何かとウザイやつが問題児達に紛れたら。 作:ふわっとしたプリン
23:08には投稿出来そうだったのですが、時間が中途半端だったので23:30にしました。
急いだため誤字脱字チェックが甘々です。
残りの22分だとこれからまたチェックすると時間がまた過ぎそうだったのでごめんなさい。
1万文字を超えてて長いです。
「何をやっちゃってくれてるんですかぁぁぁぁぁぁ!!」
十六夜を連れ戻し、合流した黒ウサギはガルドとのいざこざを聞いて絶叫した。
「ちょっと目を離した隙に他コミュニティに喧嘩を売るってどういうことですか!?しかもゲームの日取りは明日って・・・・一体どういう思惑があっての事なんです!?」
「「「ムシャクシャしてやった。今は反省しますし非常に申し訳ない気持ちで一杯です」」」
「黙らっしゃい!!」
打ち合わせをしたのだろうかと疑うほどにように同時に言い訳をする久遠さん達問題児に黒ウサギは激怒した。
「別にいいじゃねえか。見境なく喧嘩売ったわけじゃねえんだから許してやれ」
「そうはいきません!十六夜さんは面白ければいいと思っているかもしれませんが、このゲームで得られるのはただの自己満足だけなんですよ!この"契約書類(ギアスロール)"を見てください!」
黒ウサギは十六夜に契約書類(ギアスロール)を見せた。内容は相手側が勝利した場合は相手の罪を黙認してこちらが勝利したら相手は罪を認めコミュニティを解散し、法の下に正しい裁きを受けるといったものであった。
「なるほど・・・・確かにコミュニティに実質的に利益になる報酬は得られないな」
ガルドの行った事は間違いなく違法行為。時間さえかければ必ず罪は暴かれるものであるのに。
「そうです。だって人質の子供たちはもう・・・・・」
「そう。人質は既にこの世にいないわ。そこを責め立てれば必ず証拠は出るでしょう。だけど時間をかけてしまえばあの外道に逃げられる可能性があるわ。だからあの外道に時間を与えたくないの」
箱庭の法は都市外では働かない。そこまで逃げられたら法によって裁くことができなくなってしまうのでやむを得ない判断ではあった。
「それはわかりますが・・・・・でも・・・」
「それにね黒ウサギ。私は道徳云々より、あの外道が私の活動範囲で野放しされることも許せないの。ここで逃せば、いつかまた必ず狙ってくるに決まっているわ」
「確かに・・・・逃げられれば厄介かもしれないですけど」
「僕も同じ気持ちだよ黒ウサギ。あんな悪党を野放しにするわけにはいかないんだ」
ジンもまた飛鳥の言い分に同調する。
「ジン坊ちゃんまで・・・・もう、わかりましたよ!」
コミュニティのリーダーはジンである。そのジンが決定したことに忠義を尽くしている黒ウサギが逆らえるはずもないのである。
「まあ腹立たしいのは黒ウサギも同じですし。"フォレス・ガロ"程度なら十六夜さんがいれば楽勝でしょう」
落ち込むのを突然やめ明るくなる黒ウサギ。
「何言ってんだ?俺は参加しないぞ」
が、参加を拒否する十六夜。
「だ、ダメですよ!コミュニティの仲間なんですからちゃんと協力しましょうよ!」
「何言ってんだか黒ウサギ。これはあいつらが売って、やつが買った喧嘩だ。参加するのは無粋ってもんだぜ」
「当然よ。参加させるわけないじゃない」
十六夜の意見に久遠さんも賛成する。
「ああもう!分かりましたよ好きにしてください!」
ようやく折れた黒ウサギは若干怒ってしまった。
「って、あれ?ゲームの取り決めをした神城さんは?」
そこでやっと気付く。
この場に一輝がいないことに。
「あーあの人なら黒ウサギたちが来るまで散歩をすると言って何処かへ言ってしまったわよ」
「な、な、な…!この問題児様はああ!!」
わなわなと震え叫ぶ黒ウサギ。
「まーもしかしたら戻ってこないかも知れないわね。あの人、ガルドのコミュニティには参加しないとは言ってたけど、ノーネームにも参加するとは言ってないし」
久遠さんの呟きにジンはハッとし、黒ウサギは驚愕のあまり手で口元を覆う。
「いや、その心配は無駄だと思うぜ。一輝は戻ってくるさ、そしてうちに入る」
