俺の高校には、『放課後 殺人クラブ』がある件   作:ウソツキ・ジャンマルコ

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けるべろ3

時間は、21時48分になっていた。

 

「もう!樹、ちこく〜!一体、何してたの?」

 

「悪い、母さんにドコ行くのか問い詰められて…」

 

嘘ダス。

 

「そうなんだ……ダメだよ、親には心配させないように、上手に嘘つかなきゃ」

 

お、なんだ?

意外と蘭子は嘘が上手なのか?

知らなかったぞ。

 

「蘭子は、夜に家を出るのに、なんて言って出て来たんだ?」

 

「天体観測をするって言って出て来たよ」

 

「へぇ、それはいい嘘だなぁ」

 

意外だぞ。

蘭子って、もしかして結構、夜遊びをしてたりするのかな?

いや、それくらい高校生なら普通か…

俺みたいに、ゲームばっかやってる方がおかしいんだよな、きっと……

 

「えへへ…そうでしょ?

 さぁ、早くカルパッチョを退治しに行くよ!」

 

刺身を退治するな。

 

俺たちは、ケルベロスの動画を見ながら、撮られた路地を探す事にした。

 

「樹…あの電柱じゃない?」

 

「違うよ、隣にマンショんは写ってないだろ」

 

「そっか……あ、じゃああの電柱じゃない?」

 

「いや、横に自販機はないから、違うよ」

 

「あ、そっか。

 ………あ、あそこにも電柱があるよ!」

 

「おい、蘭子……電柱は沢山あるから目印にはならないよ」

 

「ああ、そうなの?

 じゃあ、何を目印に探せばいいの?」

 

「それは、動画の奥の方に小さく【ツクダ歯科】という黄色い電気看板が見えるだろ?

 これなら、町内にいくつもはないはずだから、目印になるんじゃないか?」

 

「ああ、なるほどね。

 樹、凄いじゃん!」

 

あなるって言った。

 

「別に大した事じゃないよ」

 

「じゃあ、ケータイでツクダ歯科を検索したらいいんじゃない?」

 

「いや、ツクダ歯科は、一丁目にあるんだ。

 ここは三丁目だろ?

 たぶん、宣伝用の看板だから、歯科の住所を探しても意味ないよ」

 

「なるほどー!樹って、こういうの得意なの?」

 

「こういうのって、探し物の事?

 俺はよくアドベンチャーゲームもやるから、

 そういう時に、こんな風にヒントを見つけるなって、思ったただけだよ」

 

「へぇ、ゲームも役に立つんだねぇ!」

 

「そうかもな」?

俺たちは、夜道を看板を探しながら、並んで歩く。

ギャルゲーもやるけど、蘭子の攻略はどうすればいいんだよ、ゲームの神様ぁ…

あっそうだ!

ゲームだと、女の子にはだいたい、服が似合ってるって言えば、好感度UPだったな!

 

「服……似合ってるな」

 

「え?そう?

 女の子で、迷彩服が似合うってどうなのかな…」

 

ちっ!こいつは、迷彩服なんか着てたのかよ!

暗いから、本当にわかんなかったよ!

もっと可愛い服着て来いよ…

 

「いや…そういう意味じゃなくて……ち…調査っていうシュチュエーションに、似合ってるって事だよ」

 

「うん、そうでしょ!

 そう思って、これをチョイスしたんだ!

 樹も、わかってくれて、嬉しいよ!」

 

「あ、ああ」

 

よくそんなの持ってたな、お前。

 

「あっ、あの看板、そうじゃない?」

 

「ああ、そうだな、じゃあこの辺りに現れたんだろうな」

 

「チュロスが?」

 

こいつ、わざとか?

 

「ねぇ、樹。

 あそこに、小さな公園があるから、あの公園で見張ろうよ」

 

「ああ、そうだな」

 

俺たちは、目撃した路地の見える公園のベンチに腰掛けた。

 

「今は、22時40分かぁ。23時頃に見たって京子ちゃんが、言ってたからもうすぐだね。

 ほんとに、でるかなぁ?」

 

「さぁな…」

 

ケルベロスが出るかどうかなんて、正直どうでもいいんだ。

そんな事より、大事なのは、どうやって、このミリタリー少女をホテルに誘うかだな。

う〜ん……何かいい案を考えよう。

俺は、集中する為に、ロダンの考える人になる。

 

「樹?何を考えてるの?」

 

「……いや、どうやってホテルに……」

 

「ホテル?」

 

「…はっ!……いや……体が火照るなって…」

 

「そう?まだ5月だから、暑くなるのはこれからだよ?」

 

「あ、ああそうだな、ハハ…」

 

あっぶねぇー、集中し過ぎて、口に出ちまったよ…。

 

「暑いんだったら、何か飲み物買ってきてあげるよ、私はちょっと寒いから、あったかい飲み物、欲しいし…」

 

「ああ…じゃあ、コー……」

 

そうだ!

