東方始天神   作:永夜 報

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 生命が生まれる確率・・・・・太平洋に時計の部品を投げ込み、
その水流だけで時計が完成するぐらいの確率。


 だそうです。(他にもたくさんあるんで調べてみてください)






10話 時計の完成

 ここは宇宙空間である。

みんな知っているはずの空間だ。暗闇の中に星が浮かび、月や太陽のあるみーんなのよく知っている宇宙だ。

 

 基本的にこの空間において人間は生きられず、一瞬で死んでしまうとされている。

それは地球上に生きるどんな生物も例外ではない・・・・・はずなのだが。

 

 

 

 「・・・・・グー・・・・・・。」

 

 

 

 さて、ここに一人少年が浮いて寝ている。宇宙空間に。

あり得ないことだ。全てにおいて。

 

 まず前述のとおり、宇宙空間で人は生きてはいけない。

しかしこの少年はそんなこと知るかボケと言わんばかりに睡眠をとっている。

 

 次に。

 

 今は、まだ生物と呼ばれるものはいない。

なので、そもそも少年がいること自体おかしなことではあるのだ。

 

 最後に。

 

 

 『神琉君、もう一億年ぐらいたちましたが起きてはくれませんか?』

 

 

 その少年をゆすって起こそうとする、ローブをまとった銀髪の少女。

彼女もまた、浮いておりいろいろと面白い恰好をしている。

 

 全てにおいておかしいのだが、突っ込むことの出来る生命体はいてなどくれないのだ。

 

 ・・・・・・そいつがいることも異常になるのだから。

 

『かーんーるーくーん、おーきーてーくだーさーい!』

 

「・・・・・・・・ぐがー・・・・・・・」

 

『おきてくーださ、・・・・・・やっぱりこのやり取りはしたことがあるような気がします』

 

 少女の独り言は宇宙空間に消え去っていく。

そして声が消えた時にあるのはさっきと全く変わらない暗闇の情景。

 

 その暗黒の空間に漂う静けさは、言葉にせずとも伝わる一種の恐怖を伴っていr・・・。

 

 

「早く起きろぉお!!!始天輝神琉ぅ!!!」

 

 

「は、はい!!!」

 

 

 静けさは消え去った。

後に残るのはちょっと怒った少女と、怒鳴られて飛び起きた少年の二人。

 

 

 

 おいみんな、知ってるか。こいつら、この宇宙において最高神なんだぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 あー、びっくりした。

まさか、天地があそこまで怒るなんて思ってなかったぜ。

 

 地味に呼び捨てされたのは初めてかもしれない。

まあ、それほど距離が縮んだってことでいいんだろうか。

 

 さて、そんなことよりわざわざ起こしたってことはなんか重要な用事があるんだろうな?

ただ、起こしただけだったら蹴飛ばすぞ。

 

『いえ、そろそろ地球に生命が生まれますよ、と言いに来ただけです。

一緒に見てみます?そんな面白くはないと思いますが・・・・』

 

 生命が生まれるのか。やっとか。

一応見に行ってみようか。

 

「よし、見に行くことにするよ。先に地球で待っててくれ」

 

『分かりました』

 

 そうして天地は姿を消してしまった。

俺が残った理由は体が鈍っているからちょっとばかり運動してからのほうがいいだろうと思ったからだ。

 

 境界の中に入って、中にある空間でちょっと走ってみる。

 

 という、建前があって。

 

 本音としてはちょっと考えたいことがあるからだ。一人で静かにな。

 

 

 それは、俺はこの世界においてどういう存在なのか、ということだ。

幾度も考えてはみたんだが、結局この結論に行きついた。

 

 

 『俺は東方projectの二次創作の登場人物なのではないか?』ということ。

 

 そもそも、俺は東方projectが創作の世界に生きていた・・・・・死んだけどな。

勿論、その世界には東方の原作者がいた。

しかし、俺や天地のことについては描かれていなかった・・・当たり前だけど。

 

 ならば俺は死んでどこか別の誰かが書いた二次創作の登場人物になってしまった、と考えるのが一番しっくりくるような気がするんだ。

つまり、俺は誰かの掌の上で動かされてるんじゃ・・・・・。

 