だが十六夜だけはそんなことを微塵も思っていなかった。
「なんでそんなことがわかるのかしら?」
「はっ、それはあいつがイイヤツだからさ」
久遠さんの質問に答える十六夜
「イイヤツって、たしか前にも似たようなことを言ってた気もするけど、一体あの人のどこがイイヤツなのか」
「そのうち分かるさ」
十六夜の納得するような根拠はない説明であったが、今の黒ウサギ達はそれを信じるしかなかった。
〜久遠さん達と別れた後の一輝〜
「お、なんだここ?」
随分と立派そうな建物の前で思わず声が出てしまった。
「ここはサウザントアイズという商業コミュニティです。様々な物を売ってますよ」
そんな一輝の呟きに予想していなかった返事が返ってきた。
声のした方を見ると掃除をしていたであろう女性が立っていた。
「へー有名なのか?」
「この箱庭に住んでいるもので知らないものはいません。あなたは最近召喚された者ですか?」
「名乗るならまず自分からだろ。まあいい、俺は神城。その認識であってるぜ」
別に一輝も無礼だったらいつも怒るわけではなく、結構心が広いほうなのでさほど怒ってはいない。
「失礼しました。私はーーーです。入るコミュニティは決めたのですか?」
「いーや、まだ決めてはいない」
「おや、うちの店員と会話が続いてるなんて珍しのお」
突然会話をしていた横から和服のちびっこが近寄ってきた。
「白夜叉か」
「いかにも、私が白夜叉であr、ってちょっと待ったおんし。何故おんしが私の名前を知っているのだ?見たところ召喚されたばかりな気がするが」
さらっと名前を呼んだ一輝に対して当然の疑問が生まれる。
「まあな、あんたなら知ってるさ。少し中で話をしないか?」
さらっと自分の家のように誘う。
「ほぉーここは私のコミュニティなのだがまあいいだろう。ついてこい」
言われるがまま白夜叉のあとをついていく一輝
白夜叉の私室
部屋は和式で、特にものが散らかっていることもなく、シンプルにテレビと座布団と机があった。
「して、おんしはだれじゃ?」
まず部屋に入ってからの第一声は、純粋に何者かを尋ねるものであった。
一輝は一瞬どう名乗るか少しだけ考えるが、普通でいいかとすぐ返答する。
「俺の名前は神城一輝。よろしく」
「ふむ、やはり私は知らん名じゃな、では、どうして私の名前を知っておった?そこら辺で聞いたのか?」
「いえいえ、普通に知ってますよ」
白夜叉は首を横に傾け頭にクエッションマークを浮かべている。
それはそうだろう。普通って言われても何が普通なのかがさっぱり分からない。でも前から知っているような感じではある。本当に一体何者なのだろうか。
「うーむ、多分黒ウサギに召喚された輩じゃろ?なのにどうして」
「じゃあ丁度いい、ゲームをしようぜ」
突然一輝は指を鳴らす。
説明するのが面倒臭いのか白夜叉の問いに一切答えることなくゲームに誘う。
それと同時にギアスロールが出現した。
『ギフトゲーム名"真実を知る者"
ホスト
・神城一輝
プレイヤー
・白夜叉
勝利条件
・ホストの殺害
・ホストの招待を看破する
敗北条件
・プレイヤーが続行不可能になった場合
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗の下"サウザントアイズ"はギフトゲームに参加します。
神城一輝 印』
ギアスロールにはこう書かれていた。
しかも内容は自分の命をかけているものであった。余程の自信があるのかただの馬鹿なのか今の段階では判断はできない。だが、普通に考えれば人として召喚されたはずのみ身である者が、下層において自分より強いものはいないと確信している白夜叉に勝つなんてことはまずありえないだろう。
流石にこれは一輝の身を案じて少しまずいとなと考える。
「ほう、元・魔王である私にギフトゲームを仕掛けるか」
そこで、相手に向けて殺気を見せつけることによってゲーム内容の改善をさり気なく要求する。
だが一輝はそんな殺気をまるでそよ風に当たっているように受け流し無視する。
