テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ─そして、僕の伝説─   作:夕影

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今回も前回に引き続きオリジナル話です。


第二十六話

 

 

 

 

 

「――ん……んんー…っ」

 

 

 

ゆっくりと重いまぶたを覚ましながら、上半身を起こし、伸びをする。

うーん……よく寝たぁ。

如何せん疲れていたのか大分寝てしまっていたようだ。

 

なんでこんなに疲れていたのかというと……昨日、依頼から帰ってくると、そこにはこの『ルミナシア』とは別の世界からやってきたというカイル、ロニ、リアラ、ジューダスの『ディスティニー2』メンバーが居たからだ。なんでも…セルシウスの話を聞き、整理したリタが、ハロルドと協力し、発明した『異次元チューニング装置』で、異次元にあるというヒトの祖の遺跡『ヴェラトローパ』を呼び込もうとしたらしいのだが……それに失敗し、カイル達を呼び込んでしまったとか。

 

それで昨日はそのまま来たばかりで泊まれる場所がないカイル達の為に、元の世界に戻れるまでの間このアドリビトムの一員にしてバンエルティア号の一室を使わせる事となり、その一室の掃除を手伝う事となったのだった。

 

 

「――…お腹減ったなぁー……ご飯食べにいこうか」

 

 

大分寝たいたのか起きた時から来ている食欲に呟き、とりあえず立ち上がろうとして……気付いた。

 

 

「――……ん……?」

 

 

改めてベッドを見直すと……僕の隣の毛布がやけに『膨らんでいた』。

 

 

「……何だろう」

 

 

とりあえず、僕は恐る恐ると毛布を掴み、ゆっくりと持ち上げて―――

 

 

 

「―――すぅ…」

 

 

―――ゆっくりと下ろした。

 

 

……よし、落ち着け、冷静になれ、クールなれ乾衛司。どうして、何故、僕のベッドの毛布の僕の隣で、幼女が、一糸纏わぬ状態で眠っているんだ?あれか、僕は昨日のうちに、大人の階段を上ってしまったのか?いや、それにしても相手が幼女ってそれは絶対に上っちゃ不味い階段だろ、十八禁送りだろ。いや、落ち着くんだ僕、乾衛司。今の僕に服の乱れ等は一切ないし、特有のそういう臭い等も一切ない。イコールあれだ、これは夢だ、幻覚だ、一般の思春期男子が共通して見てしまう一種の幻なんだ。そうだ、そうに違いない。その証拠に今度こそ毛布を捲れば何も―――

 

 

 

「――ん……すぅ…すぅ……」

 

 

 

――――ゆっくりと捲った毛布を戻すことにする。

 

「……ふぅ……」

 

 

そしてゆっくりと二、三回程深呼吸すると―――

 

 

 

「あばばばばばばばΣ□@υっ◆っ!!?」

 

 

――自分でもよくわからない奇声を発しながらベッドから飛び退いた。

うん、大混乱してます。

 

 

「――ん……んんっ……?」

 

 

 

そんな僕の奇声に幼女(改めて今気付いたけど色々間違えてた)……少女は目が覚めたのかゆっくりとベッドから体を起こした。お願いだから前を隠してください……って、あれ……?

 

 

 

 

 

 

「……もしかして…君は……あの時の……?」

 

 

やや混乱しながらも改めて少女を見直すと……一糸纏わぬ状態だから上手く分からなかったが、その頬にある雷を描いたような独特の模様を見て思い出した。

彼女はあのリーゼ村で対峙した……雷の精霊『ヴォルト』だ。

彼女…ヴォルトは此方を確認したのかベッドの上でゆっくりと正座をすると……何故か僕に向けて頭を下げてきた。

 

 

「――…おはよう御座います、主《あるじ》」

 

 

「……へ…?あの……主って――」

 

 

 

「―――衛司ーっ!?大声が聞こえたんだけどなに……か……」

 

 

――この時ほど、僕は自分の部屋に鍵を閉めることをしない事を後悔する事はない。

さて……今僕を心配して来てくれたんであろうカノンノに僕達はどう見えるんだろう。

 

まぁ……言わずとも分かるよね…?

 

 

「――あの、カノンノさん…これには色々訳がありまして…」

 

 

「……うん……わかってるよ……」

 

 

「……ならせめてその膝から獅子を放ち掛けない闘気をおさめて下さい。と、とにかく話し合おう」

 

 

「……うん、そうだね、話し合いは大切だよ。だから――O☆HA☆NA☆SI☆しよう?」

 

 

――この日、彼女の膝は凶器だと、文字通り身を持って知りました。

 

 

 

 

―――――――――――――

 

 

「――えっと……つまり、どういうこと……?」

 

 

目の前にいる人物、アンジュは説明を聞くとそう口を開いた。

今彼女の目の前では……右目付近に青あざを作った状態で苦笑いをしている僕と、僕のその右隣で不機嫌そうな表情を浮かべているカノンノと、僕の左隣で小さく小首を傾げる…ロックスさんが持ってきた俗に言うゴスロリ服を身に纏った雷精霊『ヴォルト』と、その隣で笑みを浮かべている氷精霊『セルシウス』が居た。

うん、何だろうこのカオス。

 

 

とりあえず、苦笑を浮かべているアンジュに、再度説明しようとセルシウスが口を開いた。

 

 

