少年士官と緋弾のアリア   作:関東の酒飲

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遅れてしまい、申し訳ありません。
 理由としましては……今、中間テスト・中間レポートの時期なので、勉強で投稿が遅れました。次話も一週間以内に投稿は難しいと思われますが、急いで投稿頑張ります。



 今回は場面の移り変わりが激しいですが、ご了承ください

 もちろん、このSSはフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。


Die Hard3 in Tokyo  『ボコ』仲間……

 ほとんどの警官は爆弾の捜索に向かい、鶯谷駅(うぐいすだにえき)に残ったのは数名の警官と刑事一人だけだった。

 

「はぁ、なんてことが……」

 

  ブオォオオオオ!!

 

その居残りの刑事が頭を抱えた時、ディーゼルエンジンの特徴的な音が鶯谷駅に響き渡った。

 

「……え?」

 

刑事がその爆音がする方向を向いた。そこには……大型ダンプ・トラック20台近くが向かってくる。

 

「え?……どういうこと?……って言うか止まれ、おい!!」

 

刑事が必死にダンプの車列を止めようとするもダンプはそれを無視し、‘‘東京国立〇物館’’側へ向かっていく。

 それと同時に1台のセダンが刑事の前に止まり、紺色のスーツを着た白人男性が出てきた。

 

「すいません刑事さん。『ボブ・トンプソン』、J〇の者です。被害状況の調査へやってきました。調べさせてもらっても?」

 

白人男性はそう言って刑事に名刺を渡す。

 

「ずいぶんお早いですね?……ではついてきてください。」

 

刑事は〇Rの仕事の速さに驚きながら、そのスーツ姿の白人男性の案内を始めた。

 

「えぇ、ここは世界の‘‘TOKYO’’。それも山手線ですから。沢山の宝が眠っています。それに……公共交通機関ですからね。うるさい方々が多くて……東京都長もJ〇社長も無視できないんですよ。」

 

 

 

 

 

 

スーツ姿の白人男性とその部下約10名、そして刑事は鶯谷駅を見渡せる橋についた。

 

「うわぁ……これはひどい。」

 

スーツ姿の白人男性はそう言った後、軍用の大型双眼鏡を取り出して駅の状況を観察する。

 

「全く、派手にやったものだ。」

 

スーツ姿の白人男性はそう言ってにやりと笑った。そして観察を終えたのか、刑事の方を向いた。

 

「部下に中の様子を見せてもらえませんか?早急に山手線を復旧させなければなりませんので。」

 

白人男性はビジネススマイルを浮かべながら刑事に頼んだ。

 

「……えぇ、いいですよ?おい、そこの二人、案内させるから一緒に来てくれ。」

 

刑事は少し考えた後、意外にあっさりと許可を出した。

 

「では行きましょう。」

 

刑事一人と警官二人は『やけに体ががっしりしている男たち』に鶯谷駅の案内を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『ボブ・トンプソン』と名乗っていた白人男性はサングラスをかけた後、ダンプに乗っていた一人からアタッシュケースをもらい、そのカバンを持ちながら『東京国立博〇館』へ歩いて向かう。

 

「うん、やはり裏門が弱くなっている。」

 

スーツ姿の白人男性はそうつぶやくと同時に、紺色のセダンが横に止まった。その車からガタイのいい、スーツを着た白人男性5人が出てきた。

 

「よし、行くぞ」

 

サングラスをかけたスーツを着た白人男性はそう言って、休館中の『東京国立博物〇』へ向かった。

 

 

 

 

 

 

  ジリリリリ……

 

 『東京国〇博物館』の本館ではあちこちでベルが鳴っていた。鶯谷駅での爆発によって警報装置が破損したのだろう。

 

「こんにちは。手鳥(てどり)さんに『ヴァン・デアフルーク』が来たとお願いします。」

「‘‘ヴァン・デアフルーク’’さんですね?少々お待ちください。」

 

鶯谷駅で刑事に『ボブ・トンプソン』と名乗っていたサングラスをかけた白人男性はそう言って、ロビーの職員に声をかけた。

 

 

 

 

 

 ロビーの職員に声をかけて5分後、ベルが鳴り止んだ。それと同時に小柄な男性が足早にやってきた。

 

「ヴァン・デアフルークさん、列品管理課長の手鳥(てどり)です。お待たせして申し訳ございません。山手線で爆発騒ぎがあったもので……。非常ベルがうるさかったでしょう?」

