少年士官と緋弾のアリア   作:関東の酒飲

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 遅れに遅れたことをお詫び申し上げます。
 遅れた理由ですが……『学校生活が始まったから』と言うのは間接的な理由で、直接的な理由は『前話で‘‘一話あげてから事件が始まる’’と書いた』からです。はい。

 いや、『ギリギリ1話で収まるかな~』って思って書いていたら、余裕で2話分の文字数(正確には2.5話分)にまで膨れ上がってしまって……。

 全く、誰があんなこと書いたんでしょうね!!(自業自得)


 


まともな会議をしてくれ……

 さて、俺は車を見てドン引きする白鷺千聖(護衛対象)と、その他‘‘パスパレ’’のメンバーを無理やり乗せ、‘‘参加型演奏用施設(ライブ会場)CiRCLE’’へ向かった。

 

 

 

 

 なんでも、この‘‘CiRCLE’’で5バンド合同ライブをやるらしく、その会議をそこでやるらしい。

 

 ……あれ?こういう仕事って普通マネージャーがやるものじゃないか?

 

俺は疑問に思いつつ、‘‘CiRCLE’’の駐車場に車を停めた。

 

 

 

 

 ボロボロのビュートを駐車場に停め、ボンネットを開けてエンジンの状態を確認した後、一緒に‘‘CiRCLE’’へ入って行った。

 ‘‘CiRCLE’’の中は自分が予想していた小さなライブ会場とは全く違っていた。内装は白を強調させ、ポスターは2枚ほどしか張られていない。日光を淡く反射させる木の床は、隅々までキレイにされている。

 

 ……へぇ、ここまでキレイなライブ会場があるんだ。

 

 確かに、この施設は建設されてから結構立っているだろう。しかし、軍艦の甲板ほどではないが、適当な軍の施設ほどにはキレイにされていて、清潔感が半端ない。

 

 

 会議場はまだ準備が終わっていないらしい。なので暇な‘‘パスパレ’’メンバーは椅子に座り、適当に時間を潰していた。

 俺もポケットから本をだし、時間を潰そうとしたら……

 

「イブキさん!!‘‘ブシドー’’を教えてください!!」

 

‘‘パスパレ’’メンバーの一人、若宮イヴが目を輝かせながら俺に頼んできた。

 

 

 

 

 

 この『若宮イヴ』という少女、ハーフの帰国子女で日本の文化に人一倍の興味があるそうだ。特に‘‘武士道’’にたいして並々ならぬ興味を持っている。

 そして、この少女は‘‘羽沢珈琲店’’でバイトをしており、俺が強盗をボコボコにしたところ間近で見ている。そのせいで……俺のことを『現代に生きる武士』として見ているのだ。

 

 

 

 

 

 ……俺はそんな高潔な人間じゃないんだけどなぁ

 

俺は思わずため息をついた。自分は欲にまみれた俗物なのだ。若宮イヴちゃんの‘‘純粋な目’’を見て、罪悪感が湧き出でる。

 

「俺はそんな立派な人間じゃない。それに強いて言うなら‘‘武士’’と言うか‘‘忍者’’に近いかr……近いのか?」

 

 HS部隊にいた頃は、暗殺・破壊工作がメインだったのだが……陰に‘‘忍んで’’いたとは言えない。むしろ堂々と突撃して、力ずくで落としていた。

 

 ……あれ?やっていることは‘‘忍者’’よりなのに、やり方は‘‘武士’’よりだぞ?

