元島国人の短編   作:屍原

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戦場帰り、報告直後……ああ、少し、気を緩めすぎたかもしれん。

今回は、いつもの印象を崩す独白があるかもしれない、心して閲覧して頂けるよう。
どうも、日頃の疲れが溜まりすぎたかもな。


元島国人のコーヒータイム

「へっくしッ!」

「大丈夫か?まさか、風邪を引いた、なんて間抜けな話はないだろうな?」

「あー。大丈夫、鼻が痒かっただけだ」

 

  話に持ち上げられた気がする、もしかすると、誰かが自分の事を話題に、何かを話しているのだろうか?それとも、敵国が己を呪ってる最中だろうか?あるいは、己に救いを求めてるのか……個人的には、呪われてる方、と思うが。

 

  まあ、そんな事はどうでもいい。話したければ存分に話せばいい。彼女と一緒にいる時間を、邪魔さえしなければ、どうこうでも言え。

 

  ああ、申し訳ない、言い忘れていたな。帝国支持者諸君、もとい、ターニャ・デグレチャフの支持者諸君、喜ぶがいい!オレは現在、諸君らが慕い、忠誠を捧げている、かの者と一緒にコーヒーを堪能しているのだ!

 

  麗しく、そして優雅な姿が、すぐそこにいる。妖精(フェアリー)などという形容だけでは、彼女の美しさ、美貌など、体現できるはずがない!

 

  言うなれば、彼女は我々の女神(ヴィーナス)なのだ!

 

  おっと、失礼、ついカッとなってしまった。無理もない、我が最高の友とも言える、あのターニャと一緒の時間を過ごさせていると思うと、どうも感情が高ぶって、抑えられなくなるようだ。

 

「して、貴様、今日も血まみれで帰還してきたそうだな?」

 

  彼女の活躍について話したかったのだが、どうも、彼女はオレの(呪い)について、一言あるようだった。手に持っていたコップを机に置き、こちらを直視しているターニャの目を見つめ、次の言葉を待つ。可憐で魅力溢れる表面と違い、彼女の内には強烈な憎悪と、殺意を秘めている。それは敵国、ましては帝国に向けているのではない。

 

  神と自称する『存在X』、および、悪魔や神と名乗る輩へ向けているのだ。

 

  オレは、彼女の凶悪(秀麗)で素晴らしい点に惹かれ、彼女のために戦っている。だから、仮面()被らず(吐かず)、本当の事を、正直に話せる。

 

「最近頻繁になっているんだ、制御しようにも、気づいたらすでに終わっている。オレがどうこうして解決できるもんじゃない」

 

  現に、先程での戦いの記憶も、あやふやなものとなっている。敵魔導中隊の殲滅に掛かり、追いかけた記憶まで鮮明だったが、残党狩りを始めた頃から、意識は、はっきりとしていなかった。しかし上司からの命令もなく、己を制御しきれる人物(彼女)もその場に居らず、干渉に抗える事も出来なかった。

 

  勝手にオレを巻き込み(殺し)、オレに殺しを強いる。そして今度は、勝手にオレを干渉(操作)するときた。考えれば考える程、殺意がメラメラと湧き出て来る。燃える、燃え盛る、(怒り)が、全てを滅ぼす溶岩(憎悪)が。

 

  ああ、忌々しい死神め…!!!

 

「ザキ」

 

『パチンッ!』

 

 

  激しい痛みが、頬から伝う。じんじんと火照るように、痛みが徐々に激化していく。数回の瞬きと共に、思考がクリアになっていく。目の前には、己の掌をバシバシと叩き、なにかをやり遂げて満足そうな顔を浮かび上がってるターニャの姿が。要するに、オレは、彼女に容赦もなく叩かれた。拳でなく、平手打ち(ビンタ)だけで済んだのは、彼女なりの慈悲、あるいは、オレ達の関係を考慮したからだろうか?

 

  呆然と自分の頬を、掌で軽くなでる。

 

()済んだ(覚めた)か?」

 

  どうやらオレは、またもや干渉されかけたらしい。呆れたため息を吐いたあと、またコーヒーを一口啜った。彼女が叩いてくれたおかげで、さっきまで感じていた怒りと憎悪が、綺麗さっぱり、消えていた。改めて、冷静な頭は再び正常に運転していく。そして、改めて思った。

 

「やっぱり、オレはお前が居ないとだめだな」

  干渉に上回る彼女の傍にいるだけで、安心感を覚えるのだ。それは果たして、殺せずに居られる事か、自我を保てるからなのか、それとも、アイツに抗う手段が存在してる事に対してなんのか。どちらにせよ、彼女が居るおかげで、オレは助かっているのだ、色々と。

 

「ふんっ、よく言うな」

「お返しに、おいしいカフェを紹介するよ」

「ああ、それは楽しみだな」

 

  今は、深く考えず、僅かなコーヒータイム(彼女との時間)を堪能するとしよう。




平和な回かと思う(当社比)

無意識に憎悪と怒りに惹かれ、最終的にターニャの存在Xに対する負の感情に惹かれたシハラ少佐である。
そして、どうしようもないターニャへの信頼(感情)が、表した思想(考え)…
ますます危険な人物になっていくに違いない。

ヤンデレになってもらいたいのですが、今のところはなんとも…(ぼそ)

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