テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ─そして、僕の伝説─   作:夕影

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第十八話

 

 

 

「――我々の力を見るがいいっ!!」

 

 

「――ディセンダー様を侮辱した罪は重いぞっ!!」

 

 

「チッ……一々、五月蝿いっ!!」

 

 

――アンジュとジェイドの術の詠唱を暁の従者の二人組の攻撃からメリアと一緒に守りながら、暁の従者の言葉に思わずそう呟いてしまう。

 

この二人組……元は一般人だけど、『願いを叶える存在』の力もあってか、攻撃の一撃一撃が重い。メリアも僕ほどではないけど、苦戦するような表情をしている。

 

 

「くそっ……覇道滅封ッ!!」

 

 

二人組の攻撃から一旦下がると、片方に向け、アスベル程大きめではないけど灼熱波を飛ばす。

――だが、

 

 

「ははっ……なんだその攻撃はっ!!」

 

 

当たる直前、狙ったのとは別の片方が『バリアー』を唱え、弾かれる。くそっ……相手は今までの魔物と違って生身の人間だから、力を出し過ぎても駄目なのに……抑えたら先程のように『バリアー』で防がれる。

チッ…本当に面倒くさいっ!!

 

 

「二人共、下がってっ!!」

 

 

不意に後ろからかかったアンジュの声に、僕とメリアは後ろへと下がる。それと同時に、ジェイドとアンジュが詠唱を終え、術を発現する。

 

 

「食らいなさい……スプラッシュッ!!」

 

 

「これでどうかしら…レイッ!!」

 

ジェイドとアンジュの声が響くと同時に、暁の従者の二人の頭上から滝のような水流と複数の光線が降り注ぐ。

……と、いうか……二人共手加減してなくない…?

 

 

 

見ていてそう思ってしまう程の術の勢いであったが……暁の従者の二人は多少の傷は見えたがいまだ健在していた。

 

 

「はははっ……今度はこちらから行くぞ。吹き飛べっ!!」

 

 

「ッ……皆、散って!!」

 

 

僕の声と同時に皆がその場を退くと、僕達が居た場所の石が浮き上がり、そして急降下して潰れる。あれは…『トラクタービーム』か…。

 

 

「――どこを見ているっ!!」

 

 

「――ッ!しまっ……くぅっ!!」

 

 

「……衛司……っ!!」

 

トラクタービームを認識した直後、僕が退いた位置に先行していた暁の従者が迎え撃ち、それに対応しきれず一撃貰い、あまりの重い攻撃で吹き飛ばされる。

それに気付いたメリアが途中で支えてくれ、なんとか壁に直撃する事は避けれた。

 

 

「……衛司……大丈夫…?」

 

 

「…っ……うん、なんとか。……ありがとうね、メリア……」

 

 

メリアにそう応えながら体勢を立て直し、再び暁の従者の方を向く。

くそっ……結構キツいな……。

 

 

 

「やれやれ……これは最早、異様というよりも『異常』ですね…」

 

 

「これこそディセンダー様より頂いた力だっ!!」

 

 

 

 

「我々はこの力で、ディセンダー様をお助けするのだっ!!」

 

 

ジェイドの呟きに、暁の従者達は自分達の力を自慢げにそう言う。

この人達…まだ分からないのかよっ!!

 

 

 

 

 

 

 

「――…黙れよ」

 

 

僕の口から出たその言葉に、暁の従者が此方を見ると、僕は再度、手にした木刀を構える。

 

 

「――ねぇ、なんで分からないんだよ…。確かに、アンタ達の言いたい事は分かる……でも、今のアンタ達のやり方じゃ、帝国や星晶を独占する国と変わらないって……どうして気付かないんだよっ!!」

 

 

「我々と腐敗した国は違うっ!!我々は、ディセンダー様のお力を使い、恵まれぬ民を救っているのだっ!!」

 

僕の言葉に直ぐ様否定するようにそう言ってきた暁の従者。この人達は…完全に『願いを叶える存在』に目を奪われて、周りを見失ってるんだろう…。

なら……。

 

 

「そう……なら……僕はアンタ達のやり方を……全力で否定してやるっ!!」

 

 

 

