この異世界転生者に祝福を!   作:白城

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 皆さんこんにちは白城です!

 読者の皆さんが怒ってないか、ビクビクしなかがらの更新です。

 今回は遅くなってしまったので、少し、いえ、結構多めの6000文字です!


第二十二話 『この冬を越せない私達に愛の手を』

    白奈side

 

 「…………ええと、この屋敷であってるよね?」

 

 「ああ、あってるぞ」

 

 私の確認の言葉にカズマが答える。

 私達の目の前には一軒の立派な屋敷があった。

 

 「悪くないわね! ええ、悪くないわ! この私が住むのに相応しいんじゃないかしら!」

 

 アクアが巨大な鞄を手に興奮したように叫び、同じくめぐめんも、気のせいか顔が紅潮していた。

 この屋敷に住む。

 別にアクアが勘違いしているとかじゃない。

 この屋敷が大きいためか、その分たくさんの悪霊が集まったらしく、ここは現在、幽霊屋敷としての評判が定着してしまったらしい。

 つまり今回、この依頼をこなすことが出来れば、わざわざ冬を乗り越えるための資金を集めなくても良い。

 突然でたこの話に私はカズマの運の良さに心の中で感謝した。

 

 「しかし、除霊の報酬としてこの屋敷にすんでいいとは随分と太っ腹な大屋さんがいたものだな」

 

 「ウィズはこの町では高名な魔法使いで通っているらしくてなこの手の案件が良く持ち込まれるんだそうだ」

 

 その正体は魔王軍の幹部だけどね。

 

 因みにこの屋敷に霊が集まりだしたのは一年前などではなくつい最近らしい。このつい最近(・・・・)と言うところが少し気になったけど、気のせいだと思い無視しておいた。

 

 「ですが除霊なんか本当にできるのですが?」

 

 「確かに大屋さんが祓っても祓っても直ぐにまた霊が来るっていってたよね?」

 

 私とめぐめんがアクアに向かって問いかける。

 

 「任せなさいよ! なんせこの私は女神にしてアークプリーストよ! ………むん!」

 

 「「「「おおっ!」」」」

 

 アクアが屋敷に両手をかざすとアクアの手が白く光った。その姿はとても頼りになる女神の様で………。

 

 「見える、見えるわ! この屋敷には貴族が遊び半分で手を出したメイドとの間にできた子供、その貴族の隠れ子が幽閉されてたようね! 元々体の弱かった貴族の男は病死、隠し子の母親のメイドも行方知れず。この屋敷に一人残された少女はやがて若くして父親と同じ病気にかかり、両親の顔も知らず………」

 

 「「「「……………」」」」

 

 ペラペラと、テレビに出てくるインチキ霊能力者の様な事を言い出したアクアを、胡散臭い詐欺師をみる視線で眺め、そしてまだ口走っているアクアを無視して私達は屋敷の中へと歩みを進めた。

 

 「………ねえ、なんであんな細かい設定とか分かるのか凄く突っ込みたいんだけど………、これって本当に大丈夫なの? なんか凄く不安なんだけど……本当に大丈夫だよね?」

 

 「「「…………」」」

 

 お願い誰かなにか言って………。

 

 三人も私と同じ気持ちなのか、私の質問には誰も答えてはくれなかった。

 

 

 

 

 時刻は夕方。

 

 「ふぅ、終わったな」

 

 「掃除や部屋割り、荷物運びも終わったし、後はゆっくり部屋で休みたいよ」

 

 「でも流石にちょっと埃っぽいなー………あ」

 

 そう言ってカズマは換気をするために窓を開けるとそこには!

 

 「名前はアンナ=フィランテ=エステロイド。好きなものはめんぐるみや人形、そして冒険者達の冒険話っ! でも安心して、この子は悪い子しゃないわ。おっと、でも子供ながらにちょっと大人ぶった事が好きな様ね。甘いお酒をこっそり飲んでいたみた」

 

 「…………」

 

 未だに霊の話しているアクアの声が小さく聞こえた。

 

 ……………。

 

 それにみたカズマは何も見ていないと言う様に、そっと窓を閉じる。

 

 「それじゃ皆、後は自由行動って事で。悪霊がでたら直ぐに報告すること。解散!」

 

 

 

 深夜過ぎ。

 私たちは皆鎧や武器などは装備を外し、屋敷でくつろいでいた。

 因みに私の部屋は前回同様カズマの隣ではなくアクアの部屋の隣になっている。

 

 まあ、女神のアクアがこの屋敷に住むんだから、恐らく悪霊などはかってに出ていくのかも。

 

 と少しの期待と

 

 アクアの体質から悪霊が集まってくるのかな?

