テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ─そして、僕の伝説─   作:夕影

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なんとか今月中に投稿する事ができました;;

いやー、あれですね…皆、執筆してるときに眠くなったときは一度ちゃんと執筆中の物を保存して寝ましょうね+←

じゃないと、間違えて削除押して書いた文、全部ぶっ飛んじゃう事になっちゃいますからねっ☆

……………(´;ω;`)


で、では新話、どうぞ…;;






第六十八話

 

 

 

「──あれ…此処は…?」

 

 

 

──いつの間にか、僕は目を開くと暗闇の中に立っていた。

思わず周りを見回してしまうが…右も左も、上も下も暗闇だ。

一体どうして?

確か僕は医務室にて、メリアのジルディアの浸食を止めようとして、それでディセンダーの力を転写して、それで……。

 

 

 

「…僕は…死んじゃったのかな…?」

 

 

意識を失う前までの事を思い出し、僕はそう自然と言葉を出した。今まで無理をしてきたのもあるけど…今回、僕はただでさえボロボロのドクメントにディセンダーの力のドクメントを転写したのだ。

そして意識を失う前のあの痛み…思い出せば今でも頭に残ってる。

 

 

「…でも…結局此処って何処なんだろう…?」

 

 

改めて周りを見回してみる。何も変わらない暗闇である。

死後の世界がどんなものかとか、死んだらどうなるのかは分からないけど…少なくともイメージ的には天国ではなさそうである。

 

 

ふと、そんな時だった…。

 

 

 

『─────────』

 

 

 

「……え…?」

 

 

声が聞こえた。何を言っているのかは分からない…だけど、その声に僕は聞き覚えがあった。

 

 

 

『───衛司』

 

 

 

「……父…さん…?」

 

 

 

再び、今度ははっきりと聞こえた自分を呼ぶ声。その聞き覚えのあった声は…間違えなく元の世界で僕を育ててくれた父さんの声だった。

聞こえた間違えることのない声に僕は自然と声を漏らすと、まるでそれに答えるかのように、暗闇だけであった僕の立つ前の先から光が見えだした。

 

 

「あれは……?」

 

 

『──こっちに帰ってこい。そうすればまたお前と…衛司と一緒に暮らせるようになる。母さんも待ってるぞ』

 

 

 

父さんの言葉を聞いて僕はただ光の先を見つめる。

確信は無いけど…あの光の先は、僕のいた元の世界に繋がっているんだろう。

元の世界に戻れる。父さんの言うとおり…再び父さんと母さんと家族で平和な日常に戻ることが出来るのだろう。元の世界の友人達ともまた笑い合い、皆で楽しく過ごしあう日々にも戻れる。

僕は一歩、光へと向けて歩き出す。

そうだ…此処で戻れば、また皆で平和に……

 

 

 

 

『─────衛司っ!』

 

 

 

踏み出した足が止まった。

もう一つ……父さんとは違う聞き覚えのある、自分を呼ぶ声がした。

聞いていて落ち着き、守ってあげたくなる…僕の大切な少女の声が。

 

 

『……衛司?』

 

 

「……ごめん、父さん。僕は…まだそっちに戻れないや」

 

 

足を止めた僕に、父さんの不思議そうな声が聞こえ、僕は光から反転して暗闇の方へと向き直る。

暗闇の先を僕は見つめると、父さんの声に向けてそう言葉を出した。

 

 

『……どうしてだ?』

 

 

「…まだ、向こうでやり残してる事があるんだ。それに…僕が支えてあげないといけない、大切な子がいる。だから…まだそっちに戻れない」

 

 

『…それは…例えお前が死ぬかもしれない事になってまで、か…?』

 

 

父さんの問いに、僕は暗闇の先を見つめたまま静かに答える。僕の返答に、父さんは少し間を空けるとそう聞いてきた。

 

 

 

「…うん…それぐらい大切な子に…大切な世界に出会えたんだ。だから…ごめん…」

 

 

 

『…そう、か…』

 

 

父さんの声が暗闇の中に静かに響くのを感じ、僕は光とは正反対の暗闇に向けて歩き出す。確信は無いけど…多分この暗闇の先を目指せば彼女達の元に戻れるのだろう。

暗闇の先を目指しながら歩き、振り返ることはしないようにする。振り返ってしまうと…僕はきっと元の世界に戻ろうと迷ってしまうから。

 