僕がそう、強く宣言したと同時に、僕の周りに様々な色の円が姿を表した。前に見たことがある…そう、限界突破《オーバーリミッツ》だ。

 

そして、オーバーリミッツが出たのを確認すると、僕は先程よりも強く走り出す。オーバーリミッツをしている為、先程とは違うスピードに、暁の従者も反応が遅れる。

 

 

「――は…ァアァァァァッ!!」

 

 

「ッ……貴様…一体何をっ!?」

 

僕は暁の従者の近くまで接近すると、手にしていた木刀を地面へと突き刺し、集中する。

突然の僕の行動に、暁の従者は勿論、後ろで僕の様子を見ているメリア達も表情が変わるのを感じる。

 

だけど、今はただ意識を集中させる。

以前、クラトス師匠とユーリが言っていた。『技はイメージだ』と。

その言葉を思い出しながら、集中し、イメージを高める。

すると同時に、僕の周りに巨大な陣が浮かび上がり、それは暁の従者の地面まで伸び、メリア達の地面の前で止まる。

 

 

「なッ…これは…一体っ!?」

 

 

「――ハァ…これで……どうだぁっ!!」

 

陣が浮かび上がると、今度は地面から突き出る氷をイメージする。そしてイメージを完成させ、強く、そして対象である暁の従者の二人に向け、発現させるっ!!

 

 

「―これが…僕なりの…大技だぁっ!!『守護ッ!大氷槍陣』ッ!!」

 

 

 

 

そう宣言した瞬間、浮かび上がっていた陣から複数の大きな氷槍が出現し、陣内の暁の従者の二人を貫き、ダメージを与えていく。

 

――『守護大氷槍陣』――

 

 

僕が守護方陣の使えるクラトス師匠やユーリ、氷を扱うヴェイグにアドバイスを教わりながら考えた僕なりの大技だ。言うなれば『守護氷槍陣』の強化版。守護氷槍陣と違うのは陣の範囲が広がり、地面から現れる氷槍の大きさだ。威力は見ての通り。先程までダメージを一切気にしてなかった暁の従者が完全に息を乱している。これでも一応、まだ抑えめな方なのだ。

 

 

 

 

 

ただ、これの難点は……。

 

 

 

「――…ハァ……ハァ……ハァ…」

 

 

ゆっくりと木刀を下ろしながら呼吸を整えていく。難点……それは…僕はオーバーリミッツやこういう大技を使った後の体力消費が半端ない。正直今、立ってるのがやっとだ。

 

 

「……衛司……」

 

 

「ハァ……大丈夫、だよ…メリア…。メリア…ジェイドさん…アンジュ…ちょっと、待ってて下さい…」

 

 

僕を心配そうに見るメリアに呼吸を整えながらそう言った後、三人にそういうと、傷付きながらもいまだに敵意を剥き出しにしている暁の従者に向き直る。

 

 

「くっ……やるな。だが、まだ屈しはせんぞ。一部の者ばかりが益を得る腐った世の仕組み。必ずやディセンダー様が打ち砕く」

 

 

「搾取のない、平等で平和な世界を望んでいる者達の声の為にも……ディセンダー様を、お前たちに渡すわけには行かない!!」

 

 

 

 

「――さっきから聞いてたら、『ディセンダー様』『ディセンダー様』、アンタ等は何様だよっ!!」

 

 

 

「「「っ!?」」」

 

 

自分でも初めて出すくらいの大声で出した言葉に、その場の全員が驚く。

だけど、そんなの今は関係ない。

 

「……確かアンタ等は言ったよね…?『予言通り、名前以外の記憶が何もない』って…?」

 

 

「あ、あぁ、…そのとおりだ。だからこそディセンダー様は――」

 

 

「じゃあアンタ等はっ!言い換えれば、生まれたばかりで何も知らない子供を、兵器として扱ってるんじゃないのかよっ!?」

 

 

僕の言葉に、今気付いたような表情を浮かべる暁の従者。やっぱり、か……。

 

 

「わ、我々は、ディセンダー様を兵器として扱ってなど――」

 

 

