仮面ライダーARTHUR 王の名を持つ仮面の騎士 作:名もなきA・弐
それでは、どうぞ。
デッドアライブの襲撃後、場所を移した三人はシップの動向について考えていた。
アライブが「邪魔はさせない」と言っていたことからも恐らく、融合者の正体が確定だろう。
そして……。
「ふーっ、ふーっ!ゲホッ、ゲッホ!!」
「ごめん、門矢君。いや本当にごめん」
風邪を引きながらも自分の推理を手帳でまとめた戒のおかげで完全にシップ・エラーの動機や正体も明らかになった。
ちなみに門矢家に来た時点で咳と高熱と戦いながらも手帳に全てをまとめていたため、忌夢が本気で申し訳ない目をしていたのは余談である。
閑話休題……部屋へと戻った戒やそれの看病しようとして親バカを発揮する美緒を止める琴音の様子を無視して、空良は一呼吸おいて話を始める。
「エラーの目的は分かった。絶対に止めるぞ、二人とも」
その言葉に、忌夢と雅緋も頷くのであった。
闇に染まりつつあるアパートの一室で、青年『浦波吹雪』は一枚のポスターに心を奪われていた。
「ああ……何て美しいんだっ、あいつらは本当にバカな奴らだ」
『くかかか……』
恍惚とした表情で豪華客船のポスターに頬ずりをする様子は明らかに常軌を逸しており、身も心も完全にエラーを起こしている。
その様子を楽しそうに見ているのはエラーの人格がインストールされているネオエラーカセット……自信のコレクションを売却されそうになった彼は衝動的にメンバーの一人を手に掛けてしまい、その後はデッド&アライブに渡されたエラーカセットで残りのメンバーを口封じに襲撃していたのだ。
「お楽しみのところ失礼するよぉ」
そんな彼に呼び掛けたのは彼に力を与えた張本人であるデッド。
楽しげな様子の彼に浦波は慌てて振り向いて頭を下げるが、気にすることなくデッドはゴルフボールサイズの青い透明な物体を二つほど放り投げる。
「うわっ!?これは、宝石……?」
『そうは言わねぇ。そいつは水属性のマナを結晶化させた物さ』
その言葉をアライブが否定してから訂正する。
聞けばシップは水辺の戦闘では全ての能力にブーストを掛けることが可能となることが観測者であるミケネの報告で分かっており、マナの結晶を制作したのである。
「それは君の能力を上昇させるのに最適でねぇ、戦闘に入ったら試しにそれを噛み砕くと良い』
「効果は保障する」と、それだけを言ってからデッド&アライブはその場から姿を消した。
しばらくは結晶を見つめていたが、やがて意を決した浦波はネオエラーカセットを掴んでボタンを押す。
【EVOLUTION! LOADING…GAME START…】
白を基調とした豪華客船をモチーフにした怪人『シップ・エラー』へと融合するとすぐさま青い結晶を口に放り込んで噛み砕く。
瞬間、水属性のマナがエラーの身体に流れ込み、力が湧き上がってくるのが分かる。
『出発、進行……!!』
心底楽しそうに、自身の願望を満たすためにシップは勢いよく外へと飛び出した。
「見つけたぞ!大人しくするんだっ!!」
車の間を掻い潜りながらカーブを強引に曲がって巨大な船へと変貌したシップを空良は追跡する。
しかし、船の中からポーントルーパーが放出されると彼目掛けて襲い掛かるが、それを阻止したのは雅緋と忌夢の二人。
空良がシップのコースを検索し、目当てのポイントに彼女たちが待機していたのだ。
邪魔者がいなくなった空良がスピードを上げる中、とてつもないスピードで首都高を我が物顔で泳ぐそれは周囲の車に気にすることなく、恍惚とした声色で侵攻を開始する。
『僕が船…世界一の船は僕自身なんだあああああああああああっっ!!!!』
完全に発狂しているシップはデッドアライブから与えられた水属性のマナの塊を噛み砕き、船頭にあるモノアイを光らせながら能力をブーストさせる。
交渉の余地がないことを理解した空良は器用にギアルドライバーを腰にセットする。
【SOCIAL!!】
「変身!」
真横にマシンユニヴァースを並ぶように走行しながら、空良が腹部に巻いていたギアルドライバーのダイヤルを回して変身する。
