俺の高校には、『放課後 殺人クラブ』がある件   作:ウソツキ・ジャンマルコ

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ケルベロ

 

 

俺と蘭子は、一年B組にやってきたが、教室は閉まっていて、誰もいない。

ちなみに俺と蘭子はD組だ。

 

「あちゃー、皆帰っちゃってるね」

 

「そりゃそうだろ…もう6時になるんだからな。なぁ、俺達も今日は帰ろうぜ?」

 

「えー…今日調べたいよ〜」

 

「そう言っても、長塚 京子がいないんじゃ、話も聞けないんだから仕方ないだろ?」

 

「うーん…でも…あっそうだ、B組に友達がいるから、電話で京子ちゃんの連絡先を聞いてみよっと」

 

蘭子はケータイで誰かと喋っている。

入学してから1ヶ月しかたってないのに、どうして違うクラスに友達ができるんだよ。

社交性が高いな、蘭子は。

俺のケータイには、高校の奴の番号は、蘭子とカズチカしか入ってない。

あ、さっき二人増えたか…

 

しかしよく考えたら、暦はともかく、みやび様は相当なルックスだ。

その連絡先をゲットできたっていうのは、かなりラッキーな事だぞ。

ロダン部なんか、どうでもいいが、っていうか関わりたくないが、

女の子と関係が持てるっていうのは、正直シャイボーイの俺には、ありがたい話だ。

 

そういえば、ゲームでイノリと出会って、リアルでもみやび様と出会い、蘭子のおっぱいを手に入れた。

これは、今俺に波がきてるって事なんじゃないか?

 

イノリ、蘭子、みやび様、暦……四人も女の子がいれば、一人くらい俺の事を好きになっても、おかしくないんじゃ…。

う〜ん…どうなんだろう…これがギャルゲーなら、順番に攻略していくんだが、リアルじゃそんな事はできない。

まずは少なくとも、誰かにターゲットをしぼらないといけないよな。

誰がいいかな……?

 

 

イノリは、女の子らしい甘いルックスで、性格も良いし、しゃべり方も丁寧。

女の子と、出会ってからすぐに仲良くなれた事なんて、初めてだった。

そして、何よりゲームという共通の趣味を持っている。

今の所、俺の中の大本命だ。

ただ、現実のようで現実でない上に、ネカマの可能性がゼロじゃないんだよな。

 

 

蘭子は、中二の時から知ってるから、もう2年以上の付き合いだな。

性格は明るくて、社交的で、見た目も良くて、学年でも噂になってたくらいだ。

ちょっとバカっぽい感じもするが、まぁ女の子はその位が可愛い。

俺が気兼ねなく話せる、唯一の女の子かもしれない。

ただ、性格も、趣味も、外向きだし、俺とは正反対なんだよな。

それって、どうなんだろう?

 

 

みやび様は、もう見た目は100%。

ただ、得体の知れない怖さがある。

そのうえ、俺の隠れた下僕の才能を目覚めさせてしましそうだ。

正直その方向は、もう少し大人になるまで、まだ眠っていてほしい。

っつーか、まずみやび様が、俺の事を好きになるとは、到底思えない。

まぁ、距離を保ちながら、目で楽しませてもらえれば、十分かな。

美少女と同じ空間に居られるっていうのは、人生でもかなり、貴重な時間だからな。

 

 

あとは、暦だが……

これは、今の所、攻略する気にはならんキャラだな。

ギャルゲーの隠れキャラのようなものだと考えておこう。

ただ、俺は最終的に、意外とこういうキャラを好きになる傾向があるんだ。

だが、あいつはマジで危険だから、気をつけておこう。

 

 

ああ、なんだか、考えてるだけで、楽しくなってきちゃったなぁ…

俺の高校生活は、良いスタートダッシュを決めてる気がするぞ。

なんだよ、人生って、異性を意識するだけで、こんなにも輝き出すものなのか?

