うたわれるツナ   作:ロナード

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 執筆が予定より遅くなってしまいましたが第2話です。


第2話 楽しい楽しい宴会?

 ハクさんが仕事を終えて戻った後、ハクさんから自分の事は同じ人間同士という事で呼び捨てで構わないと言われたので、少し躊躇いが有るんだけどハクと呼び捨てで呼ばせてもらう事となった後、ハクとクオンさんの部屋に俺も泊めてもらう事となり、俺は二人と同じ部屋でくつろぎ始めた頃、一人の顎髭が特徴的なつり目で少しボサボサした髪の男性が部屋に訪れてきた。

 

「ちょっといいか、あんちゃん達?もし良ければ俺と仲間達と一緒に酒でも飲みながら話さないか?おっと、ソコの少年は初めて見る顔だな。俺の名前はウコン。ソコのあんちゃんと嬢ちゃんとは昨日会ったばかりだが、俺はこの二人がどうも気に入ったんでな、それで誘いに来たってところさ。それで少年、君の名前は?」

「ええと、俺の名は沢田綱吉です。ツナって呼んでください」

「そうか、あまり聞かない名前だが、良い名前だと思うぞ。よろしくなツナ!」

 

 ウコンさんは宴会でもやるみたいだからハク達を誘いに来たって感じだけど、それだけという感じでもないな。でもウコンさんは見る限りでは打ち解け易くて良いヒトだと思うので警戒はする必要は無いなと俺は思った。

 

「せっかくのお誘いを断るのも悪いし、ご一緒させてもらおうかな。いいよねハク?」

「酒をただ飲み出来るってなら勿論行くさ!」

「そっか、二人供来るって事でいいんだな。そんでツナ、お前さんもどうだ?」

「せっかくのお誘いなんですけど…俺は15歳で未成年だし、お酒は飲めないんですよね…」

「そうか、そりゃ残念だ。だが酒は飲めなくとも、話し相手ぐらいにはなってくれるよな?勿論、出てきた料理は好きなだけ食って構わないぜ。だから、お前さんも来ないか?」

「そう言うなら、俺もご一緒させていただきますね」

 

 ウコンさんからの誘いを受けた俺達三人はウコンさんに宴会を行っている部屋に案内され、部屋に入るとその中には沢山のヒト達がいて、この部屋にいるヒト達はウコンさんの仲間であるからなのか、打ち解け易い雰囲気を持っており、部外者である俺達三人を歓迎しながら出迎えてくれた。

 

「ソコの少年、ウコンさんが連れてきたって事は君も一緒に飲むのか?」

「いや、俺は未成年ですし…食事をしながらの会話なら出来るかな…」

「そうか。じゃあ、美味しそうか料理を盛り付けてやるから一緒に話でもしよう。君の名前は?」

「ええと、俺の事はツナって呼んでくれればいいです」

 

 ウコンさんの仲間達と一緒に酒が飲めない俺は食事をしながら話をし、ウコンさんの仲間達から話を聞く限りではウコンさんはクジュウリの国から物資を帝都であるヤマトに運ぶ仕事をしてるらしく、もう少ししたら物資をヤマトにまで運ぶ作業になるとの事だ。

 それにウコンさんは仲間達からは慕われている。まるで一つの家族かの様に。その様子を見ると、俺はこの光景が微笑ましく思う。元の世界に戻ったら、こんな風に皆で賑やかに騒ぎ立てるのも悪くないかもしれないな。

 ふっとハクとクオンさんの方を見ると、二人は白塗りをした顔の個性的なヒトと話をしているのが見えたので、俺は隣のヒトに白塗りの顔のヒトがどんなヒトなのか聞いた。

 

「あの白塗りの顔のヒトってどんなヒトなんですか?随分と個性的だから気になりまして…」

「ああ。あの方は殿試に合格して助学士になられたマロロさんだ」

「殿試?なんですか、それって?」

「殿試ってのは数年に一人しか合格出来ない程に難しい学校の試験の事だと言えばいいかな。いわば勉強して、試験に合格して助学士になられたお方って事だ」

「つまり、それって東大を首席で卒業する様な事だと考えればいいのかな…」

「東大?それが何かは知らないが、多分その考え方で正解だと思う。マロロさんはああ見えて凄いお方だという事さ」

 

 どうやらマロロさんは俺の世界で言うところの一流大学で立派な成績を残して卒業したヒトだと考えた方がいいのかもしれない。そんなヒトがウコンさんの仲間って事はウコンさんって凄いヒトなのではないかと思える。

