new record   作:朱月望

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黄金の夜明け(一回戦if)
プロローグ


「よし! これで予選クリアだ!!」

少年は人形(ドール)に指示を出し、最後の敵性プログラム(エネミー)を撃破する。

「意外にしぶとかったけど、慣れたらなんてことはないね」

「戦いに集中しててよく見てなかったけど、よく出来てるじゃないか」

少年は自分のいる場所を見渡す。

そこは神聖で荘厳な空間が広がっていた。

「うえっ、なんだよ気持ち悪いな」

だがその空間の隅に何体もの人形――否、それは魂のない人の残骸が転がっていた。

「こいつら皆ここでやられたのか……ふん、クズの分際で聖杯戦争に参加するからこうなるんだよ」

少年はそう吐き捨てる。

「まあ、どうせ本当に死ぬわけじゃないからいいけどね。脱落者が多いほど僕の記録(レコード)は良くなるし」

少年はこの闘争に関するある噂を信じてはいなかった。

脱落者は現実世界で死ぬという暗黙のルールを

「おめでとう。傷つき、迷い、辿り着いた者よ。とりあえずはここがゴールだ」

どこからともなく男の声が聞こえる。

「聖杯戦争の本戦に進む前に君にはその資格と力を授けよう」

男がそう言うと少年の右手が焼けるような痛みに襲われる。

「いった!? なんだよいきなり!?」

思わず右手を見るとそこには、三方向に広がる鏃のような紋様が浮かび上がっていた。

「なにこれ? タトゥー?」

「それは令呪。聖杯戦争の参加者である資格であり、サーヴァントの力を強め、あるいは束縛する、3つの絶対命令権。まあ使い捨ての強化装置とでも思えばいい」

「ふぅん、弾数の限られたボムってことか」

「ただし、先程も言ったがそれは聖杯戦争本戦の参加証でもある。したがって令呪を全て失えば、マスターは死ぬ。注意することだ」

「なんだよそれ!? 3つあっても実質2つじゃないか。それになんだよ!? 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬって、僕がそんなのでビビるとでも思ってんの」

「信じないのならばそれもよかろう。では、最後に君の盾となり剣となる英霊を召喚してもらう」

「やっとか、チュートリアル長すぎるよ。で、どうやるの?」

「地上の聖杯戦争には正式な召喚手順があったらしいのだが、ここではただ念ずるだけでよい」

「ふぅん、じゃあ僕に相応しい最強のサーヴァントを喚ぶとするか」

少年は令呪のある右手を構え念ずる。

「(僕の願いを叶える“力”ある英雄よ……僕の元に来い!!)」

令呪が(あか)く 輝き、その輝きが頂点に達したとき、周りのステンドグラスが割れて、この空間の中央に光が差す。

「よう。あんたが新しい大将(マスター)か?」

「え……ああ、そうだ」

 光の中から現れた筋骨隆々の大男に少年はたじろぐ。

「んじゃあまぁ、よろしく頼むぜ。オレの名は金時。気軽にゴールデンと呼んでくれ」

 大男――金時はにかっと笑う。

「で、大将。あんたの名前は?」

「ぼ、僕は……」

 金髪にサングラスで、いかにもな姿をしているにも関わらず、子供のように笑う金時に面を食らい反応に遅れる。

慎二(しんじ)間桐(まとう)慎二」

「オーケー、シンジ。ゴールデンに行こうぜ」

 斯くして少年――間桐慎二はこの瞬間(とき) 、ゴールデンに出会った。

「は?」

 

 

 

 つづく


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