。」

 

笑った顔が苦いものに代わる。

 

「今でもあまり分からない部分もあって・・・。」

 

なるほど、ガンダムとは一筋縄でなんとかなるものではなさそうだ、と感じた。

 

「すると、ガンダムも・・・。」

 

「ああ、名前を少し聞いたくらいだ。」

 

「そうですか・・・。」

 

「すまない。それで、そのトロフィーは・・・。」

 

「あっ、で、これなんですけど。そのプラモを使ったバトルをそのまま『ガンプラバトル』って言うんです。大会があって、俺はチームを組んで出ました。様々な敵と出会い、強敵をなんとか打ち破って日本一に輝いたんです!」

 

眩しいほどに目を輝かせて力説する少年。だがこちらにとっては全くピンと来ない。

 

「これはその時にもらったトロフィーなんです。本当はウチの学校の部室にあるんですけど、なんか今工事してるらしくて、ここに仮置きしてるんですよ。」

 

なるほど、と相槌をうつ。しかし「部室」という言葉が出るとなると部活でやっていると考えた方がよさそうだ。

部活や大会ができるほどのものと考えると「ガンプラバトル」とはかなり大きなものらしい。

 

だが、そのようなものを聞いたことが無い。少年にも聞いてみるが、マスコミでも取り上げられるほどのものだという。

自分はそのマスコミをも使って人間社会を勉強してきたが、ガンプラバトルを見たことは無かった。

 

そのことを伝えるも、少年は普通に「ガンプラバトルを知らない」ことを受け入れた。理由はやはり「自分も知らなかった」からだという。だが肝心の重加速などについての事象はサッパリであった。

 

「何か、力になれなくてすみません・・・。」

 

「いや、こっちもすまなかった。助けてもらったのに質問ばかりして困らせてしまった。」

 

「そんなことないですよ!俺は何とも思ってないです!」

 

そうか、と返事をして立ち上がる。ハンガーにかかった自分の上着を羽織った。

 

「あれっ、もしかして・・・。」

 

「帰らなければならないところが・・・。」

 

ここで致命的なことを思い出した。バイクは置いてきてしまい、またお金も一銭も持ち合わせていない。むろんお金をせびるのも論外である。

 

「帰らなければならないところが?」

 

「無い。」

 

「えっ。」

 

時が止まったようであった。しばらくそのまま固まっていた。

 

「無いというのは、金だ。場所は分かっている。」

 

「じゃ、じゃあどこですか?」

 

「台東区久留間だ。」

 

「久留間・・・?」

 

検索をスマホで行いだす少年。やがて画面から顔を上げると、その顔が怪訝な表情に満ちていた。

 

「そんな地名、ないです。」

 

「なん・・・だと・・・?」

 

ホラ、とスマホを差し出してくる少年。指を台東区内で精いっぱいピンチアウトして移動させても確かに見知った地名は無かった。

 

「ちょっと待ってください。知人に連絡してみます。お名前は?」

 

そう聞かれ、青年は初めて名前を口にした。

 

 

 

 

「チェイスだ。」




この文章を書いている途中、ふと思いました。

ガンダムの世界に仮面ライダーキャラ→これウルトラマンもいたらコンパチヒーローズにならね?→ウルトラマンのキャラも出す予定立ててみるか

そんな感じでバトルが始まればウルトラマンキャラも出すと思います。
それよりもまずはバトルシーンに辿りつかねば。


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