この異世界転生者に祝福を!   作:白城

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 こんにちは白城です!

 その………お久しぶりです。
 
 投稿する前に久しぶりに小説の情報見てみたら、何とお気に入りの数が300を越えていました!
 更にUAも30000越え!
 ありがとうございます! ありがとうございます!

 9月中に投稿しようとしたんですが、予想以上に遅くなってしまいました!


第二十四話 『この素晴らしいレベル上げに祝福を』

    白奈side

 

 「い、痛い痛い! 何でこんなに顔を目掛けて叩いてくるの!?」

 

 アクアの悲しい現実を知ってから自室へと戻り、少しでも心の傷を癒すために少しばかりの仮眠をとってから、私も早く借金を何とかしたい。

 

 「まさか、顔が弱点だって分かってるの!?」

 

 そう考えた私は、屋敷を出て、収穫が遅れていると言うネギの収穫を手伝っていた。

 手伝っていると言ってもしっかりと報酬はあるし、その報酬も少し多く渡してくれるらしい。

 ネギがバナナやさくらんぼの様に見た目や採れる場所が変では無い事には安心したが…………。

 ネギの根本を掴み、鎌を当てようとすると。

 

 「痛っ!」

 

 ビスッと、ネギに顔面を叩かれた。

 思わず反撃したくなるが、野菜相手に喧嘩するなんて大人げない事を私はしないし、これは商品なので傷をつける訳にもいかない。

 

 「………はあ」

 

 私は溜め息を吐き、この気持ちも抑え、ネギを土の中から掘り上げた。

 どうやらこの世界の野菜は知恵が回るらしい。

 畑の野菜達はただで収穫させられるものかと最後の最後まで収穫をする人に向かって抵抗するのだ。

 アクアにもこの頭を使うところを見習って欲しい。

 と言うか、野菜にも負ける知力と言うのは大丈夫なのだろうか。

 農家の人達はどうなのかと視線を向けた。

 

 やはりと言うべきか農家の人達は私の倍以上の早さで収穫をしている。

 顔を狙ってくるネギの先端の方を掴み、叩かれない様にしながら、ネギの収穫をしていた。

 

 ………なるほど。確かにそうすれば叩かれないね。

 

 私はそれを手本とし、収穫を再開した。

 

 「お、なんだ初日の割にいい動きだな。その調子でどんどん収穫していってくれ」

 

 「…………はい」

 

 数時間もの間、野菜相手に格闘した私は、借金返済の為の畑の収穫を終了した。

 

 ………何だか、この世界の食べ物に慣れつつある自分にこわいよ。

 

 私はしばらく農家の仕事はしないと決心した。

 

 

 

 

 

 レベルが15になった。

 元々のレベル12だったので、畑仕事だけでなんとレベルが三も上がった事になる。

 前のキャベツ狩りでもそうだったけど、なんで収穫をしただけでレベルが上がるんだろう。

 

 「うぅ、全身が痛い。まあ、でも……」

 

 不幸中の幸いか泥のついた方で叩かれた回数は少なかったので、顔が泥だらけにならずにすんだ。

 どうやら、今年の野菜は活きが良く、獲得経験値が多かったらしい。

 借金返済が少しだけ楽になり、さらにレベルも上がり一石二鳥なのだが……。

 

 「何で野菜の収穫でレベルが上がるの? 苦労したからレベルが上がるのは嬉しいけどなんか納得いかない。……はあ、早く家に帰りたい」

 

 そう、キャベツ狩りでも言った様な台詞を言いながら屋敷に帰った。

 

 

 

 

 「今帰ったよ~」

 

 「おっ、やっと帰ってきたわね、シロナ。お帰りなさい! ちょっとシロナも見なさいよ! 今日の晩御飯はカニよ! カニ!!」

 

 屋敷に帰ると、アクアが満面の笑みで出迎えてくれた。

 先に出掛けたカズマはもう帰っていた。

 どうやら、この世界でもカニは高級品らしい。

 日本にすんでいた頃はカニなんて数える程しか食べれなかったけど、まさか異世界で食べられるとは思わなかった。

 

