この異世界転生者に祝福を!   作:白城

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 こんにちは白城です!

 夏休みなので少し早く投稿できるかな? と思っていたら、夏休みであって、夏休みじゃありませんでした。

 そして、夜遅くに書いたので、誤字脱字があると思います。

 ………早くお盆休みに入りたい。


第二十三話 『この素晴らしい店に祝福を』

    白奈side

 

 屋敷を手に入れた。

 一番の問題となっていた、冬越しと言う問題が解決された。

 早速、パーティーメンバーの五人でここに移り住む事になった訳だけど……。

 

 「ねえ、ダクネス。その妙に薄い気がするのは私の気のせいなの? その……もうちょっと厚い服を着た方が良いと思うんだけど……」

 

 私はダクネスに気になった事を質問していた。

 

 「ああ、これか? 勿論わざとだ。あのカズマからのエロい視線を毎日向けられると言うのが………」

 

 やっぱりダクネスの言っているのか理解できない。したくもない。

 

 「シロナシロナ。シロナの番ですよ?」

 

 「あ、そうだった。ごめん。うーん」

 

 「まさかの自分から聞いておいての放置だと!? これはあの放置プレイの一貫なのだろうか!?」

 

 隣で頬を赤らめ、ハアハア言っているダクネスを面倒臭いので放置し、視線を元に戻す。

 私は現在、目の前の盤面を見ながら、頭を悩ませていた。

 最初はめぐめんとダクネスが遊んでいたが、ゲームとあれば私がやらないわけがなく。

 今、広間の中央でめぐめんと元の世界のチェスの様な将棋の様なボードゲームを興じていた。

 

 「じゃあ、ここに冒険者を移動」

 

 「うぅっ、そうきましたか。このマスにオーク兵をテレポート」

 

 現在の状況はめぐめんが僅かに劣勢。

 魔法の概念があるこの世界は、地球とは違い、チェスの様な遊びのルールも若干違う。

 めぐめんとの戦歴は4戦中0勝0敗4引き分けだ。

 別に私とめぐめんが上手く引き分けにしている訳じゃない。

 

 「なら、このマスに冒険者をテレポートで王手!」

 

 「テレポート」

 

 「あっ!!」

 

 そう、この様なルールがあり、なかなか勝敗がつかないのだ。

 因みにカズマは、この王様が盤外へとテレポートさせられた時点でもう、やらないと心に決めたらしい。

 王様が盤外へとテレポートさせられ、少しイラッとするがそれを我慢し駒を動かす。

 

 「………ねえ、やっぱり王様を盤外へとテレポートするのはズルいの思うよ」

 

 「……それを言うなら本当にシロナは初心者なんですか? 動きが初心者に見えないんですが……」

 

 「………それはまあ、私の元いた国では似た様なものがあったからね」

 

 

 

 ―――十分後。

 

 「ええと、ならここにクルセイダーを移動」

 

 「ここに王様をテレポートです」

 

 「ひっかかったね。ここに冒険者を移動。そして、詰みだね。やったー私の勝ち……」

 

 「…………デストロイヤーエスクプロージョン!」

 

 「あああああああーっ!」

 

 めぐめんがこのままでは負けると判断したのか前回同様に、エスクプロージョンと叫びながら、ゲーム盤をひっくり返した。

 

 「………やっぱり、王様を盤外へとテレポートするのは良いとしても、エスクプロージョンは禁止にするべきだよ……」

 

 そう言って私は絨毯に落ちた駒を集め始める。その時、カズマの声が聞こえた。

 カズマは厄介な借金を早く返したいそうで、ギルドから貰ってきた内職を、一番暖かい場所の暖炉の前でやっている。

 

 「おい、アクア。その酒はどうしたんだ? もし、また借金なんかして買ったんだとしたら、直ぐにそれを売り飛ばしてくるからな?」

 

 「ちょっとカズマってば私の事をなんだと思っているの? これはシロナから貰ったお金で買ったのよ」

 

 「……お前はシロナにもうちょっと感謝した方が良い思うぞ」

 