「例えアンタ等が、そのディセンダーを兵器として扱ってなくても、アンタ等がそうやって、ディセンダーからもらった力を傍若無人に振り回してれば、周りの皆は、国は、ディセンダーを兵器として見てしまう……見ちまうんだよっ!!」

 

 

僕の言葉についに押し黙る暁の従者。だけど、まだ言い終わるつもりはない。

 

 

「それに『星晶を独占する国から星晶を奪い返して平和を取り戻す』?奪い返してどうなるの?それで本当に来るのは平和?違うだろ!?奪って、それをまた奪おうと戦いが起こって、それをまた奪おうと戦いが起こる。結局待ってるのは平和なんかじゃなくて戦争だろっ!!」

 

「それをアンタ等自身は『裏切り者に罰を与えるように頼んだ』?、『ディセンダーに会えるのは司祭クラス』?、アンタ等はふざけてんのか!?そんなくだらない事内部で作ってて本当に平和なんて勝ち取れんのかよっ!?」

 

 

僕の言葉に徐々に俯いていく暁の従者。僕はそれに向け、下ろしていた木刀をゆっくりと突き付ける。

 

 

 

 

 

「これでまだ分からないならもう一回言ってやる。アンタ等がやってる事は…何も知らない子供を兵器として扱った挙げ句、戦争を起こそうとしている……帝国や星晶を独占する国よりも、よっぽど屑なんだよっ!!」

 

 

 

何も言えなくなった暁の従者に、僕はイラついた感情をのせて、今声の出る限りそう言ってやる。

 

 

「――わ、我々は……っ!?」

 

 

しばらくして、暁の従者が何か言葉を出そうとした時、それは起こった。暁の従者の身体に、『赤い煙』が現れたのだ。

 

 

「こ、これは……っ!?」

 

 

「身体が…、身体がぁぁぁぁ!!」

 

 

突然の出来事に慌てる暁の従者。

メリア達もそれに気付き、僕の周りに集まる。

 

そして…それは起こった。

 

 

「ヒィッ!?な、何だっ、この姿は!!」

 

 

「まさか…、生物変化現象!?」

 

 

隣にいるアンジュの言葉通り、暁の従者の二人に『生物変化』が起こった。

 

 

「あぁぁ、…なぜ。なぜだ、なぜ…こんな姿に。ラザリス様…」

 

 

「ラザリス様…助けて下さい…。ディセンダー、ラザリス様ぁぁぁ!!」

 

 

そんな悲痛そうな声を上げながら、生物変化を起こした二人は奥へと走っていった。

あれが…『願いを叶える存在』に祈った人の末路、か…。

くそっ……。

 

 

思わず俯いてしまうと、不意にアンジュに肩に手を置かれた。

 

「落ち込まないで、衛司。確かにあんな事になってしまったけど……衛司はよくやってくれたわ」

 

 

「……そう…かな……」

 

 

「えぇ……本当よ。それより、身体は大丈夫…?」

 

 

アンジュの言葉に気を持ち直し、そう聞かれると、少し身体を動かしてみる。

 

 

「――……ちょっとキツいけどなんとか歩けるよ。…休んでもいられないしね」

 

 

「そう……分かったわ。それじゃ、奥に向かいましょう。あの人達を……あのままにしておけないしね」

 

 

そう言われ、僕はゆっくりと頷くと奥へと向け歩き出した。

あの暁の従者の二人と…『願いを叶える』を追うために…。

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

――しばらく歩くと、また少し広い場所についた。ここで一応終わり、みたいだけど…。

そう、周りを見ながら歩いていると――『ソレ』は居た。

 

 

以前のジョアンさん達のように生物変化を起こした暁の従者の前に立つ、背は低めの結晶のような装飾品を身体の至る所から見せる少女。あれが……?