 「って、シロナなんか泥だらけだわね。取り敢えず、これで顔を拭きなさいな」

 

 そんな珍しく気のきいた事を言って、クリエイトウォーターで濡らしたタオルを渡してきた。

 

 あれっ? 今アクアタオル何処からだしたの? いや、気にしない事にしよう。

 

 「ありがとうアクア。 …………ねえ、これどうしたの?」

 

 ありがたく受けとり、顔を拭いた後、そんな当たり前の事を尋ねる。

 するとアクアが、その酒瓶に頬ずりながら心底幸せそうに言ってきた。

 

 「さっきダクネスの実家の人から、これからそちらでダクネスがお世話になるのならって、それと引っ越し祝いに、超上物の霜降り赤ガニが送られてきたのよ! しかも、すんごい高級酒までついて!!」

 

 高級酒までついてくるならアクアの機嫌が良いのも納得した。

 

 「あわわ……、まさか冒険者家業をやりながら、霜降り赤ガニにお目にかかれる日が来ようとは………、今日ほどこのパーティーに加入して良かったと思える日はないです」

 

 「そんなにこのカニって高級なのか?」

 

 カズマが席に座りながら霜降り赤ガニに拝みだしためぐみんに、気になった事を尋ねた。

 それは私も気になっていた。

 するとめぐみんが、何を言ってんだと言わんばかりのオーバーアクション気味に、拳を振り上げ力説した。

 

 「当たり前です! もしこのカニを食べる変わりに今日は爆裂魔法を我慢しろと言われたら、大喜びでがまんします! そして、大喜びした気分のまま食べた後で、爆裂魔法をぶっ放します! それくらい高級なのですよっ!」

 

 「おお、そりゃ凄いな! …………あれ? お前最後何て言った?」

 

 うん、間違いなく爆裂魔法を撃つって言ったね。

 

 カズマとめぐみんがそんな事を言っている間にも、ダクネスが広間の食卓テーブルに、調理積みのカニを運んで、並べていく。

 アクアが嬉々として人数分のグラスを持ってきた。

 全員で食卓に着き、早速霜降り赤ガニをパキッと割ったカニの脚から取りだした。

 白とピンクの身を酢につけて、そのまま頬張る。

 

 「っ!?」

 

 お、美味しいっ!

 

 その余りの美味しさに驚いた。

 ふんわりと甘く、それで濃縮されたカニの独特の旨味が口に広がる。

 

 こんなに美味しいのは日本にいた頃、食べたことが無い!

 

 見ればカズマもその美味しさに驚いていたが、直ぐに他の皆と同じ様に黙々と無言でカニを食べていた。

 

 凄い、これは美味しい!

 

 「カズマにシロナ、どっちでも良いからちょっとここに火をちょうだい。私がこれから、この高級酒の美味しい飲み方を教えてあげるわ!」

 

 言いながら、早々に甲羅についたカニ味噌を食べ終わっていたアクアが、小さな手鍋の中に炭を入れ、その上に金網を置いた。

 見たところ、簡単な七輪の様な物だ。

 

 「か、カズマお願い」

 

 「分かった。ほれ、『ティンダー』」

 

 私は両手がカニで塞がっていたので、カズマは言われるがままに炭に火をつけると、金網の上に少しだけ残ったカニ味噌を置く。

 そのまま甲羅の中に、高級酒だと言っていた、日本酒の様な透明の酒を注いでいった。

 アクアは上機嫌に、軽く焦げ目のつく程度に甲羅に炙って、

 

 「そろそろねー」

 

 そう言って熱くなった酒とカニ味噌の混ざったそれを一口すすり………。

 

 「ほぅ………っ」

 

 実に美味しそうに息を吐いた。

 行動がおじいさん臭い気がするけど、それでも、それを見ていた全員がゴクリと喉を鳴らし、皆と共にそれを実行しようとした私の手が一旦止まる。

 

 ………日本では未成年の私が飲んでもいいのかな?

