「あはははは……いたっ!」
「大丈夫かい、お嬢さん?」
ダンが教会で礼拝を済ませ、外に出ると白いゴスロリ衣装の少女とぶつかった。
「うん。だいじょうぶ」
「それは良かった。しかし、前を向いて走らないと危ないから気を付けるように」
「ごめんなさい」
少女は礼儀正しく頭を下げる。
「何をしていたのかな」
「ワカメのお兄ちゃんとおにごっこしてたの」
ダンにはワカメというのがどういう意味で言ったのか理由は分からなかったが、少女に訊ねる。
「その『お兄ちゃん』に遊んでもらっているのかい?」
「ううん、ちがうよ。お兄ちゃんと遊んであげてるの」
「ほう……それは、どういう意味かな?」
ダンは少女の明確な否定に興味を示す。
「えっとね……ワカメのお兄ちゃん、なんかつまらなそうな顔してたの。
きっと、ママとはぐれたのね。あたしもそんな時があったから、よく分かるわ。
だから、さみしくないように遊んであげてるのよ」
「君は見た目以上にしっかりしている」
少女は子供らしい言葉使いとは裏腹に、芯のある発言をする。
ダンはそれに関心する。
「ふふふ、あたしだってお姉さんだもの……あ、お兄ちゃんが来た!」
少女の背後から高校生くらいの青年が走って来るのが見える。
「またね、おじいさん。おはなしたのしかったわ」
丁寧にお辞儀をすると、少女は転移してその場を去った。
「はぁはぁはぁ……おい、ジイさん。こっちに白いフワフワしたガキ来なかった?」
息を切らせながら、青年がダンに話しかける。
「先程まで居たが、君の姿を見て逃げてしまったよ」
「なんだよ! ちゃんと捕まえとけよな。ったく使えないなぁ」
そう言い捨てて少年は立ち去る。
「少なくとも、精神年齢は彼女の方が上か……」
「どうかしましたか、ダン?」
ランスロットが教会から現れる。
「なんでもない。
……それよりランスロット、教会に居た姉妹を口説いていたのか?」
「口説く、だなんて。私は他愛のない世間話をしていただけですよ」
「ならいい、彼女たちは異なるベクトルで危険だ。一方は常識を覆す
「そう、ですね」
ランスロットは苦々しい顔をする。まるで、先程地獄を見たかのように――
「で、次はどこに行こうか」
「それなら、食堂に行きましょう。今、そこで未亡人が料理を振る舞っているそうです」
「……君の王を探すのではなかったか?」
「ははっ、我が王はいつもお腹を空かしていましたから、食堂にいる可能性が高いと思っただけですよ」
先程の台詞がまるで冗談だと言わんばかりに、爽やかに言う。
「……そういうことにしておこう」
そして、二人は天国と地獄な食堂へ向かう。
つづく