 

そう言って手鳥はサングラスをかけた白人と握手を交わした。

 

「被害はございませんでしたか?」

「大丈夫です。被害は皆無です。……日本語がお上手ですね。」

 

手鳥はサングラスの白人が母国語の様に日本語をしゃべるのに驚いた。

 

「もう何年も日本にいるので。」

「そうですか!!……寄贈の件でしたよね。」

「えぇ……。祖父が日本の物を集めていましたが、つい先日亡くなりまして……」

 

手鳥とサングラスの白人が話している間に、白人の部下達が動き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、酷いもんだ。『霞ケ関』の時と同じぐらいですよ。強いて言うなら死人が出なかっただけマシですが。」

 

鶯谷駅で刑事と警官二人は『ボブ・トンプソン』の部下達に構内の案内をしていた。

 

「ひどい瓦礫(がれき)だ。それにこの水は……」

「水道管も破裂したんです。大丈夫だとは思いますが、2番線と3番線の通電は念のため停止させてます。」

 

刑事と『ボブ・トンプソン』の部下の一人が話している時、他の部下たちは警官の首筋に麻酔銃を撃っていた。

 

  ガタッ!!

 

『ボブ・トンプソン』の部下の一人がミスをしたのだろう。大きな音を立てた。

 刑事はその音で振り向き、警官に麻酔銃を撃っているところを見た。

 

「おい、お前!!」

 

刑事が慌てて拳銃を出そうとした瞬間……

 

  ダンダンダン!!!

 

『ボブ・トンプソン』の部下の一人:太眉の男に拳銃で何発も撃たれ、階段から転げ落ちいった。

 

「おい!!何をしているんだ!!」

「(ポーランド語)仕方ないだろうが!!」

「よせ、日本語で話せ!!それに銃声が聞こえるだろう!?」

 

『細身で筋肉質の男』と『太眉の男』が口論を始めた。

 

「まぁまぁ、こいつは日本語が話せないのさ」

 

仲間の一人が喧嘩の仲裁をした後、警官の制服をはぎ取り始めた。

 

「おい、あいつは誰が連れてきたんだ?」

「タルゴさ。あいつの部下だ。」

 

『ボブ・トンプソン』の部下たちは警官や刑事から制服や手帳をはぎ取り、身に着け始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻、事務所に戻った白鷺千聖は所属するアイドルユニット『Pastel*Palette』と共に『ライブハウス:CiRCLE』において、『Roselia』と一緒にライブのリハーサルをし、ちょうど終わったところだった。

 

「おねーちゃーん!!」

「ちょっ!?日菜!?」

 

ロビーで氷川日菜(Pastel*Palette、妹)と氷川紗夜(Roselia、姉)の双子の姉妹によるじゃれ合いは例外とし、残りは互いに反省点を指摘し合っていた。

 ‘‘Pastel*Palette(アイドルバンド)’’・‘‘Roselia(本格派バンド)’’と言う違いはあるものの、その視点の違いは互いのためになるはずだった。

 

  カランカラン……

 

「あ、いらっしゃ……!?」

 

その時、白人や黄色人種の男たち10数人が『ライブハウス:CiRCLE』がいきなり押し寄せてきたのだ。

 彼らは訓練されていたのか、10秒もかからないでCiRCLE内にいた全員の首元に麻酔銃を打ち込みんだ。

 男たちはCiRCLE内全員を無力化したのを確認し、『Pastel*Palette』・『Roselia』のメンバーを誘拐した。

 

 

白鷺千聖は気を失う前、イブキの顔を思い出した。

 

「い、イブキ、助k……」

 

 

 

 

 

 

 

 

『ボブ・トンプソン』・『ヴァン・デアフルーク』などと名乗った白人は‘‘東京国立〇物館’’にて、別室へ案内されていた。

 

「あぁ!!すいません。そっちは管理室行きのエレベーターです!!」

「それは失礼。方向音痴なもので……」

「やめてください。さっきの爆破事件で警報装置が壊れてしまい、今は電源を切っている状態なんです。」

「全く、不用心ですなぁ」

 

  プルルルル……

 

その時、『ボブ・トンプソン』・『ヴァン・デアフルーク』などと名乗った白人のポケットから携帯が鳴り始めた。

 