 そう考えていくと、なぜか自分で作ったはずの空間が恐ろしくなってきた。

取り合えず、今はメモに残して地球に行ってみるか。

 

 ポケットから出した自分で創り出した紙と鉛筆で考察したことを書き記す。

書き記したものをポケットに突っ込んで地球へと境界を開く。

 

 

 

 そこには天地が待っていた。

 

『何やってたんです?ずいぶん遅かったじゃあないですか』

 

「あはは、悪い悪い。ちょっと走ってたんだ」

 

 なんだか、天地が疑うような眼をしてきたが気にしないほうがいいだろう。

別にやましいことでもないんだし。

 

『じゃあ、生命を創りますか。・・・・・時に天地君、生命の始まりはどんな形だったと思います?』

 

 生命の始まり?

うーん、なんかあの・・・・アノマロカリス?とか、そういうのが思い浮かびますかね・・・・。

 

『それはもっと後の話ですね。今から作る生命はこんな感じです』

 

 そういって天地は指を丸の形にする。

 

 ・・・・・・・・?何がしたい?

 

 『これぐらいの大きさの生物です』

 

 

 へ?

 

 

 『今から作るのは、このぐらいのサイズの細胞ひとかけらです』

 

 

 ・・・・・・・しょぼくはないか?

なんか、今までの展開を思い出すとそれこそアダムとイブみたいなやつを創るのかと・・・・・・。

 

『どれもこれも貴方のせいなんですよ?

変に知識を持っているから、世界がそっちの方向に誘導され、歪まされてしまうんです』

 

 なんか、歴史関係は俺が原因なのが多いな。すまんな、天地。でも俺は悪くないから。

 

 『謝られてもすごく今更ですね・・・・・。まあ、私もしょぼいと思うんでこんな感じで作りました』

 

 天地が適当に手をこねくり回すと、光り輝いて何かが天地の掌の上に生まれる。

 

 俺たちの先祖である生命が、変な会話の片隅にできてしまった。別にいいけど。

しかも、一瞬。ムードも糞もない。

 

 作られたのは『ありとあらゆるものを視る程度の能力』を使ってやっと見れるほどの小さいサイズだった。

それが、なんだかよくわからない仕組みで、次々と分裂していく。

直視したいか、と問われるとさっさと逃げ出したくなるような絵面だ。

 

 率直に、キモイ。

 

「悪い、天地。見てらんない」

 

『ありゃ、そうですか。ならさっさと放っちゃいましょう。私も見たくはありませんし』

 

 そうして天地が手を離すと既に能力を使わなくても見ることが出来るぐらいには

多く増えた細胞たちが、大地の上に落下し、広がっていく。

 

 ちなみに今は殺風景な大地が広がっており、海もあるがやはり何もない。

生命がないとこんなにもつまんないんだな。

 

『しかし、それならここにいる理由はなくなりましたね。

境界の中に戻りましょうか?』

 

 そうだなぁ。ここに残ってこの気色悪い細胞を見ていくのも嫌だしね。

 

「なあ、天地。俺の知ってる・・・・てか形のある生物はいつ生まれる?」

 

『形ある生物は、今から約・・・・35億年ほど後ですね』

 

 35億・・・・・・!まだまだ先か・・・・・。

 

「意志のある生命体が出来るのはいつになる?」

 

『日本神話の始まりはそれから2億年ほど後です。結構早いですよ』

 

 

 よかった、本当に結構早いじゃんか。

天地基準で言われたらどうしようかと・・・・・。

 

『37億年って常人の間隔なら「永い」に入る部類ですよ?

