この異世界転生者に祝福を!   作:白城

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 皆さんこんにちは白城です。

 約一週間ぶりの投稿です。本当にすみません!

 下書きしていたものが消えたり、このすばの最新刊を読んでいたりしたら、遅くなってしまいました!
 はい、言い訳ですね、本当に申し訳ありません!

 今回は雪精霊の後編です!


第十六話 『この凍える季節にニ度目の死を』

    カズマside

 

 「出たな!!」

 

 ダクネスがそいつを見て、大剣を構えて俺しそうにほくそ笑んだ。

 突然涌き出る様に出現したそれは、出現が速すぎて、敵感知スキルで逃げることが出来なかった。隠れようにも辺り一面は雪原で隠れる事のできる物が無いにも気づいた。

 

 「………………」

 

 「えっ、めぐみん?」

 

 ……こ、こいつ。死んだフリを。

 

 先程まで勝ち誇っていためぐみんは、うつ伏せのまま、動かなくなっている。

 

 「……カズマ、シロナ。なぜ冬になると、冒険者達がクエストを受けなくなるのか教えてあげるわ」

 

 アクアがその場に正座し、そして、それから僅かにも目を離さずに。

 俺達の視線を集めるそいつは、ズシャリと一歩、前にでた。

 

 「あなた達も日本に住んでいたんだし、天気予報やニュースで名前ぐらいは聞いた事あるでしょう?」

 

 全身を白く染め上げた重厚の鎧姿のそれは、今にも切りかかりそうなくらいの殺気を浴びせ続けていた。

 日本人である俺はそれを見て、アクアが言う前に何なのかを把握した。

 おそらく隣にいるシロナも気づいているだろう。

 

 「雪精達の主にして、冬の風物詩とも言われている……」

 

 日本式の白い鎧兜に、同じく真っ白で、素晴らしくキメ細やかな陣羽織。

 そして、白い素面をつけた鎧武者が、白い刀を身につけ立っていた。

 ……そして、アクアが珍しく真面目な顔で呟いた。

 

 「そう、冬将軍の到来よ!」

 

 「バカかあ! この世界の連中は、人も食い物もモンスターも、皆揃って大バカだ!!」

 

 「カズマ、その気持ちは凄く分かるけどこれ本当にどうするの!?」

 

 

    白奈side

 

 

 冬将軍

 

 その白一色で染め上げられたようなその鎧は、戦国時代の華やかさを僅かにも損なわれていなかった。

 白い冷気を発する刀は、わざわざ近くに寄って見なくても、恐るべき切れ味を秘めていることが一目で分かる。

 その私達の視線を集めている冬将軍は強烈な存在感と殺気を放ちながら、八双の構えを取った。

 そして日の下に白刃を煌めかせ、一番近くにいたダクネスに斬りかかった!

 

 「くっ!?」

 

 ダクネスが、それを大剣で受けようとするが……。

 キンッと澄んだ音を立て、あのベルディアの猛攻にも耐えた大剣があっさりと真ん中で叩き折られた。

 

 「ああっ!? 私の剣がっ……!?」

 

 この瞬間、私は悟った。

 

 ……ああ、無理。勝てないよ。ベルディアの攻撃に耐えた剣があっさりと折られるなんて絶対に勝てない。

 

 「精霊は出会った人の無意識に思い描く思念を受け、その姿に実体化するの。でも冬に出歩いてクエストをやる人なんて日本から来たチート持ちの連中くらいだから……」

 

 アクアが雪精を詰めた小瓶を抱き抱えたまま、冬将軍について教えてくれた。

 

 ……あれっ?