「失礼、電話に出てよろしいですか?」

「あ、はいどうぞ。」

 

手鳥列品管理課長から許可をもらったため、その白人男性はポケットから携帯を取り出し、電話に出た。

 

「(英語)終わったか?」

『(英語)駅の占拠が終わりました。駅から博物館まで誰も入れません。また、‘‘もう一つの方’’も成功したと連絡がありました』

「(英語)よくやった。」

 

  ピッ……

 

『ボブ・トンプソン』・『ヴァン・デアフルーク』などと名乗った白人は電話を切り、携帯をポケットにしまった。

 

「手鳥さん、寄贈の件なのですが……‘‘そちらが’’我々に寄贈してもらう事になりました。」

「……へ?」

 

その言葉と同時に、一緒に来ていた部下が手鳥列品管理課長の首元に麻酔銃を撃った。

 

「30分以内に無力化しろ」

「「「「「ハッ!!」」」」」

 

男はそう言ってサングラスを取った。その顔は……実行犯とされる『サイモン・ピーター・グルーバー』の写真と瓜二つだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺とジョニー・マクレー(おっさん)、西住さんは車から出て旧芝離宮恩賜公園へ入り、中島へ向かった。

 

「大人1人、高校生2人です。」

「450円になります。」

「……はい」

 

旧芝離宮恩賜公園は入園料がかかるため、‘‘俺’’がお金を払ったのは言うまでもない。

 

 

 

 

「ここが‘‘旧芝離宮恩賜公園’’!!」

「……有名なのか?」

 

西住さんが今までと打って変わり、目を輝かせて周りを見ていた。

 

「はい!!『ボコ』の68~74話のモデルになってるんです!!」

「……へぇ~。あの『ボコ』か」

 

 ……『ボコ』ねぇ。

 

俺は『閑話:高校生活2学期編  BOKO Hard 2.5 その2』で会った‘‘愛里寿ちゃん’’を思い出した。彼女もまた、『ボコ』のファンだったはずだ。

 

 ……もしかしたら‘‘愛里寿ちゃん’’も旧芝離宮恩賜公園にいるかもな。

 

「……ボコ!?知ってるんですか!?」

 

西住さんは‘‘ボコファン’’を見つけて興奮しているのだろうか?西住さんは食い気味に話し始める。

 

「……え?いや……まぁ。」

「私、ボコが大好きで!!最近上映された『BOKO Hard』もすぐに……」

「え?『BOKO Hard』!?」

「(英語)ん?『Die Hards』?」

 

 ……『BOKO Hard』も『Die Hards』も黒歴史なんだよなぁ。

 

 

 

『BOKO Hard』は、俺が聖グロでテロリストと戦った事件をモデルに‘‘愛里寿ちゃん’’が台本を書いた映画……らしい。しかし、『ボコ』であるために主人公は殴られるだけなのだが。

『Die Hards』は俺が7歳の時、ジョニー・マクレー(おっさん)と一緒にテロを倒した話がモデルになっているアクション映画だ。

 

 

 

 ……やったぁ~、俺沢山の映画のモデルになってる~

 

俺は思わずため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 さて、そんな雑談をしながら中島に着き、石の上に置いてある携帯を見つけた。その数分後、それに電話がかかってきたので、西住さんはスピーカーモードにした。

 

『(英語)ちゃんと着くとは感心だな。』

タン!!タン!!

(英語)次は東〇館と平〇館だ!!急げ!!

 

‘‘サイモン’’の声のほかに……それと共に銃声、や怒鳴り声が小さく聞こえる。向こうで何かしているのだろうか?

 

「(英語)次は何をする!!」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)は怒鳴りながら‘‘サイモンに訊ねた。

 

『(英語)仙人が住み、徐福が着いたとされる地は何処だ?日本の‘‘竹取物語’’にも出ていたはずだ。』

 

  ッー、ッー、ッー……

 

「(英語)おい!?なんだって!?」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)は‘‘サイモン’’に向けて話すが……電話が切れてしまった。

 

「(英語)‘‘仙人’’ってなんだぁ?」

 

おっさんは苛立たし気に携帯をポケットに入れたながら尋ねた。

 

「(英語)‘‘仙人’’はともかく、爆弾があるのはここだよ」

 

俺はそう言い、靴の先で地面(中島)を叩いた。

 