 カニの美味しさに忘れていたけど、私は日本では未成年。未成年からお酒を飲むと成長に悪影響があると聞くけど………。

 

 そんな考えが頭をよぎる。

 

 周りを見るとカズマも高級酒を飲まず、何やら渋い顔をしていた。

 

 どうしたんだろう? カズマも未成年の事を気にしているのかな? 

 いや、でもカズマの事だから、そんな事を気にする様な事はないと思う。

 

 「!? これはいけるな、確かに美味い!」

 

 うぅっ、どうしよう。

 

 ダクネスが凄く美味そうな声をあげる。

 

 その声に私は更にどうしようかと葛藤する。

 カズマも凄く何かと葛藤する様に目をきつく閉じていた。

 この世界ではお酒については年齢よる制限なんてないが自己責任と言う、暗黙のルールがある。

 おそらく、あれを飲んだらもう止まらないで飲み続けてしまうかもしれない。

 

 「ダクネス、ワタシにもそれをください! 良いじゃないですか今日くらいは!」

 

 「だ、ダメだ、子供の内から酒を飲むとパーになると聞くぞ」

 

 「シロナシロナ。シロナは私がお酒を飲んでも良いですよね!?」

 

 「……え!? ええと………ほ、ほらっ! 確かお酒って小さい頃から飲むと体の成長に悪影響があるって聞くしね……」

 

 「おい、私の体を見て言うのは止めてもらおうか! 大丈夫ですよ、今日くらいはー!」

 

 「じゃんじゃん飲むわよー! 気分も良くなってきたし、初披露の宴会芸を見せてあげるわ! 指芸で起動要塞デストロイヤー!」

 

 「「おおっ!」」

 

 デストロイヤーをしっている私とカズマ以外の二人が驚きの声をあげる。

 

 「こ、この姿、形、動き、正にデストロイヤーです!」

 

 「あの動きを再現するとは!」

 

 だからデストロイヤーって何!

 

 「アクアアクア、もう一度、もう一度デストロイヤーを!」

 

 「ダメよ。宴会芸は乞われて見せるものではないわ。魂が命じる時自ら披露してしまうものなの」

 

 これだけ好評ならもう、アクアは宴会芸で稼いだ方が楽に生きているの気がするんだけど………。

 

 そんなやり取りをよそに、お酒をまだ飲んでいない私達を見たダクネスが首を傾げ。

 

 「………ん? どうした二人とも。もしかして、家から贈られてきた物が口に合わなかったか?」

 

 そんな事を言って、普段見られない、ちょっと心配そうな表情を浮かべた。

 

 ダクネス。違うの。

 

 「ええと、なんか心配させちゃってごめんね。私はまだお酒って飲んだことがないからちょっとね………そうだ、じゃあ明日、飲んでみるからっ! 今日はカニだけを食べるよ、うん!」

 

 「いや、カニは凄く美味しい。ただ、今日は昼間にキース達と飲んできたんだ。それに、まだ酒の味なんて分からないし、今日はもう飲めそうにないんだ。……明日! 明日貰うよ!」

 

 「………そうか」

 

 私達の言葉にそんな安心した様にホッと息を吐き、屈託なく笑うダクネス。

 そんな純粋そうな表情に私も安心した。

 だが、カズマはそれとは逆に苦しそうな表情を浮かべる。

 

 どうしたんだろう?

 

 「ならせめて沢山食べてくれ。日頃の礼だ」

 

 「うん」

 

 その言葉を最後に私はカニをもう一度食べ始めた。

 だが、カズマはダクネスの顔、そして私達を顔を見る。

 

 「「「「?」」」」

 

 そして、何やら凄い勢いでカニをたらふく食べると、立ち上がり。

 

 「……それじゃあ、ちょっと早いけど俺はもう寝るとするよ。お前ら、お休み!」

 

 そんな凄く良い笑顔でそう言って自分の部屋のある、二階へと上がっていった。

 

 

 

 

 「………カズマ、本当にどうしたんだろ?」

 

 私のそんな疑問の言葉にめぐめんがカニを食べながら答える。

 

 「まあ、確かにカズマがこんなにも早く寝るのは珍しいですね」

 

