テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ─そして、僕の伝説─   作:夕影

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なんとか完成出来たので投稿です+


今回ほぼ急ピッチで仕上げたので、展開がかなり駆け足気味かもしれませんのであしからず;;





第六十六話

 

 

 

 

 

「──殺す、殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すヒャハハハハハハっ!」

 

 

──目の前で狂気の叫びともに両手を広げ、その背後に五つの暴風を出現させているサレ。

あの殺気と暴風から、サレが次に放ってくる攻撃は確実に、あの全方位型の暴風の渦『シュタイフェ・ジル・ブリーゼ』だろう。

あのほぼ回避不可能に近い暴風の渦がまた放たれるとなると…正直またライトニング・シェルで防ぎきれるとは思えない。

ただ……あるとすれば一つだけ、今自分にあの暴風の渦に対処できる『技』がある。

 

 

「(…ただ…あれはほとんど思い付きのような技だ。…成功率もオーバーリミッツと契約解放を合わせても半分以下に近い…)」

 

 

腰の鞘に納めた星晶剣の柄に手を添え真っ直ぐとサレを睨んだまま僕は考える。

『あの技』が成功すれば…確実にサレを弱らせ、リタの『切り札』も使用できるが…その反面、失敗すれば僕は間違いなく、暴風の渦に呑み込まれて…死ぬだろう。

……この世界にきて、何度も死に直面しかけた事はあったけど、やっぱりこの感覚に慣れる事は無理だろう。

 

正直怖い。星晶剣の柄に添える手が震える。

…だけど…。

 

 

「(主…)」

 

 

「…うん…大丈夫…。絶対、此処を切り抜けて…皆を…守りきるっ!」

 

 

ヴォルトの声と僕の後方にいるカノンノ達。僕が此処で敗れれば、その攻撃は彼女達にも向かうことになるのだ。

そんな事…絶対にさせる訳にはいかないっ!

僕は震えていた手に力を込め、添えていただけの柄を強く握り締め意識を真っ直ぐとサレに集中させる。

 

 

 

「ヒャハハっ!これで…終わりだぁっ!さぁさぁさぁ、吹き荒れ、呑み込み、切り裂き、殺せぇっ!」

 

 

僕達の目の前で高らかに笑い、言葉と共に広げていた両手を僕達に向け、暴風の標準を付けるサレ。

僕はそれに、体勢を低く構えて『技』を発動するタイミングを待つ。

まだだ…まだ抜けない…。

 

 

「ヒャハっ!なんのつもりか知らないけど、動かないならそのまま…死ねぇっ!シュタイフェ・ジル・ブリーゼェエェェェェっ!」

 

 

「……………」

 

 

「衛司…っ!」

 

 

僕が微動だにしないことをサレは不気味に笑い言うと、雄叫びと共に五つの暴風の渦を此方に向けて放つ。

迫り来る五つの暴風をただ意識を集中させたまま見ているだけの僕に、後方からカノンノの僕を呼ぶ声が耳に届く。

…よし…いまだっ!

 

 

「すー……セェエェェェイっ!」

 

 

迫り来る五つの暴風の渦。その五つの暴風が全方位へと分かれようとした瞬間、僕はオーバーリミッツと契約解放で強化した力で納刀した星晶剣を引き抜き、気合いと共に…今まで出してきた中で一番大きく、強力な斬撃を放ち、サレの五つの暴風を相殺する。

 

 

「っ!?な、僕の…シュタイフェ・ジル・ブリーゼを…っ!?」

 

 

「この刃はただ一閃……されどこの一閃の間…僕は…『全て』を越えるっ!」

 

 

 

「っ!?しま…っ!」

 

 

僕の放った斬撃で相殺された暴風に、思わず驚愕の表情を浮かべるサレ。僕はその間に再び星晶剣を納刀させ、脚に一気に力を込め…そしてその脚に僅かに微量の電気を流してサレに向けて一気に跳ぶ。

…それは一人の友人から教わった技術。脚に微量の電気を流し、筋肉を刺激してほんの一瞬だけ…速度を上昇させる技。

この瞬間…僕はこの一瞬だけ速度のみなら『全て』を越える。

 

…そして、気付いた時にはもう遅い。

 

僕が跳び、それにサレが気付いた瞬間に僕は星晶剣を引き抜きサレの横を通り抜け様に一閃し、サレの後方へと着地してゆっくりと星晶剣を鞘に納めていく。

 

 

「…ただ一閃…されど一閃。この一撃こそ…必殺の一撃なり…」

 

 

「ぐっ!?…ぅ…かは…っ!」

 

 

星晶剣を鞘に納めていくと同時に、サレの肩から斜め下へと浮かび上がってくる一閃の傷痕。

そして、鞘に完全に納めきる直前に僕はゆっくりとサレへと振り返り、最後を決めるように口を動かした。

 

 

