少年士官と緋弾のアリア   作:関東の酒飲

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皆さんGWはどうでしたか?自分は……バイトばかりだったので書く時間があまりとれませんでした。
 金は欲しいけど時間も欲しいなぁ……。


 





Die Hard3 in Tokyo  一般人でこの殺気って……

「(英語)た、タクシー!!」

「タクシー!!!こっちだ!!」

 

俺とおっさんはヤンキー共から走って逃げている時、運よくタクシーを捕まえることができた。

 

「お客さん、行先は……」

「(英語)うるせぇ!!早く出せ!!」

「あぁ~、警視庁に。いや、警察庁まで!!早く!!!」

「は、ハヒ!!」

 

俺とジョニー・マクレー(おっさん)は運転手に怒鳴りつけた。運転手も緊急事態だと理解したのだろう、一気に加速させた。

 

「……私、なんでこんなことになってるんだろ。そもそも大会でやっちゃって、熊本から東京に無銭乗船して、今度は事件に巻き込まれたんだぁ」

 

俺が小脇に抱えていた少女は『この世に絶望した目』をしてボソボソ独り言を言っている。

 

 ……『命を救ったから感謝しろ』とは言わねぇけど、あの場にいたら最悪『誘拐されて強姦』の可能性もあったんだぞ?

 

俺はそう思いながら後ろを振り向くと……ヤンキー共が乗っていたハイエースが爆走して追って来ている。

 ヤンキーの一人がハイエースから身を乗り出し、短機関銃(サブマシンガン)をタクシーに向けてきた。

 

「(英語)伏せろ!!」

「伏せろ!!!」

 

俺は少女の頭を押さえつけながら伏せた。

 

「ぐぎゅ……」

 

少女から苦しそうな声が聞こえるが、そんなことを気にしている場合じゃない。

 

  ダダダダ……バリン!!バリン!!

 

「な、なんで撃たれるんですか!?……く、くそぉおお!!なんて日だ!!!妻は出て行って!!家出した‘‘息子’’が‘‘娘’’になって戻ってきて!!」

 

 ……タクシーの運転手、今日一日で何があったんだ?

 

俺は思わずタクシーの運転手を見た。中年のタクシーの運転手はギリギリまで姿勢を低くして運転をしているが、その運転はとても滑らかだ。きっとこの運転手はベテランなのだろう。

 

「(英語)クソッ!!だから坊主と一緒にいるのは嫌なんだ!!」

「(英語)こっちだって一緒だよ!!なんだってこんな目に!!」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)はベレッタで敵のハイエースを撃つが、全くダメージを与える様子が見られない。

 

「(英語)防弾になってやがる!!」

「(英語)流石にタイヤは違うだろ!?」

 

俺は‘‘四次元倉庫’’から38式歩兵銃を取り出し、タイヤを狙って発砲するが……銃弾は無残にも弾かれた。

 

「(英語)グォ!?」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)は後ろへ倒れた。左腕から血がドクドクと出ている。被弾したのだろう。

 

「(英語)おっさん!?俺に任せろ!!」

 

俺は38式をしまい、代わりに25ミリ機関銃を取り出した。

 

  ガチャ!!ガチャッコン!!

 

「(英語)喰らいやがれ!!」

 

  ダンダンダンダンダン!!!

 

俺は何発が被弾しながら25ミリ機関銃を撃ち、ハイエースのタイヤを打ち抜いた。

ハイエースはスリップし始め、ガードレールにぶつかって運動エネルギーを減らし、そして電柱柱にぶつかって止まった。見た感じ、ハイエースの人間以外に犠牲者はいないようだ。

 

 

 

 

 ……クソッ!!普通こういう撃ち合いの時、主人公は無傷だろ!?

