「なんと!? ローマと敵対するですと!!?」
デュトットリジズ族長は
「ええ、これ以上ヤツらの好き勝手にさせる訳にはいきませんから」
「勝算はあるのですか? あらゆる土地を侵略し、各国に覇権を唱えるローマの歴戦の兵隊を前に、我ら辺境の民族が太刀打ち出来ると?」
トリノヴァンテス族長が訊ねる。
「勝算などありません」
「なに?」
トリノヴァンテス族長が不快そうに眉を顰める。
「だが、勝算がないなどという言い訳で泣き寝入りする理由もない!」
「デュトットリジズ族長、貴方の娘はローマに連れ去らわれて辱めを受けて、挙句の果てに殺された」
「うっ!?」
「トリノヴァンテス族長、貴方の先代族長はローマに逆らったとして民の目前で惨たらしく処刑され、晒し者になった」
「…………」
「ここにいる他の者も、ローマから大事なモノを奪われた筈だ」
「「「「…………」」」」
この場に集まった族長たちは皆、辛い記憶を思い出して目を伏せる。
「このままだといずれローマに全てを奪われる。そうなる前に戦おう!」
「
そして、憎きローマに復讐するために――
「お兄ちゃん、見つけた!」
廊下でありすが白野に声をかける。
「ありすちゃん、どうかしたの?」」
「うん。ママから、あたらしい
「そうか……セイバーに言っておくよ」
「それでね、えっと……」
「ん?」
「お兄ちゃん、あたしとともだちになってくれる?」
「いいけど、何かあったの?」
「さいきんママがいっしょに遊んでくれなくて、お兄ちゃんたちも『てき』だから近づくなって言われてるの」
「…………」
「でも、お兄ちゃんとは『てき』じゃなくて『ともだち』がいいなって思ったの」
「俺はありすの友達だよ」
「じゃあ、またありすと遊んでくれる?」
「うん。遊ぼう」
「やったー。やくそくだよ、お兄ちゃん!」
ありすは笑って、ブーディカのいるアリーナへ向かう。
「やっと来たか。待ちくたびれたよ」
二つ目のアリーナでネロとブーディカが向かい合う。
「さあ、始めようか!」
ブーディカは剣を抜き、ネロに迫る。
「話すこともままならぬか」
ネロも剣を構え、それに応じる。
「話にならなかったのは
「あの時は、ああするしか……」
「
ブーディカの重い斬撃がネロを押し出す。
「お前たちの罪を復讐の炎で焼き払う」
ブーディカは剣を高く上げる。
「『
ブーディカが叫ぶと、彼女の周囲に炎を纏った八つの車輪が出現する。
「行けーーーッ!」
八つの車輪のうち、四つの車輪はブーディカの周りを旋回し、残りの車輪はネロに向かって回転する。
「仕方あるまい」
初めて見る彼女の宝具に戸惑うものの、ネロは回避を選択する。
一つ、二つと紙一重に車輪を躱す。だが、三つ目の車輪は前の車輪の真後ろに位置し、ネロの死角となっていた。
「ッ!?」
気付いた時には既に遅く、回避は不可能。
咄嗟に剣でこれを防ぐ。
衝撃で後ろに吹き飛ばされるが、態勢を崩すことなく車輪を弾いた。
「触れたな」
ブーディカがそう呟くとネロは異変に気付く。
「これは!?」
ネロの剣――
この剣はネロの意思で炎を纏うことが出来るのだが、それとは違う。
光を呑むような漆黒の炎が原初の火を侵食していたのだ。
「ッ……このッ!」
漆黒の炎がネロの手に移ろうとしたため、思わず剣を手放す。
「それは恩讐の炎。私が憎んだモノを燃やし尽くす……我が憎悪の火が消えない限り、その炎は消えはしない」
床に落ちた剣は漆黒の炎に焼かれ、消滅する。
「もう身を守る手段はなくなった」
ブーディカは剣をネロに向ける。
「死ねーーーッ!」
残りの四つの車輪がネロに進行する。
「やめてーーーッ!」
ありすはブーディカに飛び掛かる。
突然のことにブーディカは宝具の操作を誤り、ネロに向かっていた恩讐の車輪が逸れる。
「もうやめようよ」
ありすは悲痛な顔でブーディカに抱き着く。
「どう……して……」
そしてSE.RA.PHからの介入で戦闘が終了する。
「どうして私の邪魔をするのッ!」
「うっく…ひっく…ママこわいよ」
「ッ!……帰るよ、ありす」
ブーディカはありすの手を取り、引き摺るようにしてアリーナを後にする。
つづく
※オリジナル宝具詳細
『
ランク:A
種別:対軍宝具
レンジ:2~50
最大補足:100
本来はブリタニア守護を象徴した宝具である『
反乱によりローマの支配する都市を焼き払った逸話から、ローマに縁のある人物・物体に対して威力が上昇する。
また、ローマに縁のあるものが車輪に触れると、憎悪の分だけ持続する漆黒の炎を燃え移らせる。