テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ─そして、僕の伝説─   作:夕影

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第十九話

 

 

 

――あのアルマナック遺跡の事から数日が経った。

あのラザリスという少女が出て、何か起こるんではないのか、と思われていたけど、今の所、特に大きな事件等は起こってないらしい。

 

 

因みに、数日経っても僕は現在進行形で、バンエルティア号の医務室で絶対安静という状態でベッドに寝かされていた。

なんでも思っていた以上に僕の身体の体力消費が激しいとかなんとか……。多分、というか確実にユーリ達の忠告を気にせず一日中鍛錬or依頼の日々が多かったのが理由だったりするだろう。

でも正直、寝てばっかりじゃ身体も鈍るだろうし、何より暇だから、医務室を管理してるアニーが居ない間に目を盗んで木刀で素振りでもしよう、と思っていたんだけど……クラトス師匠が『調べたいことがある』って言って木刀を持っていかれた。木刀で調べたい事って何なんだろう…?

 

ただ暇で本当に…泣きたい。

 

 

そういえば、例の精霊の場所の暗号が解けたらしい。後はその場所を照らし合わせて向かうだけ、らしい。

 

それまでに身体も治ってるといいんだけどなー…。

 

 

――と、綺麗に現状報告兼現実逃避をしてみたんだけど……――

 

 

 

「………あーん……」

 

 

「…………………」

 

 

 

――どうしてこうなった。

よし、まずは落ち着け。落ち着いてこうなるまでの経緯を思い出せば、こうなった原因が分かるはずだっ!

 

 

僕、とりあえず医務室で横になりながら暇なので、アニーから借りた本を読んでた → 気付けばお昼になってて、お腹が減ってきた → と、いうタイミングでメリアが昼食を持って来てくれた → 僕が喜んで、メリアにお礼を言って持ってきてくれた昼食を食べようとお箸に手を伸ばすと、メリアにお箸を取られた → よく分からず首を傾げていると、メリアがお箸を使って昼食のおかずを挟んで僕に向けてきた → こうなった。

 

 

――駄目だ、全っ然分からない。

 

 

しかも、何故に『あーん』!?

 

これは、しかもかなりキツい。

この状況、他者から見たら『チッ、リア充しねよ』って思われて当然だと思うけど、代わりたい人いるなら是非とも代わってもらいたいよ!

これキツいんだよ!?やられている側、スッゴい恥ずかしくて死にたくなるんだよっ!?

 

 

いや……まだだ、まだやられんよっ!

この状況を回避する方法はまだあるんだっ!

 

 

「――えっとメリア……僕は決して腕を負傷している訳じゃないからそんな必要は……」

 

 

「……あーん……」

 

 

「ほら、メリア!僕スッゴい元気だからさ、お箸を渡して欲しいんだけど……」

 

 

「……あーん……」

 

「……あ、あれを見てメリア!あんな所にUFOがっ!」

 

 

「……あーん……」

 

 

「……メリア…僕、実はまだお腹がへってなくて…」

 

 

「……あーん……(涙目+上目遣い)」

 

 

「……あーん」

 

 

 

……負けたよ、完敗だよ。

勝てるわけ……ないじゃないか。メリアはそれが嬉しいのか満面の笑みを浮かべる。メリア、君は悪魔か……?

 

 

 

 

仕方無く、メリアがこちらに向けるおかずをゆっくりと口に含む。

正直言おう。恥ずかしすぎて全っ然、味が分からない。

 

メリアはそんな事お構いなしにお箸でおかずやご飯をつかんで僕に向ける。

はぁ……こんな所もし誰かに見られたら僕は…―――

 

 

 

「おーい、兄弟《ブラザー》!見舞いにきてやった……ぞ…」

 

 

「はいはい、寝たきりには甘い物がつき物って事でケーキ持ってきてあげたわ……よ…」

 

 

――そんな時、素晴らしいくらいのタイミングでヴォイトとロッタが入ってきて、静止した。

 

さて、問題だ。

今、二人には僕達がどう見えるだろう…?

正解…?うん、それはね……

 

 

 

「――私には衛司の事が分からないっ!」

 

 

「えっ、ちょ、ロッタさん!?どういう事っ!?かなり勘違いしてませんっ!?お願いだから走り去らないでっ!!」

 

 

「――ぁー……すまん、ブラザー……邪魔したな…」

 

「待ってヴォイトっ!そんな顔しながら出てかないでよっ!お願いだから助けてよっ!勘違いだから助けてよぉぉぉっ!!」

 

 

――こうなるのさ。

この後、なんとか二人の誤解を解くことが出来ました。

もうさ……早く医務室から出たいよ。

 

 

 

 

―――――――――――――

 

 

「――そ、そんな事があったんだ……」

 

 

「……うん…泣きたくなったよ」

 

 

医務室に入ってからの出来事をある程度話すと、それに対してカノンノは苦笑いを浮かべていた。

 

 

「それにしても……メリア、そんな事したんだ……(羨ましいなー…)」

 