 

そもそも海軍なのに陸戦って……などと、自分の進んだ道が理想と正反対に位置していることを知って、俺は落ち込んだ。

 

「これが‘‘ケンソン’’ですね!!ですがイブキさん、あの時の行為は‘‘ブシドー’’です!!」

 

若宮イヴちゃんの‘‘純粋な瞳’’をみて、余計にあの時の真意を言えなくなった。

 

 ……あの時、喫茶店を黙って去っていったのは、酒を飲みたかったからだ。そんなこと言えるかよ。

 

こんな情けない理由を若宮イヴ(純粋無垢)に伝えることは、俺にはできない。

 

「あ~……こう、すぐに身に付くものでもないし、学がないから単純な言葉で教えられないかr……」

「じゃぁ、剣術を教えてください!!」

「いや、ここでやったら危ないぞ!?」

 

会議場の準備が終わり、開場したときには……俺は若宮イヴちゃんに短刀(銃剣)の使い方を教えるという約束をさせられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは関係者以外立ち入り禁止なのですが。」

「……ん?」

 

 俺はパスパレに当てられた席の後ろの壁にもたれかかると、この前お世話になった‘‘花咲川高校の風紀委員’’がいた。

 

「……スイマセン、お名前は?」

「Roseliaの氷川 紗夜(ひかわ さよ)です。あなたはこの前転校してきた、‘‘村田 維吹’’さんですね?」

「……よく知ってますね」

 

氷川紗夜さんはその翡翠(ひすい)の瞳で俺を見てきた。

 

 ……正直に言っていい物なのだろうか

 

契約に『護衛の件を秘匿せよ』という文章も、暗喩する文章も無かった。しかし、ここで教えると……白鷺千聖(護衛対象)の学生生活に問題が出る恐れもある。

 

 

 

 ……さて、どうしたものか。

 

 マネージャーとか言って誤魔化しても、どうせすぐにボロが出る。氷川紗夜さんの‘‘賢そうな翡翠(ひすい)の瞳’’がそれを逃さないだろう。

 俺は白鷺千聖(護衛対象)をチラリとみると……白鷺千聖(護衛対象)は俺と氷川紗夜さんのやり取りをニヤニヤと見ていた。

 

 

 

 ……うん、別にバラしてもいいか。また持ち物検査やられた時に面倒事にならないだろうし。

 

「……パスパレに脅迫状が届いた。その護衛です。」

 

俺は姿勢を変えないまま、何でもないように、サラッと言った。

 実際は『白鷺千聖へ脅迫状が届いた』のだが……まぁ、彼女の所属するアイドルユニット:Pastel*Palettes(パスパレ)に脅迫状が届いたと言っても間違いではないだろう(実際の文章を見せて貰ってはいないが)。

 俺の言葉に、氷川さんと白鷺千聖(護衛対象)が固まった。

 

「俺が見た限り……氷川さんは聡明なようだ。この事を打ち明けた理由をあなたは理解できるはず」

「そ、そうでしたか……。という事は転校の件も……」

「ご想像にお任せします」

「お、お疲れ様です」

 

氷川さんは頭を押さえながら『Roselia』と書かれた席に座った。

 

 ……あぁ、なんか向こうも苦労しているんだな。

 

さて、俺のことを‘‘黒い笑顔’’で睨む白鷺千聖(お嬢様)に弁明でもするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

「……ち、千聖ちゃんがむくれている所、初めて見た。」

 

俺は適当な軽口で白鷺千聖(護衛対象)の文句を流した。その結果、いつも(形だけは)笑顔な白鷺千聖(護衛対象)の顔は子供の様に頬を膨らまし、不機嫌さを表現している。

 

 ……しっかし、まぁ……流石は元‘‘子役’’、今は‘‘女優’’。こんな事をしても‘‘見てくれは’’良い。

 

俺がため息を吐くと同時に、会場の扉がバーンと開かれた。そして、‘‘金髪の長髪少女’’や‘‘橙色の短髪少女’’、‘‘宝塚にいそうな少女’’が堂々と入ってきた。

 

 ……あれ?あの水色の髪って……松原さん?

 

『極東戦役:極東編 いつ撮ったんだよ……』で登場した松原さんも申し訳なさそうに、ピンク色のクマと一緒に入ってきた。

 

「へぇ~、最近は着ぐるみもバンドにいるのか。…………って、着ぐるみ!?