 

 

 

『……衛司』

 

 

 

「……………」

 

 

 

『……頑張ってこいよ』

 

 

 

「っ!……うん、行ってきますっ!」

 

 

 

後ろから聞こえてきた、背中を押すような父さんの声。僕さはその声に一瞬振り返りかけるが、その場で大きく頷いて前に向き直ってその場から走り出した。

 

暗闇だけしか見えない中、僕が真っ直ぐと走りつづけると、徐々に光が見え……そして、僕はその光の中へと向けて飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────────

 

 

 

 

 

「──……っ…此処は…」

 

 

 

再び目を開けれるような感覚になり、ゆっくりと目を開けると僕は少し周りを見回した。

見覚えのある、バンエルティア号の医務室であった。

 

 

「…戻って…来れたんだ…」

 

 

ゆっくりと上半身を起こし、僕は自分の両手を試しに握ったり開いたりして身体が動ける事を確認すると僕はそう言葉を出した。

改めてもう一度周りを見回す。どうやら今は僕以外には誰も居ないみたいだ。

…それなら……。

 

 

 

「……居るんでしょ、ヴォルト……ウンディーネ」

 

 

僕の静かに出した言葉に反応するように、僕の中から光の塊が『二つ』抜け出し、僕が寝ているベッドの隣に人型の姿に変わっていき、それはヴォルトとウンディーネの姿となった。

 

 

「……主…」

 

 

「いやはや、余の存在に気付くとは…流石我が認めただけあるな、衛司」

 

 

 

「…ヴォルトが今まで身体の中に居たからちょっとした変化は分かったよ。…それで…話してくれないかな…?」

 

 

 

僕を見てただ静かに俯くヴォルトと、特に表情を崩さず楽しげな様子で話すウンディーネ。僕はウンディーネに言葉を返しながら真っ直ぐと二人を見て真剣な表情で言葉を続けた。

 

 

 

「…ふむ。話、とは…?」

 

 

「僕の身体…正確には僕のドクメントの事だよ」

 

 

「っ…それは…」

 

 

 

僕の言葉を聞き、俯きながらもどこか言いにくそうに表情を変える。

僕が真剣な表情で二人を見ていると、ウンディーネが深く溜め息を一つ吐いて口を開いた。

 

 

 

「…仕方ないか。ふむ…そうだな…、ではそなたのドクメントについてだが…」

 

 

「ウンディーネ…っ!?」

 

 

「仕方あるまい…此処で話さなければ余計に無理をさせてしまう事になるぞ?それに…余達は『契約』した以上、『主様』の命令であれば従わなければいかんだろう?」

 

 

ウンディーネの出した言葉にヴォルトが顔を上げて声をあげる。そのヴォルトにウンディーネは小さく溜め息を吐いてそう言った。

…というか、『契約』や『主様』という事は…。

 

 

 

「ウンディーネ…『契約』や『主様』っていうのはやっぱり…」

 

 

「うむ…今…余はヴォルト同様、衛司と契約を結んだ。理由は言わずもがな…そなたのドクメントの状態だ。…はっきり言わせてもらうぞ、衛司。そなたのドクメント…破損率は九割を迎えている」

 

 

「っ…九割、か…」

 

 

ウンディーネの言葉に、僕は思わず自分の身体を見て声を漏らした。

九割…それはつまり、僕の身体のほぼ全てが破損していて、僕に残されている時間が少ないという事であった。

 

 

 

「…主の身体は今まで、よく保っていたと言う程です。そして今回のディセンダーの力の転写で、主の身体は限界でした」

 

 

「ヴォルト一人で対処出来んと聞いたので、急遽余も契約してそなたのドクメントを補助したが…あそこまで傷付いたもの、はじめて見たぞ」

 

 

「…そっか…一応聞いとくけど、皆にこの事は…?」

 

 

ヴォルトとウンディーネの言葉を聞いて僕は自分の手から視線を二人に向けると、静かにそう聞いた。

ヴォルトとウンディーネはお互い顔を見合わせ小さく頷いて口を開いた。

 

 

「…主ならそういうと思って…ある程度は隠して大丈夫とは伝えています」

 

 

「状況と状態がアレであったからな…かなり誤魔化すのが難しかったぞ。…主様よ…今言っておくが…そなたの身体は今、余とヴォルトの契約による補助で保っているようなものだ。もはや主様には…一度の戦闘も重体に繋がりかけないのでな」

