東方氷災録   作:魔神王

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第三話『吸血鬼と勇者達とオマケ その二』

「何者だ?」

 

「んー?そこらにいる退治屋」

 

「……まぁいい」

 

吸血鬼が力を溜める。

それに対し、俺は氷の剣を生成、霊力で肉体を強化する。

 

「死ね」

 

ガキン、という金属がぶつかったような音が響く。

無論金属がぶつかっている訳ではなく、霊力、及び魔力により超強化された剣と爪がぶつかりあっているだけだ。

 

一旦吸血鬼から離れ、距離をとる。

 

そのまま巨大な氷剣を生成、ぶつける。

が、片手で破壊される。

そんなの知るかと更に三個生成、霊力で切れ味を上昇させる。

対し、吸血鬼は金色の、趣味が悪そうな鎧を纏っていた。

 

「なにそれ?」

 

「人間には到底理解できない技術で作られた鎧だ」

 

教える気はないのね。

そう心の中で呟きながら、さっき作った剣を飛ばす。

なにやらぶつぶつ言ってるが、気にしない。

 

当たる直前、まるで最初からなかったかのように氷の剣が消えた。

ヤバくね?

 

「襲雷」

 

そう吸血鬼が呟いた瞬間、真上に強力な魔力を検知。

ヤバイと思った俺は、即座に離れる。

 

瞬間、轟音。

雷が落ちた音を数十倍程大きくしたような音が響く。

 

光が収まった時、俺が居た周辺は消滅していた。

え?ヤバくね。

 

いや消滅ってなんだよ、焦げるとかじゃないのかよ。

しかも天井も消滅してるよ、ヤバイよ。

これは勝てんな。

こいついつぞやの妖怪の王さんと同等……あるいはそれ以上だ。

 

さて、こんな時は……

 

「逃げるんだよお、スモーキー!」

 

 

■■■■

 

「眷属たちよ、追え!」

 

一目散に逃げたした氷霧に、一瞬拍子を抜かれたが、冷静に眷属を召喚する。

吸血鬼ーーウラドの影から這い出るように狼や蝙蝠、更にはゾンビ等が這い出る。

その数、数百。

この広大な紅魔館から逃げられたら、探すのは困難だ。

仮に見つけても、ただリアル鬼ごっこ(捕まったら死)が始まるだけだ。

故に、一対一ではなく、数で見つけ出し、殺す。

無駄に空間を弄り、広くしたのは間違いだったか。

心の中でウラドはぼやく。

これまでの侵入者は入ると同時に興奮するや奴や殺しにくる奴(興味本意できた転生者)等しかいなく、それらは逃げる前に殺したし、空気を読んで逃げたりはしなかった。

ようは、戦闘中に逃げるということはしないのだ。

氷霧がしたのは魔王との戦闘中に背を向けて逃げ出したのと同義、拍子を抜かれても仕方ない。

 

「さて…」

 

追跡は眷属に任せることにしたウラドは、失禁している者たちに目を向ける。

 

ガシャ、という金属音をたてながら一人の男が立ち上がる。

 

その男は材木屋 俊典。

勇者たちの中でも異質な存在(転生者)だ。

 

「……」

 

「立つのがやっと、といったところか」

 

立ちはしたが、なにもしない材木屋にウラドがそういい放つ。

そう、材木屋はたつのがやっとで、なにもできない。

あるいは能力を使えば(転生特典)一矢報いることもできたかも知れないが、彼の能力は自分も味方も全て巻き込む。

全員共倒れだ。

そうなっては本末転倒、意味がない。

なちか策はないかーー

そうか考えるが、ない。

 

「消えろ」

 

なにもできないと判断したウラドが、右手に魔力を溜める。

 

『やあやあやああ!それは待ってもらおうか!』

 

突如、虚空かり声が聞こえる。

 

目を開き驚く材木屋にたいし、ウラドはまるでわかっていたかのような反応を返す。

 

「この声…ミルザム、貴様か」

 

『正解正解大正解!」

 

異空から青い髪をした青年が現れる。

そう、毎度お馴染みミルザムだ。

 

「とっとと消えろ」

 

「はいはーい、わかってますよー」

 

端から見ればわからない会話をする二人。

ミルザムがここに来た理由は一つ、勇者達を助ける為だ。

今後のことを考えると戦力はいくらあっても足りない。

ここでウラドに殺させる訳にはいかないのだ。

そしてウラドも来た理由を察していた。

わざわざここまできて勇者を殺す理由はないし、そもそも今死ぬ瞬間だった。

ウラドを殺すのはミルザムには不可能、よってウラドは勇者たちの回収と読んだのだろ

なぜ回収するのかまではわからないが。

 

そこに、ウラドに念話が繋がる。

 

「……ちっ」

 

不機嫌そうにウラドが舌打ちしたとき、この紅魔館から勇者、ミルザム、氷霧(侵入者たち)はいなくなっていた。

 

ーー終わりの時は近い


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