この異世界転生者に祝福を!   作:白城

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 皆さんこんにちは白城です!

 一ヶ月ぶりです!

 ……何か、お気に入りが凄く増えていました。私は夢でも見ているんでしょうか。
 
 今回はシロナ視点が多いです。デストロイヤー戦まで書けませんでした。作戦会議が主ですね。


第二十六話 『この理不尽な要塞の説明を』

    白奈side

 

 風呂での一件は取り敢えず後で考えるとして、急いで屋敷に戻ると、そこは既に阿鼻叫喚と化していた。

 

 「二人とも早く! 逃げるの! 遠くに逃げるの!」

 

 色んな物をひっくり返し、ワタワタしながらアクアが言った。

 大きな荷台に多くの物を入れるその様子はまるで疎開でもするかの様な勢いだ。

 逆に、そのワタワタしているアクアの隣では、既に荷造りを終えためぐみんが、小さな鞄を一つだけ横に置き、達観した様子でお茶を飲んでいる。

 

 「起動要塞デストロイヤー。………あれと戦うなんて無謀も良いところですよ」

 

 いつもの様に装備を整えてからギルドに向かおうとしていた私は、その二人を見て唖然としていた。

 チラッとカズマを見るとどうやら同じらしい。

 

 「ねえ、いい加減デストロイヤーって何なの?」

 

 その言葉に屋敷の二階から降りてきたダクネスが、見たこともない重武装に身を包み、説明してくれる。

 

 流石ダクネス。

 聖騎士と言うだけあって、街の住人を放って、逃げると言う選択肢はないみたいだね。

 

 「起動要塞デストロイヤー。それが通った後にはアクシズ教徒以外、草も残らないと言われてる、最悪の大物賞金首だ」

 

 「ねえ、何で私の可愛い信者達がそんな風に言われているの!?」

 

 アクアが何か叫んでいるけど、ダクネスの説明ではあまりピンとこない。

 

 いや、呼び出しの慌てようから、相当ヤバイ物と言うのは分かるけど………。

 と言うか前から少しでていた、起動要塞と言うのは何だろう。

 

 「なあ、それってめぐみんの爆裂魔法でとうにかならないのか?」

 

 隣にいたカズマがした質問に対しめぐみんは。

 

 「無理ですね。デストロイヤーには強力な魔力結界が張られています。爆裂魔法の一発くらい、防いでしまうでしょう」

 

 そんな……。

 何かと問題扱いされる爆裂魔法だけど、威力はこの街一番のはず。そんな、めぐみんの爆裂魔法でも破壊できないデストロイヤーって……。

 

 「ねえ、ウチの信者はいい子達よ! めぐみんも聞いてよ、巷で悪い噂が流れているのは、きっと心無いエリス教徒の仕業なのよ! 皆エリスの事を美化しているけど、あの子、結構やんちゃで、悪魔を相手になると私以上に容赦がないし、それに、結構自由奔放だし! アクシズ教を! どうか、アクシズ教をお願いします!」

 

 「アクア、日頃神の名を自称しているだけでは飽きたらず、エリス様の悪口まで言うなんてバチが当たりますよ」

 

 「自称じゃないわよ! 信じてよー!」

 

 流石に可哀想なので、後でフォローしてあげよう。

 

 アクアがめぐみんに泣きつくなか、カズマは回りを見わたし、皆がいること確認した。

 

 「皆、ギルドに行くぞ!」

 

 「どうして!?」

 

 その言葉にアクアが疑問の声を上げる。

 

 「お前らは、長く過ごしたこの屋敷とこの街に、愛着は無いのか! ほら、ギルドに行くぞ!」

 

 この言葉に流石に私は。

 

 「あの、カズマ。まだ一日しか住んでないよ? って言うか、何でそんなに燃えてるの? なんか、目の奥がキラキラしているように見えるし……本当にどうしたの?」

 

 

 

 

 

 

 「おおっ! やっぱり来たかカズマ! お前なら来ると信じていたぜ!」

 

 完全武装でギルドに入ると、そこにはダクネスと同じく重装備のダストの姿。

 その隣には、キースとテイラーとリーンの姿も。

 私は改めてギルド内を見渡した。

 そこには様々な冒険者達が、それぞれが考えられる限りの重装備で馳せ参じていた。

 きっと、彼らもこの街が好きなんだろう。

 

 何か、男性比率が多い気がするけど、気のせいだよね。

 

 ………と、ある程度の冒険者達が集まった所で。

 

 「お集まりの皆さん! 本日は緊急の呼び出しに応じて下さり大変ありがとうごさいます! 只今より、対起動要塞デストロイヤー討伐の緊急クエストを行います。このクエストはレベルも職業も関係なく、全員参加でお願いします。皆さんがこのこの街の最後の砦です。どうかよろしくお願いします!」

