さて、我が部屋に大量の住民が住むことになった翌日。一般授業が終わった後、理子が教室に来た。
「たっだいまぁー!!」
いつも通りのフリフリ制服で現れた理子にわぁーー!!とクラスの皆はすごく盛り上がった。理子=武偵殺しということをみんな知らないからだ。武偵少年法によって未成年の武偵が犯した犯罪の情報は公開されない。全く、完全に悪法だろ。ついでにクラスの認識では4月からアメリカで依頼を受けて、昨日帰ってきたということになっているようだ。
「みんなー!!おっひさしぶりー!!りこりんが帰ってきたよー!!」
理子は教壇にあがりくるっと一回転のあと決めポーズ、するとAクラスの一部が理子に集まる。ついでに腕を振りながら「りこりん!!りこりん!!」と言っているやつまで・・・。
「みんな寂しかったかなー?」
( ゚∀゚)o彡゜りこりん!りこりん!
・・・帰ろう。このクラスより部屋のほうが落ち着く。
りこりん事件の翌日、中間テストが行われた。午前中にやった一般科目については前世からやっているし楽勝であった。そして昼休みを挟み、午後はスポーツテストに。やることは普通の50メートル走や反復横跳びなどのテストだけど・・・試験監督やっている先生たちがおかしい。
香港マフィアの愛娘、「死ねや」が口癖、試験監督中もM500と斬艦刀を振り回す蘭豹先生。この時間もタバコのようなものを吸ってラリっている綴先生。背後に立ったからと言って、生徒を手刀で骨折させた南郷先生。声は聞こえているけど姿が見えないチャン・ウー先生。・・・こいつらと比較すれば、教師をやっている師匠、エジソン、ベオウルフが普通に見えてくるから驚きだ。
「イブキ、この成績はどういう事だ。手を抜いているだろう。」
師匠が俺のところに来て成績について尋ねてきた。
「イヤイヤ、魔力使ったら不味いくらいはわかりますよ。それにある程度手抜かないと部活の勧誘があるんですよ。」
「それにしてもこの成績はなかろう。最近修行をしていなかったせいか、何度も病院へ入院していると聞いている。たるんでいるのではないか?」
なんか嫌な空気に・・・。するとベオウルフがこっちに来た。
「最近、イブキに構ってもらえないからって機嫌が悪いんだ。たまには修行に付き合ってやれよ。あと、俺もたまには殴り合いしようや。ここの生徒は教えがいはあるっちゃあるが、楽しめる奴はほとんどいなくてよ。」
そう言った瞬間、ベオウルフに槍が飛来・・・。
「アブねぇ!!じゃあな!!」
流石は叙事詩『ベオウルフ』の主人公、何とか槍を躱し逃げていった。
「久しくやっていなかったからな、趣向を凝らしてあれこれ用意してみた故、一歩間違えば命は無いと思え。」
俺は師匠に首根っこをつかまれた。
「ちょっと待って、顔赤くして言うセリフじゃないですよ!?ちょ、エル、ネロ助けて!!」
そこに偶々通りかかったエルとネロに助けを求めたが・・・。
「そうだね、最近入院も多かったし鍛えなおしたほうがいいんじゃないかな。」
「俗に言う‘‘でぇと’’というものではないのか?」
ネロさん、なんでそう思いますか!?
「さて、行くか。最近新しい女もできたしな。」
「いや!?それ関係ありませんよね!?」
修行が終わり何とか部屋に帰ってきたとき、エルがニコニコしながら俺に近づいてきた。
「イブキ、一緒にこの任務を受けてほしいんだ。」
そう言って紙を俺に差し出した。
「ん?コックと庭師の任務?」
紙にはコックと庭師の募集があった。
「うん、二週間程度で2単位だね。」
「なんで俺なの?コックならリサのほうが向いているんj・・・」
「僕と一緒なのは嫌かい?」
そう言ってエルは瞳孔が開いた。
「ま、待って。ほら、俺はエルと一緒にやりたいけど料理そこまでうまくないし、ね?」
「大丈夫さ。条件は肉の串焼きができることだけだそうだよ。」
・・・確かに単純な料理だけどさ、単純だからこそ難しい物があるんだぞ。それでいいのかよ。
「わかった。いつからやればいいんだ?」
「四日後からだって。衣服は向こうで支給されるそうだよ。じゃぁ、僕は申請してくるね。」
そう言ってエルは瞳孔を戻し、ニコニコしながら部屋を出ていった。だいぶ嬉しがっているな。
次の日、おれは救護科棟の近くにいた。矢常呂先生の定期健診があるためだ。俺はあの誤診の後、一ヵ月に一回定期検診を受けるよう矢常呂先生に言われた。先生曰く
「サボったらスカサハ先生か、ベオウルフ先生に連れてきてもらうから。」
おかげでサボれなくなりました。ついでだ、リサも救護科に入ったから、リサの様子でも見ようかな~なんて歩いていると
ガシャーン!!
