テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ─そして、僕の伝説─   作:夕影

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第三十三話

 

 

 

「――ぶるぁあぁあぁぁぁっ!!」

 

 

「――全員、散ってっ!」

 

 

――戦闘開始の合図のように、全員が武器を手にした瞬間、武器である大斧を奮い上げ、雄叫びと共にバルバトスが接近してくる。

それに対し僕がそう対処の声をあげると、全員がその場を退く。

 

僕達が退いた数秒後、そこに斧が力強く振り下ろされ、先程まで僕達が居た場所の地面はクレーターを作られた。

 

……マジすか。

 

 

 

「せいっ!!」

 

 

「……ふっ!」

 

 

 

斧を振り下ろしたまま無防備となっているバルバトスに、しいなが札を、メリアが苦無を投げる。

 

 

「――甘っちょろいんだよおぉおぉぉっ!」

 

だがそれらは、バルバトスに当たる直前に雄叫びと同時に振り上げられた斧と共に吹き上がる毒の陣《ポイゾニックヴォイド》によって弾かれる。

 

「なら……フレイムドライブっ!」

 

 

「これで……ライトニング・ボムっ!」

 

 

弾かれた札と苦無を見た瞬間、準備していたカイルが火炎弾を、僕が雷の無数の玉を発現させる。

 

 

「――はっはぁっ!!」

 

 

それに対し、バルバトスは高らかに笑うと飛ばされた火炎弾と雷の玉を『殴って』打ち消した。

 

 

「ちょ…規格外すぎじゃないかい!?」

 

 

「ははぁ…勝てる気しないね…」

 

 

「はっ。この俺に勝とうと思っているのなら…こんなちまちまとした攻撃はせん方がいいなぁ」

 

動揺する僕達にバルバトスはまるで鼻で笑うようにそう言うと、再びゆっくりと斧を振り上げ構える。

 

 

「――まさか、こんなもので終わりじゃないだろう?さぁ…俺をもっと楽しませてみろ!!」

 

 

「――それならこれですっ!」

 

 

「――くらえ、バホーっ!!」

 

 

 

バルバトスの言葉に、そう僕達の後方にいるエリーゼとティポの声があがる。

見るとエリーゼの足元からは紫の魔法陣が出現しており、今詠唱を終えた瞬間であった。

 

 

「墜ちてください…ネガティブゲイトっ!!」

 

 

「っ……ほぅっ!」

 

 

エリーゼの叫びと共に、バルバトスの足元から無数の黒い手が現れ攻撃を開始する。あれ…ネガティブゲイトってあんなのだったっけ…?

しかし、その無数の手の多種多様な攻撃に流石のバルバトスも動きが鈍る。

 

 

「よし…いくよ、カイル!」

 

 

「う、うん!…行くぞ、バルバトスっ!!」

 

 

バルバトスの様子にしいなは一度決心したように頷くとカイルにそう言った後、しいなは札を、カイルは剣を構えいまだエリーゼのネガティブゲイトに動きを鈍らされているバルバトスに走り出す。

そして……

 

 

 

「受けな…風刃縛封っ!!」

 

 

「くらえ!屠龍連撃破っ!!」

 

 

同時に放たれる二人の奥義。いまだに身動きが取れないバルバトス。

決まった。そう、思った瞬間であった…。

 

 

 

 

 

 

「――鬱陶しいんだよ、屑がぁっ!!」

 

 

 

――斧を一振り。そう、ただそれだけで……ネガティブゲイトが発動されていた地面を打ち消し、それと同時に起こされた衝撃波でカイルとしいなの勢いを止めた。

 

 

「ぶるあぁあぁぁぁぁっ!!」

 

 

「があぁあぁぁっ!?」

 

 

「く、うぁあぁぁぁっ!!」

 

 

雄叫びと共に奮われる拳。勢いの止められた二人に放たれたそれは見事に直撃し、二人は壁へと叩き付けられたら。

 

 

「……っ!カイルっ!しいなっ!!」

 

 

「エリーゼ、急いで回復をっ!!」

 

 

「は、はい……っ!!」

 

 

壁に叩き付けられた二人を見て、メリアが声を上げる。

僕はすぐにエリーゼに回復をお願いする。

 

「そうはさせんぞ、小娘。貴様ら仲良く…葬ってやろう」

 

 

だが、バルバトスはそれを許すこともなくそう言うと斧を両手に持ち切っ先を此方に向ける。

ヤバい…あれはまさか…っ!

 

 

「メリア、エリーゼは僕の後ろに下がってっ!ヤバいのが来るっ!!」

 

 

「えっ!それじゃ…衛司が……」

 

 

「大丈夫、僕の木刀はそう簡単には折れないからっ!!」

 

 

僕の言葉に迷うエリーゼだが、一度頷いた後、回復の詠唱を始める。メリアもわかってくれたのがエリーゼの前に守るように立った。

 

僕は二人よりも前に出て、木刀で防ぐように立つ。

 

 

「――ほぅ。小僧…貴様、そんな棒っきれで俺の技が防げるとでも…?」

 

 

「勿論。防いでみせるさ…じゃなきゃ、全滅だからね」

 

 

「――その自信、面白い。ならば貴様は此処で…微塵に砕けろっ!――ジェノサイドブレイバアァァァアァァッ!!」

 

 

 

雄叫びと共に向けられていた斧の切っ先から、まるで殺意の塊のような黒い砲撃が放たれる。

僕はそれを、真っ向からただ木刀で…防ぐ。

 

 

「っ!!?ぐ、っ…あぁぁぁぁっ!!」

 

 

勿論、普通にどう考えても防ぎきれる訳がない。

正直痛い。『キツい』とかではなく『痛い』。

この質量…普通の木刀だったら即折れだったろう。そこら辺は流石世界樹の木刀…この質量の攻撃に折れるような音も立てず防いでくれている。

 

 

後ろには僕を信じてくれてる二人がいる。奴《バルバトス》の後ろには早く回復させないといけない仲間が二人がいる。そして…この木刀がある。

なら…後は僕の頑張り次第だろうっ!!