 しばらくすると、ウコンさんがマロロさんを連れて俺の隣に座り込むと話し掛けてきた。

 

「ようツナ、お前さんに紹介しとくぜ。もしかしたら、俺の仲間から既に聞いてるかもしれないが紹介する。コイツは助学士のマロロってんだ。俺の友の一人でよく酒飲みに付き合ってもらう仲さ!」

「初めてでおじゃる。マロはマロロと申すでおじゃる。よろしくでおじゃる、ツナ殿」

「あっ、はい。よろしくお願いしますマロロさん。殿試っていう難しい試験に合格した凄いヒトだって聞いたんですけど…思ったより、親しみ易そうなヒトですね」

「マロが殿試に合格したからって、それを鼻に掛けたりしないでおじゃる。だから固くならずに気楽に話してくれると嬉しいでおじゃる」

 

 マロロさんって、思ったより親しみ易そうなヒトだな。難しい試験に合格した凄いヒトだから近寄りがたいヒトかと思ったけど、全く逆なヒトで安心した。優しそうな雰囲気も持っているし、白塗りの顔はよく見れば愛嬌が有る様にも思える。

 もしかすると、ウコンさんは俺にマロロさんと話をさせて打ち解けられる様に気遣いをしてくれたのかもしれない。

 マロロさんは俺の服を見るとこの場のヒト達とは違う事を不思議に思ったのか俺に尋ねてきた。

 

「それにしても、ツナ殿は随分と変わった服を着ているでおじゃるな。もしかして、マロ達が知らない遠い国から来たのでおじゃるか?」

「まあ、そういうところですね…俺の住んでた所ではこれが一般的な服装ですね」

「そうなのか。そんなに遠くの異国から来たのか。それにしては不自然だな。俺達が知らない程遠い国から来たってなら何故、少しこの村のヒト達には失礼だがこんな辺境の村にいるんだ?」

「ここに来たのはそもそも俺の意志じゃないんですよ…受験に落ちて落第生になったのは俺の落ち度とは言えど、無理矢理ワープマシーンに詰め込まれた後、事故を起こした結果、この村に転送されたんです…」

「ワープマシーンってのがよく分からないが、何となくお前さんが貧乏くじを引いてしまったって事はよくわかった…」

「受験に落ちたって事はツナ殿は学校に入ろうとしていたのでおじゃるか?」

「そうです…第一志望から第三志望の全てが不合格でした…その結果、俺の家庭教師が怒って何処か戦争を行っている国の戦場のど真ん中に飛ばされそうになったんですけど、事故のお陰でこの村に来れたので案の定ホッとしています…」

「受験に落ちただけで生徒を戦場に飛ばす教師って聞いた事が無いのでおじゃる…」

「本当にな…その教師は禍日神(ヌグィソムカミ)そのものじゃないのか…」

「本当でおじゃるな、ウコン殿…ツナ殿、マロ達で良ければ何時でも力になるでおじゃるよ。少なくともマロはその教師よりは優しく勉強を教える事が出来るかもしれぬでおじゃる」

「マロロの言う通りだ。何か相談したい事が有れば話を聞いてやるぜ。本当にお前さんが可哀想に見えてきたからな…」

 

 ウコンさんとマロロさんは俺の話を聞いて同情したのか、困った事が有れば力になると言ってくれた。

 

「少年、君はもう我々の一員だ。だから一人で悩みを抱えずに我々に相談出来る事が有るのなら相談しなさい」

「ツナお前って、本当にその年で苦労し過ぎだな…もう少し自分みたいに気楽に生きようとすればいいんじゃないか?」

「本当に困った事が有れば、(わたくし)にも相談するなりしてほしいかな。気楽に生きるのはいいんだけど、ハクみたいにはならないでほしいかな」

 

 ウコンさんとマロロさんとの会話を聞いていたのかウコンさんの仲間達とハクにクオンさんも俺の事を不遇に思ったのか、慰めの言葉を掛けてくるので俺は嬉しくも有るのだが同時に悲しくもなったのであった…それと心の中でこの場の皆さんに謝罪します。明るい雰囲気をぶち壊してしまい申し訳ありません…

 

 それから何とか空気が変わり再度、賑やかになった。ウコンさんを挟みながらもマロロさんと話をし続けてしばらくすると、ハクとクオンさんが俺の方に来ると俺に声を掛けてきた。

 

