「何者だ?」
「んー?そこらにいる退治屋」
「……まぁいい」
吸血鬼が力を溜める。
それに対し、俺は氷の剣を生成、霊力で肉体を強化する。
「死ね」
ガキン、という金属がぶつかったような音が響く。
無論金属がぶつかっている訳ではなく、霊力、及び魔力により超強化された剣と爪がぶつかりあっているだけだ。
一旦吸血鬼から離れ、距離をとる。
そのまま巨大な氷剣を生成、ぶつける。
が、片手で破壊される。
そんなの知るかと更に三個生成、霊力で切れ味を上昇させる。
対し、吸血鬼は金色の、趣味が悪そうな鎧を纏っていた。
「なにそれ?」
「人間には到底理解できない技術で作られた鎧だ」
教える気はないのね。
そう心の中で呟きながら、さっき作った剣を飛ばす。
なにやらぶつぶつ言ってるが、気にしない。
当たる直前、まるで最初からなかったかのように氷の剣が消えた。
ヤバくね?
「襲雷」
そう吸血鬼が呟いた瞬間、真上に強力な魔力を検知。
ヤバイと思った俺は、即座に離れる。
瞬間、轟音。
雷が落ちた音を数十倍程大きくしたような音が響く。
光が収まった時、俺が居た周辺は消滅していた。
え?ヤバくね。
いや消滅ってなんだよ、焦げるとかじゃないのかよ。
しかも天井も消滅してるよ、ヤバイよ。
これは勝てんな。
こいついつぞやの妖怪の王さんと同等……あるいはそれ以上だ。
さて、こんな時は……
「逃げるんだよお、スモーキー!」
■■■■
「眷属たちよ、追え!」
一目散に逃げたした氷霧に、一瞬拍子を抜かれたが、冷静に眷属を召喚する。
吸血鬼ーーウラドの影から這い出るように狼や蝙蝠、更にはゾンビ等が這い出る。
その数、数百。
この広大な紅魔館から逃げられたら、探すのは困難だ。
仮に見つけても、ただ
故に、一対一ではなく、数で見つけ出し、殺す。
無駄に空間を弄り、広くしたのは間違いだったか。
心の中でウラドはぼやく。
これまでの侵入者は
ようは、戦闘中に逃げるということはしないのだ。
氷霧がしたのは魔王との戦闘中に背を向けて逃げ出したのと同義、拍子を抜かれても仕方ない。
「さて…」
追跡は眷属に任せることにしたウラドは、失禁している者たちに目を向ける。
ガシャ、という金属音をたてながら一人の男が立ち上がる。
その男は材木屋 俊典。
勇者たちの中でも
「……」
「立つのがやっと、といったところか」
立ちはしたが、なにもしない材木屋にウラドがそういい放つ。
そう、材木屋はたつのがやっとで、なにもできない。
全員共倒れだ。
そうなっては本末転倒、意味がない。
なちか策はないかーー
そうか考えるが、ない。
「消えろ」
なにもできないと判断したウラドが、右手に魔力を溜める。
『やあやあやああ!それは待ってもらおうか!』
突如、虚空かり声が聞こえる。
目を開き驚く材木屋にたいし、ウラドはまるでわかっていたかのような反応を返す。
「この声…ミルザム、貴様か」
『正解正解大正解!」
異空から青い髪をした青年が現れる。
そう、毎度お馴染みミルザムだ。
「とっとと消えろ」
「はいはーい、わかってますよー」
端から見ればわからない会話をする二人。
ミルザムがここに来た理由は一つ、勇者達を助ける為だ。
今後のことを考えると戦力はいくらあっても足りない。
ここでウラドに殺させる訳にはいかないのだ。
そしてウラドも来た理由を察していた。
わざわざここまできて勇者を殺す理由はないし、そもそも今死ぬ瞬間だった。
ウラドを殺すのはミルザムには不可能、よってウラドは勇者たちの回収と読んだのだろ
なぜ回収するのかまではわからないが。
そこに、ウラドに念話が繋がる。
「……ちっ」
不機嫌そうにウラドが舌打ちしたとき、この紅魔館から
ーー終わりの時は近い