 

 と少しの不安を抱いていた。

 たが、アクアは女神にして、優秀なアークプリーストだ。リッチーの件から自分の家が悪霊に好き勝手にやられるのを放置する訳がない。

 と言う考えから私は思ったより自分のベットの上でのんびりくつろいでいた。

 

 「わあああああああっ、わあああああーっ!!」

 

 アクアの声を聞くまでは。

 

 

 

 

 「どうしたっ!? おい、アクア何があった!」

 「どうしたの!? アクア、大丈夫!?」

 

 凄い勢いで駆けつけてきたカズマと隣の部屋にいた私はアクアの部屋にたどり着くとドアを勢い良く開けた。

 そこには………!

 

 「うぅ………、ううっ………、か、カヂュマああ、ジロナああああっ!」

 

 部屋の中央で、大事そうに空の酒瓶を抱えたまま、泣いているアクアの姿があった。

 

 「………おい」

 「………はあ」

 

 「ち、違うの! この空になったお酒は私がのんだわけじゃないの! これは、大事に取っておいた凄くたかいお酒なのよ。お風呂から上がったらゆっくりちびちび飲もうと楽しみにしていたのに! それが私が部屋に帰ってきたら、見ての通り空だったのよおおおおおっ!」

 

 そのあまりの泣きように私は一応尋ねてみる。

 

 「因みにいくらしたの?」

 

 「……………三十万」

 

 この借金があるときに何でそんな高い買い物をしているのかと言いたいことはあるが、流石にこれは可愛そうだ。

 

 「…………そうか、じゃあお休み。また明日な」

 

 「カズマ! これは悪霊よ! ちょっと私、屋敷の中を探索して目につく霊をしばき回してくるわ!」

 

 「……なんだ、一体何の騒ぎだ?」

 

 「もう時間も遅いのですから勘弁してください。何事ですか?」

 

 先程のアクアの叫び声を聞いてきたであろう、ダクネスとめぐみんの二人がやって来た。

 

 「いや、アクアが取っておいた高いお酒を悪霊に飲まれて騒いでいてな。除霊するとか言っているんだよ。悪霊について色々ツッコミたいんだが、俺はもうめんどくさいので寝る。後はお前たちにまかせたよ」

 

 「ちょっとカズマ何言っているの!? バカなの!? 自分の家が悪霊によ………………」

 

 カズマはアクアの言葉を無視して、そのまま部屋に帰っていった。

 

 ……はあ、はやくこの悪霊を何とかしよう。

 

 何が悲しくて異世界で悪霊と格闘しなければならないの?

 

 

 

 

 この作業に続けて何分たっただろう。

 

 「『ターンアンデット』! 『ターンアンデット』『ターンアンデット』『ターンアンデット』『花鳥風月』!『ターンアンデット』っ!」

 

 アクアは屋敷中に走り回り一心不乱に浄化魔法を唱え、悪霊達を浄化していた。悪霊達は凄い勢いで天に上って行く。

 

 さっきからたまに唱える宴会芸スキルは何の意味があるのだろう。

 

 「さあ、早くこいっ! さあっ!」

 

 ダクネスは最初は悪霊の取り付いた人形達に追われていたが、逆に人形に荒い息を吐きながら近付き、今では人形達がダクネスから逃げると言う光景が目の前でおこなわれていた。

 私は人形が逃げないようにとダクネスから逃げる人形を風魔法で捉えていた。

 

 早く終わらせて寝たいよ。

 

 そんな事を考えながら私は人形達をおった。

 

 

 

    カズマside

 

 「カズマ、いますか? 離れないでくださいよ?」

 

 「いるよ。ちゃんといるし、もし人形が出てきても置いてったりしないから早くしてくれ」

 

 はい、カズマです。

 

 俺は夜中にトイレで起き、めぐめんもトイレで起きた様だが、屋敷の中は人形達で溢れており、人形達に追われた。

 色々あったが、今は先に用を済ませた俺は、めぐめんが出てくるのをドアの前で待っていた。

 俺がどこかへ行くのが怖いのか、先程からしきりを話しかけてくる。

 

 「………あの、カズマ。流石にちょっと恥ずかしいので、大きめの声で歌でも歌ってくれません?」

 

 「何が悲しくてこんな夜中にトイレの前で歌わなきゃならないんだよ!」

 

