「一つ訊きたいことがある」
エッツェルは唐突に言う。
「この世界には数多の文明がある。国が、土地が、人種が、言語が、信仰が、人口が、発展が、教育が、差別が、些細な違いで人は数多くの異なるモノを作り上げた。
果たしてそれら全てに意味はあるのだろうか? 価値はあるのだろうか?」
エッツェルは滔々と語りかける。
「私は
触れるものは全て壊れ、何もこの手には残らなかった。、
ただただ壊し続けた。死ぬまで……いや、死んでからも」
エッツェルは目を伏せる。
「私はその行為に何も疑問を抱かなかった。しかし……」
「今は違うのだな」
エッツェルの言葉を遮り、門司が言う。
「小生も昔、同じ疑問に行き着いた。
様々な宗教を学び、教えを極めた時に、ふと気付いた。
それぞれの教えに矛盾が在り、
矛盾を抱えた教えでは世界を変える事は叶いはしないのではないのかと」
今まで悩みなど見せていなかった門司が珍しくシリアスに語る。
「そう絶望していた小生の前に現れたのが……真の神だったのだ!
聖母マリアを彷彿とさせる美しさ! 不動明王を匂わせる威圧感! あぁ、タージ・マハル!
刹那に小生は悟った! 我が使命を、我が運命を! ユーアーマイ、マイ、マイデスティニー!
もはや小生に信ずる教などあらず! 小生が信ずるはただ我が神のみなり!!」
最初の方は比較的まともな門司であったが、神を語るといつものテンションに戻る。
「だが、そこに行き着いた今でも、小生が学んだ矛盾だらけの教えはムダではなかった。
全てを見、様々な考えを知ったからこそ、ここに到ったのだから」
「…………」
「故にエッツェル、貴様も様々な
見た後で悪だと感じたら、破壊したらいい。
「壊してしまってもいいのか?」
「良い! 小生とて破戒僧である。今まで気に入らぬものはどんな戒律も破ってきた。
壊してはならぬと縛り付けることなど誰にも出来ぬ。
エッツェルも気に入らぬものは好きなだけ壊すといい――」
ただ、と門司は続ける。
「
門司は様々な
「こうしていつまでも遺り続ける。
誰であろうと壊すことはできない」
「壊れない?」
「ああ、だからもっと世界を見ろ―――
何者にも破壊できない、広大な世界をな」
「ふむ。これが奴らの切り札か。
ふはははは! 我が神の前では、この程度なんということはありませんな!」
門司とアルテラは言峰から渡されたネロの宝具を見ていた。
「…………」
アルテラは門司の言うことを耳に入れず、ひたすら黄金劇場に見入っていた。
それは半神半人の
「これ程の
アルテラは決意を胸に翌日の決戦を見つめる。
つづく