 

俺は‘‘四次元倉庫’’に25ミリ機関銃をしまい、弾が貫通した‘‘左の二の腕’’・再び出血した‘‘頭部’’・‘‘右わき腹’’に応急処置をしていく。

 

「……東京(ここ)へ逃げるくらいなら熊本(うち)で引きこもっていた方がよかったなぁ」

「……なんかあったのか?」

 

 少女はずっとぼやいていた。普段だったら俺は無視するのだが……『華の高校生(?)』が‘‘死んだ魚の目’’でブツブツとぼやいていたらさすがに気になる。 

 俺は思わず聞くと、少女はピントの合わない瞳孔が開いた眼で俺を見てきた。その瞳で喋るのはやめて欲しい。

 

「大きな大会で大失敗して、ずっとそれで責められて逃げ出したんですけど……こんなのに巻き込まれるくらいなら熊本にいたほうがよかったって思ったんです。」

「……お前も大変だな」

 

 ……大きな大会で失敗してずっと責められるのか、結構陰湿なところだったんだな

 

俺は処置をしながらそう思った。

 

「(英語)サツのところまで信号無視で突っ走れぇ……」

 

おっさんは痛そうに運転手に命令したが……運転手には英語は通じない様だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東京タワーの展望台、そこで双眼鏡片手にカーチェイスを眺めていた男がいた。その男は背が低く少し太り気味で、丸メガネをかけ、頭頂部だけ髪がなく、口ひげを生やした初老の人物だった。

 

「おぉ~。うまくやっている。」

 

その初老の男は事件の始まりを見て、片方の口角を上げながら静かに笑った。

 

「劉先生、そろそろお時間です。」

「そうか。」

 

初老の男は青年に声をかけられ、そのまま東京タワーの展望台から降りようとし……歩みを止めた。

 

「そう言えば、この作戦草案を書いたのは君か?名前は……」

司馬 鵬(しば ほう)です。劉先生」

「今回は没にしたが……君の草案は努力の跡がみられる。それがいい」

 

初老の男は片方の口角を持ち上げて微笑みながら言った。司馬 鵬(しば ほう)という青年は無表情で頭を下げる。

 

「努力は良い。鉄砲玉だった俺が、努力に努力を重ね……龍頭閣下に認められ、やっとここまで上り詰めた。人は氏ではない。育ちであり……努力だ。」

「……は」

 

そして、初老の男は片方の口角を持ち上げつつ、‘‘微笑み’’から‘‘しかめっ面’’に顔を変えた。

 

「それを静幻……、龍頭閣下のご意向を無視し、勝手に戦を始めて……!!」

「……」

「……すまない。君は静幻に拾われたのだったな。」

 

初老の男は顔を戻し、司馬 鵬(しば ほう)という青年の肩に手を置いた。

 

「ただこれだけは覚えておけ。『人間に優劣はない。努力するかどうか、したかどうか』だ。」

 

初老の男はそう言って、東京タワーのエレベーターに乗り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺とジョニー・マクレー(おっさん)は警察庁の職員に簡易的な処置をしてもらい、『黒色軍服風制服の少女』は調書を取られていた。

 なんでも彼女は熊本の名門校に在籍しており、いじめ(?)が原因で家出をして東京まで流れ着いたらしい。

 

 ……あんな可愛い少女にそんな行動力があったとは思わなかった。

 

俺は数メートル先で調書を取っている少女をまじまじと見た。

 

 

 

 

「(英語)誇大妄想の典型的な例ですな。対象よりも絶対的有利に立ちたいという強い願望を持ち、彼らの全て……行動・意志・感情さえも支配したいと思っている。」

 

手当てを始めて数分後、東京に住む『日本の心理学の権威』の教授が警察庁に到着した。その教授は犯人の今までの行動や言動を分析し、その結果を俺とジョニー・マクレー(おっさん)に説明してくれるのだが……専門用語ばかりで理解できなかった。

 

「(英語)二人の隠れた大ファンってわけだ」

 

藤原さんが揶揄(からか)いながら、俺とジョニー・マクレー(おっさん)にホチキス止めのコピー用紙の束を投げ渡した。

 

「(英語)ファンなら可愛い女の子の方が良いですy……いや、性格に難ありとか勘弁してほしいですね。」

 

俺は思わず『かなめ』・『ワトソン』・『ココ姉妹』を思い出した。そして溜息を吐きながらその紙束を拾い上げて読む。

 

「(英語)花束でも送られるかな?……アスピリンをくれないか?」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)は渡されたアスピリンと水を飲んだ後、紙束を読み始めた。

 

「(英語)パンジーが好きだと伝えてやりましょう。さて、今回の犯人ですが……」

 

藤原さんは冗談を言った後、『疲れ切ったサラリーマン』のような雰囲気から『ドロッとした気配』に替え、説明を始めようとした。

 