「魔王、か。まあそういう事だ。かけるものはそうだな…お前が望むものをなんでも1つあげよう。こちらからはなんも要求しない」
どうやら一輝は魔王という存在についても知っているらしい。一体どこまでが本当でどこまでが嘘なのかよく分からないやつだ。
しかもまさか命をかけているというのに勝利報酬は望むものをなんでも叶えるというし、デメリットはない。強いていえばこちらも死ぬ可能性があるということだけだ。
「ほぉ、それだけ負けない自信があると、ちと私を舐めてはおらんか?せめて私の首輪一つ分はかけさせてもらうぞ」
一輝の言葉に怒りを顕にする。
それも当然である。ここまで舐めきったゲームを提供してくるのだから。招待を看破するだけで許してあげようと思っていたが、流石にここまでこけにされるのも久々なので少しは痛めつけてから勝ってやろうと心に決める。
「そうか、じゃあそれもルールに追加だ。そして、舐めてはいないぞ箱庭席第十席」
白夜叉はそれを聞いて目を見開いてさらに驚く。
「どうしてそれを…!!」
「おいおい、それはギフトゲームで考えてくれよ」
一輝はもう1度ギアスロールを出現させた時と同様、指を鳴らした。
すると一瞬だけ視界が暗転したと思ったら、同じ場所にいた。
テレビ、座布団、机。何一つ変わったような点は見られない。
「ここは…。っ?!」
だが、白夜叉は何か違和感がある事に気付いたようで、しかもその招待を見破ったみたいだ。
「さすが、気付くの早いねぇ。そう、ここは鏡の世界。せいぜい足掻いてくれよ?」
「ぬかせ、勝つのは私だ」
白夜叉の言った最後の言葉とともにお互いが駆け出した。
数十分後
「いやぁ、さすがだね。力を抑えててもここまでやるか」
傷だらけで倒れている白夜叉と、無傷で立つ一輝。差は歴然であった。
2人のいる周囲には、文字通り何も無い。
はじめにあった全てが反転されていた街は、もはや影も形もなかった。
大きなクレーターが幾つも重なるようにあり、雲は全て吹き飛んでおり、酷いところでは水がどこかからか流れ込んでいたり、一部どこから現れたのか分からない溶岩が固まった後もあったり、大地が綺麗に大きく一直線に裂けていたりとしている
「そうか…この反転世界は、一切関係、なかったのじゃな…。そして、答えなんて誰も知らない…なんともキツイゲームだったわ…」
白夜叉の言っていることは本当である。まず、招待を看破すると言うのはどう考えても誰も達成出来ないものであった。なんでも欲しいものをあげるという勝利条件から、一輝とは自分で何かを創り出せる人物。
さらには店などはなにか分かっていなかったくせに白夜叉についての細かい情報は知っていた。
トドメに見た事のあるような能力。
実力。自分で創り出していたゲーム盤。一度見た事のある勝てないと感じた能力。
答えは一つしかない
「一輝。その名前は…偽名で…この箱庭の創造主だったか」
「はは、正解。だがお疲れ様、これで終わりだ」
一瞬だけ一輝に弱体化したような現象が起こったような気がしたが、それでも実力差は圧倒的に開いている。
そうこれは本当に酷いゲームだ。
この箱庭の創造主だとわかったとしても、それ以上の解答を知るものなど一輝しかいない。つまりある程度は弱体化させることは出来るのではあるが第2のクリア条件は絶対に達成出来ない。
そしたら実力で倒すしかない。
しかし実力は例え弱体化したとしてもこの箱庭において全員でかかったとしても絶対に勝てない。最悪の場合この箱庭の地上を消しさればいいだけなのだから。
一輝は右手を白夜叉へと伸ばす。
すると白夜叉は突然凍りついた。白夜叉だけが完全に氷像と化し、冷気が漂う。
「ゲーム終了だ」
それと同時に世界は元に戻り、再度ギアスロールが出現する。
「さーて終わった終わった」
一輝はまた指を鳴らす。するとそれだけで白夜叉は怪我の一つもない完全な状態に戻った。
「はぁ、私の完敗じゃ…てかお前に勝つのなど無理じゃろ!!」
元気になったことで突然怒り出す白夜叉。だが、一輝はそれを笑って受け流す。