「……あ、やっぱりおかしいですよね。これって」

「しゃ、しゃべった!?」

 

 ……え?着ぐるみって喋らないんじゃないの!?というかバンドに‘‘着ぐるみ’’!?

 

俺は思わず蝦夷テレビの0uちゃん(ヤスケン)を思い出した。‘‘簡易0uちゃん’’や酒を飲んだ時以外、基本はしゃべらなかった。というか、そもそもバンドに‘‘着ぐるみ’’ってどういうことだ?

 

 俺が混乱している間に‘‘着ぐるみ(ミッシェルと言うらしい)’’は金髪少女に一言告げた後、部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 ……バンドに‘‘着ぐるみ’’って初めて聞いたぞ?えっと……こういう常識破りの事を‘‘ロック’’って言うのか?

 

『着ぐるみ=ロック(?)』という、新たな常識を知り……俺はうろたえていた。

 そんな時、さっき‘‘ミッシェル(?)と話していた金髪少女’’が不思議そうに俺を見てきた。

 

「あら、あなた初めて見るわね」

「は、はい。つい最近‘‘花咲川’’に転向してきた村田です。い、今の着ぐるみは……・」

 

 この金髪少女の名前は‘‘弦巻こころ’’。彼女は裕福な大富豪一家『弦巻家』の一人娘である。性格は無邪気で自由奔放・天衣無縫・好奇心旺盛で、何をしでかすか分からないそうだ。

 ついでに、『花咲川高校』と検索し、すぐに『弦巻こころ』という名前が出てきた。あだ名は‘‘花咲川の異空間’’。

 

「着ぐるみ?」

「あの熊みたいなものはなんd……」

「‘‘ミッシェル’’って言うのよ!!」

「あぁ……蝦夷テレビの‘‘0uちゃん’’みたいなマスコットの様な物ですか?」

 

俺は適当に流して‘‘花咲川の異空間’‘から脱出しようとした時、俺の‘‘0uちゃん’’と言う言葉に興味持ったのだろう。弦巻こころの瞳はキラキラさせ、俺を見てきた。

 

「‘‘0uちゃん’’って何かしら!?」

「蝦夷テレビの‘‘ミッシェル(?)’’の仲間みたいなものか?‘‘黄色で丸い’’、酒好きなマスコットだ」

「なんて素敵なのかしら!!ミッシェルの‘‘仲間’’がいるなんて!!」

 

 ……ん?なんか間違えてないか?

 

「‘‘0uちゃん’’は他には何ができるのかしら!!」

 

弦巻こころは好奇心旺盛な、キラキラとした純粋な瞳を俺に向けてきた。正直に言って、その瞳は心に刺さるからやめて欲しい。

 

「酒好きで、牛乳の一気飲みとか、(パーティー用の)バズーカ(大砲)撃ったり……ロックが好きみたいだぞ」

「そうなの!?大砲を!?」

 

 俺は早く彼女との会話を終えたいため、‘‘0uちゃん’’と言うよりは、‘‘中の人(ヤスケン)’’の特徴を上げた。

 その様子をジーッと見ていた、会場の扉の離隔に立っている‘‘サングラスとスーツの女性’’達が何か電話を急いでかけている。俺はその姿を見て、嫌な予感がするのだが……気のせいに違いない。

 

 

 

 

 

 

 イブキはまだ知らない。後日、この失言によって‘‘0uちゃん(ヤスケン)’’と俺に災難が降りそそぐことなど……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな!!今日は集まってくれてありがとう!!」

「以前からお話をさせて頂いていた『CiCLE合同ライブ』ですが、この(たび)皆さんの賛同を得ることが出来ました。なので本日第一回目の打ち合わせをしたいと思います」

 

『Poppin'Party』と書かれた席に座る‘‘猫耳少女’’と‘‘黒髪ショートカット少女’’の発言によって、会議が始まった。

 

 

 