ゲームばっかり、やってられなくなるじゃないか…

まったく、マイッチングだぜ!

 

「樹、何をニヤニヤしてるの?」

 

「…ん?……ニ…ニヤニヤなんかしてないよ!それより電話はどうなったんだ?」

 

「うん、京子ちゃん近くの公園に来てくれるって。行くっきゃないぞ!」

 

「ああ」

 

俺達は、クラスに置いていたカバンを持って、近所の公園に向かった。

 

 

£ £ £ £ £ £ £

 

 

「あ、いたいた!きっとあの子だ!」

 

公園に着くと、屋根のあるベンチに腰掛けている女の子に、蘭子が駆け寄り声をかける。

 

「えっと、あなたが京子ちゃん?」

 

「はい、長塚 京子です。

 あの…ロダン部の方…ですか?」

 

「そうでーす!

 私が、蘭子で、こっちが樹。

 私達も京子ちゃんと同じ一年で、二人ともD組なの」

 

ロダン部だと言うのは、ヒドく恥ずかしいが、とりあえず会釈はしておいた。

長塚 京子は、黒髪を肩まで伸ばした、高校生らしい大人しそうな女の子だ。

だが、ロダン部に依頼をするくらいだから、この子もだいぶおかしいのかもしれない。

 

「どうも、えっと、蘭子さんは知ってますよ。

 うちのクラスでも、可愛いって有名だから…」

 

「えー、ホント?

 なんだか、照れちゃうよぉ…

 ああっと!そんな事より、あの…なんだっけ?

 ……ペドロアンドカプリシャスだっけ?」

 

ケルベロスの事を言いたいんだろうか……

 

「そうです、カプリシャスの事で、相談があって…」

 

俺が、間違えてるんだろうか…

 

「どんな内容なの?

 あたしも、みやびから詳しく聞いてないから、最初から教えてもらえる?」

 

「はい…私には小学六年生のブン太っていう弟がいるんですけど…」

 

角刈りであって欲しい。

 

「三週間前に、ブン太が友達と二人で自転車に乗ってる時に、その怪物に会っちゃって、

 それから外に出るのを怖がって、塾に行かなくなったんです」

 

「場所はどの辺なの?」

 

「三丁目の住宅街です」

 

「三丁目か……高級住宅街だね。

 それで、その怪物は、どんな見た目なの?」

 

「……犬みたいなんですけど、首が二つあって…」

 

「首が二つ!?

 何それ!?怪物じゃん!?」

 

だから、そう言ってんじゃん。

 

「あ……そうだ、その時ブン太の友達がケータイで撮った動画があるんですけど、見ますか?」

 

「うん!見る見る!」

 

京子はケータイを取り出して、俺達に見せてくれた。

 

「ええ!?」

 

俺と蘭子は驚いた。

そこには、確かに、二首の犬が写っている。

 

ケルベロス……『地獄の番犬』などと言われる架空の怪物。

当たり前だが、実際には存在するはずがない。

しかも閑静な住宅街になんて、ありえない話だ。

 

動画は、15秒位のもので、夜に撮られている。

周りは暗いのだが、ケルベロスは街灯に照らし出されており、かなりハッキリと写っている。

大きさは、比較するものが、電柱くらいしかないが、犬としてなら、かなり大型犬の部類に入るだろう。

そして、一つの頭は左下を向き、もう一つの頭は右上を向いて、別々に動いている。

音声は、子供達の叫び声で、あまりよく聞き取れないが、確かに二つの頭が吠えているようだった。

俺の見る限り、この動画は、サイトでよく見る安いCGや、作り物のようには決して見えない。

 

おいおい、てっきりイタズラレベルの話だとタガをくくっていたんだが、

どうやら、バカにできない話のようだ…

 

一体、どうなっているんだ?

俺は、思わず顎に手を当てて考えていた。

 

あ……俺、ロダン部になってる……これは、ヤバス。

 

 




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