テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ─そして、僕の伝説─   作:夕影

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第四十話

 

 

 

 

「――ォォォ……オォオォォォォォッ!!」

 

 

「――そんな…どうして…」

 

 

「――サレ…テメェ、衛司になにしやがったっ!?」

 

 

――ただ目前で敵対するように吠える…『衛司』の変わり果てた姿に、皆が驚き、怒りを表し原因であるサレを睨む。

 

睨まれた張本人であるサレは、無気味に笑みを浮かべたまま口を開いた。

 

 

「『何をした』、か…。うーん、そうだね……じゃあこう言っとこうかな。…僕は彼の『願い』を叶えただけさ」

 

 

「『願い』…まさか…っ!」

 

 

 

サレの言葉の意味を理解し、ヴェイグが声を上げてサレを睨むと、サレは口元を釣り上げさせた。

 

 

「はい、御名答。君達の想像通り……『願いを叶える存在』…彼の身体にはそれを取り込んでもらったよ。…まぁ、彼も早々願いを言わなかったから、催眠を掛けてちょっと無理矢理取り込んでもらったんだけど…結果見ての通り。これでも意外に定着具合が良いみたいでね…僕が『用意したモノ』も綺麗に取り込んでくれたよ」

 

 

「そんな…酷い…」

 

 

「このゲス野郎が……そんなもんが、本当に衛司が望んだもんだっていうのかっ!」

 

 

ケタケタと、さも面白いものを見るかのように笑みを浮かべ衛司を見ながら喋るサレに、アルヴィンの後ろで見守るクレアは声を漏らし、スパーダが怒りを露わにして叫ぶ。

 

 

「さぁね…そこら辺は彼自身に聞きなよ。まぁ…『聞けたら』の話だけど」

 

 

「――オォオォォォォォッ!!」

 

 

 

「……っ…!」

 

 

サレの言葉を合図のように、衛司は刃を交えていたメリアを押し離すように右腕と同化している僅かに白も見える赤い結晶の剣に力を込め、メリアはその力の強さに押され後退する。

 

 

 

「メリアっ!…メリア、衛司がラザリスの赤い煙に取り込まれてるのなら…メリアの力で衛司を解放出来ない…?」

 

 

「…私もそう思った…。だけど……サレの言うとおり…今の衛司にはラザリスの力が定着し過ぎて効き目が薄い…。…弱らせるか何かして動きを止めないと……多分、意味がない…」

 

 

「くっそ…!結局戦うしかねぇってかっ!?」

 

「……オォオォォォォォッ!!」

 

 

カノンノの問いにメリアは体勢を立て直しながら苦々しい表情でそう応え、スパーダは武器を構えながら舌打ち混じりに声を上げ、衛司は雄叫びを上げながら武器を構えたスパーダへと特攻する。

 

 

 

「オォ……オォオォォォォォッ!!」

 

 

「ぐっ……速ぇし…重ぇ…っ!!」

 

 

「スパーダっ!!」

 

 

特攻し、剣を振り下ろしてきた衛司の攻撃を、スパーダは両手の剣を交差させて防ぐがその重さに思わず足が下がり舌打ちする。

 

 

「スパーダっ!」

 

 

「僕達も衛司を…っ!」

 

 

 

「――そうはさせないよ、ヴェイグ」

 

 

「――……おらぁっ!」

 

 

「「!!」」

 

 

スパーダの元に向かおうと走りだそうとしたヴェイグとジュードだが、それはサレの作り出した風の刃と、アルヴィンの放った銃弾に妨害される。

 

 

 

 

 

 

「悪いね、ヴェイグ。僕の目的は…元々君だから」

 

 

「く……サレェ…っ!」

 

 

「アルヴィン…衛司がこんなめにあわされてるのに、どうしてそんな奴の手助けを…!」

 

 

「…うるせぇ、優等生!俺にだって…俺にだって理由があんだよっ!」

 

 

ヴェイグはサレに、ジュードはアルヴィンに向かい合い、言葉を出しながら構える。

 

 

「フフッ…いい表情だねぇ、ヴェイグ。…あぁ、そうだ。それならもっと面白い事を教えてあげるよ、ヴェイグ」

 

 

「面白い事…だと…?」

 

「そう、面白い事さ…。ねぇ、ヴェイグ…あの衛司君と同化している剣が分かるかい?アレは僕がウリズン帝国から頂いた星晶を利用して造った剣でね…シンプルだけど、名前は『星晶剣《セイショウケン》』っていうんだ」

 

 

「『星晶剣』…?」

 

 

サレの言う星晶剣…ヴェイグとジュードは自然に視線をそちらへと向け、アルヴィンは再びサレを睨む。

視線の先では、スパーダが衛司の攻撃を防ぎつつ、メリアとカノンノが、衛司を攻撃するタイミングを伺っていた。

 

 

「そう、『星晶剣』…これは結構特別でね…刀身にマナを送れば送るだけ形を、切れ味を変えていくんだ…あんな感じに、ね」

 

