【完結】藤丸立香のクラスメイトになった   作:遅い実験

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マシュが一緒に居なかったのは、立香のみダ・ヴィンチちゃんに呼び出されたからです。マシュは残ってくれたサーヴァントたちに様子がおかしい先輩のことを相談して回っています。







夢追い人に捧ぐ

 

 男の話をしよう

 

 ロマニ・アーキマンという人間の話を

 

 

 ◆

 

 ふう、久々だからかな。一杯話しちゃったなあ。

 

 それにしても、ダ・ヴィンチちゃんは一体何を考えているんだか…。

 

 ああ、そろそろ…。

 

 

 え?…ロマンの話?

 

 …うん。

 

 

 そうだなあ、最初に会ったときはさ、なんか頼りなさそうな人だなぁって思ったもんだよ。

 

 実際、その第一印象は間違っていなかったとも言えるし、でも正しくなかったとも言えるかな。

 

 まあ、驚いたよ。マシュに案内されたオレの自室のはずの場所でさ、ここはボクのさぼり場だぞーなんて言ってさ…。

 

 ッ…!

 

 …ああ、ちょうどそのあたりだったかな。今でも鮮明に思い出せるよ。まったく、人の部屋でリラックスしてくれちゃってさ。

 

 そのすぐ後だったな、オレが人理焼却なんて大事に関わることになったのは。

 

 

 …、

 

 最初のうちは大変だったよ。いやまあ、最後の方も大変だったけど。

 

 当たり前だけど戦いなんて今までしたことなかったし。突然世界が燃え尽きたとか、オレにしかできないだとか。

 

 必死だった。

 

 ああ、辛かったし、苦しかった。

 

 …やめたいと思ったことも、もしかしたら、あったかもしれない。

 

 それでも頑張ってこれたのは、皆がいてくれたからだ。

 

 マシュが隣にいてくれたから。

 

 サーヴァントの皆がいてくれたから。

 

 スタッフの皆がいてくれたから。

 

 君がくれたものがあったから。

 

 …ロマンが、いてくれたから。

 

 

 

 ロマンはさ、

 

 いつも一生懸命で、

 

 だけどそれをなんでもないことのように誇りもしないで、

 

 肝心なところでいつも役に立たなくて、

 

 それはどうしようもないことだったのに気に病んでいて、…

 

 

 

 

 

 

 

 

────それは彼との思い出。

    日常だったものの残滓(ざんし)

 

    この話には明確な終わりがある。 

 

    なぜなら、 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …オレたちのことをいつも考えてくれていて、

 

 オレたちの前ではいつも笑っていて、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最期は…、

 

 

 最、期はッ…、笑って、オレの、背中を、

 

 

 押して…、ッ…、…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 う、あああぁぁぁぁぁぁぁぁあ………!

 

 

 どうしてッ!どうしてだよ…!

 

 どうして何も言ってくれなかったんだ!

 

 

 

 どうして…、

 

 

 

 

 勝手に、いなくなっちゃうんだよぉ…!

 

 

 

 

 

 

 笑って迎えて欲しかったんだ…!

 

 やったねって、おめでとうって、

 

 そうやって笑い合いたかったのに…。

 

 

 

 

 もう一度、会いたいよ…。

 

 会って、話がしたいよ…。

 

 くそっ、く、そ、………。

 

 

 

 

 う、っ…く、ああああああああああああああ

 

 ああああああああああああああああああああ

 

 ああああああああああああああああああああ

 

 あああああああああああああああああ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは、どこにでもいる少年の、

 

 ごく当たり前の慟哭だった。

 

  

 自室でさえ泣くことを許さなかった少年の、

 

 抱え続けた後悔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 う、…っ…。

 

 

  

 分かってるんだ…。

 

 それが必要なことだったってことは…。

 

 それ以外の方法が、なかったってことも…。

 

 

 それでも、やっぱり…、

 

 納得なんて、できるはずなくて…ッ!

 

 

 

 

 …。そうだよ…、

 

 

 絶対許さないから…。

 

 もし謝ってきても許してなんかやらない。

 

 

 でも、……、

 

 

 

 

 

 …………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ああ、

 

 …それは、……。

 

 

 …うん。

 

 

 

 もしも…。

 

 

 もしもいつか、天国で会えたなら、

 

 

 まずは思いっきり右ストレートをぶちこんでやるんだ。

 

 もちろん、顔面に。

 

 その後で、マウントをとって、

 

 …え?そのへんで?

 

 しょうがない、物理攻撃はここまでにしてやるとしよう。

 

 

 

 そうしたら、その後は、目一杯自慢してやるんだ。オレのそれまでの人生を。

 

 オレはこんなにも、幸せな人生を送ったぞ!

 

 ってね。

 

 ロマンが歯を食いしばって悔しがって、羨ましがるような自慢話を一杯聞かせてやるんだ。

 

 

 

 それで、でも、そうしたらさ…、

 

 

 

 

 きっと、ロマンはさ、あの力が抜けるようなへにゃっとした笑顔でさ、嬉しそうに、聞いてくれるんだろうなぁ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …そうだね。

 

 だから、前を向いて生きないと。

 

 それで、目一杯、幸せになってやるんだ。

 

 

 

 

  

 いつか、そんなあり得ない邂逅があった時に、

 

 ロマンにたくさんのお土産話ができるように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …もうこんな時間か。

 

 ごめんね。夜遅くまで。

 

 うん。

 

 

 

 

 

 

 ありがとう、おやすみ、オレの大切な友達

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────おやすみなさい、ドクター・ロマン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

────いい夢を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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