この異世界転生者に祝福を!   作:白城

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 こんにちは白城です!

 今回は……題名通りですね。
 今回はまともなパーティーでの冒険なのであまり面白くないかも知れません……。

 十日ぶりですね、遅くなり本当にすみません!
 
 


第十九話 『この素晴らしい仲間達と冒険を』

    白奈side

 

 「しっかし、なんでこんな所に住みつくのかなゴブリンは。まあ、お陰てゴブリン討伐なんて滅多に無い、美味しい仕事が出てきたわけだけとさ!」

 

 私達は山の向かう途中の草原を、のんびりと歩いていた。

 

 ゴブリン。

 

 それは、私の世界はおろか、この異世界でも知らない者はいないメジャーモンスター。

 たけど、ゴブリンはゲームで出てくる雑魚モンスターではなく、民間人には意外と危険視されているらしい。

 個々の力はそれほどでも無いが、基本的に群れで行動し、武器を使う。

 野生の亜人種らしく、動きは早く、小柄で凶暴で、人や家畜を襲うらしい。

 ゴブリンがどのくらいの強さかは知らないが一匹で二万エリスだ。リーンが美味しい仕事と言っていたので恐らく弱いのだろう。

 カズマは何も文句も言わずに私以外の三人の荷物を背負って私の隣を歩いている。

 テイラーが私にもカズマに荷物を渡せばどうかと提案してきたが大丈夫と言って断っておいた。

 

 「ゴブリンって何でこんなところに引っ越したんだろう。絶対自然豊かな所の方が良いと思うんだけどな」

 

 私が独りでにそう呟く。

 今私達がいる場所は目的地の山だ。

 山と言っても日本の様な自然豊かな森などではなく、山の殆どが茶色い岩肌を占めた禿山だ。

 もっと引っ越すには良いところがあるだろう。

 

 まあ、この異世界だから突っ込んでもきりがないか。

 

 そして、こんなに緊張感がなく安心感できるのはきっとまともなパーティーだからだろう。

 いつものメンバーだと問題無くクエストが進むと不安を覚える所だけど今日はそんな事はなかった。

 テイラーが足を止め、地図を広げる。

 

 「ゴブリンが目撃されたのはこの山道を天辺まで登り、やがてちょっと下った所らしい。山道の脇にゴブリンが住みやすそうな洞窟があるのかも知れない。ここからは気を引き締めてくれ」

 

 そんなテイラーの指示に、私はクエスト中にも関わらず軽い感動を覚えた。

 敵地の真ん中に突っ込みたいとか、散歩のついでに爆裂魔法を撃ちたいとか、早く帰ってお酒を飲みたいとか、そんな会話はない。

 もし、ここに(誰とは言わないけど)あの人がいるなら「そんな事しなくても私達がいるんだから大丈夫よ!」とか言って面倒臭い展開になるのかも知らないけどこのメンバーにはそんな問題児はいない。

 全員が視線を合わせ、無言でコクりと頷く。

 山道は完全な一本道で、険しい岩肌の山の間を、細い道が這う様に延びていた。

 五、六人程が横に歩ける程度の広さの道だが、道の片方には壁の様な岩肌が立ちはだかり、反対側は逆に崖になっている。

 そのまま無言で山道を登っていると、カズマが何かに気づいたようだ。

 

 「ん? 何か山道をこっちに向かって来てるぞ。敵感知にひっかかった。でも、一匹だけだな」

 

 あれっ?

 

 「一匹? 複数じゃなくて?」

 

 「ああ」

 

 そんな当たり前(いつも)様にカズマと会話していると私達以外の三人が驚いた様に振り向く。

 

 「………カズマ、お前敵感知なんてスキル持ってるのか? それにしても一匹だと? それはゴブリンじゃないな。こんな所に一匹で行動する強いモンスターなどいないはずはだが……。山道は一本道だ。そこの茂みに隠れた所で、すぐみつかっちまうだろう。迎え撃つか?」

 

 テイラーが、盾を構えて言ってくるが……。

 

 「いや、茂みに隠れても多分見つからないぞ。潜伏スキル持ってるから。このスキルは、スキル使用者に触れてるパーティーメンバーにも効果がある。せっかく都合よく茂みがあるんだし、取り合えず隠れとくか?」

 

 カズマの言葉に、三人は更に驚きながらも茂みに隠れた。

 流石場数を踏んだ冒険者パーティーだ。

 相手が何物か分からない、そんな場合には、戦いを避け、様子を見るのは基本だろう。

 用心深いのは決して恥ずかしい事ではないと思う。

 私は光の屈折魔法で潜伏スキルの効果を更に上げる事も考えついたがある考えが浮かび開いていた口を閉じる。

 これがいつもの仲間達なら、こんな風に素直に隠れたのかなと、茂みに隠れてながら考えていると……。

 

 

 それは来た。

 