「(英語)安心しなさい、犯人は同性愛者じゃない。残念な事にとても冷酷ですな。」

 

心理学者の教授は『落ち着け』とばかりにジョニー・マクレー(おっさん)と俺の肩に手を置いた。

 

 ……『冷酷なテロリスト』よりまだ『パンジー』の方がよかっt……いや、よくねぇや。

 

 

 

 

 英語のスラングで『pansy(パンジー)』は女みたいな男・女々しい男・男性同性愛者を意味しする。また、男らしくない・勇気がないなどの意味で男性を侮辱するときにも使われるのだ。

 

 

 

 

 以上より、野郎に追われるのは勘弁だ。まだ冷酷なテロリストの方が良い。

 

「(英語)まぁ、どっちだとしても……二人に興味を持っているのは確かです。紹介がまだでしたね。こちらは河井教授で……」

「「(英語)心理学者……でしょう?」

 

俺とジョニー・マクレー(おっさん)は藤原さんが紹介する前に、相手を言い当てた。

 

「(英語)おぉ!!ご名答!!さて、殺気も話していた通りだ。犯人は誇大妄想で……おそらく分裂的性格の傾向がある。すなわち……」

「(英語)先生、難しい話は結構。俺とどんな関係があるんだ?」

 

心理学者の教授は面白そうに犯人の分析結果を離していた。しかし、専門用語が多すぎたためにジョニー・マクレー(おっさん)は話を止めさせ、単刀直入に聞いた。

 

「(英語)教授、俺も……日本語ならともかく、英語で心理学の専門用語を言われても分からないです。」

 

俺も申し訳なさそうに教授へ行った。

 

「(英語)そうだな……簡単に言うと、理由は分からんが『二人を深く恨んでおり、二人を踏み潰したい』と思っている。」

 

心理学の教授は人差し指をピンと立て、机の周りを歩きながら解説を始めた。

 

「そして、散々君達を(もてあそ)び……最後に二人を殺すだろう。」

 

そして俺達の正面までくると歩くのを止め、心理学の教授は俺達の目を見て真剣に答えた。

 

「(英語)ファンの上にサイコかよ……。‘‘かなめ’’と若干キャラが被るし……」

 

俺は大きな溜息を吐きながらソファーにもたれ掛かり、天井を見ながらぼやいた。

 

「(英語)残念だが……この手合いは本名で名乗ることが多い。誰が復讐しているか知らせたいからだ。だから‘‘サイモン’’も本名か、それに近い何かだろう。」

 

その教授の言葉を聞き、藤原さんの目と口は三日月状に歪んだ。

 

「(英語)‘‘サイモン’’は基本男の名前だそうだ。よかったじゃないか村田、これ以上ヒロインが増えないで。……ところで誰が本命なんだい?最近は‘‘かなめちゃん’’以外にも‘‘エル・ワトs……」

「(英語)黙ってください。藤原さんも色々やっているそうじゃないですか。」

 

俺が睨みながら言い返し、藤原さんは『参った』とばかりに肩をすくめた。

 

「(英語)全く、なんてサイコだ」

「(英語)それも爆弾に詳しいサイコだ。」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)がぼやいたと同時に、HS部隊第二中隊の田中曹長がそう言いながら敬礼して室内に入り、アタッシュケースを重そうに運ぶ。

 

「(英語)これを浅草の‘‘花〇しき’’で見つけた。」

 

田中さんは乱暴にアタッシュケースを机の上に置いた。藤原さんが文句を言うが……田中さんは何でもないようにアタッシュケースを開けた。中に入っていたのは‘‘赤で着色された液体’’と、‘‘透明な液体’’が入った2種類のケースがあった。

 

「(英語)2006年にイギリスで爆破テロの未遂事件があっただろ?英語で言うと……」

「(英語)『ロンドン旅客機爆破テロ未遂事件』だな」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)が助け舟を出した。

 

「(英語)そう、『ロンドン旅客機爆破テロ未遂事件』で使われる予定だった『TATP(過酸化アセトン)』を使った爆薬だ。原料はアセトン・過酸化水素水・硫酸を混ぜればすぐ完成。薬局でも売ってるものばかりだ。」

 

田中さんはそう言って‘‘実験用の注射器’’と‘‘ドライバー’’を取り出した。

 

 

 

 

 

