【完結】藤丸立香のクラスメイトになった   作:遅い実験

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たくさんの感想ありがとうございます。いつも参考にさせていただいております。
 
という訳で、身も蓋もない番外編です。色々とひどいです。あといつもより長いです。









身も蓋もない番外編

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ハーレムで良いのでは?」

 

 

 そんな誰かの一言で、女子会は一時静寂に包まれた。そして私の脳は目の前の光景に機能停止に陥る寸前であった。

 

 

 

 どうしてこうなったんだっけ…?

 

 

 

 

 ◆

 

 

 

 

 歓迎会を経て翌日、カルデアの人々ともそれなりに打ち解けられた私は、今日はどうしようかなーと客室でぼんやりとくつろいでいた。とりあえず散策でもしてみようかと思い立ち、ドアを開け外に出ると────

 

 

 

 「────おはようございます」

 

 

 

 うわぁ!びっくりしたぁ!

 

 にっこりと微笑みながら挨拶をしてきたのは、うそつきやきころすがーること、清姫さん。

 まあ、可愛らしい笑顔!目が笑っていないという点を除けばね!

 

 

 「おはようございます。…あの、普通に入ってくるという選択肢はなかったのでしょうか?」

 

 「ふふ、何事もインパクトが大切だと言うでしょう?」

 

 「…まあ、いいですけど」

 

 

 清姫さんかー。カルデアでも危険度上位に君臨するであろうサーヴァント。英雄王あたりの方がヤバいのかもしれないけれど、彼が私なんぞに興味を抱くとは思えないからね。…いや、清姫さんも嘘をつかなければいいだけか。

 そこに目をつむれば良妻賢母だって言われてるし。

 

 

 「確か、貴女は旦那様(マスター)のご友人だということでしたよね?」

 

 「え?…はい、そうですね」

 

 

 それがどうかしたのかな?まだ立香の過去話が聞き足りないとか?

 

 

 「…そうですか、なるほど。…わたくし、今日は貴女を招待しに来たのです」

 

 「招待?」

 

 

 なにに?

 

 

 「カルデア女子サーヴァント達によって開催される、カルデア女子会・超級に、です!」

 

 

 未だに状況はよく理解できていないけれど、何事かに巻き込まれたってことは分かったよ…。

 

 

 ◆

 

 

 道行くスタッフさん達にとても可哀想なものを見る目をされながら、清姫さんに連れられ辿り着いた一室。

 

 

 「お待たせしました、皆さん」

 

 

 扉を開くとそこにいたのは数多く、いやそこまで多くはないけど女性サーヴァント達。これだけの英霊が揃うと壮観である。美女と美少女しかいないし。酔いそう。

 

 

 「楽しいお茶会の始まりね!」

 

 

 くるくる回る少女が笑う。

 さあ、パーティーの始まりだ。

 

 

 

 

 「では、こちらへどうぞ」

 

 

 案内されたのは部屋の中心。…あ、マシュさんだ!マシュさんがいる!癒し!

 

 

 「…あの、これってどんな状況です?」

 

 「私も先程連れてこられたばかりで…」

 

 

 お役に立てず申し訳ありません、としょんぼりするマシュさんをよしよししつつ、周りを見回していると、突然に照明が落ちて辺りが暗闇に包まれる。

 

 

 

 そして響き渡るドラムロール。

 

 スポットライトが照射され、不規則な動きで辺りを照らした後、一点に集まる。

 

 そこに居たのは…、

 

 

 

 「みんなー!今日はアタシのライブを観に来てくれてありがとー!たっくさん歌っちゃうから楽しんでいってよね!」

 

 

 わーい!エリザベートの生ライブ!

 

 死んだかなこれは。エリちゃんのライブとかマジですか。今日が命日だったの…。

 

 

 そして吹き飛ぶエリザベート。

 

 

 隣にいた清姫さんはおこだった。口から火を吹いている。なんという出オチ芸。

 

 

 「…な、なにするのよぉー!?」

 

 

 若干焦げ目がついた(ドラゴンステーキな)エリちゃんが、涙目で叫びながら清姫さんに飛びかかる。

 

 竜vs竜。ふぁいとっ!

 

 やんややんやと盛り上がる会場。

 

 

 「なんなのなの…」

 

 

 飛び交う罵倒、炎、超音波。戦いを止めに入った人や自ら参加しにいく人で大乱闘が始まってしまっている。酒でも入ってんの?