ここ最近、なんでも最近は‘‘ガールズバンド’’と言う、‘‘女子だけのバンド’’が流行っているらしい。

 そこで、ここの地域で有名な‘‘ガールズバンド’’達が集まり、この『ライブハウス CiRCLE』で合同ライブを開催するそうだ。

 もちろん、‘‘ガールズバンド’’であるからには、この部屋にいるのは女子だけなので……

 

 

 

 

 ……全く、肩身が狭いったらありゃしない

 

俺は思わずため息をついた。

 この場にいる『Poppin' Party』・『Afterglow』・『Pastel*Palette』・『Roselia』・『ハロー、ハッピーワールド!』という5バンド全て、女性だけで構成されている。

 

 

 しかも、『Afterglow』というバンドには……2話前の『有能な人間は癖がある……』で人質になっていた‘‘黒髪赤メッシュ少女’’がいる。おそらく、助けた人物が俺であることを分かっているのだろう。その『Afterglow』のメンバー5人は俺をジーッと見ており、時々俺を見ながらヒソヒソと話し合っている。

 

 ……あぁ、早く帰りたい。

 

 帰るとなると、あの武偵高のビュート(ボロボロの車)を運転しなければならない。運転中に一瞬エンジンが止まり、カーエアコンからはカビた風が出て、時々何処からか異音がする車を運転したいだろうか。

 

 ……もう疲れた。

 

俺は再びため息をついた。

 『ため息をつけば幸運が逃げる』と言われるが……もし本当なら、今頃この人生全ての幸運が逃げ出しているはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなことを考えている俺を置いて、会議は進んでいく。

 

「あぁ~そうだ!!ライブする順番でも決めましょうか!!」

 

『Poppin' Party』の席に座る‘‘ポニーテールの少女’’が慌てて提案した。

 

 

 

「あたし達は自分たちの演奏ができればいいから順番なんて……」←『Afterglow』

 

「最後は私達に決まっているわ」←『Roselia』

 

「すみません、その日は仕事が入ってるので最後にしてもらえると……」←『Pastel*Palette』

 

「ラストにあたし達の歌で、ドーンッてリボンのシャワーを撃ったら、みんな笑顔になれると思うの!!」←『ハロー、ハッピーワールド!』

 

「最後に全員・25人で、‘‘きらきら星’’歌いたい!!」←『Poppin' Party』

 

「……やっぱり、あたし達も最後がいいかな」←『Afterglow』

 

 

 ……こんな個性的な5つのバンドをまとめるって大変だな

 

俺は‘‘我関せず’’とばかりに、‘‘四次元倉庫’’から水筒を出して水を飲んだ。

 

「あの……そこで立っているあなたはどう思いますか?」

 

そんな俺を、『Poppin' Party』の席に座っている‘‘金髪ツインテールの巨乳少女’’は目ざとく見つけて尋ねてきた。

 

「すいません。自分は音楽に(うと)いのでよくわかりません」

 

俺はシレッと答え、再び水を飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

「……どうしよう沙綾ちゃん!!」」

「じゃぁ、タイトル!!タイトル決めましょう!!」

 

『Poppin' Party』の席に座る‘‘ポニーテール少女’’が再び提案するが……順番もまともに決められないのだから、さらに重要なタイトルなど決められるはずがない。

 大いに荒れる会場を尻目に、俺は大きなあくびをした。

 

 ……次の予定はなんだ?

 

俺は懐から予定表を取り出した。

 その予定表によると、次は『Pastel*Palettes(パスパレ)全員 羽田空港で取材』と書いてあった。

 

 

 何でも、地方テレビの番組で‘‘東京観光’’の番組をやっているそうだ。その今回のゲストがPastel*Palettes(パスパレ)らしい。

 『初めてのテレビ撮影、緊張する~!!』と、‘‘ピンク髪のPastel*Palettes(パスパレ)のボーカル:丸山彩’’が嬉しそうに話していたのを思い出した。

 

 ……あの白鷺千聖(護衛対象)も、丸山彩ぐらい純粋だったらよかったn……

 

  ドスッ!!!