 

 「ね、ねえ、アクア。つまりあれは日本から来た人が冬と言えば冬将軍みたいな乗りで生まれたの?」

 

 「はっ!? なんだよそれ、なんて迷惑な話だ! 冬将軍なんてどう戦えばいいんだよ!?」

 

 一見人形の鎧武者だけど、それが精霊が実体化した物なんて言うのなら、私が剣で斬りつけたとしてと殆ど効果が無いだろう。

 魔法でやる事も考えたが、さっき魔力を使ったので一撃で倒せる気がしない。仮に全魔力でやったとしても同じ気がする。

 頼み綱のめぐみんも、もう魔法が使えない。

 先程から全く動かないめぐみんは、死んだフリでもしているのだろうか。

 

 「……おい、アクア。シロナに支援魔法使って逃げることは出来ないのか?」

 

 「嫌よ。そんな事したら私が狙われて死んじゃうじゃない!」

 

 アクアはそう言うと、手にしていた小瓶の蓋を開け、きっかく捕まえた雪精達を開放しだした。

 

 「カズマにシロナ、よく聞きなさい! 冬将軍は寛大よ! きちんと礼を尽くして謝れば、見逃してくれるわ!」

 

 冬将軍は逃がされた雪精達を見て、動きが止まっている。

 そして、アクアは迷い無く、白い雪が積もる雪原に、そのままひれ伏した。

 

 「ははぁぁぁぁぁ。DOGEZAよ! DOGEZAをするの! ほら、皆も武器捨てて早くして! 謝って! カズマもシロナも早く、謝って!!」

 

 「「なっ!?」」

 

 ………元なんとか様のプライドはどこにいってしまったのだろうか。もしかして、カズマに連れて来られたときプライドを落としてきてしまったの?

 

 そのアクアのそれは、とてもとても見事な土下座を観光した。

 隣にいたカズマも口を開けて驚いている。

 何の迷いも無く土下座するアクアと、完璧な演技で死んだフリを続けているめぐみんには、いっそ清清しさを感じられ凄いと思った。

 冬将軍と言えば、確かに土下座したアクアには目もくれなくなる。

 その分、私とカズマ、ダクネスにその視線が向けられた。

 その視線を受け、私達も慌てて土下座を………!

 

 

 ……私の目の前ではダクネスが、未だに突っ立っていた。

 

 「ダクネスも早く頭を下げて!」

 「おい、なにやってんだ、早くお前も頭を下げろ!」

 

 ダクネスは、切り落とされた大剣を構えて勇敢に冬将軍に睨めつけていた。だが、それは蛮勇だと思った。

 

 「誰も見ていないとは言え、私だって騎士だ! 聖騎士のプライドがある! その私が、怖いからといってモンスターに頭を下げる訳には……!」

 

 何やら面倒臭い事を言い出したダクネスの頭を私は左手で掴み、無理やり下げされた。

 

 「何言ってるの!? いつもはモンスターの群れに突っこみたがっているダクネスが、どうしてこんな時だけそんなプライドを見せるの!」

 

 「や、やめろお! 下げたくもない頭を無理矢理下げてされられ、地に頭をつけてる。なんてご褒美だ! ハアハア………、雪が冷たい……!」

 

 ………こんな時でもダクネスはぶれないね。

 

 頬を赤くしながら形だけの抵抗を見せる変態の頭を下げた。

 そのままチラリと冬将軍の様子を見ると、その刀はもう収められていた。

 私はホッとしてそのまま頭を下げ続け……

 アクアが私に、鋭く叫んだ。

 そして、カズマは私の方に急いで走ってくる。

 

 「シロナ、武器武器! その手に持っている剣を早く捨てて!!」

 

 冷たい雪原に上に頭を付けながら、私はまだ 右手に剣を握ったままだった事を思い出した。

 私は慌てて剣を投げ捨てた。

 慌てたためか、自然と雪から頭が上り……。

 

 「シロナ、危ない!」

 

 カズマが私の頭を下げさせたのと冬将軍が鞘から刀を走らせたのは同時だった。

 そしてすくに聞こえるチンと聞こえる小さな音。

 その瞬間、私の頬にピタピタピタッと何かがかかる。

 

 

 ………これは何?

 

 指で拭ったそれは………赤い液体だった。

 

 それが私の身体中に降りかかってくる。

 それを何なのか分からずに隣にいたカズマに視線を向けた。

 そして私は空中(・・)から落ちてきた不思議そうな顔するカズマと視線が交差した。

 それは雪の上へとズシリと落ちる。

 

 「………えっ……カ………ズマ……?」

 

 それと同時に理解した。さっき指で拭ったそれはカズマの血だった。

 そして………。

 

 「……ね、ねえ………カ……カズマ……?」

 

 私はそのまま意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 「………っ………! …………ロナ……!」

 

 ーー遠くから、声が聞こえる。

 

 「シロナ、起きてくださいっ! シロナ!」

 

 私にすがって泣くめぐみんの声。

 

 ………あれっ?