「…これぞ『返し』の一撃…『瞬雷刃《またたく いかずちの やいば》』なり…」

 

 

「ぐっ…ぁあぁぁあぁぁぁっ!?」

 

 

言葉と共に星晶剣を納めきる。星晶剣を納めきったと同時に、サレに浮かび上がった傷痕から一気に強力な雷撃がサレの身体を流れ、蹂躙する。

サレはそのダメージに声と共に片膝をつく。

 

 

「ぐっ…がぁっ…この程度…この程度でぇ…っ!」

 

 

「…っ!衛司、今よっ!」

 

 

「分かった!」

 

 

片膝をつきながらも僕達を睨み再度立ち上がろうとするサレ。その光景にいち早く我に帰ったリタが声を上げ、僕はそれに頷いて懐からリタから受け取っていた小型の箱を取り出してサレに向ける。すると箱がまるで分解されるように開かれていく。

 

 

「…っ!?一体…何を…っ!?」

 

 

「それはね…こういう事…っ!」

 

 

リタの言葉を合図にするように完全に開かれる箱。

同時にその箱から複数のドクメントが浮かび上がりサレに向けて跳び、そしてそのドクメントはまるでサレを拘束するかのようにサレの身体全体に巻き付いていく。

 

「なっ!…ぐっ…これは…っ!?」

 

 

「えぇ、ご想像通り…。大変だったわよ…封印次元展開装置を『小型化』するのわっ!」

 

 

そう…僕がリタから受け取っていた『切り札』とは…封印次元を小型化し、それを封じ込めた『小型封印次元展開装置』であった。

小型化している為、封印する程の力は無いけど…それでもジルディアのドクメントを取り込んでいるサレを数分間、拘束させる力はある。

 

 

「ぐっ…この程度の封印で…僕を止められるとでも…っ!」

 

 

「えぇ、アンタをこれで止められるなんて思ってないわ。ほんの数分間、アンタの動きを止められるだけでいいのよ」

 

 

拘束を解こうとするサレ。そのサレにリタは静かに言うと、僕とカノンノとメリアが前に出て、僕が星晶剣を『光り輝く』木刀に取り替え、カノンノとメリアが両手をサレへと向ける。

 

 

「っ!?何を…まさか…っ!?」

 

 

「えぇ…確かにアンタのジルディアの浸食を浄化するのは『一人』じゃ無理でしょうね。だけど今、浄化の力を持つ者は此処に『三人』いる。私達は始めからアンタに勝とうと思っちゃいないわ。ただ…アンタの『無力化』を目的にしてただけよっ!」

 

 

「ぅっ…やめろ…やめろおぉおぉぉぉっ!」 

 

 

「「「はあぁあぁぁぁぁぁぁっ!」」」

 

 

僕達の行動を理解して拘束を解こうとするサレ。

そのサレに向けて僕は光り輝くを振り下ろし、カノンノとメリアは向けた両手から光を溢れ出させる。

そして…光がその場を包み込んだ。

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

──しばらくして光が収まっていき、その場の状態が分かってくる。

そして完全に場が分かった時…リタは僅かに舌打ちした。

 

 

「チッ…途中で拘束が解かれたわね」

 

 

リタが静かに出した言葉。その一言はサレの姿を見て理解出来た。

三人分の『ディセンダーの力』を受け、サレは確かに取り込んでいたジルディアの力を浄化されたようである。だが…途中で小型封印次元の拘束を力ずくで解き、ディセンダーの力の浄化に抗ったのか…サレの姿は、右目部分の結晶化のみを残し、ボロボロであった。

サレは僕達を忌々しい物を見るような表情で睨むと、残りの力を振り絞るように右手をあげ…自分の背後に以前見た結晶の扉を出現させた。

まさか…逃げるつもりかっ!

 

 

「ぐっ…よくも…やってくれたな…っ!僕はまだ…まだ此処で倒れる訳にはいかない…覚えていろ…どうせ…どうせ『手遅れ』なんだからなぁっ!」

 

 

「っ!待てっ!」

 

 

結晶の扉を開き、僕達を睨んだままサレはそう言うと、傷だらけの身体を引きずり、結晶の扉へと飛び込んでいった。

僕は思わずサレを追おうとするけど、結晶の扉はサレを入れるとすぐに閉じ、消えていった。

くそ…逃げられたっ!

