この異世界転生者に祝福を!   作:白城

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 こんにちは白城です!

 思ったより早く書き終われました!

 今回は……題名通りです。


第九話 『この魔王軍幹部に祝福を』

    白奈side

 

 「おおお俺の城に、毎日毎日毎日毎日っ!! お、俺の城に爆裂魔法を欠かさず撃ち込んでく、あああ頭のおかしい大馬鹿は誰だああああ!!!」

 

 ………どうやら私の嫌な予感が当たってしまったようだ。

 

 ずっと何かに耐え続けていたが、とうとう我慢できなくなり、切れてしまったと言うようなデュラハンの叫びに、私達の周りの冒険者がざわつきはじめた。

 私達の呼ばれたのは、目の前にいる怒り狂っているデュラハンが原因のようだ。

 

 ……まあ、私達が原因でもあると思うけど。

 

 「爆裂魔法?」

 「爆裂魔法って言ったら……」

 「爆裂魔法を使えるやつって言ったら……」

 

 自然と私の隣に立っているめぐみんに視線が集まりだした。

 

 「はっ!?………」

 

 周囲の視線が集まっためぐみんは、フイッと私の方を向く。それに合わせてカズマ達や周りの皆も同じ釣られ、私の方に視線を……。

 

 「………って、何で私の方を皆見るの!? 爆裂魔法なんて覚える訳がないし、覚えてないよ!?」

 

 突然仲間に濡れ衣をなすりつけられたのと、視線が自分に集まる事に慣れてない私は当然慌てる。

 

 ………あっ! 

 

 カズマとめぐみんも気づいたようだ。めぐみんにいたっては冷や汗を垂らしている。

 やがてめぐみんはため息を()き前に出た。

 それに伴って、冒険者達がデュラハンへの道を開けてくれる。

 街の正門の前にある岩の上に佇むデュラハン。

 そのデュラハンから十メートル程離れた場所にめぐみんが立ち、向かい合う。

 私達もめぐみんの後につき従う。

 アンデットのデュラハンを見ると襲いかかると思っていたアクアも、これ程までに怒り狂ったデュラハンは珍しいのか、興味津々で事の成り行きを見守っていた。

 

 「おおお前が! 毎日毎日毎日毎日俺の城に爆裂魔法をぶち込んで行く大馬鹿者か! 俺が魔王軍幹部だと知って喧嘩を売っているなら、堂々と攻めてくればいい

! その気がないなら街で怯えていればいいだろう! ねえ、何でこんな陰湿な嫌がらせをするの!? もしかして魔王軍幹部ってだけで嫌がらせするのか!? この街には低レベルの冒険者しかいない事は知っているぞ! 雑魚しかいないと街だと思って我慢しておれば、調子に乗って毎日毎日毎日ポンポンポンポンポンポン撃ち込みにきおって………! 頭おかしいんじゃないのか、貴様っ!」

 

 私達の毎日の爆裂魔法がよほど応えたのか、デュラハンの首が激しい怒りでプルプルと震えている。

 流石のめぐみんも若干怯むも、やがて私達にやったように肩のマントひるがえし……!

 

 「我が名はめぐみん! アークウィザードにして、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者………っ!」

 

 「………めぐみんって何だ。バカにしてんのか!?」

 

 「ちっ、違わい!」

 

 名乗りを受けたデュラハンに突っ込まれるが、すぐにめぐみんは気を取り直すと。

 

 「我は紅魔族の者にして、この街随一の魔法使い、めぐみん! あなたの城に爆裂魔法を放ち続けていたのは魔王軍幹部の貴方だけをおびき出すための作戦だったのです……! こうしてまんまと引っ掛かりこの街に一人で来たのが運の尽きです!」

 

 デュラハンに杖を突きつけるめぐみんを後ろで私達は見守りながら、カズマが私達にボソボソと呟いた。

 

 「……なあ、いつの間に作戦になったんだ? 俺はただ毎日爆裂魔法を撃たないと死ぬとか言っているから、仕方なくあの場所まで連れていっただけなんだが……」

 

 「………うん、本当にいつ作戦になったんたろう? めぐみん、あの城デュラハンの城だって気づいてなかったし………」

 

 「……うむ、しかもさらっとこの街随一とか言っているな」

 

 「しーっ! そこは皆黙ってあげて! 今日はまだ爆裂魔法使ってないし、後ろには大勢の冒険者達が集まっているから強気なのよ! 今良いところなんだから見守りましょう!」

 

 私達の囁きが聞こえたのか、片手て杖を突きつけたポーズのまま、めぐみんの顔が少し赤くなる。デュラハンには見られたくないのか、被っていた帽子をさらに深く被った。

 デュラハンは何故か、勝手に納得したようだ。

 