 

 あわあわしているマシュさんを横目に、私が半ば諦めの境地で誰が勝つのか賭けでも始めようかと思っていると、目の前にどんと置かれる数々の料理。

 美味しそうな匂いを漂わせているテーブルに置かれた料理に目を奪われる。

 

 

 「さあ、野生のままに喰らうのだ。我が料理に骨抜きになるがいい、そのままたたきにしてやるのだな!」

 

 

 あはははははは!と笑いながらタマモキャットは更なる料理を作りに行ってしまった。

 

 なんだ…うん、状況には全くついていけてないけれど取り敢えずご飯食べてよう。

 …あ、美味しい。

 

 

 

 

 

 しばらくマシュさんや他の皆さんと談笑しながら食事をしていると、一段落ついたのか所々煤けた清姫さんがのっそりと席についた。

 

 

 「お疲れさまです、大丈夫ですか?」

 

 

 ぽんぽんと埃を払い、顔についた汚れをお手拭きで拭う。綺麗にしましょうねー。

 

 

 「…ええ、ありがとうございます」

 

 

 清姫さんは手近な所にあった紙コップに緑茶を注ぎ、それに口をつけると、ふうと疲れたため息をついた。

 

 

 「…まったくあのドラ娘、わたくしが主催した女子会だというのに。…いつの間にあんな準備をしていたのでしょう」

 

 「清姫さんが主催だったんですか?」

 

 「ええ。ただ開催を決めたのが昨日だったもので、あまり準備もできませんでしたが」

 

 

 だから参加者もそこまで多くないのか。

 

 

 「…またどうして突然?」

 

 「貴女に聞きたいことがあったのです」

 

 

 私をじー、と見つめる清姫さん。

 

 

 「わざわざこんな事しなくても、普通に聞いてくれればよかったのに…」

 

 「何事もインパクトが大切だと言うでしょう?…それに、女子会というものは話をしやすい雰囲気を作れると聞きまして」

 

 「…私のためにありがとうございます。…聞きたいこととは?」

 

 

 「昨日旦那様(マスター)と何をしていたのでしょう?」

 

 

 昨日…、何って…。うん…。

 

 

 「話をしていただけですけど…」

 

 「話、というと?」

 

 「それは、…カルデアの皆さんの話とか。あ、清姫さんの話も聞きました」

 

 「わたくしの…?」

 

 

 清姫さんはこちらに身を乗り出してきた。顔がすごく近い。頬を薄く朱に染めながら上目遣いをしてくる清姫さんは、恋する乙女の見本のようだった。やっぱり美少女だなぁ。

 

 

 「その、ますたぁは、なんと…?」

 

 「うん。清姫さんからの好意は、純粋に嬉しいって」

 

 

 好意はね。やり過ぎには注意しようね。

 

 

 「まあ、まあまあ!これはやはり両想いそして結婚ということですね!あなたの清姫が今参りますよ、ますたぁ!!」

 

 

 駆け出そうとする清姫さんを、叫びに気付いたマシュさんが駆け寄り必死に食い止める。

 

 

 「突然どうしたんですか!?」

 

 「離してください、マシュさん!わたくしのますたぁが待っているのです!」

 

 「わたくしの!?何があったんですか!?いつも通りといえばいつも通りですが!」

 

 

 取り押さえられて少し冷静さを取り戻した清姫さんは、美味しく料理をいただいている私の方を振り向くと説明を始めた。清姫さんの朗々とした演説に注意が集まっている。

 

 

 「…せ、先輩からの評価、ですか」

 「アタシには、憧れのアイドル!ってところかしらね?」

 「おかあさんはいつも優しいよ?」

 「私が最強の(セイバー)であることは確定的に明らかですが」

 

 

 わちゃわちゃしてる。

 

 そしてそれを遠くから眺める静謐のハサン。

 

 

 …、静謐さんだ!?

