テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ─そして、僕の伝説─   作:夕影

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第十五話

 

 

 

 

「――……それで、さっきのドクメント…あれはどういう事なの?」

 

 

 

 

――ドクメントの展開を止め、そうやや強く言ってくるリタ。その隣でハロルドは興味深そうに僕を見ていた。

 

……どう説明すればいいかなぁ…。

この二人、くさっても『天才』だから、多分曖昧な誤魔化し返答は聞かないだろう。

 

 

 

 

「……えっと…信じてもらえるか、分からないけど…これから僕が話すのは…僕自身の話だから…」

 

 

そう言って、真っ直ぐと二人を見る僕。

 

元々、この話の始まりを切り出したのは僕自身なんだ。先程のドクメントの状態も詳しくは分からない今は……ある程度話す必要があるだろう。

僕の言葉に、二人はゆっくりと頷いた。

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 

――それから、僕はある程度の事を二人に話した。

 

僕が別の世界から何らかの方法で来てしまった事。

 

僕にはちゃんと、記憶がある事。

 

ただ、僕がこの世界に来た発端である『あの事故』の事と、この世界……『レディアントマイソロジー』の世界樹という一つのシステムの事は話していない。

 

後者の方は今までの『マイソロ』のストーリー上、きっとこれから分かっていく事だろうから僕が話すべきじゃないだろうし……前者の方は、正直…話す気にはなれないから。

 

 

 

「――この世界とは別の世界から、ね……。…普通なら俄かに信じられないわ」

 

 

「……ですよねー」

 

 

僕の話を聞いて、そう言ってきたリタに思わず苦笑いしてしまう。

まぁ、まだマシなリアクションだよね。いきなり『実は僕、この世界とは別の世界から来ました』なんて言ったら普通は痛い目で見られるかドン引かれるもん。

 

 

「……でもさっきのドクメントを見る限り…その普通じゃないって事は分かったわ」

 

 

「……と、言いますと?」

 

 

「少し前に言ったとおり、ドクメントはそのものの『情報』や『設計書』みたいなもんよ」

 

 

「つまり、アンタのドクメントからは、この『ルミナシアの世界で生まれた』、っていう情報の入ったドクメントが全く見えないって事よ。それから考えれば、アンタが『別の世界』から来たっていう話には納得出来るわ」

 

 

「そっか……良かったぁ、信じてもらえて…」

 

 

リタとハロルドの説明を聞いて、僕はそう言って一安心する。一応、信じてはもらえたようだ。

 

 

「……ただ、色々と問題も見つかったのよね」

 

 

「……問題……?」

 

 

「アンタのドクメントの状態よ。正直、ドクメントの状態が悪すぎるのよ。さっき見たように…アンタのドクメントはボロボロで、情報を見る事も、調べる事も出来ないの。下手に調べたりしたら、それこそドクメントに余計な損傷を増やして、アンタの身体に何か起こし掛けないからね」

 

 

 

 

そう言って、少し俯くリタ。確かに、僕のドクメントの状態は酷かった。メルディのような形は保ってなくて、今にも壊れそうな感じだったからなぁ…。

 

何故あんな感じになったのかは……多分……。

 

 

「何でああいう状態になったのかの詳しい理由は正直私達も分からないわ。考えうる例を上げるとすれば、このルミナシアに来た際の影響が原因、とか、このルミナシアの特殊な何かがアンタのドクメントに干渉しているか、とか…例を上げだしたらきりが無いわ。少なくとも、これからしばらくは研究室に来て、私やリタに体の状態を教えること。分かったわね?」

 

「うん……分かった。ありがとうね、色々と…。出来ればこの事は他の皆には…教えないでいてね」

 

 

ハロルドの説明を聞いた後、小さく頷くと僕はそう言って礼をした後、研究室を出ようとした。

 

 

「――アンタ……いつまで皆に隠すつもり…?」

 

 

ハロルドのその言葉に、足が止まる。扉の方を見ているため、表情は分からないけど…その声からはいつもの楽しげな様子は感じられなかった。

 

 

 

 

 

「…多分、ハロルド達の説明を聞いても、信じてくれる人はあんまり居ないだろうしね。…もうしばらくは……隠すつもりだよ」

 

 

「もうしばらく、ねぇ……。…アンタにはその『もうしばらく』は決まってるの……?」

 

「……どうだろう、ね……」

 

 

ハロルドの意味深なその言葉に、僕はそう応えて、研究室を後にした。

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

「――『もうしばらく』、か…ハロルドには若干気付かれてるのかなー?」

 

 

――甲板に上がり、僕は海を眺めながら先程のやり取りを思い出してそう、呟いた。

ハロルドは…多分僕が、この世界の成り立ちを少し知ってる事に、薄々感ずいているんだろう。

僕の説明って若干ボロ出てたんだろうか…?でも、まぁ…実質僕はこの『レディアントマイソロジー3』の世界の事に関しては正直全く分からないので、気付かれても答えにくいんだが…。

 

 

 

 

 

ただ、一番僕が気になってるのは――

 

 

「『状態が不安定なドクメント』、かぁ……」

 

 

自分のドクメント。あまりにも不安定で、今にも壊れそうに見えたソレ。元々当初、僕自身は僕という存在に、ドクメントがあるのか無いのか。はたまたどういう形なのか。それが気になってハロルド達にドクメントの展開を頼んだのが……今回の状態は流石に予想外だった。

ハロルドはその状態の理由は例を上げれば様々ある、って言っていたが……。

 

 

「……多分……もしかしたら……っ!!」

 

 

一瞬、自分がこの世界に来た理由である『あの事故』を鮮明に思い出し、急に来た吐き気に思わず口元を抑える。

 

 

 

ドクメント。

それはものの『情報』や『設計書』、つまりは『生』に関係している。

それが崩れそうな形を保っているという事は…少なからず、僕の『生』が関係しているんだろう。

 

そしてそれを不器用なりに深く考え、考え、考え尽くした結果、行き着く答えは――

 

 

『現実の世界の僕は、僕という存在はあの事故で―――』

 

 

「っ!!……止めよう……考えるのは…似合わないし」

 

 

行き着いた自分なりの『答え』を否定するように首を振ってそう呟いた。元々、この世界に来た時点で、現実の世界に帰れるかどうか、っていう思考は半分諦めてたし…。

 

 

「……よし、止めた。頭痛いし、ロックスやユーリの作ったお菓子食べて、寝よっと」

 

再び考える思考を止めて、ぐっと両手を空へと伸ばして呟くと、僕は食堂へと向かう事にした。

 

 

 

――現実の世界で、僕が…僕という存在がどうなっているかは分からない。

だけど……今、僕は此処で生きているんだ。

 

そう、僕は自分に言い聞かせ続けるのだった。

 

 

 

 

 




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