という音がした。俺は走って音のしたほうへ行くと、割れた窓ガラスと、茂みに隠されている武藤のバイクを見つけた。武藤がのぞきに失敗した?それにしては銃声が聞こえないけど・・・。俺は不思議に思い、部屋を覗くと・・・めちゃくちゃ大きな狼がこっちに突っ込んできた。
「は?ってま、グハッ!!!!!!」
体重が100キロを優に超える狼が俺を跳ね飛ばし、どっかへ逃げてしまった。チクショウ胸が特に痛い・・・肋骨でも折ったか?
「追いなさいキンジ!!先生はあたしたちが手当てするわ!!」
「使えキンジ!!そこの茂みの向こうにある!!」
そういう話声が聞こえた後、キンジが窓から飛び出してバイクにキーを差しこみ、キックスターターでエンジンをかけ始めた。
「よぉ、キンジ。狼なら向こうへ行ったぞ。」
「わかった・・・ってイブキ!?お前何してるんだ!?」
「あぁ、ちょっと狼に轢かれてな。全くついてねぇ。」
そんな話をしていたらレキが下着姿でバイクに二人乗りをしてきた。
「レキ!?戻れ!!防弾制服を着ろ!!」
キンジが焦ったようにレキに言う。流石に下着姿のレキと二人乗りとか噂になったら最悪だよな。
「あなたでは、あの狼を探せない。」
まぁ、レキの目じゃないときついものがあるかもしれない。
「おいレキ、これ着ていけ!!」
俺は制服の上着をレキに投げ渡した。
「ありがとうございます。」
そう言ってレキは俺の制服に腕を通した。
「しっかり捕まってろよ!!」
キンジがそう言った後、バイクは加速し始めた。まぁ、あの二人ならスタジオ・シブリの犬神みたいな狼をちゃんと処分してくれるだろう。・・・うん、とりあえず検診と、治療を受けに行くか。
矢常呂先生の診断の結果、あばら三本の骨折と打撲だそうだ。今日明日と入院すれば問題はないらしい。・・・まぁ、ガトリングよりはよかったと思おう。そうじゃないとやってらんねぇ。
俺は診断の後、衛生科と救護科の生徒達十数人によって速攻ベッドに縛られた。俺は病院抜け出しの常習犯であるための措置であるらしい。おい、俺が何かしたか?