「いやいや、力を封印してる状態で、俺のリミッターを1個解除させられたんだ。充分誇れるだろ。まああと2個分あるがなざまあみろー。てかお前って失礼だな。昔からの仲だろ名前で呼んでいいぞ」
一輝のことをよく見ると付けているネックレスの星型のアクセサリーが一つ消えていた。
そして、今まで名前で呼ばれることを頑なに断っていた一輝が名前で呼ぶことを許可する。
「随分と上から目線じゃな「実際俺の方が上ですからざまあみろ〜」…」
一輝の挑発を軽く無言で受け流す白夜叉
「てか、それ偽名じゃろ?前の名はダメなのか?」
「今はこの名前なんだわ」
「自由じゃな」
さて、と手を一旦叩き話を区切る
「じゃ、約束通り、命令権1個もらうぜ」
「一体一輝ほどの者が私に何を要求するのじゃ」
自分が何故あのような約束をしてしまったのか、と思い返す白夜叉は地面に倒れ込んだ。過去に戻れるのであればあの条件を言い出す前の自分をひっぱたいていたであろう。
「それもそうだな、じゃあこの件はとりあえず保留で」
はぁ、と深いため息をつく
一体どんな命令をしてくるか心配なのである
「して、一輝はもしかして、もしかして…!黒ウサギのコミュニティに入るつもりか?」
調子を取り戻そうと質問する白夜叉は、少しビクビクしながらそのことを聞く。
当然だ。白夜叉を打倒する程のものが最底辺のコミュニティに入るなど前代未聞である。
「ま、暫くは勝手に居座ろうかな。俺の他に呼ばれた3人も問題児だから覚悟しとけよ。そのうちの1人は頭いっこぶん飛び出てる。俺が皆に嫌われようとしてるのを完全に見抜いてやがる。はぁめんどくさい」
お手上げ、とでも言わんばかりに両手を軽くあげ、肩をすくめる。
「こっちも一輝のせいで胃に穴が開きそうなのじゃがの」
「ははは」
「笑うな!」
一輝の明らかに馬鹿にした笑いにまた腹を立てる。
「仕方ない。もう少しリミッターを増やすか」
「そうしてくれるとありがたい」
そう言うと一輝のネックレスに付いている星の数は5つに増えていた。
「もっと増やしてもいいのでは?」
「ふざけんな、今の状態で普通に銃弾で怪我するレベルだわ」
「そんなもんなのか」
二人揃って一緒に熱いお茶をすする。
今までの戦いはまるでなかったかのようにゆったりとくつろぐ。
「あれ、お茶なんて出していたかの?」
「俺が出した気にするな」
「そうかそうか」
ふぅっともう一口飲んだあとに話を切り出す
「さーて、時間も調節したし、そろそろ来る頃だと思うぞ。表に行ってこいや俺はここで待ってる」
「人使いが荒いのお」
「人じゃないだろ」
冷静にツッコミを入れる一輝を無視し部屋から出ていく白夜叉であった。
数分前の黒ウサギ一行
「皆さん!見えてきましたよ!」
黒ウサギは目的の店を指差した。
そこには和風の商店があり、商店の旗には、蒼い生地に互いに向かい合う二人の女神像が記されている。おそらく"サウザンドアイズ"の旗なのだろう。
ただ店を見ると割烹着を着た女性店員が看板を下ろしているところであった。
「まっ「待ったなしですお客様。うちは営業時間を延長したりしませんので」
黒ウサギは滑り込んでストップをかけようとするが、女性定員にきっぱりと断られてしまった。
「随分と商売っ気のない店ね」
「全くです!閉店時間5分前に客を締め出すとは!」
「文句があるなら他所へどうぞ。その代わりあなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」
「出禁!?これだけで出禁とか御客様舐めすぎでございますよ!?」
キャーキャー喚く黒ウサギ。しかし店員は冷めたような眼と侮蔑を込めた声で対応する。
「なるほど、"箱庭の貴族"であるウサギの御客様を無下にするのは失礼ですね。入店許可を伺いますので、コミュニティの名前を聞かせてもらってもよろしいでしょうか?」
「・・・・・う」
一転して言葉に詰まる黒ウサギ。
「俺達は"ノーネーム"ってコミュニティなんだが」
しかし十六夜はなんの躊躇いもなく堂々たる態度で名乗った。
