この異世界転生者に祝福を!   作:白城

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 こんにちは白城です。

 誤報告ありがとうございました!

 五話の内容少し変えました。すみません!
 少し原作と違う所があったので!

 今回はリッチーのあの人がでてきます!


第六話 『この心優しきリッチーに祝福を』

    白奈side

 

 「………冷えてきたわね。ねえ、カズマ。今回引き受けたクエストって、ゾンビメーカーの討伐なのよね? 私、なんだかそんな小物より大物が出そうな予感がするんですけど……」

 

 完全に夜になり、時刻は深夜に回った頃。

 アクアが目に入った砂ぼこりが取れ、そんな事をポツリと呟いた。

 

 ………やめて、そんな事言わないで。

 

 「………おい、そんな事言うなよ。本当にそうなったらどうするんだ。今日はゾンビメーカーの討伐。そして、とっとと帰って寝る。イレギュラーが起きたら迷わず帰る。いいか?」

 

 カズマの言葉に私を含めた皆が頷く。

 

 私はまだレベルが高くなくて強くないし、本当に無事に終わってほしい。

 

 そろそろ時間だ。

 

 そんな事を考えながら、敵感知スキルを持つカズマを先頭に歩いていった。

 

 アクアの言った事が本当にならなければ良いだけど……。

 

 「んっ? 敵感知に引っ掛かるな。数は一、二……三、四体?」

 

 ……あれっ?

 

 「ねえ、カズマ。ゾンビメーカーの取り巻きってゾンビが二、三体って言ってなかった?」

 

 「あ、ああ。その筈だ。まあ、このくらいは誤差の範囲だろ」

 

 そんな会話をしていると墓場の中央で青白い光りが走る。その隣には黒いロープを着た人影。

 

 あれって……魔方陣?

 

 「……ねえ、ゾンビメーカーって魔法使うんだっけ?」

 

 「……いえ、使えません………あれはゾンビメーカーではない……気が…するのですが…」

 

 私の問いにめぐみんが自信なさげに答える。

 もう一度見ると、黒いロープの人影の周りを、ユラユラと動く人影が数体見えた。

 

 「突っ込むか? ゾンビメーカーじゃなくてもこの時間に墓場にいるんだから、アンデットだろう。こっちにはアクアがいるんだから大丈夫だろ」

 

 カズマの言葉に私も納得する。

 

 アクアは回復魔法だけは凄いってカズマが言っていたし大丈夫なはず!

 

 私の隣にいるダグラスはさっきから胸に剣を抱えたままソワソワしている。

 

 少しは落ち着いて!

 

 「あーーーーーっ!!」

 

 突然叫んだアクアが、何を思ったのか立ちあがり、ロープの人影に向かって走り出す。

 

 「えっ、ちょっと待って!」

 「ちょっ、おい待て!」

 

 私とカズマの静止の言葉も聞かず、飛び出して行ったアクアは、ロープの人影に近付くと、ビシッと人影に差し。

 

 「リッチーがノコノコとこんな所に出てくるなんてる届きな、成敗してやるっ!」

 

 ……えっ? リッチー?

 

 「ねえカズマ。リッチーって……」

 

 私の不安な声にカズマが。

 

 「あ、ああ。シロナが考えてるのであってると思うぞ……」

 

 リッチーとはアンデットモンスターで、その中の最高峰にあたる。

 魔法を極めた大魔法使いが魔道の奥義により人の身体を捨てたアンデットの王。

 他の多くのアンデットとは違い、自ら自然の節理をねじ曲げ、神の敵対者になった存在で、ラスボスみたいなモンスター………だった気がするんだけど……。

 

 「や、やめやめ、やめて! 誰なの! 何故いきなり現れて私の魔方陣を壊そうとするの! やめ、止めてください!」

 

 「黙りなさいこの、アンデット! どうせこの怪しげな魔方陣で何か企んでたんでしょ! こんな物! こんな物!!」

 

 そのリッチーが目の前で、魔方陣を壊そうとするアクアの腰に、泣きながらしがみついて、くい止めていた。

 

 リッチー……なのかな?

