この幸薄い聖杯少女に祝福を!   作:影使い

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第4話

「……ナニアノ状況……?」

 

 

 

思わず、片言になってしまった私は悪くないと思う。

私が高台である丘に着き、アーチャーとしての視力で現場を見る。

私が見たのは、クレーターの近くで茶髪の少年が無数のジャイアント・トードに必死の形相で斬りかかっている場面だった。

冒険者ならば日常茶飯事の光景な筈なのにカオスな空間にしていた要因があった。

なんと、そのうちの二匹のジャイアントトードの口から人の足が出ていたのだ………。恐らく油断していて喰われたのだろう……。

そして、一人を少年が助け出すがもう一人は完全に飲み込まれた。

しかも、そのジャイアントトードは地面に潜ろうとしていたのだ。

 

 

 

「えっと……やっぱり助けた方がいいよね……?」

 

 

 

あれで少年が間に合わず死なれたら私としても目覚めが悪いのだ。

私は黒弓を投影する。そして剣を投影、矢に変換してつがえた。

そして、弓が潜りかけているジャイアントトードの頭を貫く様に狙いを定め、射った。

そして、弓を消し少年達の元に向かう。

 

 

=====

 

 

やあ、俺は佐藤和真。元々は日本に住んでた引きこm……自宅警b……学生だった。

しかし、俺は外出先で余りにも情けない死に方をしてしまったんだ。詳しくは聞かないでくれ……。軽くトラウマなんだ……。

そして、二次創作で良くある女神に出会い転生すると言うテンプレを体験し今に至る。転生する際に特別な力や強力なアイテムを貰えるイベントに突入したがその女神……アクアが余りにも俺をバカにしてきたので俺はあいつを特典として選んだ。

 

 

 

無論、ムシャクシャしてやった。でも凄く後悔してる。

 

 

 

 

その時の俺はこう考えていた。女神なんだから女神ぱわぁーとやらで俺を楽させてくれると………。

だがそんな期待通りにはいかず、この世界に転生して2週間の間は金を資金を稼ぐために土木作業に従事していた。

俺とアクアは労働することの素晴らしさを感じていたが……ふと我に帰り俺は自分が何故この世界に来たのか思い出す。

 

 

 

 

そう、冒険をするためだ。

 

 

 

 

 

俺たちは次の日から行動を開始する。

必要最低限の装備を整え、俺たちはジャイアントトードの討伐依頼を受けたが……俺はアクアが駄女神だと言うことを知った。まぁ、この2周間で薄々は気が付いていたが……

ゲームで言うところの支援職(バッファー)であるにも関わらず前衛である俺には支援魔法を掛けず、ただ見てるだけ。

そして、挙げ句の果てには打撃が聞かないジャイアントトードにゴットブローだの叫びながら殴り掛かり捕食されてしまう。

まぁ、そのお陰で気が逸れたジャイアントトードの頭をカチ割って倒せたわけだが……これではいつか死ぬ。

なのでパーティーメンバーを募集したが……あの駄女神がまたやらかした。

なんと、胡散臭さ100%な募集の張り紙なうえに上級職だけ募集をしたのだ。

それでも、その募集でパーティーメンバーになりたいと言ってきてくれたアークウィザードが一人だけいた。

それが今まで優秀なアークウィザードを幾人も排出してきた紅魔族の少女、めぐみんだ。

俺はめぐみんが優秀なアークウィザードだと期待したさ。

そして、彼女は言っていた。自分の最強魔法を見せてやると。

てやると。

 

 

 

そして、俺たちパーティーは狩場に到着し現在めぐみんが最強魔法とやらを準備している。

あぁ……駄女神(アクア)?あいつなら来て早々に喰われたよ。大丈夫そうだから暫く放置してるけど。

 

 

 

 

「エクスプロージョンっっ!!!!!」

 

 

 

 

そして、彼女が放った魔法……爆裂魔法はジャイアントトードを跡形もなく消し飛ばし、巨大なクレーターを作っていた。めぐみんは電池が切れたようにその場に倒れ込む。

だが、その威力が強すぎて爆発の余波が休眠していた無数のジャイアントトードを起こしてしまったのか無数に地面から現れた。

 

 

 

 

「めぐみん!一旦離れて、距離を取ってから攻撃を……」

 

 

 

めぐみんにそう指示を飛ばす。が、しかし………

 

 

 

 

「ふ……。我が奥義である爆裂魔法は、その絶大な威力ゆえ、消費魔力もまた絶大。

……要約すると、限界を超える魔力を使ったので身動き一つ取れません」

「えっ?」

 

 

 

なんとめぐみんの扱ったあの爆裂魔法とやらは1日一発限りらしい。

そして、間が悪い事にめぐみんの直ぐ近くにジャイアントトードが地面から這い出してきた。

 

 

 

 

「あっ、近くからカエルが湧き出すとか予想外です。……やばいです。食われます。すいません、ちょ、助け……ひあっ……!」

「お前もかいっ!!」

 

 

 

 

そして、めぐみんも駄女神(アクア)と同様に捕食されてしまった。

昨日のアクアを捕食したカエルと同様にめぐみんが捕食されたジャイアントトードを倒し、めぐみんを救出する。

 

 

 

 

「くそっ!めぐみん大丈夫か!」

「あ、ありがとうございます……それにしても……カエルの中って温いんですね……」

「そんな無駄知識要らんわ……。めぐみんはここでカエルの死体に隠れてろ!俺はアクアを……ってアクアあああああ?!」

 

 

 

 

そして喰われていること事態忘れかけていたが、アクアが喰われたジャイアントトードの方を見てみると今まさに地面に潜ろうとしていた。

 

 

 

「しまった!アクア?!」

 

 

 

