new record   作:朱月望

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夢の果て(四回戦)
プロローグ


「破ァッ!!」

 鋼のような体躯を持つ巨漢が敵性プログラム(エネミー)を拳で殴り撃破する。

「むう。これで終わりか……些かモノ足りんが良しとしよう!

 いや正直、かなーり限界が近かったので助かった!」

 大男は呵々と笑う。

「おめでとう。傷つき、迷い、辿り着いた者よ。とりあえずはここがゴールだ」

 どこからともなく男の声が聞こえる。

何奴(なにやつ)ッ!! (アッラー)か!? 悪魔(メフィストフェレス)か!?

 ええい、姿を見せよ!!」

「私はただの案内役にすぎない。かつてこの戦いに関与した、とある人物の人となりを元にした定型文というヤツだ。

 それにしても、 人形(ドール) も使わずにここまで来るとは、恐るべき愚者(バカ)だ」

「ハーハッハッハ! あまり褒めるな。

 この程度のこと今までの修行に比べたら無・問・題!!

 人形(ひとがた)など使わず突き進めという天啓をニルヴァーナしたまでよ!!」

「なるほど、話にならないことは分かった。

 では、聖杯戦争の本戦に進む前に君にはその資格と力を授けよう」

 男の声は事務的に進める。

「む? この輝きは!?」

 大男の右手に御札に書かれているような字体の、荒々しい紋様が浮かび上がる。

「これは、まさに聖痕!!

 ガイアが小生にもっと輝けと福音している!」

「それは令呪。聖杯戦争の参加者である資格であり、サーヴァントの力を強め、あるいは束縛する、3つの絶対命令権。

 まあ使い捨ての強化装置とでも思えばいい」

「しかし、これはなんと読むのか……阿比留草文字のような、出雲石窟文字のような……

 否!! 読めずともよいのだ。考えるな、感じろ(I feel Do not think)!!」

 大男は話を聞かず、自分の世界に入る。

「ただし、先程も言ったがそれは聖杯戦争本戦の参加証でもある。したがって令呪を全て失えば、マスターは死ぬ。注意することだ」

 声の男も気にせず、役割(ロール)をこなす。

「最後に君の盾となり剣となる英霊を召喚してもらう」

「おお、遂に小生の夢を叶える使徒を呼び寄せるのだな」

「では、念じるがいい。自身の理想を遂げるに足る英雄の姿を」

「小生の願いはただ一つ!!

 我が神を、三千世界にて唯一の真の神であると知らしめること(なり)!」

 令呪が 紅く輝き、その輝きが頂点に達したとき、周りのステンドグラスが割れて、この空間の中央に光が差す。

「(そして、できることならもう一度、あの神々しい姿を……)」

 大男はヒマラヤで出会った女を思い浮かべる。

 出来れば(ここ)へその女を連れていこうと考えていたのだが、接触を果たす前に意識を無くし、気が付いたらヒマラヤの(ふもと)にいた。

 顔ははっきりと見た訳ではないのだが、門司の中には明確な確信があった。

 あれが自身の求め続けた神であると――

「(最上の存在であること疑わせない凛とした佇まい、この世を照らすような輝く髪……)

 令呪が 紅く輝き、その輝きが頂点に達したとき、周りのステンドグラスが割れて光が差す。

「(そして地母神の如き巨にゅ…)、ぐぎゃあ!?」

 光の中から現れた存在が大男の上に落ちる。

「問おう……貴様が私を喚んだマスターか?」

 褐色の肌に白い礼装を纏う銀髪の女が訊ねる―――大男の踏みつけながら。

「あ、あなたは……」

 大男は顔を上げ、銀髪の女の空虚な瞳に吸い込まれるように見つめる。

「あなた様は我が神!!

 これは奇跡か! 神の復活! まさに復活祭(イースター)

 これはモンジ奮闘記第三章第じゅ、ふがっ!?」

 暴走する大男に女は三色の剣で頭を叩く。

「答えろ、二度はない。貴様が私のマスターか」

「はひ。臥藤 門司(がとう もんじ)、我が神の忠実なる(しもべ)です」

「そうか。我が名はアルテラ……フンヌの裔たる軍神の戦士だ」

 

 斯くして神を求める求道者は文明の破壊者と出会った

 

 

 

 つづく





ここに登場するアルテラはEXTELLAのように遊星の尖兵ではなく、FGO由来のアッティラとして大陸を蹂躙したフン族の大王にて英雄です。
アルテラ自身、巨神と記憶が切り離されており、巨神等ののEXTELLA由来の設定は出しません。

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