 

 なんだろう、左手が温かい。

 目を開け、そちらに視線を向けるとめぐみんが私の左手を握っていた。

 さらに視線をおくのほうへと向けると、カズマとアクア、ダクネスがいた。

 

 「お、やっと起きたかシロナ。心配したぞ」

 

 私を心配そうに見つめるカズマと少し羨まそうに見るダクネス。そう言えば私の身体には血で髪から服まで真っ赤になっている。

 

 ………あれっ? カズマ?

 

 「えっ、カズマ? 本物? ここ天国とかじゃないよね?」

 

 「ああ、ここは理不尽な異世界だよ」

 

 カズマが笑いながら言っている。

 それを見ると私の視界はどんどん涙で歪んでいき……。

 

 「………カズマっ!!」

 

 「なっ!?」

 

 私は勢いでカズマに抱きついた。普段ならこんな行動を絶対とらないが、とったのはまだ夢かもしれない。そんな思いがあったのかも知れない。

 

 「………なあ、カズマ。私が右手を掴んでたときそんなに動揺しなかったじゃないか」

 

 ダクネスが自分の事を指しながら呟いた。

 

 「お前がもう少し普通の性格だったらそうだったかもな」

 

 「それは私が普通の性格じゃないと言いたいのか!?」

 

 「うん、そう言ってるんだよ」

 

 「んんっ!」

 

 ダクネスが何やら顔を赤くしているがいつもの事だ。無視をしよう。

 そんかやり取りに私はホッと息を吐いた。

 

 「なんでカズマがいるの? 私をせいで死んだはずじゃ」

 

 「ああ、その事なんだがこっちの世界担当の女神様のエリスって言うんだけど。まあ、いろいろあったけどそれをアクアが脅し…………いや、説得して俺が特別に生き返れさせて貰ったのさ」

 

 ……今、脅してって言ったよね? 

 

 でも、目を凝らして見てもカズマには傷跡が残っていない。やはり、アクアの魔法゙ば凄い。

 

 「ちょっとシロナってば聞いてよ! このクソニートってばこの私がせっかく生き返らせて上げたのに直ぐに女神チェンジなんていったのよ!?」

 

 「へえー」

 

 「何でそんな反応するのよ!?」

 

 ………それはアクアの日頃の行いが原因だと思う。そろそろアクアは自分の行動を見直した方が良いと思うよ。

 

 「色々言いたいことがあるけど、まず……カズマ、ありがとう! そして良かったあ」

 

 そう言って私はカズマから離れた。離れる時にカズマの顔が残念そうに見えたのは気のせいだろう。

 この世界の冬は食料に乏しい過酷な環境の中、それでもなお生存競争を行き続けるモンスターのみが、活動が許される。

 私達の様な駆け出しに、お手軽にこなせるクエストなど無いと言う事だ。

 

 ………今日はこのまま、街に帰ろう。

 

 

 

    カズマside

 

 街に帰って来た俺達は、そのまま報酬を貰うためギルドに向かう。

 

 「しかし、小一時間で四十一匹。四百十万か……。稼ぎは本当に稼ぎがいいが、死んだのが割に合わないな。あの冬将軍ってのは特別指定モンスターとか言っていたな」

 

 「そう言えばアクアそんな事言っていたよね。あれってどれだけの賞金がかけられてるの? ダクネスの剣が一撃で折られてたし、あれにはどれだけ頑張っても勝てる気が全くしないよ。正直、ベルディアより確実に強かったよ?」

 

 「冬将軍はなにもしてこないモンスターですからね。それでも賞金は二億エリスはかかっていたはずですよ。魔王軍幹部のベルディアは明確な人類の敵だったので、その危険度から賞金が高かったのです。冬将軍は本来あまり攻撃的でもなにモンスターなのにそれだけの報酬がかけられています。つまり、それだけ冬将軍が強いって事なのですよ」

 

 めぐみんの説明に、俺と思わず黙り込む。

 

 ……二億……か。

 

