東方氷災録   作:魔神王

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第十五話『宴会』

「…酒臭ぇ…」

 

第一声がそれかよ、と突っ込みが入りそうだが、言わずにはいられない。

酒臭い。

超臭い。

 

多種多様な神々が、飲めや騒げや色々してる。

ああ、俺の中で神の威厳が崩れていく。

てか神々よ、「死んでから蘇った人間が見たい」

とかなんとか言ってたらしいじゃないか。

なのに見向きもしないとは。

解せぬ。

 

「久しぶりですね、氷霧君」

 

どこか、懐かしい声が聞こえ、振り向くと。

 

ーー今は懐かしい、ツクヨミ様がいた。

 

「…お、お久しぶりです、ツクヨミ様」

 

「はい、お久しぶりですね」

 

やべぇ、恐い。

顔は笑ってるんだけど目が笑ってねぇ。

 

「一つ聞きたいのですが、なぜ、あの時ロケットに乗らなかったんですか?」

 

「いや、あの時はロケットに向かっても時間が足らないかなーと、思った次第でして、はい」

 

「いえ?あそこからなら全力で飛べば間に合ったと思うんですが?」

 

「いえ、あの、えーと」

 

ーーそれはそれは、見事な土下座をしたそうな。

 

 

 

 

「はぁ、マッタク、貴方という人は」

 

「いや、あの、すみませんでした」

 

あのあと色々問い詰められ、正直にロケットに乗らなかった理由を話したらあきれられたでござる。

 

…まぁ理由が「色々な所を見て回りたい」だったからかも知れんが。

そう、あのあと(※十二話)考え直し。

原作キャラと会いたいと思ったのだ。

…まぁ、よくよく考えると別に地上に残らなくてもよかった気がするが。

 

「氷霧さん、月に来ませんか?」

 

「は?」

 

ホワイ?

いや、意味はわかるのだがどう行けと?

んなもん無理やろ。

 

「私の能力を使えば月に一瞬で行けます

それに永琳やカズキさん達もあなたのこと、心配していましたよ」

 

「ーー」

 

…アイツら、俺のこと心配しているのかよ。

けど、俺は

 

「行きません」

 

「……何故ですか?

月は地上よりも良いところですよ

妖怪は存在しない、科学技術も上、娯楽もある

まさに『楽園』です」

 

「いえ、俺は…」

 

一瞬、言葉がつまる。

けど、言わなければならない。

 

「俺は、旅がしたいんです」

 

「…旅、ですか」

 

俺がこの世界に来る前から、思っていたことをはきだす。

 

「ええ、俺はこの世界を、見て回りたい

行く先々で人々と触れ合いたい

強敵との闘争

未知の冒険

俺はそんなーー」

 

「ーー心踊る冒険が、したいんです」

 

「ふふ、そうですか、なら仕方ないですね

ああ、永琳達には元気にやっていると、伝えときましょう」

 

「…ありがとうございます」

 

「…ああ、それと」

 

「?」

 

はて、なんかまだあっただろうか。

 

「『ゼロ・グレイル』という人と、会ったこと、ありますか?」

 

「いえ?誰ですかそれ」

 

「…そうですか、それでは」

 

ツクヨミ様は、今度こそ離れ、他の神と談笑しながら何処かに行った。

 

「なんだったんだ?」

 

ゼロ・グレイルねぇ……聞いたことがあったような無いような。

 

ーーそうして、ナンヤカンヤ色々あって宴会は終わったとさ。

……てか宴会なのにツクヨミ様と会話しかしてねぇ

神々よ、俺に興味を持ったと言う話は嘘だったのか?

まぁいいか。


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