 

俺の顔の右、5センチほど離れた場所にボールペンが突き刺さった。俺は思わず前を見ると、白鷺千聖(護衛対象)がギロリと俺を睨んでいた。

 

 ……白鷺千聖(お前)より、丸山彩や若宮イヴの方が純粋なのは事実だr……

 

今度は顔の左、5センチ以内の場所に鉛筆が突き刺さった。ボールペンはともかく、鉛筆は壁に突き刺さるほどの強度を持たないはずなのだが……。

 

 

 

 これ以上面倒事にさせないため、俺は‘‘降参だ’’とばかりに両手を上げた。白鷺千聖(護衛対象)はその結果に満足したのか、見惚れるような美しい笑顔をして混沌とした会議に戻る。

 

 

 

 ……それにしても、この‘‘羽田空港’’。なんか嫌な予感がするんだよな。

 

俺は予定表を見ながらそう思った。

 何故だかわからないが……凄く嫌な予感がする。こう、『ナカジマ・プラザ』や『ジョン・F・ケネディ国際空港』の時の様な嫌な予感がする。

 

 ……まさか、あのジョニー・マクレー(おっさん)が日本に来ないだろう。なら、誰が来る?

 

 とりあえず、一番困るのは‘‘シャーロック’’に‘‘ハンナ・ウルリッヒ・ルーデル’’だが……アイツらが簡単に日本に来れるか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな風に思考を巡らせていた時だった。

 

「みんな……」

香澄(かすみ)……」

 

『Poppin'Party』と書かれた席に座る‘‘猫耳少女’’が大声発し、全員の注目を集めた。

 彼女は大物政治家でも出来ないような重厚なオーラを(まと)っている。

 

 ……なんだ!?こいつ!?

 

俺は思わず身構えた。会議に参加していた他のメンバーたちもその少女に注目する。

 『Poppin'Party』と書かれた席に座る‘‘猫耳少女’’は右手を後頭部、左手を腹に当てた。

 

「わたし……お腹すいたかも」

「じゃぁ、ファミレス行く?」

「いいねぇ~」

 

少女の言葉に反応し、この会議場にいるほぼ全員が席を立ち、会場を出ていこうとした。

 

「‘‘会議は踊る、されど進まず’’……か。普通の高校生はこういう会議が普通なのか?」

 

俺はため息をつきながら呟いた。

 俺は一応‘‘士官の端くれ’’なので、時々会議に出席するのだが……ここまで‘‘ひどい会議’’は一度もなかった。まぁ、出席者の平均年齢が30~50歳という事もあるだろうが。

 

……さて、移動開始まであと20分。それまでに終わるだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、ファミレスで打ち合わせはもちろん行われず、のんびりとした時間が過ぎた。

 出発時間が迫ったので、俺はPastel*Palettes(パスパレ)のメンバー5人を無理やり‘‘ボロボロのビュート’’に詰め込み、次の場所の‘‘羽田空港’’へ向かった。

(ビュートは5人乗りなので、もちろん定員オーバー)

 

 

 

 

「では‘‘東京ぶらり旅’’!!今回のゲストはアイドルユニット‘‘Pastel*Palettes’’の皆さんです!!」

「「「「「こんにちはー!!」」」」」

 

 俺達は今、羽田空港の国際線到着ロビーにいた。何でも、今回は『日本に戻ってきて最初に寄りたい店』をテーマに取材をするらしい。

 

 俺はこのロケを撮るカメラの後ろにいた。俺はボケーッと到着ロビーへ入ってくる外国人や日本人を見ていた。

 

 ……この嫌な予感、ただの勘違いだといいんだが

 

そう思っていると……‘‘180センチほどの身長を持つ、スキンヘッドの白人の男性’’が到着ロビーに入ってきた。そして……その男と目が合った。

 

「……はぁ!?なんでいるんだよ!?」

 

俺は思わず叫んだ。このロケの関係者全員が俺を見てくるが……そんなことを気に掛けないほどの衝撃が俺を襲ってくる。

 

 

 

 あの‘‘スキンヘッドの白人’’はジョニー・マクレー(おっさん)だ。俺の‘‘相棒’’であり、‘‘疫病神’’でもある。

 ジョニー・マクレー(おっさん)も俺のことを‘‘相棒or疫病神’’と思っているので、俺に会わないように日本へは来ないと思っていた。

 

 

 

 ……なんで、あんな‘‘不幸を呼ぶ男’’がここにいるんだ!!