 「……ほう、紅魔の者か。ならそのいかれた名前に納得がいく」

 

 「お、おい! 私の名前に文句があるなら聞こうじゃないか!」

 

 そうヒートアップするめぐみんだが、流石は魔王軍の幹部、デュラハンはどこ吹く風。そして、やはり冒険者の大群をみても全くどうじてない。

 

 「……フン、まあいいだろう。俺はわざわざお前ら雑魚にちょっかいをかけに来た訳ではない。しばらくはあの城に滞在する事になるだろうが、お前はもうこれからは爆裂魔法を使うな。いいな?」

 

 「無理です。紅魔族は一日に一回は爆裂魔法を撃たないと死にます」

 

 「お、おい! 聞いた事ないぞそんな事! 適当な嘘をつくなよ!」

 

 ………何だろうこの状況。相手は魔王軍の幹部なんだよね?

 

 アクアはなにやら目をキラキラさせながら、事の成り行きを見ている。

 

 「どうあっても爆裂魔法を撃つのを止める気はないと? そう言う事だな? 俺はアンデットになり、魔に身を落とした者ではあるが、元は騎士だ。弱者を刈り取る趣味はない。だが………どうしても止めないと言うのであれば、こちらにも考えがあるぞ?」

 

 危険な雰囲気を感じさせるデュラハンに、めぐみんが、少し後ずさった。

 

 「うっ………め、迷惑だと感じているのは私達の方です! 貴方が城に居座っているせいで、こっちはろくな仕事も出来ないですよ! ……ふっ、ならこっちにも考えがあるんですよ! 先生、お願いします!」

 

 ……先生?

 

 「しょうがないわねー!」

 

 「「はっ!?」」

 

 「魔王の幹部だかなんだか知らないけど、この私が入る時に来るとは運の尽きね! あんたのせいでまともなクエストもうけられないのよ! さあ、浄化される覚悟はいいかしら!」

 

 

 

 私とカズマが驚きの声を上げる中、先生と呼ばれ出ていったアクアは満更でもないような顔をしてデュラハンの前に出た。

 

 ……めぐみん、あれだけデュラハンに言いたい放題言った後に、完全にアクアに丸投げしたね。

 

 「ほう、これこれは。アークプリーストか?」

 

 そう言いながらデュラハンが自分の首を前にだした。あれが相手に良く見るやり方なんだろう。

 

 「だが、俺はこれでも魔王軍の幹部の一人。こんな駆けだしの雑魚しかいない街に入る低レベルのアークプリーストに浄化されるほど落ちぶれてはいない。そうだな……ここは一つ紅魔の者を苦しめてやるかっ!」

 

 「私の力で浄化してあげるわ!」

 

 「間に合わんよ。汝に死の宣告を」

 

 ……あ、あれは!?

 

 「めぐみんっ、あぶない!」

 「お前は一週間後に死ぬだろう!」

 

 デュラハンが呪いを掛けるのと、私がめぐみんを掴み自分の身を盾にしたのは同時だった。

 その瞬間、気持ち悪くも、苦しくもない不思議な感覚が私を襲った。

 

 「うっ!」

 「なっ!? シロナ!! くそっ!、やられた、死の宣告か!」

 

 私の身体には呪いが掛けられたはずなんだけと、そんな感じは全くしなかった。

 

 「シロナ、大丈夫か!?」

 

 「う、うん。特になんともないよ」

 

 だけどデュラハンは確かに一週間後に死ぬと言った。

 

 ダクネスは後ろで、

 

 「騎士の私が盾になるはずだったのに! くそ! 間に合わなかった! ………………羨ましい」

 

 ……今、間違いなく羨ましいって言ったよね? 最初騎士っぽいと思って感動した気持ちを返してほしい。

 

 「その呪いはいまはなんともない。だが、紅魔の娘よ。このままでは必ずその女剣士は死ぬ。仲間同士の結束が固いお前達にはこちら方が応えそうだな。ククッ、お前の大切な仲間は、そのまま死の恐怖に怯え、そして、苦しむ事になるのだ……。そう、貴様のせいでな! これから一週間、仲間の怯える姿の見て、自分の行いを悔いるがいい。クハハハハッ、素直に俺の言う事を聞いていればよかったのだ!」

 

 デュラハンの言葉でめぐみんが青ざめる中、ダクネスが急に叫んだ。

 

 「………ま、待て! それをシロナだけでなく、私にも掛ける事は出来ないか!? そうすれば燃えるシチュエーションになる事間違いなしだ!」

 

 「「えっ?」」

 「はっ?」

 

 ダクネスが言った事が理解できなかったデュラハンが素で返した。

 

 ……私もダクネスが何を言っているのか理解できないし、したくもない。

 