 

 ギルド内が騒がしくざわめく中、ギルド職員が声を張り上げた。

 そして、職員達が酒場になっている部分のテーブルを中央に寄せ集め、即席の会議室見たいな空間を作り出す。

 

 はあ、なんか空気が尋常じゃ無いよ。

 まあ、それほどまでにデストロイヤーヤバイって事だね。

 

 「それではお集まりの皆さん、只今より緊急の参戦会議を行います。どうか、各自席に着いてください」

 

 私達は職員の指示に従い、他の冒険者に習って席に着いた。

 しかし、どのくらいの冒険者がいるんだろう。

 広いギルド内とはいえ、ここにいる人の数は百ぐらいではきかないだろう。

 デーブルに着くと、他の冒険者の顔が良く見える。

 暇なのか、カズマの隣でアクアはコップの水で遊んでいる。

 

 「それでは、まず、現在の状況を説明させて頂きます。…………えっと、まず、起動要塞デストロイヤーの説明が必要な方はいますか?」

 

 その職員の言葉に、カズマと私の二人を含む数名の冒険者が手を挙げた。

 それを見て、職員が一つ頷き。

 

 「起動要塞デストロイヤーは、対魔王軍の兵器として、魔道技術大国ノイズで造られた、大型ゴーレムの事です。外観はクモの様な形状をしております。大きさは、小さな城くらいの大きさを誇っており、魔法金属がふんだんに使われ、それにより軽めの重量で、八本の脚で、馬を越える速度が出せます」

 

 デストロイヤーが余程有名なのか、殆どの冒険者が知っているとばかりに頷いている。

 

 「そしてその体には、魔術技術の粋により、常時強力な結界が張られています。これにより、魔法攻撃は意味をなしません」

 

 それを聞いている冒険者の表情が、少しずつ暗くなっていく。

 多分、自分達がいかに無謀な戦いをしようとしているのか分かってきたのだろう。

 

 「魔法がきかない為、物理攻撃しか無い訳ですが、接近すると引き潰されます。なので、弓や投石などの遠距離攻撃になりますが………。魔法金属製の体、そして起動要塞の速度により、この二つの攻撃は難しいと思われます。空からのモンスターの攻撃に備える為、自立型のゴーレムが、飛来する物体は備え付けの小型バリスタ等で撃ち落とします。なおかつ、戦闘用のゴーレムが胴体部分の上に配備されています」

 

 ……………。

 

 「現在、起動要塞デストロイヤーは、北西方面からこの街に向かって接近中です。残りあと一時間です。………では、ご意見をどうぞ!」

 

 あれほどざわついていたギルド内は、今はシンと静まり返っていた。

 

 結界で魔法が効かない。接近したらしたで踏まれる。空からの攻撃も撃ち落とされる。

 しかも、それが迅速に行われる。

 うーん。だけど、それだけ隙がないと言っても必ず、何処かに弱点があると思う。だって、作った国が何かを問題が起きた時の保険として対抗策とかを考えるはずだよね……。

 

 私の頭の中で一つの可能性が生まれる。

 それを尋ねるため、手を挙げた。

 

 「………すみません、デストロイヤーを造った国なら、それに匹敵する何かを造るなりできなかったんだすか? 造ることは出来なくても、何か弱点くらいは知っていたりとか………」

 

 「デストロイヤーの暴走で、真っ先に滅ぼされました」

 

 …………うん、無理ゲー。

 そんな強敵が駆け出しの街に来ては駄目な気がする。

 

 職員が静かに言った。

 

 「………他にありませんか?」

 

 これなら、アクアとめぐみんが逃げようとしていたのが分かる。

 

 「くそ、こんな時、ミツルギさんがいてくれたら………」

 

 「何処に行ったんだろう………」

 

 うっ。

 

 冒険者達が残念そうに呟く。

 恐らく、今カズマが売った魔剣を何とかしようと違う街に行っているのだろう。

 その原因をつくった私達二人は気まずく目を逸らす。

 難航する会議に飽きたのか、私達のテーブルの傍に座っていたテイラーが。

 

 「なあカズマ。お前さんなら機転が利くだろう。何か良い考えが無いか?」

 

 突然そんな事をカズマにきいた。

 

 確かにカズマなら、何かいい考えが思い浮かぶかも知れない。

 

 その質問にカズマが困り顔になりながらも少し考え。

 すると、何かを思い付いたのか、隣でコップの水で、テーブルに絵を描いて暇を潰しているアクアに振り返えり。

 

 「なあアクア。ウィズの話じゃ、魔王城に張られている魔力結界すら、魔王軍幹部の二、三人が維持したものでも、お前の力なら破れるとか言ってなかったか? なら、デストロイヤーの結界も破れるんじゃ………、ってなんだこりゃー!?」

 

 カズマがそこまで言って、アクアの水だけで描いた絵に驚いた声を上げた。

 私もカズマごしに覗いてみる。

 

 「うわっ、凄っ!」

 

 思わず、声が出る。

 そこに描いていたのは、間違いなく芸術作品。

 それは、美しい天使が花を手に戯れているその絵を……!