 

「うん…そうなんだけど……どうかした…?」

 

 

「あ、ううん、何でもないよっ!」

 

僕が話した後、ボーっと僕の顔を見ていたカノンノに小さく首を傾げると慌てた素振りを見せる。

 

 

「そ、それよりどうかな?今回の風景は……?」

 

 

そう言って、医務室に来たときから僕に渡して見せてきたスケッチブックの方を見るカノンノ。

 

 

「うん……ごめん、やっぱり分からないや」

 

 

「そっかぁ……力になれると思ってたけど…ごめん。何も出来なかったね…」

 

 

スケッチブックに描かれた風景に首を振って応えるとそう言って俯いてしまうカノンノ。

確かにこの風景は分からないけど……『記憶がない』って嘘を付き続けるのって、やっぱり罪悪感が出る。

そう思うと、俯いているカノンノの頭をそっと撫でる。

 

「別に気にしないでいいよ。こっちこそ、風景の手掛かりになれずにごめん。だけど、きっと次もある。だから、一緒に頑張ろ?」

 

 

「ぁ、ありがとう…」

 

 

僕が頭を撫でながらそう言って微笑んで見せると、カノンノは頷いた後、顔を赤くして僕の顔を見た。

 

 

「……?…どうかした…?」

 

 

「うん…何だか今の顔…。お父さんとお母さんみたいだった…」

 

 

 

「えっ……?」

 

 

カノンノの唐突なその言葉に思わず驚いてしまう。いや、そりゃいきなりそんな事言われたら驚くけど、それよりも……確かカノンノの両親は……―

 

 

「…でも、実際は、お父さんやお母さんの事なんて、何一つ覚えてないんだけどね…。お父さんもお母さんも、立派な医者で…でも、私が生まれてすぐに、戦争で死んでしまったって。ロックスに、そう聞いたんだ」

 

 

そう、僕もその事はロックスさんから聞いてしまった。

彼女の両親は、前作のように…亡くなっているんだ。両親の顔を見て、覚える前に…。

 

 

「……なんか……ごめん…」

 

 

「ううん、いいの。お父さんの事もお母さんの事も何も知らないけれど、衛司のさっきの顔を見たら、こんな風に笑ってくれてたのかなって思ったの」

 

 

「そう……寂しくはない…?」

 

 

「大丈夫だよ。寂しい時もあったけどロックスが居てくれたし、それに、今は皆や衛司がいるから平気だよ」

 

 

「……そっか」

 

 

 

 

 

そう言って微笑むカノンノに、僕は一言そう言うと、再びカノンノの頭を撫でた。何故だか彼女の笑った表情を見ると、どこか安心出来るから。

 

 

「ん……ありがとう。また、何か描けたら見せて上げるから、絶対に見てね」

 

 

「…うん、分かった。約束するよ」

 

 

カノンノの言葉に頷いて応えると、僕達は指切りで、約束をしたのだった。

 

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

「――…体調は大丈夫そうか?」

 

 

それから暫くして、医務室に僕以外が居なくなった頃、僕の木刀を持ってクラトス師匠が帰ってきた。

 

 

「はい……色々あったけど、至って元気です」

 

「そうか…。…お前の木刀について調べさせてもらったが…色々と分かった事がある」

 

 

僕の言葉に、クラトス師匠は小さく笑った後、真剣な表情になりそう言った。

僕の木刀について……?

 

 

「この木刀だが……恐らくこれは『世界樹』から創られている」

 

 

「『世界樹』から…っ!?」

 

 

クラトス師匠の言葉に、思わず驚いてしまう。世界樹から創られた木刀って……。

 

 

「始めはお前が此処に来てから今まで使って、どうして折れないどころか皹すら入らないのか気になって調べてみたんだが…納得出来た。いくら他の木刀より強度が高いとはいえ、今のお前の技や動きの負荷には耐えられんだろう。だが、世界樹から創られているのなら、それ程の強度があってもおかしくはないだろう」

 

 

「…そうだったんだ…」

 

 

クラトス師匠の説明を聞いてその木刀を見る。確かに『これ結構使ってるけどどうして折れないんだろ』とか気になってたけど……世界樹から創られてたのか……。

 

…何でそんなの、僕持ってたんだろ…?

 

 

「……衛司」

 

 

そう考え込んでいると、クラトス師匠に名前を呼ばれ見ると、クラトス師匠はいまだ真剣な表情で此方を見ていた。

 

 

「…今回の事に関して、私はお前の事は深くは聞かん。だが……困った時や、一人で考え込みそうになった時は相談くらい聞いてやろう。あまり、一人で考え込むな」

 

 

 

「…はい。ありがとうございます」

 

 

言った後、小さく笑って見せたクラトス師匠に、僕は小さく頷いて礼を言った。

一人で考え込むな…か……。そう…だよね。僕は……一人じゃないだ。

 

 

クラトス師匠の言葉で、改めて……僕は仲間がいる有り難みを知った。

 

 

 

 




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