【完結】藤丸立香のクラスメイトになった 作:遅い実験
コロコロ。
「3だ。このマスは、えっと、学生時代の知人に儲け話を持ちかけられる。30万融資した…」
「あっ、これはダメなパターンですね」
私は有り金から30万支払い、『友人の儲け話』カードを受け取る。
「…ちっ」
「怖い!?」
露骨に舌打ちしつつ、サイコロを立香へと投げつける。人生ゲームをパクったようなすごろくをプレイ中なのだが、どうにも上手くいかないものだ。ゲームの中でくらい幸せにしてくれたっていいじゃない。
「まあまあ、…お、6だ。なになに?」
ニヤニヤしながら人の不幸を喜んでいやがる立香に蹴りでもいれてやろうかと悩んでいるとすっと手を差し出された。
「…なに?」
「結婚した。ご祝儀ちょうだい。5万ね」
…爆発しろ。
少ない手持ちから叩きつける。慎んでお
なかなかに順風満帆な人生を歩んでいる彼に比べて、私はご覧の有り様だ。なにこれ、人生の縮図なの?未来を暗示してるの?
それからも彼は子供が生まれたり、マイホームを購入したりと、理想のサラリーマン生活を送っていき、私は独り者のまま借金地獄にまみれていった。…まだだ。まだ終わっていない!
こういうゲームは大抵終盤に波乱万丈が待ち受けているものだ。つまりまだ挽回は可能!
全霊を込めた一投。そぉい!
「1…」
だ、ダイス目はこういうゲームではほとんど関係ないし。
「うわっ、今度はカジノだよ。大丈夫?自己破産する?」
「ふっ」
「この期に及んで自信満々だあ!」
このゲームに自己破産なんてシステムはありませぬ。そして私の悪運をなめないことだ。
「狂気の沙汰ほど面白い…!」
「ざわ…ざわ……」
ファンに怒られそうな適当過ぎるモノマネを繰り広げつつ、カジノの説明欄を読む。
サイコロを二つ振りその出目によって天国か地獄か決まる。一か八かの大勝負。やってやる。
「てい」
出た目は…!
「3と4…」
「おお…可もなく不可もなく…」
「面白みが無くてごめんなさい…」
「いや、悠月らしい結果じゃない?」
「え?それ褒めてるの?貶してるの?」
「もちろん褒めてるよ?」
立香の私評に釈然としないものを感じつつ、カジノの結果を受け取る。
3000万。あれ?結構な大金だ。借金を返し終えることができる。
「よかったねえ、おじいちゃん安心したよ」
「孫までできてる、だと…!?」
そろそろゴール間近。立香との差はまだまだ遠い。いけるか?いや、いけないよ…。
「お、ゴールした」
立香は特に大損したりすることもなく、普通にゴールした。
その後、私も大儲けすることとかなく、普通にゴールした。
「あれ?まだ持ってるカードはここで使用するんだって」
「…友人の儲け話カード」
これは…、このカードは使用する場合、サイコロを二つを振る。その出た目によって結果が変わるものだった。カジノと同じだ。
これ大逆転パターンくる?
祈りを籠める。助けて
「てい」
出た目は…!
「
「あははははははははははは!」
ええ、なに?なんなの?ここにきて借金地獄再来とかないよね?
「いや、待った」
これはTRPGではなくすごろくだ。
どれどれ。
「きた…!友人の事業が成功して、金額が倍になって返ってくる!」
「おー、おめでとう」
「ふっ、やはり持つべきものは友達…」
「えぇ、さっき思い切り舌打ちしてたような気が…」
逆転勝利!
「まあ、60万ゲットでもオレに追い付いてないんだけどね」
してなかった。
◆
まあそろそろいいかな。
「…それで、今日はどうしたの?」
「…あー」
立香が何か悩んでいる時の表情をしていたので聞いてみる。予想はつかないでもないけど。
「両親と、ちょっとね…」
「喧嘩でもした?」
「いや、バイトをしようと思ってるんだけどさ」
「うん」
「…場所が、海外でさ」
知っている。知っていた。
「そっか。…全部この
「…ありがとう。この前、駅前でね────」
それはいずれ来ると分かっていた
────2015年、夏。
その時が、やって来る。