「この匂いは?」
門司とはぐれたアルテラが食堂から漂う匂いに釣られてやってくる。
「ん? あなたも食べる? ならもう少し大きいお鍋で煮込むけど」
厨房にいた赤毛の女が話しかける。
「いや、私は……(グーっ)」
アルテラは赤毛の女の誘いを断ろうとしたら、不意に腹の虫が鳴る。
「OK、いっぱい作るからちょっと待っててね」
「…………」
アルテラは厨房に近い席に座る。
「ここが、未亡人食堂ですか」
しばらくして、騎士風の男と老人が食堂に入ってくる。
「すみません。そこの燃えるような赤毛の美しいレディ、少しお話をしませんか」
「えっと、もしかして私のことかな? 私には素敵な旦那さんがいるから、ナンパなら間に合ってるよ」
「むしろその方が……いや、今はそんなことより……」
コホンと一息つき、騎士が続ける。
「この近くで、身長154cm、体重42kg、金髪の髪を後ろで結い上げ、アホ毛がチャームポイントな、青と銀の甲冑を着た見目麗しい騎士王を見ませんでしたか?」
「え、えーっと」
赤毛の女はドン引きしているが、騎士は気付かない。
「見た」
答えたのはアルテラだった。
「本当ですか!? オリエンタルなレディ」
「ああ、アホ毛の剣士なら掲示板の前にいた……」
「Arrrrrrthurrrrrrrrr!」
騎士は黒い甲冑に姿を変え、走り去る。
「……が、そういえば青い甲冑ではなく、赤いドレスだったな」
「赤いドレスのアホ毛?
……まさかね」
赤毛の女は眉根を寄せたが、勘違いだと思って調理を続ける。
「それではセイバーが帰ってくるまで、わしも待たせてもらおう」
老人がアルテラの向かいの席に腰掛ける。
「良かったら、あなたも私のブリタニア料理食べる?」
「ふむ。懐かしい香りがすると思えば、わしの郷土料理と同じものかな。そうだな、ご馳走になろう」
「よし! お姉さん頑張っちゃうよ!」
赤毛の女は袖を捲り、気合を入れてから厨房に戻る。
「たまには、いいものだな」
アルテラは誰にも聞こえない声で呟く。
それは自分でも気が付かないような本心からの声であった。
「はーっはは! そうか、聖地はローマにもあったのか! これは盲点」
「なははは。こんな極上サーモンをくれるとは赤いのと違って、ローマは太っ腹だな!」
「そう! ガトーもキャットもローマである!」
何があったか分からないが、ロムルスとキャット、門司の三人は激闘の末、和解した。
キャットは2mを超えるサーモンを持っていて満足そうだ。そのサーモンはどこから出てきたのか不明だが……
「それにしても、腹が減ったな」
「む? ではこのサーモンでガトーとローマに料理を振る舞おう! なに、友情の印だ」
「ふむ、ではその
そして、三人も食堂に向かう。
つづく