 ……仙人が住み、徐福が目指した地は『蓬莱』、そしてこの旧芝離宮恩賜公園‘‘中島’’には『蓬莱山』を模して造ったそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

俺は中島を周り、この島の頂上にある石塔の近くに大きめのアタッシュケースを見つけた。俺を追いかけたジョニー・マクレー(おっさん)と西住さんもその不審なアタッシュケースを見つけたようだ。

 

「あ、あれが爆弾……ですか?」

「多分……」

 

西住さんは不安そうに俺に尋ねてきた。

 

「(英語)坊主、取ってきてくれ」

「(英語)分かっt……いやいやいや!!おっさんの方が爆弾に詳しいだろ!?」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)は『醤油を取ってくれ』と言うような気軽さで言ったため、俺は普通に取りに行こうとしてしまった。

 

「(英語)俺は‘‘開ける’’、坊主は‘‘運ぶ’’。それとも‘‘嬢ちゃん’’に爆弾を運ばせる気か?」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)は西住さんを見た。西住さんは英語を理解できないせいか、コテンと可愛く首を傾げた。

 俺はため息をついた後、石塔にあるアタッシュケースに向かって歩き出した。

 

「(英語)それでも年上かよ……」

「(英語)年上の年下も関係ねぇ。……それに、持ってくるより開けるほうが危ねぇよ。」

 

 ……まぁ、確かに。って言うか、これはなんだ?

 

アタッシュケースの横には、‘‘小学生が虫などを入れるプラスチックの水槽’’が大小二つ置いてあった。

 

 ……ゴミか?こんなところに捨てるなんて。

 

俺はアタッシュケースを慎重に持ち上げ、ゆっくりと戻ってきた。ジョニー・マクレー(おっさん)はそれを受け取ると赤子を扱うかの様にアタッシュケースを地面に置き、ゆっくりと開ける。

 

「あ、開けて大丈夫なんですか?」

 

西住さんが不安げに、俺のボロボロの上着を引っ張って聞いてきた。しかし……俺は爆弾に詳しくないため、どう答えていいものか。

 

「おっさんがやってるんだから大丈夫だろう。電車の中の爆弾も開けるのはできたし。」

 

俺は適当な事を言って西住さんを安心させるが、その言葉に根拠はない。

 

「「「……」」」

 

俺と西住さんは、ジョニー・マクレー(おっさん)が開けるアタッシュケースを注目する。

 

 

 

 

ジョニー・マクレー(おっさん)がアタッシュケースを開けると……‘‘赤と透明な筒’’・‘‘大きめの端末’’・‘‘計り’’がケーブルによって繋がっていた。

 そして、‘‘大きめの端末’’に文字が浮き出てくると共に、ブザー音が発せられる。

 

『I am a bomb. you have just armed me. (訳:爆弾が起動しました。)』

 

「な、何やってるんですか!?」

 

西住さんも文字にされた英語は分かったのだろう。西住さんは俺の背に隠れながら、意外に大声で非難した。

 

  プルルルル……!!!

 

その時、ジョニー・マクレー(おっさん)のポケットからベルの音が鳴り響いた。ジョニー・マクレー(おっさん)はさっき拾った携帯を取り出し、スピーカーモードにして通話に出た。

 

『(英語)もう少し手こずると思っていたが、予想以上に早く見つけられたな。上出来だ。』

 

電話の相手はもちろん、‘‘サイモン’’からだった。

 

「(英語)へっ、簡単すぎるぜ!!もっと難しいのを出しな!!」

「(英語)……解いたの俺なんだけど。」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)は‘‘サイモン’’に軽口をたたき、俺はため息をついた。

 

『(英語)さて、その爆弾には特殊な感知器が付いている。逃げようとすれば爆発するぞ。』

「(英語)……分かってる、逃げやしないよ!!」

「(英語)そんな探知機つけるぐらいなら、‘‘安物の起爆装置’’を使うんじゃねぇよ」

 

今頃、警察に軍、きっと武偵も血眼(ちまなこ)になって‘‘学校に仕掛けられた爆弾’’を探しているだろう。そして無線が使えず、大混乱しているはずだ。

 

 ……どうせ混乱させるために‘‘そんな起爆装置’’を使ったのか、それともブラフを言ったんだろうが。

 

 俺はため息を再びついた時、袖を引っ張られた。俺はその方向を見ると、予想通り西住さんが袖を引っ張っていた。

 