数秒後、田中さんはドライバーをいじり、そして注射器で‘‘透明な液体’’を取り出した。

 

「(英語)簡単な構造だ。警察でも有名じゃないか?……片方だけなら何の問題もないただの液体だ。」

 

田中さんは注射器を押し、透明な液体を机の上に1滴ほどだした。そして近場に置いてあった紙束で思いっきり叩いたが……何の反応もなかった。

 

「(英語)だが、混ぜ合わせれば……」

 

田中さんはポケットからゼムクリップを取り出し、端を曲げて針金状に戻した。その針金(?)の先端で‘‘赤い液体’’をほんの少し付着させた後、机の上に出した‘‘透明な液体’’も付着させる。

 

「(英語)危ないぞ」

 

田中さんはそう言って部屋の隅に針金(?)を投げた。

 

  ズドーーーン!!

 

轟音が響き渡り、部屋の隅は軽くえぐられていた。俺とジョニー・マクレー(おっさん)は唖然とする。

 

「な、何をするんですか!?」

 

藤原さんが声を裏返して怒鳴ったが……相変わらず田中さんは涼しげな顔をしている。

 

「(英語)今のでわかったでしょう?単純な原料だが、TNT(トリニトロトルエン)よりも断然不安定だ。だからこそ素人には扱えない。」

 

田中さんはそう言ってそのかばんを片付け始めた。

 

「(英語)‘‘トラウズル値’’の……いや、TNT(トリニトロトルエン)の70~80%ほどの威力なのにこの爆発だ。それがこのバックに入っている分全部が爆発すれば……どうなるかわかるはずだ」

 

田中さんはカバンを片付け、机の上にキッチリと置いてため息をついた。

 

「(英語)それに混ぜ合わせる時に熱を発し、さらに爆発しやすくなる。そんな代物を秋葉原で、しかも二束三文で売っている部品で完全に混ざる機械を設計して運用できる奴はほとんどいない。」

「予想通りか……アセトンと過酸化水素水、硫酸が大量に盗まれていないか調べてくれ!!」

 

藤原さんは大声を上げ、隣の部屋の刑事たちに命令した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、藤原さんは俺達に振り返り、さっき投げ渡した書類の説明を始めた。

 

「(英語)書類の1ページ目を見てください。」

 

俺とジョニー・マクレー(おっさん)はその書類を見ると……そこには『ガタイがいい男』と『首に傷がある美女』の写真があった。

 

「(英語)男は『マシアス・タルゴ』、女は『カティア・タルゴ』。このハンガリー人の夫婦は以前‘‘南米の麻薬組織’’で働いていましたが組織が壊滅したため、今はフリーのテロリスト、契約で働いています。今雇っているのは『ピーター・クリーク』という組織。特にこの『マシアス・タルゴ』は爆薬物の専門家です」

「(英語)夫婦そろってテロリストかよ」

「(英語)……まぁ、そういう奴も居そうだよな。」

 

俺は‘‘アカ’’を叩くのが趣味の『戦闘狂の女性パイロット』を思い出した。そんな人間もいるんだ、夫婦でテロをやるのは不思議ではない。

 

 ……そう言えば、ハンナは今何をやってるんだろ?

 

いや、多少なりとも‘‘あいつの事’’を思い出したら厄介なことが起こりそうな気がする。目の前の問題に集中しよう。

 

 

 

 

『なんだ、私のことをそんなに思ってくれていたのか?ならばJapan(ヤーパン)に向かうとするか。』

 

 ……さっさとお帰りください。

 

 

 

 

 

 

 俺は思考を戻し、情報を整理し始めた。とりあえず、書類にある二人は『ジョン・F・ケネディ国際空港』で戦った麻薬組織の残党で、爆薬のプロらしい。

 

「(英語)3ページ目を見てください。彼は旧東ドイツの陸軍大佐、特殊部隊の隊長で、今は『ピーター・クリーク』という‘‘アカ’’のテロリスト集団の隊長をしています。彼のいた特殊部隊は『バルジ大作戦』で投入された部隊のようなもので、母国語の様に英語t……」

「(英語)あぁ、映画で見た。」

 

藤原さんの説明をジョニー・マクレー(おっさん)は鬱陶しそうに妨げた。

 