 

 「ああ、そんな事言ってたわね。うーん、でもやってみないと分からないわよ?」

 

 アクアは、言いながらその水で描いていた絵に、躊躇わずコップの水をかけた。

 

 「ああっ! もったいねえ、何で消すんだ!」

 

 「な、何よ急に。描き終わったから、また新しいのを描こうと………」

 

 そんな事を言い合っていたカズマ達に、職員が大声を上げた。

 

 「破れるですか!? デストロイヤーの結界を!?」

 

 その言葉に、カズマ達は冒険者達の衆目に晒される。

 カズマはその視線を受け、急いで手を振った。

 

 「いやもしかしたらって事で!」

 

 慌てて言ったその言葉にカズマの言葉にギルド内がざわめく。

 そして、

 

 「やれるだけやって貰えませんか? あとは火力がだせる魔法があれば………」

 

 職員は再び悩みだし、また静ま返ろうとしたその時。

 あの冒険者が、ポツリと言った。

 

 

 「火力持ちならいるじゃないか。頭のおかしいのが」

 

 その言葉に再びざわめくギルド内。

 

 「おお、そうか頭のおかしいのが!」

 「いたな、おかしい子が………!」

 

 冒険者達の視線は自然と私の隣にいためぐみんに視線が集まり……。

 

 「おい待て! それが私の事を言っているのならその略し方は止めてもらおう。さもなくば、いかに私の頭がおかしいか、今ここで証明することになる」

 

 めぐみんが声を上げると、冒険者達が一斉に目を逸らした。

 魔王軍幹部、ベルディアがめぐみんを、頭のおかしい紅魔の娘と読んでから、冒険者達の間ではそれが定着したらしい。

 

 「この街ではめぐみんの爆裂魔法が最大火力だ。いけるか?」

 

 ダクネスが真剣な声色でめぐみんに尋ねる。

 

 「うう………我が爆裂魔法でも、流石に一撃では仕留めきれないと思われ………」

 

 そうぼそぼそと告げる。

 ならせめて、あと一人。

 そんな空気になり、カズマが私に視線を向け、尋ねてきた。

 

 「なあシロナ、確かシロナってめぐみんの爆裂魔法には届かなくてもかなりの威力の魔法出せなかったか?」

 

 その言葉で私には期待の込めた目が集められる。

 私はそれに少し慌てるが。

 

 「え、ええと………うーん。ごめん。まず、機動力無くす事を考えて片脚四本ずつに撃つにしても私の魔法一撃じゃ多分無理かな。めぐめんのさっきの言葉を考えると良くて片方の脚を半壊って感じだと思う。私の今の使える魔法って破壊系じゃないし」

 

 ごめんカズマ。もっと強力な魔法を覚えたほうがいいかも。

 

 心の中でカズマと皆に謝る。

 あと一人、強力な魔法の使い手がいてくれれば………。

 

 

 ―――再びギルド内の空気がそんな雰囲気になった時、突然入り口のドアが開けられた。

 

 

 「すみません、遅くなりました………! ウィズ魔道具店の店主です。一応冒険者の資格を持っているので、私もお手伝いに……」

 

 ギルドに入ってきたのは、いつもの黒のロープを着たウィズだった。

 そのウィズを見た冒険者達は……!

 

 「店主さんだ!」

 「貧乏店主さんが来てくれた!」

 「勝てる! これで勝てる!」

 

 と、途端に熱烈な歓声を上げた。

 

 私はウィズがリッチーだと知っているけど、この冒険者達の勝てると言った騒ぎはなんだろう?

