「あれ? 大将じゃねぇか。どうしたんだ、こんなところで?」
拠点にしている宿屋に戻ると、頼光の大将が待っていた。
「私の方は片が付いたので、あなたを手伝いにね。
なかなか苦戦しているようだから」
「いらねぇよ。あんな女、一人でなんとかなるぜ」
「女?」
大将の目が鋭くなる。
「酒吞童子は女だったのですね」
「お、おう」
思わず気圧される。
「はぁ、遊びは終わりです。これを使いなさい」
大将は
「これは?」
「『
「なっ、それはないだろ大将!」
「鬼あいてに卑怯もなにもありません。いいからやりなさい。失敗は赦しません」
「ちっ、分かった、よ」
あの目をした頼光に逆らうことはできない。今までの経験上、失敗すると死ぬよりも質が悪い目に遭う。
ったく、面白くねぇ。
「なあ金時」
「だから、オレのことはゴールデンって呼べって……なんだ?」
マイルームでハーレーのメンテをしている金時に慎二は訊ねる。
「お前は聖杯に何を願うの?」
「あん? 別にねぇよそんなもん。まぁ、あるにはあるんだが大したことじゃねぇしな。
ま、この先の戦いで会えりゃ儲けもんって感じのつまらねぇ願いさ」
「なら、戦う理由はないってこと?」
「はっ、戦うのに理由なんて必要ねぇよ。肉と肉がぶつかり、血を撒き散らす、そんな血沸き肉躍るバトルが出来りゃあ十分なわけよ」
「じゃあ、
「一番になったてな、一緒に居てくれるヤツがいなきゃ、つまらねぇよ。頂点ってヤツは孤高――いや、孤独っつーことだからな」
何かを思い出すように金時は告げる。
「分かんないよ」
慎二は泣きそうな声で叫ぶ。
「分かんないよ……僕はいつも一人だったんだから、誰かと一緒になんて……」
「今までオレと一緒に生活してて、本当にそう思ってんのか?」
「…………」
「悩むっつーことは、ほんとは分かってんだろ?
どうすればいいかなんてよ」
「…………」
「シンジ、つまらねぇ生き方だけはすんじゃねぇぞ。
人生は短ぇんだから、楽しまなくっちゃな。ゴールデンによ」
金時はにかっと笑う。
「ふん。なんだよ、ゴールデンって。
あーあー、つまんない話しちゃったな……なあ金時、気晴らしに
慎二も笑って、立ち上がる。
「ああ、いいぜ。ゴールデンだ!」
つづく