「あ、あの……」

 

 ……あぁ、西住さんは英語が分からないものな。

 

「『あの爆弾から逃げれば爆発する』だそうだ。」

「あ、ありがとうございます!」

「(英語)どうすれば爆弾を止められる!!」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)は俺と西住さんを無視し、‘‘サイモン’’に怒鳴りつけるように尋ねた。

 

『(英語)石塔に水槽が二つあっただろう。5Lと3Lの容量だ。その水槽に4Lの水を入れ、そいつを計りの上に置けば起爆装置は止まる。もちろん量は正確に、ピッタリ入れないと爆発するぞ?生きていれば5分後に電話をかける。では……』

 

  ッー、ッー、ッー……

 

電話が切れた。ジョニー・マクレー(おっさん)が俺に『西住さんに今のを訳せ』と目で言ってくる。

 俺は西住さんに伝える前に、石塔近くに置いてある水槽を取りに行った。

 

 

 

 

 

「西住さん、大きい水槽が5L、小さいほうが3Lだ。それで4Lの水を作り、このアタッシュケースにある計りに置いたら解除だそうだ。」

 

俺は持ってきた水槽を抱えながら西住さんに説明した。

 水槽にはちゃんと油性ペンで線が書かれいる。しかもご丁寧な事に、その線の上には『3L』・『5L』と書かれてある。

 

「前に ‘‘平成〇育委員会’’でやっていたような……」

 

西住さんはそう言った後、(あご)に人差し指をあて、考え始めた。

 

「に、西住さん!!答えは覚えてる!?」

「えっと……あ!!」

 

西住さんは答えを思い出したのか、大きな声を上げた。

 

「あ、あの時、答えの前に消灯になって……スイマセン」

「…………うん、それはショウガナイよね。」

 

俺はジョニー・マクレー(おっさん)にそのことを伝え、互いにため息をつき、考え始めた。

 

「(英語)警察は出払って、俺は公園でガキのナゾナゾか」

「(英語)おっさん、愚痴(ぐち)言ってないで考えてくれ!!」

「え、えっと……4Lってことは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのころ‘‘東〇国立博物館’’では……‘‘サイモン’’達は学芸員全員を気絶・捕縛し、完全に警報が切れている事を確認すると……ガラスを乱暴に破壊し、文化財を効率よくトラックに運び出していた。

 

「(独語)見ろ!!これが国宝の『童子切安綱』・『小烏丸』・『大包平』だ!!これだけでどれほどの価値がある!?アメリカ連邦準備銀行の金塊を盗もうと考えたことがあったが……ここほど警備が薄く、ローリスク・ハイリターンなところはあるか!?」

 

‘‘サイモン’’は興奮しながら、国宝:海磯鏡(‘‘法隆寺献納宝物’’中の2枚一組の鏡)の一枚を部下に投げ渡した。部下は慌てて受け取り、ニヤニヤしながら木箱に詰め、その箱をダンプに乗せていった。

 

「(独語)金はレートが決まってて、しかも買い叩かれる可能性があったが……日本の文化財なら‘‘大金を出しても買う奴’’がいる!!」

 

‘‘サイモン’’は刀剣以外にも、仏像や絵画、金工・陶磁器・染織が運ばれていく様子を見てさらに興奮する。

 

「(独語)大佐、‘‘例の物’’を持ってきました」

 

部下が布に包まれた大きな棒状の物を持ってきた。‘‘サイモン’’は無言でそれを受け取り、布を取ると……見事な日本刀だった。

 ‘‘サイモン’’は日本刀をゆっくりと抜くと……刀身が付いていなかった。そのまま‘‘サイモン’’は手早くそれを分解すると、展示されていた刀身の一本にそれらを装着していった。刀身が置かれていたところにあった説明文には……『三日月宗近』と書かれていた。

 

 

 ところで明日から『東京国立〇物館』では、‘‘刀剣男子が活躍するゲーム’’の人気もあり、『特別展:日本の刀』のために様々な日本刀が展示される予定だった。

 もちろん、国宝・重要文化財級はともかく、御物(皇室の私有物)までもが集められていたのだ。

 

 

「(独語)日本の‘‘コスプレ’’は芸が細かいな。調整もいらず、使いやすい」

 