 

 その事は隣にいたカズマも気になったらしく、

 

 「なあ、なんでウィズはこんなに有名なんだ。って言うか可哀相だから貧乏店主はやめてやれよ。儲かってないのか、あの店は?」

 

 近くのテイラーに尋ねた。

 

 「知らないのか? 彼女は、昔凄腕アークウィザードとして名を馳せていたんだ。だが、やがて引退ししばらく姿を表せなくなったかと思うと、突然この街に現れて店をだしたんだ。店が流行らなかったのは、駆け出しの多いこの街には、高価なアジックアイテムを必要とする冒険者がいない事が原因だな。だから、皆、美人店主さんを見に商品は買わないが、店をこっそり覗きにいってるんだよ。そう、商品は買わないだけで」

 

 いや、少しくらい買ってあげようよ。

 

 「ど、どうも、店主です」

 

 そう言って、ウィズはペコペコ歓声を上げる冒険者に頭を下げている。

 

 「店をお願いします。またお店が赤字になりそうなんです………!」

 

 ………うん。今度、何か商品を買いに行こう。

 

 それはカズマも同じ気持ちだったのか目に涙があるように見える。

 

 「ウィズ魔道具店の店主さん、どうもお久しぶりです! ギルド職員一同、歓迎いたします! さあ、こちらにどうぞ!」

 

 職員の促されるまま、ウィズは周りに頭をペコペコと下げながら、中央のテーブルの席に座らされた。

 ウィズが席に着くと、期待の込めた目で進行役の職員を見る。

 

 「では、店主さんにお越し頂いた所で、改めて作戦を! ええと、先程のシロナさんの言っていた事を作戦に入れますと、まず、アークプリーストのアクアさんがデストロイヤーの結界を解除。そして、めぐみんさんと店主さんで足を攻撃。万が一脚を破壊し尽くせなかった事を考え、前衛職の冒険者全員はハンマー等を装備し、デストロイヤー通過予定地点を囲むように待機。そこで魔法で破壊し損なった脚を攻撃し破壊。そして、万が一を考え、デストロイヤーの内部には突入できるように、ロープ付きの矢を配備し、アーチャーの方はこれを装備。身軽な装備しの人達は、要塞への突入準備を整えておいて下さい!」

 

 進行役のギルド職員が、作戦をまとめ、全員に指示をだした。

 職員がウィズに視線を向けるが、問題ないと言うようにコクリと頷く。

 

 流石リッチーのウィズだね。問題なく脚を破壊できるんだ。

 

 そして、ギルド内に響くように、ギルド職員が声を張り上げた。

 

 「それでは、皆さん緊急クエスト開始です!」

 

 …………なんだろう。今回の作戦、私要らない気がする。

 

 

 

    カズマside

 

 街の前には冒険者達だけでなく、街の住人達も集まって、休むことなく、即席のバリケードが組み上げられていた。

 デストロイヤーを迎え撃つ予定の場所は街の正門の前に広がる平原だ。

 そこには、罠を配置できる職人達が、無駄だと分かっていながらも即席の罠を仕掛けている。

 

 「なあ、ダクネス。お前の固さは知っているが、ここはお前のどうしようもない趣味は置いておいて、ここは俺と一緒に道の端っこに引っ込んでいよう。な?」

 

 俺は、街の正門の前のバリケード、更にその前にジッと立ちはだかるダクネスに説得していた。

 ダクネスは、ここから動かないと言って聞かないのだ。

 新品の大剣を地面に突き刺し、柄に両手を乗せ、まだ姿も見えないデストロイヤーの方を見ながら動かない。

 ダクネスは、じっと黙っていたが、やがて口を開いた。

 

 「私の普段の行いのせいでそう思うのも仕方が無いが、私が自分の欲望にそこまで忠実な女だと思うか?」

 

 「思うよ。当たり前じゃん」

 

 「なあ!?」

 

 一瞬静かになった、ダクネスがちょっと、頬を赤らめて、一つ咳ばらいをすると、そのまま静かに続けた。

 

 「私はこの街を住人を守らなければならない。住人達は気にしないだろうが、少なくとも私はそう思っている」

 

 俺はその言い方に疑問を覚える。

 

 「何か、理由があるのか?」

 

 その言葉にダクネスはしばらく静かになるが。

 

 「すまない。その理由はいずれお前に話すかも知れないが、今はまだ言えない。だが、私は騎士だ。住民を守る事は私の義務であり誇りだ。だから、……無茶だと言われても、ここからは何があっても一歩も引かん」

 

 「……はあ。お前ってたまにどうしようもなくワガママで、頑固になるところがあるよな」

 

 俺が呆れた様に言うと、ダクネスが少しだけ困った様な、不安そうな顔で。

 

 「ワガママで頑固な仲間は嫌いか?」

 

 「どこかのアークプリーストのワガママは聞いてるとイラッとして引っ張ったきたくなるけど。……まあ、今のお前見たいな奴のワガママは嫌いじゃないよ」

 

 俺が適当に言ったその言葉に。

 

 「………そうか」

 

 少しだけ、安心した様にダクネスが呟いた。




 思った以上に長くなりました。

 デストロイヤー戦では、本当にシロナの出番が少なそうですね。

 来年までにもう一話は更新したい……………っ!

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