「おいツナ、せっかくのただ飯なんだ。もう少し食っておけよ。食える内に食っといた方が得した気分になるだろ?」

「ハク、さすがに少しは遠慮しようよ…俺はただで飯を食べるのも悪いから後でウコンさん達の仕事を手伝ったりしないとなって思っていますし、ハクも食った分と飲んだ分の恩ぐらいは返そうと思わないの?」

「いや…だって、驕りなんだし、遠慮してあまり飲まないのも悪いだろ…それにわざわざ驕ってくれた恩を返すのも疲れないか?」

「ツナの言っている事の方が正解かな。本当にツナはハクと大違い。ツナはちゃんと世話になった分は働く気なのに、ハクは世話になってるだけでいるみたいだし、ハクはツナを見習うべきかな!」

 

 クオンさんはハクに容赦しないな…まあ、本当の事だからフォロー出来ないのが事実なんだけどね…

 

 

 

 

 

 自分で言うのもアレなんだが、酷い言われようだな自分…自分はただツナに今の内に好きなだけ食べておけって言おうとしただけなのに、ツナは自分に食べた分と飲んだ分は働く様に言われ、クオンにはツナを見習えと言われる始末。自分の立場の順位は低いんだなとしみじみ感じたのだった…

 しばらくすると、ウコンが自分とクオンとツナに向けて話し出した。

 

「さてと、そろそろ本題に入りたいと思う。あんちゃん達をこの場に呼んだのはただ酒飲みに付き合わせる為じゃない。あんちゃん達に明日の俺達がこの村のヒト達から引き受けた依頼の手伝いをしてもらいたいんだ」

「えっ、手伝い…自分はてっきりただの酒飲みの誘いかと思っていたんだが…」

「ハク、さすがにただ酒飲みに付き合わせる為だけにこの場に俺達を誘うのもおかしいなって考えなかったんですか?」

「ほう。ツナ、お前さんは最初から俺が何か頼み事をしてくると考えていたのか?」

「はい、最初に俺達が泊まっていた部屋に来た時のウコンさんの目を見た時から何か頼みが有るんじゃないかと思っていました。正直言って、最初は警戒しましたけど、ウコンさんは良いヒトだと判断したので付き合う事にした訳です」

「そうか。ツナ、どうやらお前さんはその年で相当な修羅場をくぐってきた様だな。やっぱり俺の目に狂いは無かった。お前もこの場に誘って正解だった」

 

 なんかツナは最初からウコンが頼みが有るって分かってたっぽいな。クオンの顔を見ると、クオンも最初からウコンが頼みが有るって分かってた様でどうやら自分だけただで酒飲み出来るってはしゃいでいたらしい…

 それよりウコンはツナは相当な修羅場をくぐってきたと言うが、どうも自分からするとツナは15歳の人間の少年という認識しかないから今一パッとしないんだよな…待てよ、ウコンはツナが修羅場をくぐってきたと判断した上でこの場に呼んで正解だったと言ったので、もしかしてウコンの引き受けた依頼というのは、まさか…

 

「あんちゃん達に頼みが有る。明日、この村のヒト達や旅人を襲うギギリの討伐の手伝いをしてもらいたい」

 

 やっぱり、そういう仕事なのね…討伐を頼まれる程って事はそのギギリというのは相当ヤバい生き物なのだと嫌でも分かるので、自分ははっきり言って引き受けたくないのだが…ツナとクオンの二人は絶対にこの頼みを引き受けるだろうし、確実に自分もやる事になるので腹をくくるしかない…

 

「ウコンさん、ギギリって何ですか?」

「ん?ツナ、お前さんは知らないのか?ソコのあんちゃんも知らないみてえだし教えてやろう。ギギリってのは尻尾に毒針を持つ上に前脚が鋭利な鋏になっているちょっとデカイ蟲の事さ」

 

 ウコンの説明を聞く限り、ギギリは尻尾に毒針を持つ鋭利な鋏の前脚が特徴の蟲だというのだが…その蟲に自分は心当たりが有るのでウコンに一応聞く事にした。

 

「おいウコン、そのギギリって蟲はまるで自分達の背丈の数倍も有る巨大な図体を持ったヤツの事じゃないよな?」

「俺達の背丈の数倍は有るって…そんな巨大なギギリは俺は今までで見た事もないし、そもそも存在しない筈だぜ、あんちゃん」

「さすがにビビり過ぎかな、ハク…」

「いや、マジで見たんだよ!?自分は山の様に巨大な図体を持ったそのギギリって蟲の特徴と一致する怪物に!?」

「ハク殿…さすがにそこまで大きなギギリがいたら目立つ筈でおじゃる」

 