 一言で言えば、猫化の猛獣。

 虎やライオンをも越える大きさのそれは、全身が黒い体毛で覆われ、サーベルタイガーみたいな大きな二本の牙を生やしていた。

 その見た目だけで強いモンスターだと何となく分かる。

 そのモンスターは私達がさっきまでいた山道の地面を、クンクンと神経質に嗅いでいる。

 リーンがその姿を見て、慌てて自分の口を押さえた。

 恐怖で悲鳴でも上げそうになったのかも知れない。

 よく見ると潜伏スキルを発動中のカズマに触れる三人の手に、緊張のためか力が入っている。

 この三人がこれだけ緊張すると言う事は、かなり危険なモンスターなのかも知れない。

 そのモンスターはしばらく辺りを嗅ぐと、やがて私達が登ってきた、街へと向かう道へと消えていった。

 

 「……ぷはーっ! ここここ、怖かったあっ! 初心者殺し! 初心者殺しだよっ!」

 

 リーンが涙目で言っていることから、かなり危険なモンスターだったらしい。

 

 「心臓止まるかと思った! た、助かった……。あれだ、ゴブリンがこんな街に近い山道に引っ越してきたのは、初心者殺しに追われたからだぜ」

 

 「あ、ああ。厄介だな。よりにもよって帰り道の方へと向かって行ったぞ。これじゃ街に帰る事もできないな」

 

 キースやテイラーが、口々に言ってくる。

 

 「……ねえ、さっきのモンスターってそんなに危ないの?」

 

 カズマも私と同じ様な顔をしている。

 私の言葉に三人が、なぜ知らないんだと、信じられない物を見るかの様な目で見つめてきた。

 

 そんな目で見られても………。

 

 「初心者殺し。あいつは、ゴブリンやコボルトといった、駆け出し冒険者にとって美味しいといわれる、比較的弱いモンスターの側をうろうろして、弱い冒険者を狩るんだよ。つまり、ゴブリンをエサに冒険者を釣るんだ。しかも、ゴブリンが定住しない様にゴブリンの群れを定期的に追いやり、狩り場を変える。狡猾で危険なモンスターだ」

 

 「えっ? なにそれ怖っ」

 「なにそれ怖い」

 

 モンスターですらそんな知恵を持つなんて。

 あの初心者殺しのそう言う頭を使う所をアクアは見習って欲しい。

 

 「取り合えず、ゴブリン討伐を済ませるか? 初心者殺しは、普段は冒険者を誘き寄せるエサとなる、ゴブリン達を外側から守るモンスターだ。ゴブリンを討伐して山道の茂みに隠れていれば、俺達が倒したゴブリンの血の臭いを嗅ぎ付けて、さっきみたいに俺達を通り過ぎてそっちに向かうかも知れない。近づいてくればカズマの敵感知で分かるだろうし、もし、気付かなくても上級職のシロナもついて来ているんだし、大丈夫だろう。帰ってくるかも分からない初心者殺しを待って、いつまでもここで隠れている訳にもいかないだろうから、まずは目的地へと向かうとしよう」

 

 テイラーの提案に俺達は茂みから出る。

 ………と、リーンがカズマの背負っていた荷物の一部を手に取ると、

 

 「もし初心者殺しに会ったら皆で逃げる時、カズマも身軽な方が良いからね。あたしも持つよ。そ、その代わり、潜伏と敵感知スキル、頼りにしてるよ?」

 

 リーンは自分の荷物を背負いながら、おどおどと言った。

 その言葉にテイラーとキースも慌てた様にカズマの背中から荷物を取る。

 

 「「べ、別に、俺達はカズマを頼りきっている訳じゃないからな? ほ、ほらシロナだって頼っているだろ?」」

 

 私はツンデレの様な言葉を聞いてその考え通りの展開を少し笑いながら見ていた。

 

 

    カズマside

 

 三人が自分の荷物を取ってから初心者殺しが引き返してくる気配も無く、俺達がてくてくと山道を登っていると、テイラーの持つ地図通り、山道が下りになる地点にでた。

 来る途中でアクアの悲鳴らしきものが聞こえたきがするが気のせいだろう。

 ゴブリンが目撃されたのはこの辺りらしい。

 テイラーがこちらを振り返った。

 

 「カズマ、どうだ? 敵感知には反応あるか?」

 

 あります、ありますとも。それもたくさん。

 

 「この山道を下っていった先の角を曲がると、一杯いるな。俺達が登ってきた方の道からは、初心者殺しが近付いてくる気配は今の所無いよ」

 

 しかし、凄く気配が多い。十やそこらじゃない数がいる。多すぎてちょっと数えられない。

 

 「いっぱいいるってのならゴブリンだな。ゴブリンは群れるもんさ」

 

 言ってくるキースに、

 

 「いや、俺達はゴブリンと戦った事無いから知らないけど、こんなに多いもんなのか? 探知できているだけでも、ちょっと数え切れない数だぞ」

 

 若干不安に思いながらも俺は尋ねた。

 そんな様子にシロナとリーンも少し不安になったのか、

 