 

 

「そっか…ありがとう…。…でも…一度でも闘える余裕があるなら…十分だよ…っと」

 

 

ウンディーネの言葉を聞き、僕は一度溜め息を吐いてそう言うと、ベッドからゆっくりと立ち上がった。二人の言う契約による補助のおかげか、少し身体が重く感じるけど、意識を失う前の痛みは全く感じはしなかった。

 

 

「…主…っ!」

 

 

「っと…ありがとう、ヴォルト。…聞くのが遅れたけど今、僕が寝ててどれぐらい経ってて…皆はどこに…?」

 

 

「主様が意識を失って今は三日目だ。皆は今…世界樹の上空に現れたジルディアの大地『エラン・ヴィタール』への突入に向けてホールで話し合いをしている所だ」

 

 

立ち上がった際、少しふらついてしまうが、ヴォルトに支えられてなんとか立ちヴォルトに礼を言って皆の事を聞くと、ウンディーネが僕を見ながら静かに言った。

 

「『エラン・ヴィタール』…か。皆ホールに居るなら、ちょうどいいし…僕も行こうか…」

 

 

「主…目覚めたばかりなんですし、あまり無理は…」

 

 

「二人のおかげでもう大分大丈夫だからいいんだよ。二人とも…ありがとう」

 

 

僕の言葉にヴォルトが心配気な表情でそう言ってき、僕は二人に出来る限りで笑ってそう返す。二人はいまだに心配気な表情を見せるが、先にウンディーネが小さく溜め息を吐いて口を開いた。

 

 

「…やれやれ…契約してさらに分かったが…余が気に入った者は余程の無茶ものらしいな。ヴォルト…余達は余達で主様が立てるように全力で主様の身体の補助をして支えればよい」

 

 

「…そう、ですね。…主…私は主にはいなくなってほしくはありません。だから…無茶はしないでください」

 

 

「うん…ごめんね、二人とも」

 

 

「はは…何、謝礼は仕合で構わんよ」

 

 

「…主…お気をつけを…」

 

 

二人の言葉を聞いて僕が少し苦笑して頭を下げると、ウンディーネは小さく笑ってそう言って光となり、ヴォルトは一度僕にギュッと抱きついた後ウンディーネ同様に光になり、二つの光はそのまま僕の中へと消えていった。

 

 

「…ふぅ…本当…迷惑かけるね、二人とも…」

 

 

僕は申し訳なさげにそう言葉を出すと、ゆっくりとした足取りでホールへと向かった。

…出来る限り…皆に気付かれないようにしないとなぁ…。

 

 

 

 

 









──以上、第六十八話、いかがだったでしょうか?

ちょっと展開が無理やりだったかなぁ、と後悔気味です;;




【衛司の世界への想い】
今回この部分いるかどうか迷ったけど敢えて入れてみました←
衛司君だって元の世界に帰りたくない訳ではありませんし。
此処で衛司君の『元の世界』と『今の世界』への想いを書いてみました。
因みに、当初衛司君を元の世界へ呼ぶのは母親の予定でしたが、『子供の背中を黙って押してくれるのってやっぱり父親じゃないかなー』、と考えて父親になりました+


【衛司の状態、ウンディーネとの契約】
…と、いうわけで衛司君ヤバいです←
ウンディーネ使役で更にヤバいんじゃね、という話もありそうですが、そこの所は成功率五分五分だった衛司君の身体への使役が上手く行った、と解釈していただければありがたいです;;

そしてやっぱり衛司君は皆にはこの事は言いません。
衛司君の想いは『皆に心配をかけたくない』、『最終決戦を前に皆に迷惑をかけたくない』、『自分だけ何もできないで、誰かが居なくなるなんて嫌だ』、という想いからの事なんですが…本当に彼は自己犠牲型だなぁ…。

…まぁ、この辺のことは次回辺りでヒロインに頑張ってもらおうと思います(ニヤニヤ←



次回は最終決戦に向けての話、そして最終決戦前夜話になると思います+
もし最終決戦前夜が書ければ…次回、遂に衛司君とヒロインが…(ニヤリ←←


皆様、良ければ感想、ご意見、そして評価等よろしくお願いします+


ではまた、次回+

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