‘‘サイモン’’は(つか)をもって日本刀を持ち、軽く振るが……目釘(刀身と(つか)を固定するもの)が壊れる様子もなく、実戦に耐えられそうであった。

 ‘‘サイモン’’はその刀を(さや)にしまい、腰に()いた。そして再び陣頭指揮を執り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(英語)分かったぞ!?まず3Lの水を5Lの容器に移す。そして3Lの容器3分の1の水を……」

「(英語)ダメだおっさん!!それじゃぁ正確じゃない!!」

 

おっさんが一番ダメな方法を言ったため、俺は反対した。

そもそもこの容器、‘‘直方体’’ではなく‘‘末広がりの容器’’のために『高さ3分の1=容積3分の1』という理屈が通らない。

 

 ……いいか、3Lの容器はあるんだ。という事は後1Lを何とかして作れば……

 

俺がそんな風に考えている時……

 

「違います!!」

「(英語)なんだ!?お前さんだってわかってないだろ!?早くそれを貸すんだ!!」

「嫌です!!早くそっちのを貸してください!!!」

「(英語)やり直しだ!!」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)と西住さんは英語・日本語という‘‘異なる言語’’で喧嘩をしていた。

 

 ……ある程度は意思疎通ができていることを喜ぶべきかな。

 

俺はそんなことを考えながら、俺はスマホを出して答えを検索……できなかった。

 俺のスマホの画面は粉々、一部は中の基盤すら見える。そして、電源ボタンを長押ししても画面が真っ黒のままだ。

 

 ……あぁ!!クソどうすれば!?

 

そんな時だった。救世主が現れた。

 

 

 

 

 

 

 

「わぁ~!!!」

 

髪をサイドテールにし、『ボコ』のぬいぐるみを抱えた美少女が目を輝かせて旧芝離宮恩賜公園を眺めていた。

 

 ……愛里寿ちゃん!?なんでここに!?

 

サイドテールの少女の名前は島田愛里寿。『閑話:高校生活2学期編』において巻き込まれた少女の一人だ。そして『ボコ』のファン。

 

「……隊長は何でここに来たかったのかしら」

「何でもアニメのモデルになったらしいわよ。」

「目を輝かせている隊長、可愛い~!!」

 

後ろには大学生であろう美女が三人ほどいるのだが……愛里寿ちゃんのお姉さんだろうか。

 

 まぁ、そんなことはどうでもいい。重要なのは愛里寿ちゃんの手には『ボコ』のぬいぐるみの他に、『未開封の500mLペットボトル』が握られていたのだ。

 

「(英語)おっさん!!ちょっと行ってくる!!」

「(英語)……!?坊主何を!?」

 

 

 

 

俺は猛ダッシュで愛里寿ちゃんの前まで走った。

 

「……村田お兄ちゃん?」

 

愛里寿ちゃんも俺に気づいたようだ。しかし、何故ここまでボロボロになりながらもダッシュで来たのか理解できなかったのだろう。愛里寿ちゃんは可愛く、コテンと首をかしげて聞いた来た。

 

「ハァ、ハァ、あ、愛里寿ちゃん……いや、武偵の村田です。そのオレンジジュースをください。」

「……え?」

 

愛里寿ちゃんは涙目になった。俺が愛里寿ちゃんを他人のように接しているからだろうか。

 

 ……だけど、そんな事を気にしている時間はねぇ!!

 

俺は急いで財布を取り出し、1000円札を愛里寿ちゃんに握らせ、オレンジジュースを取……れなかった。愛里寿ちゃんは何処からそんな力が出るのか、万力の様にオレンジジュースのペットボトルを握っていた。

 

「ちょっと!!何やってるの!?」

「隊長のジュースを奪おうとするなんて!!」

「羨ましい!!」

 

愛里寿ちゃんの保護者(?)の大学生3人も加勢し、俺を責め立てる。

 

「い、いや……事件解決に必要で……」

 

俺も反論するが、愛里寿ちゃんの保護者(?)の大学生3人は勢いづけ、さらに

責め立てる。

 

「そもそも本当に武偵なの!?」

「武偵高校の制服じゃないわよね!!」

「隊長とどんな関係なの!?」

 

 ……あぁ!!緊急事態だっていうのに!!