貴方の精神さえも人間をやめてますが・・・・・』

 

 えへへ。

ごまかすように境界を開いてその中に入っていく。

 天地もその後を追うように境界を開き、入る。

 

 

 

 

 

 さて。

その後に地球に残された多量の細胞はどうなったのか。

 

 そのころの地球はただただ強い紫外線やら、生まれたものを殺すために漂う粒子やらがありました。

勿論のこと、いくら無限に増殖する細胞とはいっても生まれてすぐに死んでしまうのでは意味がありません。

その生きては死んで生まれては殺されが、少しの時間続きました。

 

 しかし、その細胞は幸運だったのでしょう。

一つの細胞が全てから守ってくれるあるところにたどり着きました。

 

 後に『海』と呼ばれる水溜まりでした。

 

 その細胞たちに意志などありませんでした。

 

 ただただ。未来に向かって託すために、一生懸命に生命を築き続けました。

 

 

 そしてその永さは。明けない夜は。いつか報われるのでしょう。

 

 

 生命の進化という、全ての始まりを以って。

 

 

 

『そろそろですね。全ての始まりまで』

 

 

 天地が生命を創ってから、かなりの時が経過した。

 

 様々ものを視てきたんだ。

変な動物だとか、変な植物だとか。

 

 そしてそろそろ。

 

 

 

 

 

 待ちに待った日本神話の始まりだぁーい!!ヤッホー!!

 

 

 えへん。いったん落ち着け、俺。

 

 さっき数十億年ぶりに天地がやってきて、こう言ったんだよ。

 

『そろそろ日本神話始まるんで予習スタートです』

 

 訳が分からないが、とりあえず話を聞くことにした。

 

『さて。一応神琉君は古事記を読んでいたんですよね?

それなら神代七世って知ってますか?』

 

 神代七世。それは日本神話で言う始まりの時代。

 

「ああ、知ってる。国之常立神から伊邪那岐神、伊邪那美神までの十二柱だっけ?」

 

 そして、その時代に生まれた神様のこともさす。

 

『その通りです!・・・・で、それについてですが・・・・』

 

 それについて?一体なんだ?

 

 天地が声を潜めて何かを言おうとするとなんかすごく不安になる。

 

『輝始天之琉神って知ってます?』

 

 ・・・・・知らない。が、やな予感だけはする。

 

 

「・・・・・・いったいどういう神様なんだ?」

 

 それに天地が重々しい感じで答える。

 

『ありとあらゆるものを操り、世界の根幹から生きており、ちょっと性格の悪い男神様です』

 

 全然重々しくなかった。

 

 ・・・・・・はあ。

 

「つまり!俺がその神様をやって神代七世をまとめろと!?」

 

『はい。伊弉諾、伊邪那美、以外の全ての柱を総称してください』

 

 くそぉ・・・!

 

『大丈夫ですよ。今の仕事とあんまり変わりありませんし、さぼっててもバレないですから』

 

 いや、そういう問題じゃ無くてな。

 

『じゃ、よろしくお願いしますね~!その時になったらまた呼びに来ますんで!』

 

「おいっ!!!だから逃げんなよ、こういう大事な時に限ってさあぁああ!!??」

 

 天地がサッサと境界を開いてどっかに行ってしまった。

やっぱり俺が後に残された。

 

「クソッ!結局どこに行っても目立つ運命なのか!?このまんまじゃあ、平穏に幻想郷で生きるプランがなくなるような気がするぞ!?」

 

 待ちに待っていた日本神話だが、実はかなりきつくなりそうな予感。

 

 それでは、締めに。

 

 哀れな始神の叫び声を。

 

 

「このクソッたれ天地がぁあああああ!!!!!」

 

 

 

 

 日本神話。

それがもうそろそろ始まるようだ。

どうやら始神の願いそのままではないようだが、始神も心の底ではきっと笑みを浮かべている。

 

 さあ、もうすぐ始まってしまうぞ、始神よ。

もう怠惰な日々はこれまでだ。

 

 ここからは。

 

 喧噪と、珍道中と、笑顔と、心が。

 

 待っているはずだから。

 

 

 彼が心の底で望んだものが。

 

 待っているから。

 

 

 それが。

 

 幾つものの幻想であるから。

 

 

 

 いざ行けよ、始神。

 

 

 東国まではもうすぐだ。

 

 

 

 東国まであと、2億年。

 

 

 

 

 日本神話まであと、265日。

 

 




 文章ぐちゃぐちゃ(いつも通り)。


 設定ぐちゃぐちゃ(予想外)。


 マズった。


 たぶん改訂入ります、すいません。

 後今章、今話じゃ終わんないです。





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