 

「――ウォォォォッ!!」

 

 

「何…っ!?うぉあぁっ!!」

 

 

「スパーダっ!!」

 

 

 

サレの言葉を合図のように、突如攻撃を奮っていた衛司の同化した剣が巨大化し、防いでいたスパーダを剣ごと吹き飛ばした。

 

 

「な…まるで剣が生きてるみたいに急に大きさが…」

 

 

「まぁあながち間違ってないね。星晶は所謂生命エネルギーみたいなものだし。…さてここでちょっとした問題。あの衛司君と同化している星晶剣…元々は真っ白だったんだけど…どうしていま真っ赤なのでしょう?ヒントは…来る途中にみたものと、今の状況かな」

 

 

不気味に笑みしたままそうサレの出した言葉にヴェイグとジュードは思考を巡らせる。

 

 

来る途中に見たものとは…恐らく先程の魔物のボロボロの死骸だろう。そして周りの状況…サレでもなく、アルヴィンでもなく、暴走する衛司でもなく…。

そして二人は以前…ミルハウストが言っていた事を思い出した。

サレは『兵を数人連れて』去った、と。

 

今…この場所に兵士の姿は無く、そしてサレの言うヒント…魔物の死骸と白だった筈の真っ赤な星晶剣。

そして…答えに行き着いた。

 

 

 

 

 

 

「――まさか……サレ…お前はっ!」

 

 

「ピンポンピンポンー、大正解ー。君達の思っている通り……兵士は彼に『殺させた』さ。催眠を掛けているから可能性が少ないとは言え、彼が人を『殺す』事に戸惑う事があっちゃったら困るからね。じっくりと『練習』してもらったよ」

 

 

「サレ…アナタって…アナタって人はぁっ!」

 

 

「フフ…良いね良いね、良い表情だねぇっ!僕はそういうのが見たかったのさ!…フフ…フヒャヒャヒャヒャっ!!」

 

 

「……ゲス野郎めが…っ」

 

 

 

告げられた言葉に、ヴェイグとジュードは怒りを露わに大剣と拳を構え、その二人の様子にサレは不気味に笑い出し剣を構える。

アルヴィンはサレを僅かに睨みながらも舌打ちと共に武器である大剣と銃を構えた。

 

 

仲間を助けようとする者と、狂気に墜ちた者とそれに利用されている者の…戦いは始まった。

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

 

「――オォオォォォォォッ!!」

 

「――チッ…めんどくさくなりやがって!」

 

 

――雄叫びを上げながら尚も攻撃を続けてくる衛司に、スパーダは舌打ち混じりに捌き続ける。

 

 

「…衛司っ……行って、バーンストライクっ!」

 

 

「っ……苦無閃《嵐》……!」

 

 

スパーダが一旦衛司から距離を取ったのを見て、カノンノとメリアは一瞬戸惑いながらもカノンノは上空から火炎弾を、メリアは無数の苦無を衛司に向けて放つ。

 

 

「グゥウゥゥ……ルオォオォォォォォッ!!」

 

 

 

放たれた攻撃に衛司は雄叫びを上げると、同化した星晶剣を巨大化させ凪ぎ払う勢いで消し飛ばした。

 

 

「オイオイ……どんだけ面倒くせぇ事になってんだよ」

 

 

 

「……衛司……」

 

 

攻撃を防いだ衛司の様子に、スパーダは溜め息混じりの苦笑を浮かべ、メリアとカノンノは心配気な表情を浮かべる。

 

 

「ウゥゥ……ォォォォォ」

 

 

 

「『願い』か…あのバカやろう…一体何を願ったんだよ」

 

 

 

「『願い』……まさか…」

 

 

「…カノンノ……?」

 

 

低い唸り声をあげ睨み付けてくる衛司に、スパーダは対抗するように剣を構えて睨み返し呟くと、カノンノはその呟きにふと思い出したような表情を浮かべ、メリアは小さく首を傾げた。

 

 

 

「衛司…言ってたんだ。皆を守れるぐらいの『力』が欲しい、って。だから…もしかしたら衛司の『願い』って…」

 

 

「『力』か…。あの馬鹿やろう…だからあんな厄介な姿してやがんのか」

 

 

「グゥウゥゥ…ゥォォォォォっ!!」

 

 

 

カノンノの言葉にスパーダは納得したように頷いた後衛司を見ると、衛司は三人を睨んだまま雄叫びをあげる。

その様子にカノンノとメリアはどこか悲しげな表情を浮かべる。

 

 

「……衛司……」

 

 

「本当に…この馬鹿やろうが。衛司…嫌でも元に戻してぶん殴ってやらぁっ!」

 

 

「衛司…絶対、助けるからねっ!」

 

 

「オォオォォォォォッ!!」

 

 

三人は武器を手に衛司に向かい合いそう言うと、衛司は一層雄叫びを上げ同化した星晶剣を構える。

救うための闘いは…これから始まる。

 

 

 

 

 




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