 え、何してるんだろう…。

 

 

 「あら?静謐さんではないですか。どうしてそんな遠くに?」

 

 「…おかまいなく」

 

 「ああ、静謐さんは、その、毒が…」

 

 

 マシュさんの返答に、清姫さんは納得して衝撃的な事実を溢した。

 

 

 「ああ、そういえばそうでしたね。わたくしは大丈夫ですが」

 

 「ええ!?」

 

 「旦那様(マスター)とお揃い…、ふふ、いい響きだと思いませんか?」

 

 「まさか対毒スキルを!?」

 

 

 愛の力ってすごい。

 

 

 

 

 

 

 

 清姫さんは静謐さんの近くに着席しに行ってしまった。…それにしても。

 

 

 「…立香、愛されてるんだなぁ」

 

 「主殿は素晴らしいお方ですから!」

 

 「そうだねぇ。…でも本当に()()()女の子に好かれているから、いつかひどい目に遭わないか心配なんだよね…」

 

 

 さっきの喧嘩を止めに入った人(ブーディカさん)自ら参加しにいった人(牛若丸さん)が答えた。

 

 ブーディカさんの台詞には、…まあ女神とかバーサーカーとかいるからね。男冥利に尽きるね。…頑張って下さいとしか。

 

 

 「…誰か一人選んだりしたら、色々と大変なことになりそうですね」

 

 そう呟いた瞬間────

 

 

 

 

 

 

 

 「────ハーレムで良いのでは?」

 

 

 

 

 

 「うん?」

 「はい?」

 「え?」

 

 

 そんな辺りが静まり返るような台詞を告げたのは────

 

 

 「ハーレム────それは男の浪漫!」

 

 

────そこにいたのは一人の人間だった。

 

 頭部には花の飾りが添えられ、手首にはダンスの際に躍動感を感じさせる為か、ヒラヒラとした布地を着けている。

 上半身は肌が透けている布地を胸元に巻いているだけで、お腹は丸出し。

 長いスカートは敢えて片側のみ、もう片方のその生足は惜しげもなく晒されており、下着すら垣間見えている。

 

 それは、踊り子のような格好をした────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「デュフフ、拙者こう見えてハーレムには詳しいので。ハーレムヒロインのなんたるかを手取り足取り教授してみせますぞ!まずはラッキースケベから!」

 

 

────黒髭だった。

 

 具体的には、マタ・ハリ衣装の黒髭だった。

 

 う、────

 

 

 

 

 

──────しばらくお待ち下さい──────

 

 

 

 

 

 黒髭ことティーチさんはボロ雑巾のようにされて雪山に捨てられた。女子会に参加(潜入)するために女装とか…、うぐぅ。

 

 

 「…ハーレム、ですか」

 

 

 嵐が通りすぎた会場で、清姫さんがぽつりと呟く。怖い。

 

 

 「わたくしはそれでも構いませんが」

 

 

 …うん?

 

 

 「…清姫さん?」

 

 「わたくしの旦那様(マスター)はそれはそれは魅力的なお方ですから、多くの女性から好意を向けられてしまうのは仕方のないことでしょう」

 

 

 しょうがない方ですね、といった顔だ。

 

 

 「わたくしのことを愛してくださるのであれば、その(ハーレム)くらい男の甲斐性として受け入れてみせましょう」

 

 

 まあ、わたくしをまた置いていくというのであれば…、うふふふふ…。

 

 目が死んだ笑顔で呟かれた最後の言葉には恐怖しかないが、そうか、きよひーはハーレム受容派だったな。自分(きよひー)以外の特定ルートに入ると基本死ぬけど。

 

 

 

 …まあ、立場はなんだっていいんだけど。

 

 

 

 ちょっと疲れてきたなー。ふう、と深いため息を溢す。

 

 ちらと時計を見る。ああ、それにしてもこの女子会、一体いつまで続くのだろうか────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






ぐだぐだな番外編でした。キャラをできるだけ沢山出そうとして失敗した感がある。
 
 

 


 
以下、本編に入れるのはあまりにアレだったので変更された、読まない方がいいかもしれない主人公ちゃんの最終回の行動についての補足。
 
 

 
立香と疎遠になるとか想像しただけで死にたくなったので考えた。どうすれば一緒にいられるだろうか。女の子としてはマシュ達に自分が勝てるとは思えない。先制すればどうにかなるかもしれないが、現状で彼と近づき過ぎるのは()()と問題も発生するだろう。本編に影響が出るような賭けには出られない。それで立香に何かあれば死んでも死にきれない。ならば親しい友人として側にいるのが一番だが、それだけではあまり会えない自分ではいずれ疎遠になっていってしまう可能性がある。だから楔を打ち込んだ。自分という存在をいつだって忘れないように。そして約束という名の楔を打ち込んだ上で、立ち位置に細心の注意を払って行動する。感情的に見せかけた計画的な犯行であった。
────全ては自分の願いの為に。
 
まあ、立香の幸せ>>越えられない壁>>自分の願いですが。

 
…はい!友情の話でしたね!
 
 
 
 

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