 

「うるせぇ!!緊急事態なんだ!!それとも爆死したいのか!?」

「「「……ッ!?」」」

 

俺は殺気を込め、大学生3人に忠告した。彼女達はその殺気を受けて怯えている。

 

「村田お兄ちゃん……また何かあったの?」

 

しかし、愛里寿ちゃんは俺の近くにいたのに平然としていた。

 

 ……嘘だろ!?なんで平気なんだ!?

 

「あぁ、また爆弾事件だ。」

 

俺は平然としている愛里寿ちゃんに驚きつつも答えた。

 

「私も行く。」

 

愛里寿ちゃんはギロリと、闘志と決意と殺気が込められた瞳で俺を見てきた。その目力は、普通の大人でも出せないほどの物だった。

 

 ……嘘だろ!?『暴走した西住さん』ぐらいの圧を出すなんて!?

 

「……危険だ。爆発するかもしれない。」

「……じゃぁ、これは渡さない」

 

俺は力を入れ、ペットボトルを引っ張った。しかし、愛里寿ちゃんの手は離れず、余計に圧を強くする。

 

 ……あぁ、クソッ!!時間がねぇ!!

 

俺は愛里寿ちゃんを小脇に抱え、ジョニー・マクレー(おっさん)と西住さんのいる中島へ走り出した。

 

 

 

 

「……誘拐!?」

「隊長が誘拐された!?」

「待てぇ!!あのロリコン野郎!!」

 

保護者(?)の女子大生3人組が俺を追いかけたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(英語)坊主!!どこ行ってたんだ!!誘拐するぐらいなら少しは考えろ!!」

「離れたら爆発するんですよね!?何してるんですか!?……って何誘拐してるんですか!?ロリコンだったんですか!?」

 

俺が中島に戻ると、ジョニー・マクレー(おっさん)と西住さんはカンカンに怒っていた。

 

「俺はロリコンじゃねぇ!!とにかく愛里寿ちゃん、ペットボトル貰うぞ!!」

 

俺は‘‘なぜか頬を膨らます愛里寿ちゃん’’からオレンジジュースのペットボトルを受け取り、銃剣を取り出して液面の部分に傷をつけた。そして開封してジュースを一気飲みした後、そのペットボトルで池の水を()み始めた

 

「(英語)これ一本で0.5Ⅼだ!!」

 

俺はそう言って‘‘5Lの水槽’’にペットボトルで汲んだ水を注いだ。それを見ていたジョニー・マクレー(おっさん)と西住さんは俺のやっていることを理解したようだ。

 

 

 

 

何をしたのかと言うと……

Q. 5Lと3Lの水槽があります。これを使い4Lの水を計りなさい。

A. 500mLのペットボトル2本分(1L)と3Lの水を()み、合わせれば4L。

 

 ‘‘サイモン’’もまさかこんな荒業でクリアするとは思っていなかっただろう。

 

 

 

 

「これで二本目だ!!」

「(英語)これに3Lの水を足せばいいんだな!?」

 

俺が1Lを注ぎ入れ、ジョニー・マクレー(おっさん)が3Lの水を注いだことにより、無事に4Lの水を完成することができた。西住さんは‘‘残り2分を切った爆弾’’の計りに4Lの水が入った水槽をゆっくりと置く。

 

  ピピピ、ピー

  『DISARMED(解除)

 

「「「「よっしゃー!!!」」」」

 

俺・ジョニー・マクレー(おっさん)・西住さん・愛里寿ちゃんが思い思いにハイタッチをして喜ぶ。

 

  プルルルル……

 

 すると、あの‘‘拾った携帯’’が鳴りだした。

 俺達三人は笑顔が消えため息をつき、事情を知らない愛里寿ちゃんは首を傾げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジョニー・マクレー(おっさん)はポケットから‘‘拾った携帯’’を取り出し、通話ボタンを押し、スピーカーモードにした。

 

『(英語)おめでとう、しぶとく生きていたな。』

「(英語)あぁ!!やったよ!!だからさっさとどこの学校か言え!!約束だぞ!!」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)は苛立たしそうに答えた。

 

『(英語)慌てるな。時間はたっぷりある。あと……2時間と37分も残されている。まだまだ君達の知恵が試せさ。』

「(英語)おい!!テメェ!!今日の俺は二日酔いでメロメロなんだ!!くそぉ!!もう下らねぇ‘‘なぞなぞ’’は十分だ!!爆弾は何処だァ!!」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)は堪忍袋の緒が切れたのか、大声で怒鳴り散らした。