「ほほう。ではどこの"ノーネーム"様でしょう。よかったら旗印を確認させていただいてもよろしいでしょうか?」
ぐっと黙りこむ黒うさぎ。
(ま、まずいです。"サウザンドアイズ"の商店は"ノーネーム"御断りでした。このままだと本当に出禁にされるかも)
力がある店は客を選ぶ。信用できない客を扱うリスクを彼らが冒すはずもない。
全員の視線が黒ウサギがに集中する。
「その・・・・あの・・・・・私達に旗はありま」
「いぃぃぃやほおぉぉぉぉぉぉ!久しぶりだ黒ウサギィィィィ!」
心の底から悔しそうな顔をして小声で呟く黒ウサギに向かって着物風の服を着た白髪の少女・・・・・白夜叉がとてつもな勢いで抱きついて・・・・・いや、腹に突っ込んで行った。
「キャアーーーーー・・・・・!」
黒ウサギは悲鳴を上げながら少女と共にクルクルと回転して道の向こうにある浅い水路まで吹き飛んでいった。
突然の出来事に問題児達3人は目を丸くし、店員はやれやれといった感じで頭を痛そうに抱えている。
「・・・・おい店員。この店にはドッキリサービスがあるのか?なら俺も別バージョンで是非頼む」
「ありません」
「なんなら有料でも」
「やりません」
十六夜は黒ウサギが吹き飛ばされたのにも関わらず呑気に漫才をしている
一方水路に落ちた二人はというと・・・・
「ゴホゴホッ!し、白夜叉様!?どうして貴女がこんな下層に!?」
「そろそろ黒ウサギが来る予感がしておったからに決まっておるだろうに!フフ、フホホフホホ!やっぱりウサギは触り心地からして違うのう!ほれここか?ここが良いか?ここが良いのか!ここなのか?」
「ちょ、白夜叉様やめてください~!!」
何とも不健全な空気を醸し出している。しかも黒ウサギをいじっているのは見た目幼い少女なのだから不健全さに拍車がかかる。近くに子供がいたら確実に目を塞いでいただろう。
「もう・・・・いい加減にしてください白夜叉様!」
いい加減黒ウサギも我慢の限界だったのだろう。白夜叉を思い切り突き飛ばす。
突き飛ばされた白夜叉は回転しながら吹き飛んでゆき、その先にいた十六夜が足で受け止める
「ごふっ!!」
白夜叉は力なく地面に倒れ込む
「おんし!飛んでくる美少女を足で受け止めるとは一体何様のつもりじゃ!」
「十六夜様だ和服ロリ」
「ところで君はこの店の人なのかな?」
「おおそうだとも。この"サウザンドアイズ"の幹部様で白夜叉様だよご令嬢。仕事の依頼ならおんしのその年のわりに発育がいい胸をワンタッチ生揉みで引き受けるぞ」
・・・・・先程の黒ウサギとのこともいいもはやただのセクハラおやじである。
「オーナー、それでは売上が伸びません。ボスが怒りますよ?」
そんな冷静な声で女性店員が釘を指す。
「ふふんなるほど。お前達が黒ウサギの新しい同志か。異世界の人間がここに来たということは・・・黒ウサギが私のペットになりに・・・・」
「なりません!」
しかし女性定員の言っていることなどお構いなしに白夜叉はニヤリと意地悪く笑いながら喋り始めた。彼女はどうやら黒ウサギを弄るのを楽しんでいるようだ・・・・いや、あるいは本気なのかもしれないが。
「さて、何か用があるんだったな。立ち話もなんだ、中に入って話すとするか」
「白夜叉様、彼らはノーネームです。ウチの規定では・・・・」
「構わん。ノーネームと分かっていながらも名を尋ねる性悪店員の詫びだ。身元は私が保証するし、ボスに睨まれても私が責任をとる。いいから入れてやる」
「全く白夜叉様は・・・・」
白夜叉の言葉に女性店員がムスッと不貞腐れてしまったのは言うまでもない。彼女からしたら規律を守ろうとしただけなのだからたまったものではない。
「では案内しよう」
白夜叉に案内され、一同は店の中へと入っていった。
黒ウサギ一行は枯山水の美しい庭が見える部屋に連れてこられた。どうやらここが白夜叉の部屋らしい。香が焚かれており、部屋をそよそよと吹き抜ける風と共にみんなの鼻をほのかにくすぐる。さらには壁にもたれかかったまますやすやと眠る一輝もいる。
やや広い和室の上座に腰を降ろした白夜叉は、四人と黒ウサギに向き直った