俺は急いでアクアを食ったジャイアントトードに近付き、アクアを助け出そうとした。だが、距離が開きすぎて俺の足では間に合いそうになかった。

 

 

 

「くそっ!間に合わね………えっ?」

 

 

 

そんな時ヒュンッと言う音を残し、目の前の空を何かが横切る。

そして、潜ろうとしていたジャイアントトードに着弾し、2mほど吹き飛ばした。

俺はそんな先程の爆裂魔法と同じく現実離れした光景に一瞬思考が止まってしまう。

だが、直ぐにここは異世界なんだから割りと何でもありかと思い直し、直ぐ様アクアの元に向かった。

 

 

 

「アクア!無事か!……よし、無事だな。その格好以外は」

 

 

 

 

アクアは気絶している状態でジャイアントトードの口からはみ出るように吐き出されていた。

まぁ、粘液でドロドロになってる以外は無事なようだ。

そして、俺は死んでいるジャイアントトードを観察して絶句する。なんと矢がジャイアントトードの脳天に深々と刺さっていたのだ。

 

 

 

「え、えぇぇ……。

あのデカいカエルを矢で吹き飛ばすって……それにしても……誰だか知らないけど助けてもらって良かった……。下手したらこいつ死んでたもんな……」

 

 

 

下手に突っ込んでいったとはいえ、この駄女神は死んでいたかもしれない。

そう思うと背筋が凍り付いてしまう。

 

 

 

「うわぁー……触れたくねぇ……げっ……やばっ」

 

 

 

アクアを背負い、めぐみんの元に向かおうとするがなんと俺達の元にジャイアントトードが向かって来ているのに気が付く。

 

 

 

ヤバい。

俺だけなら兎も角、背中で気を失っている駄女神(アクア)のせいで撃退が難しい。

が、その時俺を赤と白銀の影が追い越していく。何処からともなく双剣を取り出しジャイアントトードを一刀両断しあと、空中に無数の剣が現れた。

そして、その剣が一斉に射出されて近くに居たジャイアントトードを吹き飛ばした。

 

=====

 

 

私は英霊化、強化魔術により人間の限界を越えた身体能力を駆使して自動車以上の速度で移動している。

と言うのも、せっかく助けた青髪の女の子と黒髪の少年をジャイアントトードが今まさに捕食しようとしていたからだ。

 

 

 

少年たちを追い越しあと少しで衝突すると言う距離で私は英霊エミヤが愛用していた宝具、夫婦剣干将・莫耶を投影する。

英霊エミヤの経験を憑依経験で再現しジャイアントトードを切り裂く。そして、無数の剣を空中に投影し射出することでジャイアントトードを全て倒した。

 

 

 

「ふぅ……大丈夫?お兄さん?」

「あ、えっと……大丈夫だよ……。助けてくれてありがとう……。さっきの矢も君が?」

「まぁね。でも、ダメじゃない。自分の実力に合ってない依頼を受けたり、実力に伴わない魔じゅ……魔法を仲間に使わせたりしたら。下手したら死ぬよ?」

「返す言葉もありません……」

 

 

 

どうやら少年は思う節が有るらしく素直に私の言葉に反省している様だ。

 

 

 

「まぁ、反省してくれたなら私としては満足かな。取り敢えず、自己紹介だね。私はイリヤ」

「俺はサトウカズマ。よろしくな、イリヤ」

「えぇ、よろしくね。それにしても……サトウカズマねぇ……。ねぇ、お兄さん。あなた日本出身でしょ?」

 

 

 

日本人特有の顔付き、黒髪黒目、そして日本人らしい名前。その三つを持って私は、少年が私と同じ立場の存在だと確信して私は尋ねる。

 

 

 

「ん?なんでそれを……まさか……イリヤも?」

 

 

 

 

彼、佐藤和真は私の問いを肯定する。カズマも確認するように聞いてきたので私も肯定する。

 

 

 

「えぇ。私はドイツ人とのハーフだよ。こんな見た目だから日本人には見えないけど、一応日本国籍は持ってたわ。

ちなみに私の日本人としての名前は衛宮イリヤ。ドイツ人としてはイリヤスフィール・フォン・アインツベルンだけど出来ればイリヤって呼んで欲しいわね」

「ドイツで名字にフォンって入ってるとなると……もしかしてイリヤは貴族なのか?」

「えぇ。お母様が貴族の出よ。それよりも……私の事は置いといて……カズマが転生者ならなんで特典の武器なり能力なりのチートを使わなかったのかしら?」

 

 

 

その言葉でカズマの動きが止まりバツの悪そうな顔をしていた。

そして、粘液だらけで気絶している青髪の女の子に視線が向いていた。

 

 

 

「こいつです……。俺のチート……この駄女神なんです……」

「えっ?」

「えっと……こいつは俺を担当していた女神だったんだけど……余りの態度にムカついて思わずこいつを特典のチートに選んじまったんだ……。そしたらこの様だよ……」

「ごめんなさい……、カズマも苦労してるのね……。キツかったら声を掛けてね。同郷のよしみで手を貸すから」

「あぁ……、ありがとう……。こんな年下の女の子に慰められるとは……」

 

 

 

カズマのあんまりな境遇に思わず慰める。が、どうやらカズマは私の事を年下に見ているようだ。

カズマの見た目はどうあがいても高校生の域を出ない。恐らくだがタメか年下だろうと私は推測する。

 

 

 

「えっと……カズマ?私は18歳なんだけど……たぶんカズマとは同年代だからね」

「え……?合法ロリ……だと……。しかも、二歳も年上……」

「おい、今何つった?」

 

 

 

どうやら私は同郷の同年代の年下にも合法ロリ呼ばわりされるようです。解せぬ。

 


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