 確かに悪霊の件はアクアのせいとは言え、お酒はアクアのせいではないので、少しのお金はやったけど直ぐにお酒に使うとは思わなかったなあ。

 

 カズマはアクアの言葉を聞くとため息を吐いた。

 

 「そんな事よりもそこの席をこの高貴な女神であるアクア様に譲りなさいよ。これを見なさいな、レベル欄を! 私のレベルは21。パーティーの中で一番高レベルなの。レベル20にも満たないひよっこの分際で、おこがましいわよ! ほら、それが分かったら格上の私に暖炉の前を譲りなさいよ!」

 

 確かに考えてみれば、魔王軍の幹部のベルディアの討伐に加えて、先日の悪霊の浄化。

 私はアクアの成長を喜ぶと同時に、大きくレベルを離された事で、悲しくなり……。

 

 「…………ん? あれ? なあ、アクア。お前、レベルは上がってるんだけども。ステータスが、最初見た時から一切延びていないんだが、それはなぜ?」

 

 「バカねカズマ。私を誰だと思っているの? ステータスなんて最初から全部カンストしてるに決まってるじゃない。初期ポイントも、宴会芸スキルとアークプリーストの全魔法を習得できる程の量を最初から保有。そこらの一般の冒険者と一緒にすることが間違ってるわ」

 

 私はその言葉を聞き、広い集めていたボードゲームの駒を落した。

 カズマも表情が絶望に変わっていたと思う。

 

 ………ステータスが最初からカンスト。……つまり、アクアの知力はこれ以上上がらないと言うと事で………。

 

 そんなカズマを見てか、ここからじゃ顔を良く見えないが、恐らく勝ち誇った様な笑みを浮かべているだろう。

 だが………。

 

 カズマはムクリと暖炉の前のソファーから立ちあがり、アクアに譲った。

 

 「あら? なによ、随分素直じゃないの。………ねえ、カズマ。何で泣いているの? そんなに私にレベルを抜かれたことがショックだったの? ……ね、ねえ、何で私の肩をぽんぽん叩いて優しくするの? なんでそんな、可哀想な人を見る目で私を見るの? ちょっとカズマ!」

 

 カズマはそのまま外出した。そのカズマの背中は悲しみに溢れていた。

 

 「もう、なんなのよー!」

 

 ……今度知力の上がるポーションとかを探してみよう。

 

 そう決心し、私は駒を広い集め自室へと向かった。

 

 

 

    カズマside

 

 アクアの悲しい現実で、仕事をする気分では無くなった為、現在、俺は気分転換に街に繰り出していた。

 街の中には雪が積もり、寒さの為か人もあまり出歩いていない。

 この世界の住民達の常識は、冬は引き篭るもの。

 凶暴なモンスターしか活動していないこんな時季に、クエストに出掛けているのは日本から来たチート連中ぐらいのものだ。シロナはレベルが低いので例外だが。

 そして、こんな寒い中、街中をふらついているのは俺の様な暇人か……もしくは俺の目の前で不審な動きを見せている、俺の知りあいぐらいだろう。

 俺は道を行ったり来たりし、コソコソしながら、路地裏に佇む一軒の店の様子をうかがっている、二人の知人に声を掛けた。

 

 「キース、ダスト。お前らこんな所で何やってんの?」

 

 「「うおっ!?」」

 

 背後から声を掛けられ、キースとダストが跳び跳ねた。

 今日の二人の格好は、冒険者には似つかわしくないラフな格好だ。

 

 「な、何だよカズマか、驚かすなよ」

 

 キースが俺をみて安心した様に言ってくる。

 

 「よう。あれか? 今日はあの四人は一緒じゃないのか?」

 

 ダストが俺の回りをチラチラ見ていた。

 

 まあ、連中にエライ目に遭わされてるし、警戒するのは分かるが、なぜシロナにいれた四人なんだろう。

 

 「いや、今日は俺一人だから安心してくれ。そんなにあいつらが苦手になったのか? 俺は家にいるのも飽きたから、散歩しているんだよ。もう一回聞くけどお前らこんな所で何してんの?」

 

 俺の言葉に安心したのか、ダストがホッと息を吐きながら。

 

 「いや、まあ………俺達はその、なあ? まああの姉ちゃん達がいないなら別にいいんだ。と言うか、女連れじゃないなら別に気にする事ねえよ」

 

 ………?