 それだけあれば、借金を返して家を買っても、しばらくは遊んで暮らせてしまう。

 

 「……めぐみん、シロナ。あいつに魔法……」

 

 「爆裂魔法では倒せませんよ。あれは精霊ですから。精霊は本来、実態を持たない魔力の固まりのような存在です。つまり精霊達の王みたいな存在なので、それりゃあ魔法防御力も凄いのです。確かに爆裂魔法とシロナの強力な魔法なら少しはダメージを与えることはできますが、一撃では難しいでしょうね。……というか、あんな怖いのに撃ちたくありません」

 

 「私もめぐみんと同じ。そして、あんなモンスターもう関わりたく無いよ」

 

 ダメか。ガクリと落ち込む俺を見て、アクアが得意気に、にんまりと笑みを浮かべた。

 

 「ふふん、カズマ。なんか落ち込んでいるみたいだけど、私はただ土下座してた訳じゃないわ。逃がしたと思って一匹残しておいたの! 流石の冬将軍も私の迫真の演技は見抜けなかったようね!」

 

 言いながら、アクアが服の中から取り出したのは小さな瓶。

 その中には雪精がはいっていた。

 

 「おお、でかしたアクア! よし、それを貸せ、討伐してやる」

 

 珍しく機転の利いたアクアを誉めながら、俺は瓶を取り上げようとした。

 

 「なっ!? ダメよ、この子は持ち帰って家の冷蔵庫にするの! いやよ、この子はいやあああ! もう名前だってつけてあるのに殺されるもんですか! やめて、やめてー!!」

 

 「なっ、予想外の抵抗を」

 

 くそ、倒せば十万という、高額な報酬を貰えるのだか……。

 今日はアクアに生き返らせてもらった事だ。報酬も沢山あるし見逃してやるか。

 

 

 

 

 ギルドで精算を済ませ、借金から天引きされた報酬をそれぞれ分配する。

 今日の稼ぎは凄く良かった事なので、しばらくは宿で体を休める事に。

 生き返ったばかりなので、あまり無理はしたくない。

 見た目は清楚な美少女。そして、やはり中身だ。

 俺が死んだ時にあの女神様はあんなにも哀しそうな表情を浮かべ悲しみ、特例で生き返れるとなったら、内緒ですよと言いながらも、優しく微笑んでくれたのだ。

 そんな女神様なのだから、あの駄女神に「チェンジ」と言っても別にいいだろう。

 この世界に来て、ヒロインが一人増えた気がする!

 そんな、エリスの顔を思い出しているだけで、あっという間に、俺達の宿の前に到着した。

 

 「ふふっ、この子は大事に育てて、夏になったら氷を一杯作って貰うのよ! そして、この子と一緒にかき氷の屋台を出すの! ………ねえ、めぐみん、この子って何食べるか知らない?」

 

 「雪精ってそもそも何が食べるの、精霊なんでしょ?」

 

 「すみません、雪精の食べ物なんてちょっと分からないです」

 

 「フワスワしていて、柔らかそうで、むしろこいつに砂糖をかけて口に入れたら美味しそうだな………」

 

 「なっ!? 食べされないわよ!」

 

 「…………私は今日は疲れたから寝るよ~。おやすみ皆~」

 

 俺の後ろでは三人が、そんな会話をしている。

 宿のドアに手をかけながら、俺はまだ起きている三人を振り返った。

 かなり疲れたのかもうベットに入って眠っているシロナと、もう一度、エリス様の顔を姿を思い出し。

 そして、改めて三人の顔をじっと見る。

 

 「「「………?」」」

 

 そんな俺の行動に、キョトンとした表情を浮かべ、三人は俺を見返し黙り込む。

 

 「………ハァ」

 

 「「「あっ!!」」」

 

 俺の吐いた深い溜息を見て、ぎゃあぎゃあと騒ぎ出した三人の声を聞きながら、俺は宿のドアを開けた。




 エリス様が出てくると思った人はすみません。
 文字数の問題でそれを書くと8000文字近くまでになってしまい、長いと思ったのでこうなりました!

 やはり死ぬのはカズマさんかなと思ったのでこの様な展開にもなりました!

 次回はバーディー交換だと思います!(おそらくこれも二つに分かれる事に………)

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