 

 

「…衛司…」

 

 

「衛司、今は封印次元を作る方が優先よ。少なくとも…ああなった以上、サレはこっちには手を出してこないだろうし…それに、これで最後なんだからね」

 

 

「…うん…分かってる。大丈夫だよ…」

 

 

あと一歩というところでサレに逃げられた事に、僕は思わず舌打ちしてしまうも、心配げに僕を呼ぶカノンノと、封印次元展開装置の準備を始めながらそう言ったリタに、僕は小さく頷いた。

そうだ…後はこの封印次元展開装置を発動させて、目の前でマナを吸い込んでいる渦に封印次元のドクメントを吸い込ませ…ラザリスを…ジルディアを再び眠らせるだけなんだ。

 

 

「…これで…本当に終わるんだね…」

 

 

「…ん…」

 

 

封印次元展開装置の準備をするリタと、マナを吸い込む渦『ボルテックス』を見ながら僕の両隣でそう言うカノンノとメリア。

そう…これで最後…の筈だけれど…

 

 

「(なんだろう…この不安感…。それに…サレの言ってた『手遅れ』って…)」

 

 

「…よっし、準備完了。後は起動させるだけね」

 

 

何故か先程から来る嫌な不安感と、サレが最後に残して言った言葉を考えていると、リタが封印次元展開装置の準備を終えてその装置に両手を向けていた。

 

 

「──さぁ…世界中の皆が集めたドクメントなんだから…上手くいってっ!」

 

 

両手を向けたままリタがそう言うと封印次元展開装置が起動音を出し、装置からドクメントが溢れ出てボルテックスへと流れ込んでいく。

此処からだと世界樹の様子は分からないけど…封印次元のドクメントが流れ込んでいく度に周りの結晶が感応するように輝き出す。

 

このまま本当に…世界は救われるんだ。

 

 

 

 

 

そう…思った瞬間だった…。

 

 

 

 

 

────ピシリッ!

 

 

 

 

 

「…ぇ…?」

 

 

 

嫌に、だが確実に耳に届いた音に、僕は納めていた木刀を抜いてみると…何故か今まで傷すら見せなかった相棒に、徐々に徐々にとヒビが入ってきていた。

そしてそれは止まることは無く次第にビキビキと音をたてて広がっていき、そして……

 

 

 

 

──────バキリッ!

 

 

 

 

……今まででより一層、嫌に耳に響く音をたてて、持ち手の柄の部分だけを残して木刀が、砕け散った。

 

 

 

「そんな…どうして…っ」

 

 

突然砕け散った木刀に、僕は残った柄の部分を握り締めながら声を漏らす。

これは世界樹から作られた木刀だ。それが砕けるという事は…世界樹に何かあった…っ!?

 

 

「そうだ、メリアは…っ!?」

 

 

世界樹から作られた木刀が砕け散り、世界樹に何かがあった。それはつまり、世界樹から生まれたディセンダーであるメリアにも何か起こったかもしれない。

僕はその考えに至り、慌ててメリアを見ると…一瞬息が止まった。

 

 

ほんの一瞬だけ…だけど確実に一度、『見えてしまった』。

彼女の身体を…ジルディアのキバに似たナニカが貫いた姿を…。

 

 

「…ぁ……ぇ……」

 

 

「メリア…メリアっ!」

 

 

彼女の身体を貫いたように見えたソレはまばたきする間に消え、メリアの身体がゆっくりと傾いてきたのが見えると僕はメリアを抱き止めた。

慌てて彼女の容態を見ると…今まで身たことのない程彼女の顔は青白く…呼吸している様子が無かった。

 

 

「ぇ…メリ、ア…?」

 

 

「っ!これって…っ!」

 

 

僕の声と音にカノンノとリタが気付き、メリアの容態を見るとカノンノは信じられない物を見たような表情に、リタは驚愕の表情を浮かべる。

 

 

 

「メリア…メリアっ!メリアぁあぁぁあぁぁぁっ!!」

 

 

 

 

──輝きを止めた結晶の大地の中、僕の声で、いつも笑顔を見せる彼女が目覚める事は無かった…。

 

 

 

 

 

 

 








──以上、第六十六話、如何だったでしょうか?


うぅむ…今回は駆け足気味かな、とちょっと反省してます;;


【瞬雷刃】
衛司君の新秘奥義。読みは『またたく いかずちの やいば』です。
技名の読みの元ネタは分かる人にはわかる某明治剣客浪漫譚です←
この秘奥義は簡単に言えば某若本さんの『アイテムなぞ(ry』と似たようなもので、相手の秘奥義に対してカウンターする秘奥義です。
友人云々については少し前のメリア同様、詳しくは自サイト『儚き時の夢物語』を見ていただければ…+


【小型封印次元展開装置】

リタ含む研究組『私達が頑張った』

この一言につきる←


【サレ撤退】
と、いう訳でサレ撤退です←
この話で『衛司君』とサレとの闘いは決着です。
やはり、サレとの決着は…『彼』としていただかないと。


【砕ける木刀、倒れるメリア】
この話で木刀退場です←
原作だと世界樹がジルディアのキバに貫かれるシーンを見ていたのがロックスとニアタだったので、『ラングリースから世界樹の様子は見えなかったのだろうか』と私が勝手に考えてこんな感じにしてみました←


次回は漫画版展開+少しオリジナルになるとおもいます。
果たして、メリアの運命は如何にっ!?←


皆様良ければ感想、ご意見、評価等宜しくお願いします+

ではまた、次回+

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