「(英語)とりあえず英語に仏語、そして日本語が堪能です。そして彼の名前は……『サイモン・ピーター・グルーバー』。」

「(英語)……そうか!!」

「(英語)……何のことだ?」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)は‘‘何か重大なことを思い出した’’ような驚愕の表情を浮かべるが……俺は何のことだかわからない。

 

「(英語)『サイモン・ピーター・グルーバー』は二人が初めて協力したLA(ロサンゼルス)の『ナカジマ・プラザ』の事件の首謀者、『ハンス・グルーバー』の兄だ。」

「「!?」」

 

 ……あぁ、思い出した。あんな事、忘れるわけがない。

 

 俺は藤原さんの言葉で……随分と昔の記憶を掘り出した。

 そう、『ハンス・グルーバー』俺が生まれて初めて‘‘人を殺した事件’’でジョニー・マクレー(おっさん)と初めて共闘した事件の首謀者だ。その首謀者『ハンス・グルーバー』の死に際の表情は今でも鮮明に覚えていr……多少記憶が(かす)れているせいで脳内編集をされているかもしれないが、今でも覚えている。

 

 ……なるほど、そいつの兄貴ってわけか。

 

確かに、俺とジョニー・マクレー(おっさん)を恨んでいそうだが……どこか腑に落ちない。

 あくまでも勘ではあるが……この『復讐』という傘で何かを隠そうとしているのではないだろうか。

 

「(英語)二人とも気が付いたようですね。その人物が今、残党共をまとめ上げて……」

「‘‘サイモン’’から電話です!!」

「逆探始めろ!!」

 

 藤原さんが命令を言ったのと同時に、俺とジョニー・マクレー(おっさん)は大きなため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(英語)‘‘サイモン’’か?」

 

電話機をスピーカーモードにし、藤原さんが‘‘苦虫を噛んだ’’ような表情で言った。この部屋には俺・ジョニー・マクレー(おっさん)・藤原さん・心理学の教授・田中さんがいる。

 

『(英語)あの二人は生き延びたようだな。確かに、あのようなヤンキー共にやられるとは思ってもいないが……多少はがっかりする。ところで3匹の鳩は今どうしている?』

「(英語)鳩だと?」

『(英語)僕の飼っていた3羽の鳩、ある日突然飛んでった。……白と黄色のオスと、黄色のメスがどうして逃げたのか、僕にも君にもわかない。』

「(英語)……ジョニー・マクレーさんと村田の事か?」

『(英語)それにもう一人、懐かしいパンツァージャケットを着た少女がいただろう?彼女と話させてくれないか?』

 

藤原さんは田中さんに視線で合図を送った。田中さんは頷き、静かに部屋を出た。

 そして1分もしないうちに、田中さんは『黒色軍服風制服の少女:西住まほ』を抱えて部屋に入ってきた。

 

『やぁ、君には悪いことをしたね。まさか私の計画に巻き込まれるとは……』

「計画がずさんすぎるんじゃないですか?こんな一般人が簡単に巻き込まれる計画を作って恥ずかしくないんですか?バカですか?」

 

西住みほは‘‘死んだ魚の目’’をしながら、無表情で言い切った。

 

 ……うわぁ、完全にグレてる。

 

『い、いや……しかし、今日は平日のはずだ。お嬢さん、学校をサボるのはどうかt……』

「問題をずらさないでください、‘‘参謀気取り’’さん。」

 

  ガチャ……!!!

 

‘‘サイモン’’の電話が切れてしまった。

 俺はヤレヤレと西住みほを見て……背筋が凍った。彼女からは一般人ではあり得ないほどの……‘‘歴戦の古参兵’’並みの殺気を放っていた。

 

 ……こ、こいつ!!一体何者なんだ!?

 

 彼女は『黒森峰女学院』高等部の一年生、で『戦車道の副隊長』を務めていたらしい。

 彼女は‘‘東京タワーでのカーチェイス’’で『大きな大会で大失敗して、ずっとそれで責められいた』と言っていた。一年生でレギュラーどころか副隊長だ、『ずっと責められていた』原因はその事への嫉妬も原因の一つであろう予想できる。しかし……ここまで殺気を出せる人間を、使わないなんてありえないだろう。

 

 

 

 

「西住みほさん、国民の命がかかっている。苛立つ気持ちは分かるが、彼を怒らせないで欲しい。」

「……そうですか、すいませんでした。」

 