 

 その二人の周りにいる取り巻きのアンデット達は、そんな二人を止めもせずボーッと眺めていた。

 

 ……えっと、どうしよう。

 

 取り合えずゾンビメーカーではないと思う。

 

 「やめて! 止めてください! この魔方陣は、未だに成仏できないでいる迷える魂達を、天に還しているだけなんです! ほ、ほら、たくさんの魂達が魔方陣から空に登って行っているでしょう!?」

 

 そのリッチーのいう通り、白い人魂の様な物が魔方陣に入ると天に吸い込まれていく。

 

 「リッチーの癖に生意気よ! 善行はこの私がしておくからあんたはひっこんでなさい! 見てなさい、この墓場ごとまとめて浄化してあげるわ!」

 

 「え、ええっ!?ま、待ってっ!?」

 

 アクアの言葉にリッチーが怯える。

 

 えっ、それだと……。

 

 たが、アクアはリッチーに構わず、手を広げ。

 

 「『ターンアンデット』!」

 

 アクアを中心に墓場全体が光りに包まれた。

 アクアから湧き出すように溢れた光は、リッチーの取り巻きのゾンビに触れるやいなや、凄い速さで掻き消える様にその姿が消滅していく。

 リッチーの魔方陣の上にいた人魂もアクアの光を浴び、消えていった。

 それは勿論、リッチーにも及び……。

 

 「きゃー! お願い! 止めてください! 私の身体が消えるっ!? 成仏しちゃう!!」

 

 流石にやばいっ!

 

 私が急いでアクアに向かう。

 

 「おい、やめてやれ」

 

 私が止める前にカズマがアクアの後頭部を剣の柄で小突いて止めた。

 

 ふうぅ……危なかった……。

 

 「痛、痛いじゃないの! あんたいきなり何してくれてんのよ!」

 

 後頭部を殴られ集中が途切れたのか、白い光を出すのをやめ、カズマに涙目で食ってかかる。

 後ろを見るとめぐみんとダクネスもやって来た。

 

 「そ、その大丈夫? ええと、リッチー…でいいのかな?」

 

 良く見ると、足元は既に半透明になっている。

 

 本当にあと少し遅かったら危なかったかも……。

 

 「だ、大丈夫です……。危ない所を助けて頂き、ありがとうございましたぁ……! えっと、言っていた通り私はリッチーです。リッチーのウィズといいます」

 

 そう言って被っていたフードを上げると、出てきたのは二十歳くらいの人間にしか見えない、茶色い髪の毛の整った顔をした女性だった。

 

 リッチーってアンデットなんだから、骸骨みたいなの想像してたんだけど……。

 チラッとカズマを見るがどうやら私と同じらしい。

 

 「えっと、……ウィズでいいんだよな? あんた、こんな所で何してしてたんだ? 魂を天に還すとか言ってたけど、それってリッチーのあんたがやる事じゃないんじゃないか?」

 

 カズマがそう言って質問するが、アクアがいきり立ち。

 

 「ちょっと二人とも! こんなのと話なんかしてたらアンデットが移るわよ! ちょっとそいつに、ターンアンデットでもかけさせなさいよ!」

 

 アクアがウィズに魔法をかけようとする。

 ウィズが私の背後に隠れ、怯えた様な困った様な顔をしながら。

 

 「え、えっと、その………私は見ての通りリッチー、ノーライフキングなんてやってます。アンデットの王なんて呼ばれているくらいなんですから、私は迷える魂の声が聞こえるんです。ここの墓地の魂の多くはお金が問題とかで葬式がロクにできずに、毎晩この墓場を彷徨っています。だから、一応リッチーの私は、定期的にここに来て、天に帰りたがっている魂達を送ってあげているんです」

 

 ……優しくて、良い人だ。

 

 「えっと、凄く良いことだと思うんだけど……アクアじゃないけど、それって街のプリーストに任せれば良いんじゃないの?」

 

 カズマも私の言葉に頷く。

 私達、二人の疑問にウィズがアクアをチラチラ見ながら。

 

 「そ、その……街のプリーストさん達は、拝金主義……いえ、お金がない人は後回しと言いますか……その……」

 

 ……ああ、なるほどね。アークプリーストのアクアがいるから言いにくいのか。

 

 「つまり、この街のプリーストは金儲けが優先のやつが多いから、それでこんな金がない連中が埋葬されているこの墓地なんて、誰もこないって事か?」

 

 「えっ……そ、そうです……」

 

 私達の視線がアクアに集中すると、本人はばつが悪そうにそっと目を逸らす。

 

 「それならしょがないね」 

 「それならまあしょうがない」

 