 なんだそりゃ、女いると不味い事でしてるのか?

 

 俺のそんな感情が表れていたんだろう。キースがにやけた表情で言ってきた。

 

 「まあ、日頃綺麗どころに囲まれているカズマには縁の無い事だよ。俺とダストは寂しく「おい待て」」

 

 キースが何か言いかけ、それをダストが遮った。

 そして、ダストは俺に同情の視線を向けながら。

 

 「キース……。こいつはそんなんじゃないんだ。一見ハーレムに見えるが、そんなんじゃ無いんだ。………こいつは、俺達の仲間だ。苦労してるんだよ色々と……」

 

 そんな事を、しみじみと言ってきた。

 

 ああ、そうか……。こいつはあの時、相当苦労したんだろうなあ……。

 よし、借金持ちの身ではあるが、今日はダストに奢ってやろう。

 

 「なあ、それで二人はこんな所で一体何やってんだ? この奥に何かあるのか?」

 

 三度目の俺の質問に、二人は顔を見合わせ、頷くと……。

 回りに聞こえない様に顔を近づけ、真剣な顔をした。

 

 「カズマ。俺は、お前なら信用できる。今から言う事は、この街の男の冒険者達の共通の秘密であり、絶対に漏らしちゃいけない話だ。カズマの仲間の女達に、絶対に漏らさないって誓えるか?」

 

 その重々しい雰囲気に、俺は若干押されながら頷いた。

 それをみたキースも頷き。

 

 「カズマ。この街には、サキュバス達がこっそり経営している、良い夢を見させてくれるお店があるのを知ってるか?」

 

 「詳しく」

 

 俺はダストに即答していた。

 

 

 

 

 ほんのりと赤い顔のダストが、ジョッキを置いて教えてくれる。

 

 「この街にはサキュバスが住んでいる。って言うのも連中は人間の持つムラムラした欲望の感情、つまり男の精気を吸って生きる悪魔だ。となると当然、彼女達には人間の男が必要な訳だ。」

 

 ふむふむ、なるほど。

 

 「で、だ。この街の男性冒険者とこの街に住むサキュバス達とは、共存共栄の関係を気付いている。……ほら、俺達冒険者は馬小屋暮らしが多いだろ? すると、その………色々と溜まってくるじゃないか。でも、回りには他の冒険者が寝てる訳だし、ムラムラして来たってどうすることも出来ないだろ?」

 

 「そ、そうですね……」

 

 や、やましい事なんて何一つ無いが。そう、やましい事なんて何も無い。

 

 俺の頬に一筋の汗が流れた。

 

 「かといって、その辺の寝てる女冒険者にイタズラでもしてみろ。そんなもん即座に他の女冒険者に気付かれて袋叩きにされるか、もしくはイタズラしようとした相手が隠していたダガーで、逆にアレを切り落とされるかもしれない」

 

 そう言って、ダストが青い顔でブルリと身震いした。

 キースがそれを見て、

 

 「…………お前、まだリーンにちょっかい掛けた時に出来たトラウマ、治ってなかったのか」

 

 「う、うるせえ! ……で、そこで出てくるのがサキュバス達だ。彼女達は俺達が寝ている間に凄い夢を見させてくれる訳だ。勿論彼女達は俺達が冒険に支障を来さない様に加減してくれる。精気を吸いすぎて冒険者がヤバイ事になった例は無い。……どうだ、誰も困らない話だろ?」

 

 ダストのその言葉に、俺はコクコクと頷いた。

 

 素晴らしい。素晴らしすぎる!

 サキュバス達もむやみに人を襲う事もなくなり、モンモンとする男性冒険者達も常に賢者タイムでいられれば、争いなんて起こらない!