‘‘仕事モード’’の藤原さんは『ドロリとした目』で西住みほを捕らえ、警告した。しかし、西住みほは『死んだ魚の目』で藤原さんを睨みつけて反抗する。

 

 ……本当にこいつ、一般人なのかよ!?そこまで‘‘戦車道’’はヤバいのか!?……ヤバいか。

 

俺は依然知り合った‘‘戦車道’’の人間たちを思い出した。

『知波単学園の突撃癖を持つ生徒達』、『聖グロリア―ナの紅茶中毒達(ダージリンとゆかいな仲間達)』、たった2校であるが、癖が強い変人奇人ばかりだった。ならば、『黒森峰女学院の戦車道』もこのようなヤバい奴らがいてもおかしくはない。

 以上の考察より……

 

 ……『黒森峰女学院』って、どんな殺伐とした学校なんだよ!?何、弱肉強食の世紀末な学園艦なの!?

 

イブキは大きな勘違いをした。

 

 

 

 

 

 

 

「(英語)逆探は?」

「逆探知、敵の妨害で特定できませんでした!!」

「(英語)……妨害されてダメだったようです。」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)がボソッというと、田中さんが訳して答えた。

 

「再びかけてくれますかね?」

 

俺は伸びをしながら‘‘心理学者の教授’’に尋ねた。

 

「あぁ、来るよ。賭けたっていい」

 

‘‘心理学者の教授’’は笑顔を浮かべ、俺の質問に答えた。

 

  プルルルル……

 

ちょうどその時、再び電話が鳴った。藤原さんがスピーカーモードにして再び出た。

 

「(英語)もしもし、‘‘サイモン’’か?彼女の言葉には責任は持てない。君も分かるだろう?」

『(英語)全く不愉快だ。こんなことは二度とないようにしたまえ。』

 

‘‘サイモン’’は『苛立ちを無理やり抑えた様な声』で再び話し出した。

 

『それで名前は?お嬢さん(フロイライン)?』

「人に名前を尋ねる時は、自分からですよね?」

 

俺と藤原さんは大きなため息をついた。ジョニー・マクレー(おっさん)も日本語は分からないが、西住みほの雰囲気と声色から何を言ったのか察したのだろう……頭を押さえ、ため息をついた。

 

 

『失礼。お嬢さん(フロイライン)には多少叱ってから解放しようと思っていたが……気が変わった。(英語)お嬢さん(フロイライン)にもゲームに参加してもらおう。』

「分かりました。札幌市街の公衆電話です!!」

「中国?香港!?」

「マカオ!?クソッ!!妨害されています!!」

 

‘‘逆探専門’’の人たちが必死になって‘‘サイモン’’を探すが……どうも‘‘サイモン’’の方が上手(うわて)だったようだ。

 

『(英語)さて、電話会社とのお遊びは終わったかな?では、そろそろゲームを再開しよう』

 

‘‘サイモン’’の言葉に、この部屋にいる人間全員(一人を除く)が凍り付いた。

 

 

 

『(英語)‘‘Simon says……村田維吹、ジョニー・マクレー、そしてお嬢さん(フロイライン)の三人は新宿御苑管理事務所近くの公衆電話へ行け。15分後にそこへ電話をかける’’

 

無論、警察・軍・武偵などを近くに寄越すな?電話に出られなければそっちの負け、ドカンだ。ルールは分かったかな?』

 

 

 

「(英語)あぁ、わかったよ!!‘‘子供遊び’’が好きなサイコだってことをな!!」

 

ジョニー・マクレー(おっさん)が苛立たしそうに大声で発した。

 

 ……二日酔いでまだ頭が痛いんだろうな。

 

俺はなんとなく理解した。

 

「(英語)まぁまぁ、落ち着け……」

「(英語)まぁそうだろ?俺達に‘‘恨み辛み’’があるんだろう?なら何でこんなことをする。

 

俺は思わずため息交じりに‘‘サイモン’’へ抗議する。俺の言葉に続き、ジョニー・マクレー(おっさん)も口が開く。

 

「(英語)全く、何をやった?スリか、万引きか……覗きでもやったか?男なら一対一で勝負しやがれ!!サシの勝負だ!!」

『(英語)まぁまぁ、ジョニー。まぁ落ち着けって……。』

「(英語)無関係な人間巻き込んどいて恥ずかしくねぇのか?軍人崩れ。」

 

俺もジョニー・マクレー(おっさん)に続き、‘‘サイモン’’を挑発する。

 

『(英語)…………‘‘崩れ’’になろうとも、‘‘誇り’’を捨てる気はなかった!!!あの中国人が!!