 

 

「ぐ…っ……ヴォルト、…ライトニング…シェルっ!!」

 

 

『(――お任せを、主――!)』

 

 

 

ヴォルトの頭に響く声と共に前方に出現する紫色の膜。その膜によって木刀への負担が少し軽くなる。

 

――防ぐ、防ぐ、防ぎきる!

木刀から腕から、全身へと衝撃が走る。

 

 

「ぅ…っ…頑張って…みせるさ…っ!!」

 

 

 

――防ぐ、防ぐ、防ぎ続ける。

そして……砲撃が、止んだ。

 

 

「――…やった…防ぎきっ――」

 

そう、安心した瞬間であった。

一瞬の気の緩み、前方を見直した刹那――強力な衝撃が、僕の体を襲った。

 

 

「――え……」

 

 

何かを確認しようとした瞬間、衝撃によって飛ばされる筈の体が、首に痛みを感じたと同時に跳ばずに宙へと浮く。

そして、分かった…。

 

先程の衝撃の正体はバルバトスの体当たり、そして首の痛み、宙に浮く身体の正体は……バルバトスに首を掴まれ、浮き上がらされていた。

 

 

 

 

 

「ごふっ…ごふっ……が…は…っ…」

 

 

正体が分かった瞬間、身体を強烈な痛みが襲いだす。

痛い、痛い、痛い…これは…多分…軽く骨が逝ってしまっただろう。苦しむ僕を、掴まえた張本人であるバルバトスは…不気味に笑みを浮かべている。

 

 

 

「くっくっ…中々面白い小僧だ。育てれば十分、俺の渇きを癒してくれそうだ」

 

 

「がっ…ぐ…はな、せぇ…っ!」

 

 

「衛司…っ!」

 

 

 

目の前で不気味に笑いながら言葉を出すバルバトスに、そう声を出すも、身体の痛みによって抵抗する力が出ない。

ヴォルトを出そうと思ったけど、今の状態で出したらヴォルトが危険である。

後方からエリーゼの声が聞こえるが、其方見ることも出来ない。

 

 

「だが…残念だ。貴様はここで……骸になれ」

 

 

「ぅっ……ぐぅ……ぁ…」

 

薄れだす視界、そんな中ゆっくりと振り上げられる斧と、バルバトスの不気味な笑み。

殺される。そう思った瞬間に脳裏をよぎる…元の世界での交通事故。

死という恐怖が僕を襲う。

そして、振り上げられた斧はゆっくりと僕へと―――

 

 

 

「――……衛司を…離せえぇえぇぇぇっ!!」

 

 

――振り下ろされる直前、メリアのそんな声が聞こえ…僕の意識は無くなった。

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

 

――衛司が危ない衛司が危ない衛司が危ない衛司が危ない……。

 

 

そう思った瞬間、私の反応は早かった。

 

 

「――……衛司を…離せえぇえぇぇぇっ!!」

 

 

「――ぬぅっ!?」

 

一瞬。まさにその内に……私はアイツの腹部を斬り、手から落ちた衛司を受け止めた。

――意識がない。気絶だろう。死んでるなんて認めない…認めない認めない認めない認めない。

 

 

「く、くは、くははははっ!面白い、面白いぞ小娘っ!!」

 

 

――五月蝿い。

 

 

「はははははっ!貴様こそ、俺の渇きを癒やす相手にふさわ――「五月蝿い」――ぬ…?」

 

 

 

いまだに叫ぶ相手に、私は言う。

アイツのせいで、アイツのせいで……アイツのせいで……っ!!

 

 

「……お前のせいで衛司は…衛司は衛司は衛司は衛司は衛司はぁぁぁっ!!」

 

 

高ぶる感情。…私は此処まで感情的になった事はあるだろうか?

いや、ないだろう。

どうしてこうなったの?

私は分からない。

ただ目の前で衛司が…見たくない姿をしているから。

だから、だからだからだからだからだからだからだから―――

 

 

 

 

「―――コロス」

 

 

冷えた声。その声と共に、私の体の周りに無数の様々な色の輪が現れる。

限界突破《オーバーリミッツ》。

 

私の体が、私の心が、強くなった気がした。

 

 

 

「――斬――」

 

 

一言。私はそう言うと跳び、アイツの体を一閃する。

 

 

「――ぬぅぐっ!?」

 

 

「――斬――」

 

 

手にした短刀に血液が見える。

アイツがひるむのが見える。

だけど、私の攻撃は止まらない。

 

 

「――斬――斬、斬、斬、斬、斬斬斬斬斬斬斬斬斬っ!!」

 

 

斬る、斬る、斬る、斬る、斬り続ける。

止まらない、止められない。

傷だらけになるアイツの姿。

そして私は……

 

 

 

「――終斬――」

 

 

倒れ掛けるアイツの腹部を通り過がりに一閃。

後方から倒れる音が聞こえた。

…殺してはいない。

思ってしまったけど、きっと衛司に怒られてしまうから。

だから、だから……

 

 

「――…起きてよぉ…衛司……」

 

 

私は気絶したままの彼に…そう言葉を出すことしか出来なかった――。

 

 

 

 




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