 カズマの顔も同じ顔をしていた。

 

 「呪いにかけられ、解いてほしくば黙って言う事を聞けと命令される! そして、命令を無視した私にきついお仕置きを……っ! ああ、どうしようカズマ! 「はいはい、カズマです」やっぱり何度考えて見ても絶好燃えるシチュエーション間違いなしだ! やはり私にも呪いをーっ!」

 

 「ええっ!?」

 

 呪いを掛けて欲しそうに興奮しながらデュラハンの方に向かうダクネスを私とカズマで取り押さえる。

 

 「ちょ、ちょっと待ってダクネス! おかしいから! それと、冒険者達が見てるから!」

 「止めろ、行くな! デュラハンの人が困っているだろ!」

 「や、止めろ! 放せーっ! 止めるなーっ!」

 

 「と、とにかく! これに懲りたら俺の城に爆裂魔法を放つのを止める事だ! そこのいる女剣士の呪いを解いて欲しくば、俺の城に来るがいい! そうして、無事に最上階にたどり着く事がてきたなら、その呪いを解いてやろう! で、では俺は城に行くとしよう。俺のところまでたどり着く事ができると良いなっ!」

 

 「ま、待ってくれ! 私にも呪いをーっ!」

 

  ダクネスはカズマと私で抑えて、デュラハンはホッとしながら首のない馬に乗り、逃げる様にそのまま城へと去って行った………。

 

 

 

 

 

    カズマside

 

 突然の展開に、集められた冒険者達は呆然として立ち尽くしていた。

 それは俺も同じ事だ。

 ダクネスは結局呪いを掛けて貰えずへこんでいる。

 俺の隣のめぐみんは青い顔で震え、杖を力強く握り直す。

 そして、一人で外に出て行こうとする。

 

 「お、おい。何処に行く気だ」

 

 「今回は事は私の責任です。ちょっと城まで行って、あのデュラハンに爆裂魔法でも撃ってこようと思います。そして、シロナの掛かった呪いを解かせてきます」

 

 めぐみんが一人で城に行った所でデュラハンにたどり着く前に雑魚モンスターに爆裂魔法を撃って終わりだろう。

 ……と言うか。

 

 「俺も行くに決まってんだろ。良く考えろ。お前が一人じゃ雑魚相手に爆裂魔法を使ってそこで終わっちゃうだろ。そもそも、毎回一緒に行きながら、幹部の城だって気づけなかった俺にも責任があるからな」

 

 「ま、待って私も………」

 

 「いや、シロナは待っていてくれ。ここは俺達に任せてくれよ。シロナには迷惑かけでばっかだからな」

 

 俺の言葉にしばらく悩んでいためぐみんは、やがて諦めたように肩を落とした。

 

 「………分かりました。じゃあ、二人で行きますか。でも、相手は多分アンデットナイトです。そうなると武器は効きにくいですね。ですが、シロナはカズマの言う通り待っていてください」

 

 そう言って、めぐみんはうっすらと笑みを浮かべた。

 アンデットナイトと言うからには、鎧に来たアンデット達なのだろう。

 だが、俺はそれならと考えがあった。

 

 「なら、俺の敵感知スキルで城内のモンスターの場所を把握しながら、潜伏スキルで隠れつつ、デュラハンの所に行こう。もしくは、毎回城に通って爆裂魔法で地道に敵を減らしていく。魔法が使えるシロナを連れて行けないのは厳しいが、呪いを掛けられた仲間を働かせるのも嫌だしな。………この方法なら、シロナがいなくても一週間の期限があるんだ、いけるだろう。この作戦で行ってもいいな」

 

 俺の提案にシロナは不安そうな顔だったが、めぐみんは少しは希望が持てたのか微かに明るい表情になった。

 

 「シロナ。呪いは俺達だけでなんとかしてやるからな! だからシロナは、安心して待っ……」

 「『セイクリッド・ブレイクスベル』!」

 

 俺がシロナを元気付ける中、それを遮る形でアクアが唱えた魔法を受けてシロナの体が淡く光る。

 

 「「えっ?」」

 

 さっきから地面に残念そうに座っているダクネスとは対照的にアクアは嬉々として言ってきた。

 

 「この私にかかれば、デュラハンの呪いの解除なんて楽勝よ! どうどう? 私、たまにはプリーストっぽいでしょ?」

 

 「あ、あれっ?」

 

 シロナは自分の体に確認するようペタペタと自分の体を触る。

 

 …………勝手に俺達だけで盛り上がっていた、俺とめぐみんのやる気を返せ。

 

 

  【デュラハンの撃退】

  クエスト達成!




 次回は宿やのオリジナル回にしたいと考えています。

 おもしろく出来るか分かりませんが頑張って書いてみます。

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