「さて、もう一度自己s「ちょっとお待ちください白夜叉様!!」…なんじゃい?」
自己紹介が途中で中止されたのでやや不貞腐れる白夜叉。
「なんじゃいじゃありません!!どうして神城様がここで寝ているのですか!!」
「なんじゃ?一輝が私に取られたと思ってヤキモチでもやいたかの?」
十六夜だけが一輝と名前で呼んでることに妙な引っかかりを覚えて首を少し傾げる。
「妬いてません!何故ここにいるのか知りたいのです!」
「それは一輝がここを訪ねたから以外にないわい」
するとそこでようやく一輝が目を覚ます。
「…ん?なんだお前ら来てたのか」
(いや来てるのに最初に気付いたの一輝じゃろ)
白夜叉の心の中でのツッコミは当然聞こえるわけもなく話は続く。
「なんだではありません!心配したんですよ!」
「あんたに心配される筋合いなんてねーんだが鬱陶しいのでやめていただけませんかねぇ」
黒ウサギの心配を一輝は無駄なものと切り捨てる。
「あら、折角心配をしてくれた黒ウサギに失礼ではなくて?」
すかさず久遠さんが会話に乱入してくる。
「勝手に仲間だと勘違いして俺をそのままコミュニティに入れようとする方が失礼ではなくて?」
似たような口調でわざわざ返して来たためよりイラッとくる久遠さんではあるが、実際合っているので何も言い返さない。
「まあとりあえず白夜叉の話でも聞いてろや」
そこでみんなが渋々視線を白夜叉に戻す。
「こほんっ。えーもう1度自己紹介をしておこうかの。私は四桁の外門、三三四五外門に本拠を構える"サウザンドアイズ"幹部の白夜叉だ。この黒ウサギとは少々縁があってな。コミュニティが崩壊してからもちょくちょく手を貸してやっている器の大きな美少女と認識しておいてくれ」
「はいはい、お世話になっております本当に」
凄く投げ遣りな言葉で流す黒ウサギ。貴重なコネクションなのだからもう少し大切にすべきなのだろうが、この様子だと普段からよっぽど色々なセクハラをされているに違いない。
・・・・何とも哀れである。
「その外門って何?」
黒ウサギの隣に座っている春日部さんが小首を傾げて聞いた。
「箱庭の階層を示す外壁にある門のことです。数字が若いほど都市の中心に近く、同時に強力な力を持つ者達が住んでいるのです。白夜叉様がおっしゃった三三四五外門などの四桁の外門ともなれば名のある修羅神仏が割拠する完全な人外魔境ですね」
黒ウサギは皆にわかりやすいように紙に上空から見た箱庭の略図を描いていく。図は七つの階層に分かれていた。
「・・・超巨大玉ねぎ?」
「いえ、超巨大バームクーヘンではないかしら?」
「そうだな。どちらかといえばバームクーヘンだ」
「そんな身も蓋もない・・・・・」
黒ウサギの描いた図を見て十六夜達3人はそう喩えた。
そんな様子を見た黒ウサギは肩を落とした。
「ふふ、バームクーヘンとはうまいこと例えるな。その例えなら今いる七桁の外門はバームクーヘンの一番皮の薄い部分にあたる。更に説明するなら、東西南北の四つの区切りの東側にあたり、外門のすぐ外は"世界の果て"と向かい合う場所になる。あそこはコミュニティに属してはいないものの、中々に強力なギフトを持ったもの達が住んでおるぞ。例えばその水樹の持ち主の蛇神などがな」
白夜叉は薄く笑うと黒ウサギの持っている水樹の苗に視線を向けた。
「して誰がどのようなゲームであの蛇神に勝ったのだ?どうやって手に入れたのだ?知恵比べか?それとも勇気を示したか?」
「ふふふ・・・なんとこの十六夜さんが素手で叩きのめして勝利したのですよ!」
「なんと!?直接倒したとな!?」
まるで自分のことのように自慢気に黒ウサギが言うと、白夜叉は声をあげて驚いた。
「ふむ・・・・そこの小僧はもしや神格持ちの神童かの?」
「黒ウサギはそうは思いません。神格持ちなら一目で分かるはずですし」
黒ウサギが首を横に振る。白夜叉も彼女の実力は認めているのでその言葉が真実だとわかると首を傾げる。
「確かにそうだな。しかし神格なしであやつを倒したとなると種族間のパワーバランスが大きく崩れている時だけのはず・・・・種族の力で言えば人と蛇はドングリの背比べなのだが・・・」