 

ジョニー・マクレー(おっさん)も俺を見つけたのだろう、苦々しい顔つきになった。

 

 

 

「(英語)ジョニー、どうしたの?……あらイブキ君じゃない!!」

 

隣にいる‘‘ジョニー・マクレー(おっさん)の奥さん:マリーさん’’も俺を見つけ、大きく手を振ってきた。

 

「(英語)イブキ君!!また大きくなったわね!!夏以来かしら!!」

 

マリーさんは駆け寄ってくると、俺を我が子の様に抱きしめた。

 俺は‘‘母親の愛’’に久方ぶりに触れ合ったため、受け入れそうになり……慌てて突き放した。

 

「(英語)何するんですか!?」

「(英語)私にとって、イブキ君は‘‘ヒーロー’’で‘‘息子’’よ?」

 

マリーさんは俺の手を振り払い、再び抱きしめた。正直に言って……恥ずかしいからやめて欲しい。

 

「(英語)マリー、こいつも男だ。そろそろ止めておけ」

「(英語)何?この子は私にとって‘‘ルーシー’’や‘‘ジャック’’の弟よ?」

 

 ……恥ずかしいからそろそろやめて欲しい。

 

俺は必死になってマリーさんの抱擁(ほうよう)から抜け出した。    

 Pastel*Palettes(パスパレ)のメンバー5人が俺を注目しているのがよくわかる。

 

「(英語)なんでジョニー・マクレー(おっさん)が日本にいるんだよ!!」

「(英語)うるっせぇなぁ……。偶然日本行きのチケットが当たったんだよ!!俺も来たくなかったよクソッタレ!!」

「(英語)……………で、どこに泊まるんだ?お願いだから遠くに行ってくれ。」

「(英語)‘‘アクア・エデン’’のホテルだ。」

 

 

 

 アクア・エデンとは……身分証が無いとは入れない、出入りがヤケに厳しい人工島だ。そして、日本でカジノや風俗が許される数少ない場所の一つだ。

 

 

 ……あ、淡路さんが『アクア・エデンを沈めたくない』って言っていた理由ってこれだったのか!!

 

『極東戦役:極東編 金は天下の回りもの……』で、『アレクサンドリア』のマスター:淡路萌香が言っていた言葉を思い出した。その時だった。

 

「なんであんた達が私の近くに来るのよ!!なんで……なんであの人を殺した二人が!!!!

 

白鷺千聖(護衛対象)は俺とジョニー・マクレー(おっさん)を見て、情緒不安定になり、持っている物を俺達に向かって投げつけ始めた。

 

 ……なんだ?どうしたよ!?

 

 俺は急いで白鷺千聖(護衛対象)を拘束し、気絶させた。

 

「「「「「…………」」」」」

 

空港のロビーには重苦しい空気が充満する。

 

「……白鷺千聖さんは体調がすぐれない様です。」

「……は、はい!!ロケ中止!!中止!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、俺はPastel*Palettes(パスパレ)の4人を家まで送った。今は、ビュートの車内は助手席で寝て(気絶して)いる白鷺千聖(護衛対象)と俺だけだ。

 

 ……恨まれるのは仕事柄覚悟していたが、実際に会うと精神的に来るな。

 

俺はため息をついた。

 

 

 

 俺は白鷺千聖(護衛対象)を気絶させた後、急いで理子に連絡し、彼女のことについて調べて貰った。

 その結果……家族も妹もピンピンに生きているようだ。しかし、彼女が‘‘子役’’を演じる初期から世話になっていたディレクター:斎藤浩二(さいとうこうじ)が死んでいた。