 

 そんな軽い感動を覚えていた俺の様子を見て、キースが言った。

 

 「実はその店の事を教えて貰ったのって俺達も最近なんだ。それで、今日初めて、俺達もそこに行こうってなってな。そこでカズマにでくわしたって訳だ。で、どうだ? なんなら一緒に……」

 

 「行きます」

 

 

 

 

 

 ギルドの酒場を出た俺達は、若干の緊張を感じながらその店の前まで戻ってきていた。

 

 きっと俺一人では、こういった店には入れなかっただろう。

 だが、エロ本大勢で買うなら怖くないと言った、あの謎の心理だ。

 

 大通りからちょっと外れた路地裏の小さな店。

 そこは一見、何の変鉄も無いただの飲食店にみえるのだが……。

 

 「いっらっしゃいませー! こちらへどうぞ。お連れ様はあちらで」

 

 多くの男が、女性の体はこうあるべきだと言った様な、そんな魅惑の体をした女性。

 そんな体の、とてつもなく綺麗なお姉さんに出迎えをうけながら店に入ると、中には男性客しかいなかった。

 店内には、同じく魅惑の体をしたお姉さん達がウロウロしており、正直にそれだけでも何だが胸が切ない気持ちになってくる。

 客達はそれぞれのテーブルで、一心不乱に何かの紙にカリカリと書いている。

 俺を空いているテーブルに案内してくれたお姉さんは、メニューを手に笑みを浮かべ。

 

 「お客様は、こちらのお店は初めてですか?」

 

 その言葉に俺は無言でコクりと頷く。

 お姉さんは微笑を湛え

 

 「……では、ここがどういったお店は、私達が何者かもご存知でしょうか?」

 

 俺は再び無言で頷いた。

 それに満足したかの様に、お姉さんがテーブルにメニューを置く。

 

 「こ注文はこのアンケート用紙に希望の夢の内容をお書き下さい。勿論、何も注文しなくても結構です」

 

 俺はそのアンケート用紙を受け取った。

 アンケート用紙に目を落とすと……。

 

 あれ?

 

 「あの、この夢の中での自分の状態、性別と外見ってのがありますけど……これは?」

 

 「状態とは、夢の中での英雄とか王様とかですね。性別や外見は、たまに、自分が女性になってみたいと言うお客様もいらっしゃいますので。年端もいかない少年になって、強気な女冒険者に押し倒されたいと言うお客様もいらっしゃいました」

 

 「そ、そうなんですか……」

 

 大丈夫なのだろうか、この町の男達は。

 しかし、そんな事まで細かく設定できるのか。

 なるほど夢だもんな。

 ……ん?

 

 「あの、相手の設定ってどんな所まで設定できるんですか?」

 

 「性格や口癖、外見、あなたへの好感度まで、何でも誰でもです。実在しない相手だろうが、何でもです」

 

 「マジですか!」

 

 「マジです」

 

 思わず素で聞いてしまった俺に、お姉さんは即答してきた。

 

 「つまり、有名なあの子や、身近なあの子、二次元嫁まで可能って事ですか!?」

 

 「はい。二次元嫁と言うのは分かりませんが」

 

 「……あの、それって肖像権とか色んなものは大丈夫なんでなんですか……?」

 

 「大丈夫です。だって夢ですから」

 

 「ですよね! 相手の年齢制限も無いって事ですかかね? いや別にそう言ったのを指名する気はないんですがね、一応」

 

 「ありません、お好みでどのぞ」

 

 「大丈夫なんですか? そ、その、条例とか色々……」

 

 「ありません、だって夢ですもの」

 

 「ですよねー!」

 

 そう、夢なら何も問題ない。

 何て事だ。最強じゃないかサキュバスの淫夢サービス!

 

 俺は無言でアンケートを店内の他の客と同じ様に書き続けた。

 

 「では、三時間コースの御希望ですので、お会計、五千エリスをお願いします。あ、あとは今晩は飲みすぎない様に注意して下さいね。熟睡されると夢が見せられませんので」

 

 「おっす、了解です!」

 

 指定した時刻までまだ時間があるが、今日は早く帰って準備して、早めに寝よう。

 

 俺は何処かに寄り道する事も無く、そのまま急いで帰宅した。

 

 


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