 ウコン達はどうも自分が大袈裟に言ってるのではないかと思っている様で自分の話を信じてくれてないみたいだ…結局自分の話は流された上に明日のギギリ討伐にクオンとツナは参加すると意志を示したので当然自分も行く事となった。

 それからしばらく酒を飲み続けた後に解散して、自分は部屋に戻った後に蒸し風呂に入るとツナもいたのだが、ツナはどうやら自分が先程話した事を他の者らと違ったみたいで信じてくれた様で話を聞きたいのか自分に聞いてきた。

 

「ハクは先程、俺達の背丈の数倍は有る巨大なギギリを見たって言ってたけど、それは本当なんだよね?」

「ああ、本当だ。あんな巨大な見た目を一度目にすれば嫌でも記憶に残る!自分はその巨大な蟲に襲われて死にそうになったんだが、その時は逃げ込んだ洞窟に住み着いていたタタリっていう別の怪物にその巨大な蟲は飲み込まれたから助かった様なモノだけど…明日、そんな巨大な蟲を討伐しに向かう事が本当に信じられねえって!?まさか、お前まで信じねえとか言わねえよな?」

「信じるよ。ハクの目を見れば分かる。ハクは嘘をついていないって。多分、ハクが見たその巨大な蟲はギギリの突然変異か全く違う生き物って可能性が考えられるし、少なくとも俺はハクの話を信じて注意しておく事にするよ」

 

 ツナは自分の話を信じてくれて注意しておく事にした様だが、自分はツナが本当に戦えるのか気になるのでツナに聞く事にした。

 

「それよりツナ、自分が言える話じゃないんだが…お前さんは本当に戦えるのか?どうも見た感じじゃウコンが言う様な修羅場をくぐってきた様には見えないんだが…」

「やっぱり、そう見えるよね。大丈夫だよ、俺はちゃんと戦えるよ。武器はちゃんと元の世界の物を持っているしね。もし、ハクが戦えないっていうのなら俺が守るから安心して」

「そうか…本当なら立場が逆な気がするんだが、お前が守ってくれるってなら何とかなりそうな気がしなくもない。それよりツナ、元の世界から武器を持っているって事はお前は元の世界でも戦っていたって事か?」

「そうだね…俺は元の世界で戦っていた。だけど、それは俺自身の為とかじゃなくて、俺が守りたい者達の為に戦ったんだ」

「それが本当ならお前は聖人君子だよ…はあっ、同じ人間としての器が負けた気がするよ…」

 

 本当に自分とツナは大違いだ。自分は楽に生きる事を優先するが、おそらくツナは自分の利益より他者を守る為に己の身を削ってまで守り抜こうとするだろう。今の話だけで、そう認識出来る程にツナの器は大きいのだと感じた。

 

 

 

 

 次の日、俺とハクはにクオンさんの三人はウコンさん達と一緒にギギリ討伐に向かう事になったのだが、俺はクオンさんに今の服装じゃ目立つから着替える事を勧められ、ウコンさんが俺にお古の和服をくれたので俺はハクに着方を教えられながらその服に着替えた。

 俺が着たのは橙色の袴で思ったより動き易く外に出てもそんなに寒さを感じない程に機能は良かった。それに袴には小物を収納出来るポケットも付いていたので、その中に元の世界から持っていた死ぬ気丸と手袋に京子ちゃんから貰ったお守りを収納した。

 下着も(ふんどし)に変える事になったのは予想外だったが、元の世界で間違った日本文化を愛するバジル君のお陰で褌の付け方は知っていたので袴を着るより時間は掛からなかった。

 その後、ギギリが潜みそうな地点に向かって山の中を移動をしていたのだが…ハクは途中でバテたらしく、マロロさんと一緒に荷車の後ろに座り込んでいるのだが…

 

「オェェ…気持ち悪いのでおじゃる…」

「おい、大丈夫か?背中を擦ってやるから早く回復してくれよ…何で自分がコイツの乗り物酔いの対処をしなきゃならん…」

 

 マロロさんが荷車の揺れで酔ったのか嘔吐しそうだったので、ハクが背中を擦ってあげている…その結果、マロロが今にも吐きそうな顔でハクに感謝し始めたので、ハクが俺に目線を合わせて助けを求められた気がするので俺はリボーンから渡されたバッグの中から袋を取り出してマロロに手渡した。

