シンジ&ロムルス
ダン&ランスロット
ありす&ブーディカ
ガトー&アルテラ
ユリウス&キャット
ある日の休日 その1
それはあったかもしれない休日――
一回戦が始まる前の、最後の参加者が
交わることのなかった五人のマスターとサーヴァント達が織り成す
「たく、ランサーやつどこ行ったんだよ」
慎二がマイルームで休んでいると、慎二のサーヴァントであるロムルスの姿が消えていた。
まだ、聖杯戦争は始まっていないが、サーヴァントの情報が広まるのは避けなければならない。
あのサーヴァントは見張っていないと――いや、見張っていても無駄だと思うが、真名をあっさりと告げるだろう。
「なんで僕の思い通りにならないんだよ! くそ!!」
慎二はイラつきを発散させるために、廊下にあったゴミ箱を蹴飛ばす。
「おもしろいかみのお兄ちゃん! ちらかしたら、なおさないとダメなんだよ」
廊下に散らばったゴミを無視して歩き過ぎようとすると、不意に後ろから声をかけられた。
「誰が面白い髪だよ!」
慎二はあまりのことに相手の顔も見ずに怒鳴る。
自分ではイカした髪だと思っているのだが、何故か周りの評判がよくない。その所為か、ある種のコンプレックスのように慎二は髪に反応してしまう。
「てかお前誰だよ?」
後ろを振り向くと、声をかけた人物――白を基調としたゴシックロリータなファッションをした幼女が立っていた。
「あたしの名前は『ありす』よ」
白いゴスロリの幼女――ありすはスカートの端を摘み、膝を曲げてお辞儀をする。
「それより、お兄ちゃん。早くろうかをきれいにして!」
「なんだよ、五月蠅いな……」
文句を言いつつ、慎二はゴミ箱を元に戻し、廊下を綺麗にする。
「これでいいだろ!」
そう言って、慎二はありすの元を去ろうとする。
「まって!」
ありすはそんな慎二を呼び止める。
「ん? なんだよ、まだ用があんの?」
「うん。お兄ちゃん、いっしょにおにごっこしよう!」
「はぁ? なんで僕がそんな子供の遊びに付き合わなくちゃいけないわけ? ガキは一人で遊んでろよ」
ただでさえ子ども扱いが嫌いな慎二である。この誘いは大いに腹が立ち、ありす相手にも乱暴に言い放つ。
「お兄ちゃん、いじわる。そんなんだから、へんなあたまになるんだよ」
「五月蠅い! 遺伝なんだからしょうがないだろ! って、おい!?」
ありすは慎二に駆け寄ると、手に持っていた電子端末をくすねる。
それがないと今後の聖杯戦争に支障をきたす。慎二は慌てて取り返そうとするが――
「あたしをつかまえたら、返してあげる」
言うが早いか、ありすは背を向けて慎二から逃げる。
「僕のことバカにしやがって。待てよ、直ぐに捕まえてやる!」
ある日の休日、子供二人の鬼ごっこが始まった。
つづく