俺の頭の上に、LEDの電球が点いた!

…いや、これは実際に点いたワケじゃなくて、閃いた事を漫画的に表し……

どうでもいい!

 

「いや!…俺が、買ってくるよ、あったかいヤツでいいんだな!じゃあ待ってろよ」

 

そうだそうだ、良い事を思い出したぞ。

確か、カカオには「催淫効果」があると聞いた事がある。

カカオを使った飲み物、ココアを飲ませれば、蘭子もエッチな気分になるじゃないか!

ハッハッハ!神は俺を見捨ててはいなかった!

 

俺は、自販機でホットココアを二本買った。

コレを飲めば、蘭子もホットになって……イヒヒヒ!

……念のために、もう二本買っとこう。

 

俺は、四本のホットココアを抱えて、公園に戻ろうとした。

すると、公園の方から、蘭子が走ってくる。

 

「なんだよ、待ってろって言ったのに……あれ、もしかして、お前も実はそのつもり………え!?」

 

よく見ると、蘭子は何かに追いかけられている。

 

嘘だろ……ケルベロスだっ!!!

 

「いつきーっ!!」

 

「蘭子!来いっ!!」

 

蘭子は俺の後ろに隠れる。

俺たちに、向かって走ってくるケルベロスを目がけて、俺は持っていたココアを投げつけた。

 

一本めは外れたが、二本目は、なんとか命中した。

ココアは、ケルベロスの首に当たり、ガシャンと音を立てた。

ケルベロスのスピードが少しだけ落ちた。

 

「蘭子!走るぞ!」

 

俺は、蘭子の手を引き、全速力で逃げる。

 

かなり走って、後ろを振り向くと、ケルベロスはまだ追いかけてきてる。

 

「ハァっハァっ…いつきー、なんか武器ないの!?」

 

「んなもんは、ねぇよ!」

 

あっても、モンスターと戦う勇気など、持ってない。

マンスターと戦う武器はピッカピカだが、今は縮こまってる。

 

「ハァ……ハァ……あたし…もうムリ……」

 

蘭子は立ち止まろうとする。

 

「バカ、止まるな!」

 

「ハァ……もうだめ…」

 

「ちっ……ホラっ!」

 

俺は、無理矢理に、蘭子を背中に背負って走った。

 

「蘭子っ……後ろ見てみろ!」

 

「ヤダッ!まだ、追ってきてる!」

 

まったく……なんで、現実にあんなモンスターがいるんだよ!?

もしかして、異界との扉でも、どっかで開いたのか?

あんま、ややこしくし過ぎると、収集つかないんじゃない?

俺は、誰にしゃべってんの?

 

あ〜っつーか…どーてーのままで、死にたくなんかねぇぞ!

 

俺は、必死に走り続けた。

 

そして、どのくらい時間、走っていたのかはわからないが、蘭子が背中から話しかける。

 

「…いつき、なんとか逃げ切れたかも」

 

「はぁ…はぁ…マジか?」

 

「…たぶん」

 

はぁ……きっつ〜。

蘭子って、意外と重たいんだな……あっ……。

 

ちょっと待てよ……俺は今、蘭子を背負ってるぞ!?

これは、家でシュミレートした状況だ!

しかも、この通りの先には、いかがわしいホテルがあったはずだ!

 

イケる!!

 

「蘭子……まだ、安心はできないぜ……しばらく安全な所に身を隠した方が良さそうだ」

 

「うん、そうだね。

 私も怖いし……でも、どこに隠れるの?」

 

「よし、俺に考えがあるから……お前はちょっと目をつぶっているんだ、いいな?」

 

「え?……なんで?」

 

「いいから!」

 

「…はい」

 

蘭子は俺にしがみつく。

 

俺は、そのままホテルの入り口をくぐり、部屋を選ぶ画面で、5階の部屋を選び、エレベーターに乗り込んだ。

このシステムは、二年前からシュミレート済みだ!

備えあれば、嬉しいな!

 

「あれ?エレベーターに乗ってるの?」

 

「蘭子、まだ目を開けるな!」

 

「はい!」

 

蘭子……素直なお前が大好きだ!

 

そして俺は、蘭子を背負ったまま、5階の部屋に入った。

 

やった……まさかの、ごっつぁんゴール!!

ビバ!ケルベロス!

あとで、モンプチを買ってやろう

……それは猫か?

 

そんなことより、俺はついにマンスターの城にたどり着いた!!

 


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