リサの説得のおかげでベッドに鎖と手錠、足枷での固定はなくなり、病室(牢屋の間違いでは?)に軟禁になった。
次の日、リサから朝食と弁当を扉についている小さな窓から届けられた。朝食は御飯、納豆、サケの切り身、漬物、味噌汁だった。相変わらずうまい飯を作ってくれる・・・。
昼のチャイムが聞こえ、楽しみの弁当でも開けようとした時だった。
「抜け出しの常習犯だから牢屋に入れられているのか。情けないな、イブキ。」
俺は声がした方向を見ると、そこには小さな監視用の窓からこっちを覗いているジャンヌがいた。
「よぉ、学生のコスプレか?やけに似合っているじゃないか。」
ジャンヌは東京武偵高の制服を着ていた。まぁ、司法取引だろう。だけど、こいつをからかうと面白い。
「うるさい。私とて恥ずかしいのだぞ?・・・未婚の乙女はみだりに足を出すものでない。」
ジャンヌは顔を赤くし、そっぽを向きながら言った。
「俺は似合っていると思うけどなぁ。そういえばフリフリした奴がいいんだっけ?それなら理子かリサに言えば何とかなるだろ。今度頼むといいぞ。イ・ウーでは制服は必要ないよな。」
ジャンヌはキレイな銀髪にほりの深い顔、すらっとした背、これだけの素材があれば何でも似合うだろうに。
「ほぉ、イ・ウーのことを知りたいか?」
ここに来るってことは、イ・ウー関係のことを教えようとしている、それぐらいしか考えられんのだけどな。まぁ、乗ってやるか。
「まぁな。ある程度は知ってるが、情報源が信用できなくてな。」
この世界は、歴史も変わっているし、他作品ともクロスしている。それに記憶もあいまいだしな。
「イ・ウーは知っているだけで身に危険が及ぶ、国家機密だからな。計画を破綻させ、捕まえ、しかもファーストキスさえ奪った貴様に情報を与え、破滅させてやりたいとは思うが、何もかも話すわけにはいかんのだ。」
「おい、ファーストキスの件は事故だ。ノーカンだ。・・・司法取引に、情報次第でお前を狙うやつもいるんだろ?言えないことは言わなくていいぞ。」
こいつ、まだ根に持ってやがる・・・。
「まぁ、答えられる範囲で答えてくれ。イ・ウーは伊号潜水艦の‘‘伊’’とUボート‘‘U’’がもとだよな。」
「そうだ。」
「イ・ウーではお互いが生徒であり先生だ。互いが得意なものを教えあう。例えばお前は作戦立案を、理子が変装術を・・・ってとこか?」
「その作戦立案もお前のせいで破綻してるがな。」
ここまでは合っているか。
「若干、イ・ウーからは話がそれるが、理子はイ・ウーのナンバー2のブラドによって監禁されていた。あいつはブラドから自由を得るために強くなろうとした。合っているか?」
すると、ジャンヌは驚いた顔をした。
「イブキ、貴様よく知っているな。そうだ、リュパン家は理子の両親が死んだあと没落した。理子は‘‘養子にとる’’と騙されルーマニアにわたり、長い間監禁されたのだ。」
良かった、俺の知っている通りか。ブラドが人間に擬態できる能力とか持っているって記憶にあるけど、それ以上はジャンヌも言えないか。
「ジャンヌ、ありがとな。情報が合っててほっとしたよ。」
「そういえば、理子を護送車から脱走をさせた後、寝言で‘‘ゴメンナサイ・・・イブキ・・・ゴメンナサイ’’と散々言っていたが、何やった?」
「いや、俺やられたほうなんですけど・・・。って、テメェか!!護送車襲撃した奴!!俺が瀕死になってまで捕まえたのに逃がしやがって!!俺の努力と苦労を返しやがれ!!てやんでぇ!!」
そういうと、ジャンヌは俺を馬鹿にしたような目で見た。
「よかったではないか、責任も取らずに乙女のファーストキスを奪ったのだ。まだ足りないくらいだろう?」
この野郎・・・。俺は監視窓に手を入れ、その手でジャンヌを顎をクイッと持ち上げた。
「なら、俺がファーストキスの責任を取るって言ったらどうする、ジャンヌ?」
そう言ったら、ジャンヌは顔が再び赤くなった。少し経った後、ジャンヌは俺の手を払い、窓から拳銃を入れて発砲しだした。
ダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダンダン
「ふ、ふざけているのか貴様は!!」
「ちょっと待て、俺丸腰、丸腰だぞ!!」
防弾制服を着ていたおかげで、貫通はしなかったからよかった。
「貴様のような醜男などいらん!!」
そう言ってジャンヌは怒って帰って行ってしまった。あんな歯が総入れ歯になりそうなセリフは俺に合わないけどさ・・・醜男はないよ。俺だって傷つくんだぞ。
「あぁーーーーー!!!!弁当が!!!!」
ジャンヌの銃撃のせいで、弁当が見るも無残な形になってしまった。ただ、幸運なことに料理があまり床にこぼれていないのが救いか・・・。ただ中身はシェイクされた状態になっていて、何が入っていたのが区別ができない状態になっていた。そんな状態でもおいしかったです。
ジャンヌに地下倉庫で一方的に25ミリを撃ったイブキは、病室でジャンヌに一方的に撃たれる。