 

「マロロさん、吐きそうならこの袋の中に吐いてください」

「ありがとうでおじゃる…ツナ殿。吐いて気分が良くなったら直ぐにこの袋を返すでおじゃる…」

「いや、返さなくていいですから!?適当に後で処分してください…」

「そうでおじゃるか…本当にありが…オェェ」

「ハク…後は任せるよ」

「ちょっと待て!?結局コイツの面倒は自分が見るのか!?」

 

 俺はマロロさんに袋を渡した後、直ぐに荷車から距離を取った。ハクが文句を言ってる気がするが適当に聞き流した。

 しばらく歩き続けると、ウコンさん達の動きが止まったので俺も止まると、近くの木々から何か気配を感じ、その気配の正体がおそらくギギリなのだと思われる。

 

「どうやらこの辺りで間違いなさそうだな。よし、計画通りに進めるとするぞ。まずはギギリを誘き出す餌と罠を設置するぞ」

 

 ウコンさんが仲間達に指示を出すと、地面に腐肉を設置するとウコンさんの合図で近くの岩影に全員が気配を殺して潜み込んだ。

 しばらく待つと、俺の下半身ぐらいの大きさは有ると思える大きな蠍の様な蟲の群れが姿を現した。あれがギギリか…あそこまで大きな蟲を見るのはラル・ミルチの(ボックス)である雲ムカデ以来な気がするけど、やっぱりあの大きさの蟲は気持ち悪いな…

 ギギリの群れが仕掛けた腐肉を食べようと近付いた瞬間、ウコンさんはマロロさんに合図を送った。

 

「今だ、マロロ!お前の術でヤツらを一網打尽にしろ!」

「そう言われても…あんなに沢山ギギリがいるとは思っていなかったでおじゃる…」

 

 ウコンさんの作戦では一ヶ所にギギリの群れを集めてマロロさんが術を使って一網打尽にする作戦だったのだが、その肝心のマロロさんが緊張してるのか、単にビビっているのか知らないが動けずにいた。

 そんなマロロさんにハクは励ますかの様に声を掛けた。

 

「マロロ、お前が皆の頼りみたいだし、お前が動けずにいたら全てがパアッになるんだぞ。頼むから頑張ってくれ!」

「ハク殿…そうでおじゃるな、友に期待されてるからにはマロもその期待に応えないと行けないでおじゃるな!」

 

 何とか持ち直したマロロさんがしゃもじの様な物を手にしながら不思議な動きをしながら何か呪文の様なものを唱え始めた。おそらくあれがマロロさんの術の発動に必要な動作なのだろう。俺が知る術というのは骸の様な幻術の類いなのだが、この世界のヒトがどんな術を扱うのか俺は知らないので気になっていたところだ。

 マロロさんが唱え終えたと同時にギギリの群れがいる地点から巨大な炎の柱が吹き出すと、ギギリの群れが燃えていき、ギギリの群れのほとんどを一掃した。

 

「今のがマロロさんの術ですか?」

「ああ、そうだ。マロロが不思議な動きをしていた様に見えるだろうが、あれは術を発動する為の祈りの舞いみたいなものだと思えばいい。術を発動する為の時間は必要だが、上手く発動すれば今の様にギギリの群れを一網打尽に出来るって事さ」

 

 ウコンさんの説明を聞く限り、呼び動作が大きく隙が多い分、上手く発動すれば敵を一網打尽に出来るのがこの世界での術らしい。俺から見ればマロロさんの術は魔法の様なモノだ。

 マロロさんの術は強力な為、残ったギギリを倒すには威力が大きく味方を巻き込む可能性が有ると考えたのかウコンさんはマロロさんに退く様に伝えた。

 

「よし、マロロ。後は俺達に任せてお前は後ろに退け!」

「わかったでおじゃる。さすがにこれ以上ギギリの相手をするのは勘弁なのでおじゃる!?」

 

 マロロさんは言われて直ぐに後ろの方に退いていったので、マロロさんが小心者だというのは確かって事はよくわかった…マロロさんが術でギギリの群れのほとんどを一掃してくれたんだし、残ったギギリは俺達で何とかしないとな。

 

 

 

 こうして、ツナ達はギギリの群れを殲滅する為の戦いが始まる事になったのだった。




 次回は本格的にギギリ討伐に入ります。それと展開がゲームやアニメとは変わります。
 後、今回の反省点、クオンの出番が少ないですね…次回は彼女の出番を多く書けたらいいな…

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