 

「(英語)ふ、ふざけるな!!こんなこと時間稼ぎをして何が楽しい!!弟の敵討ちなら他人を巻き込まず正々堂々とぉおおおお!?」

 

俺も‘‘サイモン’’に怒鳴り散らした時、背後から殺気を感じた。俺は慌てて振り向くと……愛里寿ちゃんの保護者(?)の女子大生三人が、闘牛が如く俺に突っ込んできた。

 ジョニー・マクレー(おっさん)と西住さんはその殺気に恐れたのか、愛里寿ちゃんを抱えて俺から急いで離れる。

 

 ……え!?なに!?どういう事!?と言うか二人とも何俺をあっさり見捨ててるんだよ!?

 

 ここで、俺は愛里寿ちゃんを『誘拐に近い形で』連れて行ったことを思い出した。そんなことをすれば……保護者(?)の女子大生三人はどうなるか……。

 

 女子大生三人は俺から3mほどのところで一気に踏み切り、飛んだ。

 

「「「バミューダアタック!!」」」

 

  ゲシッ!!

 

俺は女子大生三人による蹴りによって、全運動エネルギーが腹と胸に伝わる。すでにあちこち怪我をし、血も足りない俺は痛みを感じた時には宙を舞っていた。そして『蹴りによる痛み』と認識したころには池に落ちていた。

 ところで、今日は12月中旬とはいえ、結構冷えた日だった。そんな時に池に落とされれば……

 

「ッ~~~!?」

 

痛みに寒さ、そして窒息が俺を襲ってくる。俺は慌てて上着とズボンを水中で脱ぎ、ボロボロの体を無理やり動かして中島まで向かう。

 何とか中島までたどり着いた俺は陸に上がり、三人に文句を言おうと……

 

ゲシッ!!べキッ!!バキッ!!

 

文句を言う前に三人から袋叩きに会った。

 

「隊長を誘拐して!!」

「このロリコン!!」

「死ねぇ!!!」

 

俺は三人から殴られ、蹴られ続けた。池に落ちた寒さよりも、痛みによる熱さが勝るなど初めての事態だ。

 

 

 

 

『(英語)……何が起こっているんだ?』

 

‘‘サイモン’’は思わず質問した。

 

「(英語)……あぁ。」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)はこんな状況に呆然としたままだった。

 

『ふ、お嬢さん(フロイライン)?そっちでは何が起こっているんだい?』

「……えっと、村田さんが誘拐犯だと思われて、襲われてます。」

 

西住さんはハイライトを消し、淡々と告げた。西住さんが抱いている愛里寿ちゃんからヤバそうなオーラが出ているが……西住さんは無視する。

 

『……と、とりあえず爆弾が置いてあった石塔の中に手紙が入っている。そこに書いてある場所に行け。それと村田君に‘‘それは私によるものではない。ご愁傷様’’と伝えてくれ。』

 

  ッー、ッ―、ッー……

 

電話が途切れた。西住さんはいまだにボコられているイブキを無視し、石塔まで登り手紙を取ってジョニー・マクレー(おっさん)に渡した。

 

「えっと……、『さいもん せっず、ごーひぃあ』」

「(英語)ありがとな……『明治神宮球場のホーム側ダックアウトへ行け?』、なんだってこんな事……」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)は英語の手紙を読み上げ、ため息をつきながら西住さんに尋ねた。

 

「あー……あい どんと のう。そーりー」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)は、(つたな)いが必死に英語で伝えようとする西住さんに愚痴ることはできなかった。

 

「(英語)それにしても……坊主をどうする?」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)はポケットから煙草を取り出し、火をつけながら訪ねた。いまだにイブキは女子大生三人にボコボコにされていた。

 

「おい……お前ら……」

 

その時、島田愛里寿(小さな大鬼)がイブキをボコボコにしている女子大生三人に向かって歩き始めた。

 

 

 

 

 

 




 『俺のいちばん長い日 with BanG Dream!   形あるもの、いつか壊れる……』で登場した『氷川紗夜』が一瞬登場。


 旧芝離宮恩賜公園は‘‘このSS’’では一部の話で『ボコ』のモデルになっています。

 
 まだ西住みほが高校一年生の時なので、島田愛里寿との面識はありません。



  Next Ibuki's HINT!! 「警察手帳」 

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