 「でも、ゾンビ達はどうにかならないか? 俺達がここ来たのって、ゾンビメーカーを討伐してくれっていうクエストを受けたからなんだ」

 

 カズマの言葉に、ウィズが困った表情を浮かべて。

 

 「あ、そうでしたか。……その、私がここに来ると形が残っている死体は私の魔力に反応して勝手に目覚めてしまうんです。誰かがこれをやってくれれば、私がここに来る理由をなくなるんですが………どうしましょうか?」

 

 「それはええと………アクアお願いできる?」

 

 「嫌よ! 私の睡眠時間が減るじゃない!」

 

 ええっ! めんどくさい。

 

 「そこをなんとか!」

 

 「嫌ったら嫌よ!」

 

 はあぁ。カズマ、お願い。っと視線をカズマに向ける。カズマもわかった様で。

 

 「おい、アクア。お前、女神なんだよな? 女神ってのはアンデットや迷える魂達を浄化するのが仕事なんじゃないのか? そんなんで本当に女神なのか?」

 

 「うっ………わ、分かったわよ! やれば良いんでしょ! やれば!」

 

 

 

 

 

    カズマside

 

 「納得いかないわ!」

 

 墓場からの帰り道、アクアはまだ怒っている。

 

 「いやっ、そんなこと言っても、あんな優しい人討伐する気にならないよ」

 

 「そうだよな、あんな良い人俺も討伐したくない」

 

 俺達は、あのリッチーを見逃すことにした。

 これからはアクアが定期的にあの墓場の浄化をする事で折り合いがついた。

 そこはいくらこの駄女神でもアンデットや迷える魂の浄化は自分の仕事だと理解しているらしい。

 睡眠時間が減るだの駄々をこねていたが。

 シロナはもとよりめぐみんとダクネスも、ウィズが人を襲った事がないと知り、見逃すことは同意してくれた。

 

 「でも、リッチーのウィズが街で普通に生活してるとか、この街の警備は大丈夫なのか」

 

 俺はウィズに渡された一枚の紙を見ながら呟いた。

 ウィズは俺達の住んでいる街でマジックアイテムの店を営んでいるらしい。

 「リッチーってダンジョンの奥深くにいるイメージがあったんですけど」とシロナと言ったら「生活が不便なダンジョンに住む理由がありませんよ」と言われた。

 いや、それは元は人間なんだから分かるけど。

 分かるんだが、俺の持っている異世界のイメージがどんどん崩れていく。

 

 これは、俺が望んでた異世界じゃない!

 

 「でも、何事もなく終わってよかったです。いくらアクアがいたとしても、相手はリッチー。戦闘になっていたら私とカズマは間違いなく死んでいましたよ」

 

 何気なく言うめぐみんの言葉にぎょっとする。シロナも不安そうに。

 

 「ね、ねえ。リッチーってそんなに危険なモンスターなの?」

 

 「ヤバイなんてもんじゃないです。リッチーは強力な魔法防御、そして魔法の掛かった武器以外の攻撃の無効化。さらには相手に触れるだけで様々な状態異常をひきおこし、その相手の魔力や生命力を吸収する伝説級のアンデットモンスターです。むしろ、何でアクアのターンアンデットが効いたのか不思議なくらいです」

 

 軽く失禁しかけた。シロナも顔が青くなっている。

 そうだよな、アンデットの王なんて呼ばれてるからな。

 リッチーのスキルを教えて貰うと言ってくれたので喜んで名刺をもらったのだか……行くときはアクアを連れていこう。

 

 「カズマその名刺、私に渡しなさい! あの女より先に家に行って周りに神聖な結界を張って、家に入れなくしてやるから」

 

 やっぱり連れて行かない方がいいかも………。

 

 俺がそんなことを考えていると、シロナがポツリと。

 

 「………ねえ、言わないか悩んでたんだけど、ゾンビメーカーの討伐のクエストってどうなるの?」

 

 「「「「あっ」」」」

 

 ゾンビメーカー討伐。

 クエスト失敗。

 




 アクアが浄化するのを納得するまで会話を書いてみました。下手だったらごめんなさい!

 シロナはまだレベルが高くないので強力な魔法を打ったらほとんど魔力がなくなります。それでも人を一人抱えて走れる分は残りますが……。

 次回はキャベツの報酬です!

 面白く書けるように精一杯頑張ります!

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