そんなことを呟きながら思案する白夜叉。
「ところでその神格ってなに?」
春日部さんは興味深そうに白夜叉に尋ねた。
「神格とは生来の神そのものではなく種の最高のランクに体を変幻させるギフトのことだ。例えば蛇に神格を与えれば巨躯の蛇神に。人に神格を与えれば現人神や神童に。鬼に神格を与えれば天地を揺るがす鬼神と化す」
「つまり・・・・生物を進化させるギフトっていうことか?」
「少し違うの。神格を持つことで他のギフトも強化されるからの。故に箱庭にあるコミュニティの多くは各々の目的のためまずは神格を手に入れることを第一目標とし、上層を目指して力を付けるのだ」
「なるほどな」
十六夜は今の白夜叉の説明で理解したようだ。
「ところで白夜叉様。白夜叉様はあの蛇神様とお知り合いだったのですか?」
「知り合いも何も、アレに神格を与えたのはこの私だぞ。もう何百年も前の話だがの」
「へえ、それはつまりお前はあれより強いってことか?」
十六夜は好戦的な目を向けて白夜叉に尋ねた。
「ふふん、当然だ。なにせ私は東側の"階層支配者"だぞ?この東側の四桁以下にあるコミュニティでは並ぶ者などいない最強の主催者(ホスト)なのだからの」
"最強の主催者"。その言葉に、問題児3人は瞳を輝かせる。
「そう・・・・それはつまり貴方のゲームをクリア出来れば私達のコミュニティは東側で最強という事になるのかしら?」
「無論そうなるのう」
「そりゃ景気のいい話だ。探す手間が省けた」
3人は闘争心剥き出しにして白夜叉に視線を向ける。そんな3人を見て白夜叉は高らかに笑い声をあげる。
一輝も馬鹿を見る目で3人を見る。
「抜け目ない童達だ。依頼しておきながら私に挑むと?」
「え?ちょっと!!本気ですか!?」
「よい黒ウサギ。私も遊び相手には常に飢えてのでな」
慌てる黒ウサギを白夜叉はは制した。
「いやいややめておけお前ら。お前らじゃ力不足だ」
「なんだ一輝?まるで俺らが完全に劣っているようにいうじゃねえか」
一輝の発言に十六夜がくいつく
「実際そうだろ実力差を良く考えろ」
やれやれ、とでも言いたげにあからさまに呆れる
「お前らじゃってことは神城くんなら大丈夫だとでも言いたいのかしら?」
「…私たちを舐めすぎ」
まるで自分なら戦えると言わんげな態度をとる一輝に久遠さんも苛立ちを見せ、珍しく春日部さんまでもくいかかってくる。
「舐めてはないぞ。ただ相手が悪い。そして俺なら戦えるぞ、参加してやろうか?」
怒りの視線ををものともせず、ニヤリと笑いながら立ち上がる一輝。
「一輝はやめい」
だが白夜叉に止められ、まあ仕方ないかと呟きながらもう1度座り直す。
「本当はそんな力なんてないよ。ただ見栄を張りたかっただけさ」
くくくと自嘲気味に言う。
ちなみにだがあまりにも問題児たちがいると自分の影が薄くなるので、それをどうにかしようと目立とうとした事も本当である。
(本当に強いのか弱いのかよく分からない人だな。あの殺気は本物だったし、勘が危険だと言ってるし注意しないと)
と考える春日部さん
(いーや、あいつはなぜだか分かんないけど強いと思う。それも俺以上の可能性だ。最初の着地、カード全暗記、聞いた話だけど濃密な殺気。只者ではないと思うんだがな。てかどうでもいいかもしれないけどネックレスの星の数増えたな)
と考える十六夜
(ほんとあの人はなんなの。何故か不思議と強いと感じないけど、あの殺気は本当に怖かったし)
と考える久遠さん
さて、と一呼吸した後に白夜叉が問う
「しかし、先に確認しておく事がある」
「なんだ?」
白夜叉は十六夜達に向き直ると着物の裾から"サウザンドアイズ"の旗印の紋が入ったカードを取り出し・・・・
「おんしらが望むのは"挑戦"か?・・・・・もしくは"決闘"か?」
白夜叉は不敵な笑みを浮かべて言った。その瞬間・・・・
「「「!?」」」
世界が変わった
(寝るための背もたれが消えた…)
ーto be continueー
会話文ばっかりなのどうにかした方が良さそう。