【RIDE UP! SOCIAL! タンクを動かせLet's NAVIGATION!!】
トランスギアを回転させてタンクモードのギアルに変身すると、両脚のキャタピラに魔力を総動員させて火花を散らしながら追跡を再び始める。
元々彼のプロテクターがスーパーマシンだったのもあってか限界を超えた速度を更に加速させて距離を詰めたギアルは、シップの巨体を狙撃する。
『船旅をプレゼントしてあげるよ。死後の世界への船旅だけどねぇっ!!』
執拗な追跡を続ける彼に業を煮やしたのか、エラーの人格でそう叫んだシップは砲塔を出現させるとそのまま強烈な砲撃を開始する。
しかし、ギアルは冷静にその攻撃を躱して更に近づくとタンクモードによる強烈なタックルを叩き込む。
傷こそつかなかったが、怒りを覚えたシップはそのままゆっくりと宙へと上がっていく。
「飛んだっ!?」
『撃てーーーーーーーーーっっ!!!』
驚くギアルだったが、海面を進むように空を飛んだシップはそのまま下にいる標的に向けて砲撃を再開する。
慌ててキャタピラの稼働させて攻撃を躱すが最後に放った一撃が命中し、黒々とした煙が上がる。
『はは……っっ!!?』
【RIDE UP! SOCIAL! 検索しながらFLY HIGH!!】
煙の向こうから見えるシルエットにシップの笑い声が止まる。
ギアルのボディは飛行に特化した形態……フライヤーモードへと切り替わっており、ブースターを駆使してシップと並ぶ。
『人が飛ぶなんてどういうことだっ!?』
「君が人に言えたことかっ!!」
そんなやり取りをしながらも、戦いは空中戦へと突入する。
シップを追い、空へと舞い上がったギアルは検索能力を駆使して巨大な船その物となっているエラーの弱点を検索する。
弾幕のように発射する砲撃を不規則な高速飛行で躱しながらも、ついにシップの弱点……融合者の欲望によって完全に再現された船の機関部を発見する。
そして、ギアルショットガンを乱射して注意を惹きつけたギアルは空高くへと上昇して必殺技を発動。
【CRITICAL ARTS! FINAL WEAPON! SOCIAL!!】
電子音声が響いた瞬間、空中を飛んでいたギアルはジェット噴射を利用した急高速の落下によるライダーキックの構えを取る。
その際ギアル自身に青と緑の魔力が収束されると、ギアルインパクトをシップの弱点目掛けて叩き込んだ。
「はあああああああああああああっ!!」
『ぐおああああああああああああああああああっっ!!!』
高密度の魔力を纏った強烈な一撃と共に爆炎が立ち上がるとシップ・エラーは元の人間に戻り、壊れたエラーカセットが転がった。
事件が終わり、犯人の浦波が逮捕されたその日、空良は喫茶店でコーヒーを飲んで待ち合わせをしていた。
腕時計で時間を確認していると、目的の二人が現れる。
「やぁ、待っていたよ。二人とも」
「良い心がけだな。潮田」
そう言って笑みを見せるのは雅緋と忌夢。
実は今回の仕事を手伝ってくれたお礼として空良がケーキが美味しいことで有名な店を奢ることにしたのだ。
「それじゃあ、ボクたちの初仕事終了に」
「「「乾杯」」」
そうして三人に新たな絆が生まれたのであった。
「ケーキとコーヒーで乾杯ってどうなのだろう?」
「せっかく雰囲気作りしたのにっ!?」
空良の何気ない一言に忌夢がショックを受けていたのは言うまでもない。
To be continued……。
今回の怪人…シップ・エラーはエルミンさんからいただきました!エルミンさん、誠にありがとうございます!モチーフが豪華客船だったので白をイメージしてみました。
シップ・エラー
エルミンさんから頂いたオリジナルエラー。モチーフは『豪華客船』
船をこよなく愛する青年…浦波吹雪が復讐心とブレーキの壊れた船への愛情から融合変身した姿。上等な白い基本カラーに黒いパイプやら木製の面舵が剥き出しになった豪華客船のような姿をしており、モノアイは女神の像がある船頭を模したとなっている。
自分自身を豪華客船に酷似した船の形にして相手に突進する等、自分の体を利用した戦いを得意とする。水のある場所で戦うと、元々の能力をブーストさせることが出来る。