 

 

「あの子が…あの、赤い煙だったもの…?」

 

 

「誰…?」

 

 

アンジュの言葉に気付いたのか、此方を見て低めな声を出した少女。

 

 

「あなたは一体何者なの!?」

 

 

「ラザリス…。僕は、ラザリス…」

 

「あなたが人々の願いを叶えてきたの?願いを叶えるのはなぜ?」

 

 

アンジュの質問に少女、ラザリスは小さく首を傾げてみせる。

 

 

「…どうしてかな?実のところ僕にもわからない。けども、君らから少しずつ世界を知るには都合が良かったからだと思う」

 

 

「あなたが願いを叶えた生物から、学習した。こういう事ですか?」

 

 

「そうなるかな。『願いを叶えて』と、向こうから僕に接触してきたからね。この世界に出たばかりの時は、僕にも接触する能力がなかった。でも、やがてあらゆる生物が僕の方へ手を伸ばしたんだ」

 

ジェイドの問いに、ラザリスは小さく頷いた後そう言いながら説明を続ける。

 

 

 

 

 

「願いを叶えるという意志のコネクトを通じて、僕はこの世界の生命力と情報を少しずつ手に入れた。おかげで実体も思考も手に入れた。思う存分、僕の好きな様に力を振るう事が出来る」

 

 

「あなたは、さっき世界の生命力と情報を手に入れたと言ったけれど…あなたは、ヒトじゃない。…何者なの…?」

 

 

「――僕は、この世界ルミナシアの様に、誕生するはずだった『世界』だ」

 

 

アンジュの言葉に、先程まで低めだった声が、やや強くなってそうラザリスは答える。

誕生するはずだった…『世界』…?

 

 

「ああ…、ああ…。この世界にはうんざりだ!僕ならもっといい世界になるはずだった!!こんな、腐りきった世界をもたらすヒトがいる世界なんて、僕なら造らなかった!!」

 

 

「「「っ!?」」」

 

 

 

突如、声が荒くなり、何事かと思った瞬間、ラザリスが腕を横凪ぎ振るい、大きな衝撃が身体に当たったのを感じ吹き飛ばされ、僕はそのまま飛ばされ壁に直撃した。

くぅっ……さっきの戦闘やオーバーリミッツの消耗もあってか……意識が……。

 

 

「――…君は……へぇ……『イレギュラー』、か…」

 

 

 

そんな声が聞こえた直後……僕の意識はなくなった…。

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

 

「――っ…此処は……」

 

「――……ぁ……衛司!!目が覚めたんだねっ!!」

 

 

軽く感じた痛みにゆっくりと目を覚ましていくと、そこは意識を失う前のアルマナック遺跡ではなく、見慣れたバンエルティア号の医務室であり、目の前で安心した表情を浮かべるカノンノとメリアが居た。

 

 

「あれ……カノンノ…メリア……そうだ!ラザリスはっ!?暁の従者の人達はっ!?……っ!」

 

 

「……衛司、あんまり騒いだら…駄目…」

 

 

「そうだよ、落ち着いて……今からそれはゆっくり説明するから…」

 

 

カノンノとメリアの言葉に、痛む身体を抑えながら、あの後の話を聞いた。

 

結局、あの後ラザリスは行方不明。完全に行方をくらましたらしい。

暁の従者はまたジョアンさん達の時と同じように、メリアの謎の力によって元の体に戻ったが、その後は分からない。ただ、自分達の信じた『ディセンダー』は『ディセンダー』ではなかったと、呆然として、去っていったらしい。

 

 

「――…生まれる筈だった『世界』…か…」

 

 

ラザリスが言っていた自分の正体。その言葉は深く耳に残っていた。

 

 

「…ぁ、それと…衛司、しばらくは絶対安静だって。なんでも、体力消費が激しいとかで…」

 

 

「ぅ……まぁ、そうですよね…」

 

 

カノンノの言葉に思わず苦笑いしてしまう。うん、今回は大分無理したもんな…。

 

「一応、またお見舞い来てあげるから…しばらくは医務室で安静に、だよ?」

 

 

「……また、来る……」

 

 

カノンノとメリアはそう言葉を残すと医務室を出て行った。

僕はそれを確認すると、ゆっくりと医務室のベッドに寝転んだ。

 

 

「……『イレギュラー』…か」

 

 

意識を失う直前に聞こえたその言葉。その言葉の意味からすると……ラザリスには僕のドクメントが見えたんだろうか…?

 

 

「……分からずじまい、か……」

 

 

思わず漏れてしまうそんな言葉。結局、僕はこの数分後、また睡眠的な意味で意識を失う事となった。

 

 

 

 

 




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