new record   作:朱月望

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決戦まであと―――3日

 双子は王宮にいる兵を倒し、最後には偽りの王を討ち取った。

「よくぞ我が弟を倒し、儂を救ってくれた。我が孫たちよ」

 先王は憔悴しきった声で感謝を伝える。

「儂も、もう年だ。復権したとしてもよい治世は行えない。だから、どうか儂に代わってこの国を治めてはくれぬか?」

 双子は王族の血を持ち、さらには軍神の血も流れているため、その資格は十分にある。

「いえ、私は―――私たちは王位を継ぐつもりはありません」

 双子の兄が返答する。

「なぜじゃ? たしかに今は国が疲弊しておるが、そなたたちなら直ぐに持ち直すじゃろ」

「魅力がないから断るのではありません」

 双子の弟が言う。

「私たちは夢を見たのです」

「永遠に続く繁栄の都を」

「これはきっと神からの啓示」

「私たちはそれを成さねばなりません」

「ですから、貴方が王位に留まって下さい」

 双子は代わる代わる話す。

「分かった。そなたたちは自分の道を進むがよい」

「「ありがとうございます」」

 双子は祖父に背を向け、宮殿を出る。

 二人の後には双子を王と認めた貴族や、彼らの武勇を聞いた兵士達が従っていった。

 そして、双子とその家臣たちは新たな地を目指して歩く。

 歴史に残る国家を造り出すために

 

 

 

 ピピピと鳴る電子音で目を覚ます。

「今度はなんだ?」

 慎二が確認すると

第二暗号鍵(セカンダリトリガー)を生成、第二層にて取得させたし』と書かれていた。

「おい、ランサー!」

「どうかしたか?」

「よし、今日はいるな……暗号鍵(トリガー)を取りにいくから、ついてこい!」

「分かった」

 二人はアリーナに向かう。

 

「はは、今回も楽勝だったな」

 慎二たちは二つ目の暗号鍵(トリガー)を取得し、帰っていた。

 新しいアリーナは敵性プログラム(エネミー)の強さも上がっていたのだが、ロムルスの強さの前では前回のアリーナと変わりはしなかった。

「お? あいつらも来てたのか」

 目の前では白野とセイバーが敵性プログラム(エネミー)と戦っていた。

「どうする? 今度こそ仕掛けるか?」

「…………」

 戦闘が終わり、白野とセイバーがこちらにやってくる。

「おい、きしな……むぐ」

 慎二が白野に声をかけようとしたら、ロムルスが口を塞ぎ、道の端に寄った。

「あれ? 今、慎二の声がしたような……」

 白野は慎二の横を通るが気づいていない。

「(皇帝特権?)」

 慎二の思った通り、ロムルスの皇帝特権により二人の姿は消えていた。

「奏者よ、休んでいる暇はない。次の敵を狩るぞ」

「なあセイバー、少し……いや、かなりハードワークじゃないかな」

「今のままでは神祖さまに追いつけない。だから奏者よ、悪く思うが付き合ってほしい」

「分かった。無理はしないでね」

 二人は慎二たちに気づかず立ち去る。

「ぷはぁ……どういうつもりだよ」

 口を覆う手から解放された慎二はロムルスに訊ねる。

「セイバーの目にはまだ皇帝としての光が戻っていなかった。だからまだ会うことはできん」

「はぁ、意味わかんないよ! ったく、もういい帰るぞ」

「待て!」

「今度はなに?」

「このアリーナにいる敵をもう少し強くすることはできぬか?」

「まぁ、ちょっとくらいならできるけど、どうし……ははぁ、そうかお前も頭が回るようになったんだな」

「ん?」

「隠さなくていいよ。今、あいつらは無茶して敵と戦ってる。そんな時に強い敵が出てきたら、その敵に負けちゃうもんな。

 そして、僕たちは手を汚さずに勝利する。いいね気に入ったよ」

 慎二はアリーナにハッキングしてエネミーのレベルを上げる。

「よし! これでいい。じゃあ、帰ろうぜ」

「……ああ」

 ロムルスはエネミーと戦うセイバーを見て、頷いた。

 

 

 つづく


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