「たまにはご主人の料理も食べてみたいな」
「なんだ、唐突に」
ユリウスとキャットが購買前で昼食の買い物をしている途中、キャットが思いついたように言う。
「そもそも、オレは料理は作らない。あるとするなら……カレーくらいだ」
「ほう。それはますます気になる。ビバ男飯というヤツだな!」
キャットはユリウスの料理の腕前を知らずに無邪気に求める。
「しかし、材料がない」
ユリウスの頭の中にあるカレーの
「それはキャットに任せよ! 最高の材料を揃えてみせる!」
そう言って、キャットは飛び出した。
購買以外に食材があるのか分からないが、キャットは脱兎の如く走り去る。
「ふむ……」
ユリウスは現在持っている食材を確認する。
これは購買で買ったものでなく、地上から持ってきたリソースの一部だ。
軍用のレーション、コショウ、オリーブオイル……もはや食材と呼べるものではないのだが――
「まあ、これだけあればカレーくらい作れるな」
何故か自身たっぷりにユリウスは言う。
「そこの一般生徒、キッチンを借りるぞ」
SE.RA.PHの
「
そして、厨房でユリウスは鍋を無視して、ドラム缶いっぱいに胡椒を入れて水とオリーブオイルでレーションを混ぜて煮込みはじめた。
「あの……それ大丈夫なの?」
ドラム缶から立ち込める異臭に気付いてか、赤髪の女性が心配そうに話しかけてきた。
「大丈夫だ、オレのカレーは絶品だからな」
そして、着々と黒いコールタールのような何かが生成される。
「う~ん、アレ止めなくて本当に大丈夫かな?」
カレー(?)を作っている黒い男は大丈夫と言っていたが、ブーディカにはとてもそうには見えなかった。
「本場のカレーはスパイスから作るって聞いたことあるけど、アレで美味しいものが出来るとは思えないし……そもそもアレはカレーなの?」
ブーディカは黙々とドラム缶で何かを煮詰める黒い男を見ながら思案する。
「ありすも探さないといけないし……」
「そうだ!」
ブーディカは何かを思いつく。
「私も料理を作ったら、あの人が失敗しても悲しい思いをすることはないんじゃないかな。
ありすもお腹を空かして、ここに来るかもしれないし……名案ね!」
ブーディカも厨房へ移動する。
「ねえ、
「……構わない」
ユリウスはいつものような仏頂面で答える。
そして、ブーディカはユリウスの隣で料理を始める。
我が子の帰りを待つ母のように。
つづく