 めぐめんにツッコミつつも、実は待っている俺も微妙に気恥ずかしいので、仕方なく歌を歌い出した。

 歌と言っても日本の歌しか知らないので、適当にアカペラで。

 

 「………ふぅ、もういいですよカズマ。聞いた事も無い、随分変わった歌ですね? 前から思っていたんですが、カズマとシロナって同じ国出身なんですよね? 何処の国のひとなんですか?」

 

 「夜中にトイレの前で歌う風習がある、日本って言う素敵な国だよ。ほら、行くぞ。とっととアクア達を探して合流しようぜ」

 

 適当な事を言う俺の後を、無言でペタペタとついてくるめぐめん。

 兎に角今の状況では、俺とめぐめんは悪霊に対して何の抵抗も出来ない。

 一刻も早くアクア達と合流したい。

 

 と、その時だった。

 俺とめぐめんがトイレの手洗い場から廊下に出ようとすると………。

 

 カタ――カタ――カタ――カタ

 

 人形が出てくる時に鳴る、嫌な音が聞こえ、俺はトイレの手洗い場のドアの前で身を屈めた。

 隣ではめぐめんが、俺の裾をギュッと掴み、震えながら身を寄せてくる。

 

 怖い、人形マジで怖い!

 

 あんな人形に殺される事は流石に無いだろうが、夜中に西洋人形に追いかけられると言うのは尋常ではない恐怖だった。

 小さく震えていためぐめんが、俺の裾から手を離し、両手を前に掲げて小さく何かを………!

 

 「こらっ、お前は何を唱えてる! この屋敷を吹き飛ばす気かっ!」

 

 恐怖のあまり、爆裂魔法の詠唱を始めためぐみんの口を急いで塞ぎ、そのまま暴れないように体を押さえる。

 ……いつの間にか、あの嫌な音がドアの前で止んでいた。

 震えながら俺の手を掴み、こちらを見上げてくるめぐめん。

 

 クソ、やるしかないか!

 

 「めぐめん、ドアを開けたらお前は走れ! 俺は覚えたてのドレインタッチで、人形から魔力の一つでも吸いとってやる! 人形の攻撃を食らっても死ぬことは無いだろ!」

 

 俺が叫ぶと、めぐめんは口が塞がれた状態でコクりと頷いた。

 

 「おらあ! かかってこいやあああああ! 後でウチの狂犬女神けしかけてやんぞのこらああああっ!「いたっ!」」

 

 叫びながらドアを勢い良く開けると、ごっ! と何かにドアにぶち当たる。

 

 ん? 何が声が聞こえたような。

 

 俺とめぐめんは顔を見合せ、ドアの外へと身を出すと………!

 

 「ちょっ、シロナ!?」

 「シロナ! お、おいシロナ、大丈夫か!?」

 

 「う、うぅぅ」

 

 そこにはドアの前で顔を押さえてうずくまるシロナと、傍に力を失い転がる人形、………そして、シロナに声を掛けるアクアとダクネスの二人の姿があった。

 

 

 

 

 「ふう、これでよし、と。結構いたわけねー。結局朝までかかっちゃったじゃないの」

 

 アクアが、人形に憑いた悪霊を浄化して、明るくなってきた窓の外をみて呟いた。

 流石は対アンデットのエキスパートだ。この大きな屋敷の悪霊を、一晩で退治してしまった。

 

 「ふむ、冒険者ギルドに一応報告した方がいいだろうクエストを請けた訳ではないが、本来なら冒険者ギルドがなんとかするべき案件だ。臨時報酬が貰えるかもしれない」

 

 「確かにね。この悪霊の数はどう考えても異常だよ。それに、私はこの街になんで急に悪霊が増えたのか知りたいよ」

 

 ダクネスとシロナの言葉に俺達は頷いた。

 ダクネスとめぐみんには、浄化によって散らかった屋敷内の後始末を頼み、俺とシロナとアクアはギルドへ報告に行く事に。

 その道中。俺達三人は、屋敷の悪霊の話をしていた。

 

 「ところで、アクアが言ってたあの貴族の隠し子って私達には危害を加えないって話しゃなかってけ?」

 

 「ああ、そう言えばそんな事言ってたな。悪い霊じゃないって話じゃなかったのか?」

 

 アクアが俺達のその言葉にポンと手を打ち。

 

