プロローグ
「あーあ、こわれちゃった」
白いゴスロリ衣装の人形のような幼女が
「お兄ちゃんどこ行っちゃったのかな……」
何か目的があってこの場所にいるのではない。幼女は予選会場であった校舎から、ある少年を追い、気が付いたらこの場所までやってきた。
「おめでとう。傷つき、迷い、辿り着いた者よ。とりあえずはここがゴールだ」
どこからともなく男の声が聞こえる。
「あなたはだあれ?」
「私のことはどうでもいい。君の……
む? これは変わったパーソナルデータだな。ふむ、これは……いや、参加させるのも面白い」
「?」
「ふふ、こちらの話だ気にするな。ではお聖杯戦争の本戦に進む前に君にはその資格と力を授けよう」
男がそう言うと幼女の右手が紅く輝く。
「きゃっ!?」
右手には王冠の載ったハートのような紋様が浮かび上がっていた。
「それは令呪。聖杯戦争の参加者である資格であり、サーヴァントの力を強め、あるいは束縛する、3つの絶対命令権。まあ使い捨ての強化装置とでも思えばいい。
ただし、先程も言ったがそれは聖杯戦争本戦の参加証でもある。したがって令呪を全て失えば、マスターは死ぬ。注意することだ」
「さーばんと?」
「これから君に召喚してもらう英霊のことだ」
「よくわかんない」
「まあ、理屈はいい。君はただ自身の望む人物を思い浮かべればいい」
「あたしののぞみ……」
幼女は目を閉じ、考える。
「あたしといっしょに遊んでくれる友達をちょうだい」
ある少年を思い浮かべ、声に出す。
すると、令呪が 紅く輝く。その輝きが頂点に達したとき、周りのステンドグラスが割れて、この空間の中央に光が差す。
「(そういえば、パパとママはどこに行っちゃったのかな……会いたいな)」
不意にそんなことを考えながら、光が収まるのを待つ。
「サーヴァント、ライダー。女神アンドラスタの名に誓って貴女を勝利に……って、あれ?」
光の中から、凛として現れた女性は頓狂な声を上げる。
「あははは、ごめんね。マスターが思っていたより小さかったから、お姉さんびっくりしっちゃった」
女性は照れるように笑う。
「
「あたしはありす。マ……お姉さん、あたしとずっと遊んでくれる?」
「ん? もちろん! 好きなだけ遊ぼ」
「ほんと! ありがと、お姉さん!」
こうして、不正データとして消去されるはずだったサイバーゴーストと勝利を誓う女王は出会った。
つづく