 そのディレクターは‘‘ウィンザー114便’’に搭乗していたそうだ。‘‘ウィンザー114便’’は、『ジョン・F・ケネディ国際空港での事件』で墜落し、乗員乗客約200名は全員死亡した。

 

 

 

 ……その『ジョン・F・ケネディ国際空港での事件』を解決したのは俺とジョニー・マクレー(おっさん)だ。俺達を恨む理由は分からなくもない。

 

俺は大きなため息をついた。

 あの時、テロリストに反抗したのは『空港を管轄するハゲ署長』だ。確かに俺とジョニー・マクレー(おっさん)も反抗したが、‘‘ウィンザー114便’’の墜落は『空港を管轄するハゲ署長』への見せしめだ。

 

 ……責任はあの‘‘ハゲ所長’’に(なす)り付けることはできるが、確かに俺も責任を背負っている。

 

  プスン……プスン……

 

そんな事を考えていた時だった。‘‘ボロボロのビュート’’がボンネットから白煙を吹き出し始めた。俺は慌ててスピードを緩め、ブレーキを停めた。

 俺はボンネットを開けて中を見ると……ウォッシャー液の(くだ)が割れ、そこから漏れ出た液がエンジンによって蒸発していたようだ。

 

 ……全く!!心配させやがって、このボロ車!!

 

俺はそう思いながら横を向くと、そこは霊園だった。ここの霊園には俺の親父・お袋が眠っている。全くなんて巡り合わせだ。

 

 ……俺はあの時、最善を尽くした。結果的には親父とお袋を亡くし、沢山の人達が死んだけど……俺とジョニー・マクレー(おっさん)は最善を尽くしたはずだ!!!

 

「なぁ、そうだろう?……そうじゃないと困るんだよ、チクショウめ」

 

俺は爪を手の平に食い込ませ、ビュートのタイヤを蹴飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  バコッ!!カランカラン……

 

「……」

 

俺がタイヤを蹴ったせいでホイールキャップが外れてしまった。

 

 ……このボロ車!!

 

俺はため息をつきながらホイールキャップを取り付け、運転席に戻りエンジンを掛けようとした。

 

  キュルキュルキュル……

 

「ふざけんな!!動けよボロ車!!いい加減にしろよ!!」

 

  キュルキュルキュル……

 

 

 

 

 10分後

 

「お願いだから、機嫌直して……ゴメン、悪かったって」

 

  キュルキュル……ドゥルン!!ドッドッドッド……

 

 ……俺が謝った瞬間、すぐにエンジンが動いたぞ!?どうなってやがるんだこのボロ車!?

 

俺はこのボロ車が怖くなった。そもそも曰く付きの車だ。どんなことが起こってもおかしくはない。

 

  ドッドッ……プスン、プスン

 

「悪かったから、‘‘ボロ車’’と言ってスイマセンデシタ!!」

 

  ドッドッドッド……

 

さっきまで不調だったエンジンは、いきなり滑らかに動き出した。そして、夕焼けの光を自慢げに反射させ、ビュートは東京を走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 『0uちゃん、弦巻こころに目をつけられる』の回。この後日談を閑話にいれようと思ってます。


 この会議は『ガルパピコ 7話』をモチーフにしています。


 ジョニー・マクレーは『ジョン・マクレーン』をモデル(と言うかほぼそのまま)の人物。
 この男が日本に上陸という事は……


 今回は英語と日本語が入り混じるので、英語の場合は
「(英語)……」
となります。


 白鷺千聖がイブキを嫌いだった理由がこれです。『あの人を見殺しにして置いて、何ちやほやされているのよ!!」と言う怒りはあったはずです。
 それに、当時は白鷺千聖も小さかった(と言っても、小学6年だが)ため、事実を一部誤認しています。


  Next Ibuki's HINT!! 「ボロ車とじゃじゃ馬 」

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