 「ああっ! そんな子もいたわね! 安心して、今回の件はあの子は関係ないわ! でも、高級酒を飲んだのはあの子だと思うの! ねえ、二人とも、飲まれちゃったお酒、除霊の必要経費ってこ………」

 

 俺は何か言っているアクアを無視して、ギルドのドアに手を掛けた。

 

 「おはようごさいます。ちょっと早いんですが、報告したいことがあるんでいいですかね?」

 

 朝早くだと言うのに、受付にはお姉さんがいた。

 

 「はいはい、なんでしょうか?」

 

 俺達が不動産屋から受けた依頼や屋敷からの出来事を説明すると、受付のお姉さんはアクアの冒険者カードを見て、なるほどと頷いた。

 

 「確かにあの案件では、街に悪霊が蔓延っていると言う事で、様々な所から相談を受けています。と言うことで、僅かですが臨時報酬が出てますよ」

 

 その言葉に、俺とアクアはガッツポーズを取った。

 その間にシロナは受付のお姉さんに質問する。

 

 「それにしても何でこんなにも悪霊が急に悪霊が集まったんですか?」

 

 「ああ、その事なんですが……街の近くに共同墓地があるじゃないですか?」

 

 その言葉に俺達は顔を見合せ、ボソボソと呟いた。

 

 「共同墓地? 共同墓地って……」

 

 「ウィズと初めてあった場所だよな」

 

 「誰かのイタズラ何かで、あそこに巨大な結界を張ったようなんですよ。それで、行く場を無くした霊が、あの空き家に住み着いたみたいで………」

 

 それを聞いたアクアがビクンと震え、青い顔になった。

 

 「「…………すみません、ちょっと失礼します」」

 

 「?」

 

 俺達はお姉さんに断って、アクアをギルドの隅につれて行く。

 

 「おい、心当たりがあるな? 言え」

 

 カズマがそう言うと

 

 「……はい。以前ウィズの代わりに墓地の除霊を引き受けたじゃないですか。でも、しょちゅう墓地まで行くのってめんどくさいじゃないですか。それで、いっそ、墓場に霊のすみ場を無くしてやれば、その内適当に散っていなくなるかなって思ってやり……ま……した」

 

 「「………はあ」」

 

 観念した様に、素直に敬語に白状するアクア。

 

 「……つまり、アクアが手抜きをしたから、墓場にいられなくなった霊が街に迷いこんだって事でいいんだよね?」

 

 「………はい」

 

 ……なんというマッチポンプ。これはどう考えても完全にダメだろ。

 

 「ギルドからの臨時報酬は受け取らない。いいな?」

 

 「………………はい」

 

 申し訳無さそうな表情で、素直にコクりと頷くアクア。

 

 

 

    白奈side

 

 私達はこの屋敷に住む条件として、二つの事を頼まれた。

 その条件と言うのが少し、変わった物で冒険が終わったら、夕食の時でもいいので、仲間と一緒にその冒険話に花を咲かせて欲しいと言う事。

 そしてもう一つの条件は……。

 

 「お墓の掃除、か……」

 

 私は外で墓の掃除しながら、ウィズと話しているカズマをベランダから見ながら、独りでに呟いた。

 後から確認したが、お墓にはかすれていて良く読めないが『アンナ=フィランテ=エステロイド』と言う名前が読み取れた。これはアクアが言っていた、あの貴族の隠し子だろう。

 

 やっぱりアクアはアークプリーストの腕は凄いね。

 

 と関心しながら私は外から屋敷の中へと視線を移すと、アクアがベランダいた私と外にいるカズマに向かって声を掛けた。

 

 「カズマー! もうご飯できてるから、早く来てー! シロナもそんな所にいないで椅子に座ってー! 早く来ないと、せっかくのお昼がさめちゃうんですけたど!」

 

 「分かったよ。今行くー!」

 

 カズマはアクアに叫び返した。

 

 まあ、これで安定した生活ができるね。

 

 「アクアー。暖炉の薪がもう無いんだがー」

 

 「ああ、じゃあそこにあるカズマのジャージでもくべて置いてー」

 

 「えっ………?」

 

 「止めろー! 頼むシロナー! アクア達を止めてくれー! 俺の大事な日本の思い出を燃やそうとすんなーーー!!」

 

 カズマは墓の掃除を終えたらしく、私達のいる屋敷に向かって駆け出した。




 あと少しで長い休みに入るので更新スピードが少しだけ早くなると思います。

 今回の様にかなり遅くなる時もありますが、失踪だけはしないのでこれからも精一杯かいていきます!

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