 「えっ? そんなにたくさんいるの? 十匹くらいじゃなくて?」

 「そ、そんなにいるの? カズマがこう言っているんだし、ちょっと何匹いるのかこっそり様子を伺って、もし勝てそうなら………」

 

 リーンがそこまで良いかけたその時だった。

 

 「大丈夫大丈夫! カズマにばっかり活躍させてちゃたまんねえ! おっし、行くぜ!」

 

 叫ぶと同時にゴブリンがいるであろう下り角から飛び出すキース。

 それに続いてテイラーも角から飛び出し、そして二人同時に叫んだ。

 

 「「ちょっ! 多っ!!」」

 

 叫ぶ二人に続き、俺とシロナ、リーンも角を曲がる。

 そこには、四十やそこらはくだらないゴブリンの群れがいた。

 

 「おお! これがあの有名なゴブリンか!!」

 

 なるほど小鬼だ!

 小学生低学年の子供くらいの身長しかないが、その殆どが武器を持ち、まっすぐこちらを向いていた。

 これはちよっとした脅威だ。

 俺がそんな軽い感動をしていると

 

 「カズマ、感動をしている場合なの!?」

 

 と慌てた様に叫ぶシロナと、

 

 「言ったじゃん! だから言ったじゃん! あたし、こっそり数を数えた方がいいっていったじゃん!!」

 

 ゴブリンの群れを見て引きつった顔で泣き声を上げるリーン。

 するとアーチャーのキースを後ろに庇う形で、山道の角の部分にテイラーが前に出た。

 

 「ゴブリンなんて普通は多くても十匹ぐらいだろ!

ちくしょう、このまま逃げたって初心者殺しと出くわして、挟み撃ちになる可能性が高い! やるぞ!」

 

 テイラーが叫び、リーンとキースが悲壮感を漂わせた顔で攻撃準備を始め、シロナは何かに気づいたのかすぐさま魔法の詠唱を始めた。

 それを見て、ゴブリン達が奇声を上げてこちらに向かって山道をかけ上がってきた!

 ここは山道で、片方は崖になっている。

 

 「ギギャッ! キー、キーッ!」

 

 そして、俺達は今、坂の上に陣取っている。

 

 「『ウインドカーテン』!」

 

 「おお、助かったっ! ナイス、シロナ!」

 

 早い魔法にお礼を言うキース。

 どうやら弓を構えているゴブリンがいたのだろう。

 シロナが魔法を使うと同時に、俺達五人の回りに渦巻く風が吹き出し、放たれたであろう矢は風によって剃らされて行く。いつも使っている便利な魔法だがこれが本来の使い方なんだろう。

 俺は支援魔法に感動しながら大声で叫んでいた。

 

 「この地形では、この手が効くだろ! 『クリエイト・ウォーター』ッッ!」

 

 俺は初級魔法を唱え、大量の魔力を注いで広範囲に水を生成した。

 テイラーが立ち塞がる前の坂道にぶちまける様に。

 

 「カズマ!? 一体何やって………」

 

 背後から、リーンの疑問の声を聞きながら、

 

 「『フリーズ』ッ!」

 

 俺は、初級魔法を全力で!

 

 「なるほど、こんな使い方があったんだ!」

 「「「おおっ!!」」」

 

 俺以外の四人が驚き、叫び、ゴブリン達の足元が一面氷で覆われた。

 初級魔法の組み合わせだが、ゴブリン達は簡単に氷に足を取られ、あちこちで盛大にすっ転んでいる。

 モタモタと登ってきた、氷の上でプルプルと踏ん張っている不安定な体勢のゴブリンを、しっかりと乾いた地面を踏みしめながらテイラーは危うげなく切り捨てた。

 この状況なら傷を負わされる事もないだろう!

 俺は剣を引き抜くと、テイラーの横に立ち並び……!

 

 「テイラー、この足場の悪い中、それでも上って来るゴブリンは二人でしばこうぜ! 上って来ないゴブリンは、遠距離攻撃ができる後ろの三人に任せた!」

 

 パーティーメンバー達との連係に軽い感動を覚えながら、俺は嬉々として呼び掛ける。

 

 「でっ、でかしたカズマー! おいお前ら、やっちまえ! この状況ならどれだけ数がいたって関係ないぞ、ゴブリンなんてやっちまえ!」

 

 「うひゃひゃひゃ、なんだこれ、楽勝じゃねーか! 蜂の巣にしてやんよ!」

 

 「いくよ! さっき直ぐに支援魔法できなかった分、強力な魔法、ど真ん中に撃ち込むよーっ!」

 

 「私も一番強力な魔法を撃ち込むよ!」

 

 なぜがやたらと高いテンションで、俺達はゴブリンの群れに襲いかかった!




 う~ん、やっぱり一話にまとめられなかったです。すみません。

 今回はあの三人がいなかったぶんやはり、面白さが少ないと思います。

 次回は冒険の後半です!
 

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