「…とりあえず、この状況であるから私が変わりに簡単に説明すると……この少女、雷を司る精霊『ヴォルト』が衛司に助けられた時、どうにも彼女が衛司の事を気に入ったらしく…衛司の中に文字通り入って、今の今まで衛司の使役となる繋がり《リンク》を作っていて、それがちょうど昨日、衛司が眠っている間に終わり、今朝のような事になっていたらしい」

 

 

 

「……簡単に説明してくれてありがとう、セルシウス。とりあえず理解はしてきたけど…衛司はまたなのね…」

 

「…理由はよく分からないけどその呆れたような表情と溜め息は止めてください。…でも『使役』って事は…僕もリヒターさんみたいに、彼女…ヴォルトを呼び出したり、ヴォルトの力を使用出来たりするの…?」

 

 

アンジュの表情に思わずそう言葉を出した後、『使役』という単語に、まず先に浮かんだリヒターさんとセルシウスの事を思い出して聞くとヴォルトは小さく頷いた。

 

 

 

 

 

「はい、主。…ですが、主の場合は多少、肉体の『情報』が他者とは『違う』為、色々と制限が掛かってしまいますが…」

 

ヴォルトの言葉に僕は小さく頷く。

肉体の情報…というのは『ドクメント』の事だろう。つまり、ヴォルトも僕のドクメントの状態の事を知っていて…わざわざ言葉を分かりにくく濁してくれたんだろう。

そう思うと僕はそっと、ヴォルトの頭を撫でた。

 

 

「ううん、それだけでも…僕に力を貸してくれてありがとう。これからよろしくね…?」

 

 

「―――…主のお望みとならば」

 

 

僕に頭を撫でられ、ヴォルトは少し驚いたような様子を見せた後、どこか嬉しげな微笑を見せそう言うと、突如小さな光へと変わり僕の胸元から体の中へと消えていった。

セルシウスはその一部始終に驚いたような表情をしていた。

 

「…これは珍しいな…使役された精霊が、自由である外よりも使役者の中にいる事を望むとは……どうやら、相当気に入られているようだな」

 

 

「そういうものなのかな……でも自分の中に別の誰かが居るって、不思議な感じだなぁ……。……あとカノンノ…さん…誤解って分かったんですから、そろそろ機嫌を直して頂けませんか…?」

 

 

「……別に機嫌なんか悪くないもん」

 

 

セルシウスの言葉に苦笑を浮かべてそう言い、ヴォルトが入っていった自分の体を見ながらそう呟く。その後、いまだに機嫌が悪そうなカノンノの方を見て言葉を出すが、カノンノは顔を逸らしてそう答えてきた。

ぅー……どうしよう…。

 

 

「……全く、衛司は相変わらずみたいね。……ぁ、そうそう、衛司にお客さんよ?」

 

 

 

「え……僕に……?」

 

しばらく呆れた様子のままでいたアンジュが思い出したように出した言葉に、僕は思わず首を傾げてしまう。

僕にお客って……依頼でなんか間違いでもしてしまっただろうか…?

 

そう考えていると扉が開く音が聞こえ、そちらを見てみると―――

 

 

「――よう。久しぶりだなぁ、優等生二号君」

 

 

「――アルヴィンっ!?」

 

 

――そう、扉から出て来たのは以前、リーゼ村でヴォルトと対峙した際に一緒に戦ってくれたメンバーの一人である、リーゼ村で雇われている傭兵のアルヴィンであった。

というか『優等生二号君』て……。

 

 

 

「どうしてアルヴィンが……」

 

「ん、まぁ当然の反応だよな。話せば長くなるんだが……衛司達があの依頼を終わらせて帰って数日は洞窟は大人しくなったんだが……やっぱそこら辺、村長が不安でよ。んで、結局どうするかって話になった時、おたく等アドリビトムが『星晶』を消費せずに安心して暮らせる村を作ってるって噂を聞いた奴が居てな。それで…良けりゃリーゼ村の村人達をその作ってる村に移住させてくれないかって話をしに来たわけ。勿論、村人達全員で出来る限りの手伝いもする事も前提だぜ?」

 

 

 

 

 

アルヴィンの話を聞き、その場の全員が驚いた。『星晶』を消費せずに安心して暮らせる村……『オルタ・ヴィレッジ』を確かに僕達は一つの可能性として作っている訳だが……まさかこんな展開で一気に手伝う人員が増えてくれる事は意外だった。

 

「ほ、本当なの…アルヴィン…?」

 

 

「おう。ちゃんと、村長達の話の結果でもあるんだぜ?…で、どうだ、リーダーさん?」

 

 

「……確かに私達とっては嬉しい話だし、困ってる人達を放ってはおけないもの。分かりました、これからよろしくお願いしますね」

 

 

アンジュの言葉に、アルヴィンはニッと笑うと二人は手を出し、協力することを誓うように握手をした。

その様子に見ていたカノンノやセルシウスは嬉しげに表情を浮かべる。多分、僕も同じようになってるだろう。良かった……ただ、これからはあのリーゼ村からこの船に村人を誘導させるのが大変そうだけど。

 

 

「んじゃ……これからは俺や後でミラや優等生君も村の精鋭連れてこのギルドで働かさせてもらうことになるからな。改めてよろしく頼むぜ、優等生二号君?」

 

「うん。これから宜しくね、アルヴィンっ!」

 

 

僕とアルヴィンはそう言って笑い、誓うように握手をした。

 

 

 

 

 

 




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