 「二人ともそんな事気にしてないで、今日あの男はこのお酒を飲まないって言っていることだし、さあ、じゃんじゃん飲むわよー!」

 

 こんな時、何も気にしないアクアの性格が羨ましい。

 

 取り敢えず、気にしてても変わらないね。

 それにしても、私とカズマの分のお酒までアクアに飲まれそうだなあ………。

 

 そう思った私は自分とカズマの分の二つの酒瓶をアクアからとられないような位置に置くと、カニを食べるのを再開した。

 

 

 

    カズマside

 

 酒を飲んで熟睡されると夢が見られない。

 それを酒を飲む直前に気付いた俺は、鋼の心を持って周りの声に惑わされる事なく、酒を飲む事を我慢し、自分の部屋で引きこもった。

 

 そうだ。あの酒は明日に飲めば良いんだ。

 あのアクアが全部飲んでしまうか心配だったが、あそこにはシロナがいるんだ。大丈夫だろう。

 

 部屋に閉じ籠って鍵を掛け、窓の鍵は外しておく。

 別に開けておいてなんて言われてないが、万が一に備えてだ。

 普通かもしれないが、わざわざ来て頂くのにこれ以上お手数を掛けては申し訳無い。

 この部屋には時計が無いので正確な時間は分からないが、指定した時刻までは迫ってきている。

 

 ああ、どうしよう、ヤバイ。ドキドキしてきた。

 期待と緊張で興奮して眠れない!

 

 

 

 

 俺は一体どれくらいのそうしていただろうか。

 大分長い時間ベットの中にいた気がする。

 俺はベットから這い出ると、緊張で汗を掻いた事が気になった。

 

 …………。

 夢を見せてもらうだけなのだから気にする必要はないと思うが………。

 

 これもエチケットと言うやつだ。

 皆が寝静まる中、俺は風呂場へと向かった。

 

 

 ここは元々が貴族の別荘だと言うだけはあり、風呂場には特殊な魔道具が備え付けられている。

 それは簡単に言えば、電力ではなく、魔力で動く湯沸し器みたいなものだ。

 それほど大量の魔力を使わないため、一般人でも使用が可能な魔道具だ。

 使用すると魔力の消費の為か、一瞬気だるさに包まれるのだが、それぐらいはしょうがない。

 俺は風呂場に備え付けられたランタンに魔法で灯りを灯すと、風呂場の外に使用中の札を掛けた。

 さらに、服を脱ぎ、しっかり誰が入っているか分かるようにしておく。

 そう。漫画とかで良くある展開にならない様に、細心の注意を払っておく。

 そう言った展開は、お店でお願いした夢の中だけで十分だ。

 

 まあ、そんな事になったら俺は逆セクハラとして、女より先に悲鳴を上げて痴女扱いしてやる。

 

 「……そんな展開は漫画の中だけだろうけどなあ」

 

 脱衣場のランタンから放たれる灯りに照らされながら、俺は湯の中でのんびりと手足を伸ばす。

 そのまま、何となく息を深く吐き、眠くなって目を閉じた。

 

 

 

 俺は一体どれぐらいの間そうしていただろうか。

 脱衣場外から、カラン、と何かが落ちる音で目を開けた。

 浴場に掛けていた札が落ちたのだろうか。

 

 しっかり掛けておいたはずなのだが………?

 まあいい、こんな夜中に誰かが入ってくるとは思えない。

 脱衣場には俺の服だって入っているんだ。

 そこで気付いた。

 

 ランタンの火が消えている?

 ………まあ、いいか。灯りが消えた所で千里眼と言うスキルで暗視が可能な俺は困らない。

 浴場の窓から指す月明かりだけでも、十分明るい。

 そう、呑気に構えていると……。

 

 

 ――脱衣場のドアの開ける音がした。

 




 全話で謝っている気がしますが、こんなに遅くなり取り敢えず申し訳ありません!

 次回の話はもう三分の一程書き終えているので今回以上に間があく事はない………と思いたい。

 このまま書くと一話の文字数が9000を越えそうだったのでこれでは長い!と思い、ベルディア戦の様に分ける事にしました!

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