『……バキッ!!』

 

電話からくぐもった声と共に、何かが壊れたような音がした。俺・ジョニー・マクレー(おっさん)・藤原さんはその『早口でひどいドイツ訛りの小言』を聞き取ることができなかった。

 

『(英語)フー……フー……。とにかく15分後、新宿御苑管理事務所近くの公衆電話だ。ジョニー・マクレー、村田維吹、そしてお嬢さん(フロイライン)を行かせろ。ためらうようなら‘‘花や〇き’’で拾ったカバンを思い出せ』

 

  ガチャ!!ッー、ッー……

 

電話が切れてしまった。

 

 

 

 

 

 

「(英語)教授、分かったことはありますか?」

 

藤原さんはドロッとした雰囲気のまま、心理学者の教授に質問する。

 

「(英語)確実に分裂症の傾向がある。それにドイツ訛りの言葉をしゃべり、日本人ではないだろう。ただ……二人を確実に殺そうとしているが、他にも目的があるかもしれない。」

 

藤原さんはため息をついた後ポケットからシガリロを出し、口にくわえて火をつけた。その吐いた紫煙が部屋に広がっていく。

 

 ……ん?何時ものシガリロの香りじゃない。上品で重厚な……

 

俺は藤原さんの持つシガリロを見て気が付いた。今持っているシガリロは‘‘いつもの物’’よりも長く、色が濃かった。

 

「(英語)3人とも早く行ってください。時間が無い。」

 

藤原さんはそう言うと、今度は西住みほに顔を向けた。

 

「西住みほさん、犯人からあなたも行けとの命令だ。行ってもらいます。」

 

藤原さんは今まで以上にドロッとした雰囲気を出し、西住みほに命令した。

 

「……な、なんで私が巻き込まれなきゃいけないんですか?」

 

西住みほは一瞬怖気づいたようだが……すぐに我に戻り、藤原さんの目を見て反論した。

 

「君があんなに挑発したからだ。」

 

藤原さんはシガリロを咥えながら、無表情で淡々と言っていく。

 

「あまりこういう手は使いたくないのだが……君の挑発によって捜査を邪魔されたのも事実。適当な建前(たてまえ)で逮捕ができる。実家がそのことを知ったら悲しむだろう?」

 

藤原さんはそう言い切った後、美味そうに葉巻を吸い始めた。西住みほはその言葉を聞き、目をそらした。

 

「時間が無い。急いで行ってください。警察の方がそこまで送ってくれます。」

 

藤原さんがそう言うと、スーツ姿の人が部屋に入ってきた。

 

「急いでください。我々が送ります。」

 

そして、俺・ジョニー・マクレー(おっさん)・西住みほ・藤原さんは黒いセダンに乗せられ、新宿御苑へ向かわされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば藤原さん。浜松町の近くにボロ車(ビュート)を路駐したんですけど……大丈夫ですよね」

「あ~……うん。大丈夫じゃない?多分、きっと……」

 

イブキはまだ知らない。すでに『駐車違反』のステッカーが張られており、結局違反金を払うことになるなど……。

 

 

 




 新たなオリキャラ:劉&司馬鵬の登場です。もちろん、所属は藍幇(ランパン)。劉が藍幇側の責任者。司馬鵬は諸葛静幻に拾われたという設定です。


 過酸化アセトン……結構危険な爆薬&簡単に作れる(安定はしていないが)ので作る人が時々いるそうなのです。しかし、このSSは爆薬を作ることを推奨していません。
 作ってはいけないぞ!!酔っ払いとの約束だ!!(フリではありません。マジで止めてください)


 『西住みほがこんなことを言うはずがない?』……いえ、彼女はパニックに陥っているため、こんな言動をとっています。
 メチャクチャ怖い親にナイショで家出して、無賃乗船(犯罪)して、東京で命の危機に瀕したら……誰だってパニックになるでしょう?


 『黒森峰世紀末説』浮上していますが……ただのイブキの妄想です。




 Next Ibuki's HINT!! 「センチュリー」 



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